インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
ピロシキを食べてみたんですが豚まんみたいな味付けでした
予想していたのと違った感じでした
「これで全部なの?」
「今の所はね」
整備室には完成させたばかりのIS版エールストライカーパックのバックパック『ウィングフォーム』が置かれている。
左右にはIS版ランチャーストライカーパックの『シューターフォーム』とIS版ソードストライカーパック『ブレードフォーム』がある。
「剣とランチャーのバックパックはあまり見ない奴に見えるけど」
「AGEのGエグゼスのバックパックを使った」
「随分、マイナーな機体を選んだわね」
「モブ機体をあまり甘く見ないほうが良いよ。量産機だからやられ役にも見えるけどパイロットの腕次第ではガンダムだって落とすんだから」
罠を張ってNT-1 アレックスを倒したバーニィのザクⅡ改。
実力差でガンダム試作一号機を大破させたシーマ様のゲルググM。
地形を利用して陸戦型ガンダムと量産型ガンタンクを合わせた6機を翻弄したノリス大佐のグフカスタム。
彼らが機体の性能差が決定的ではないことを証明させた。
「それに装備が無くてもバックパックはそのままスラスターの役割としても使えるんだよ」
ソードストライカーとランチャーストライカーのバックパックはあくまで近接格闘と遠距離砲撃の装備なのでスラスター類は無く、機動性が低かった。
エールストライカーパック程ではなくても少しでも機動力を確保するためにスラスターがあるバックパックを採用した。
「それならわざわざIS版のエールストライカーを造らなくても良かったんじゃないのかな?」
「それは私も同意見だ。バックパックに追加のスラスターがあるなら高機動型のバックパックを造らなくても良いと思う」
簪の言葉にラウラも賛同する。
「それはそうだけどストライクと言えば換装装備が売りだよね?」
「本当の事を言うと?」
「ソードとランチャーを造っておいてエールがないのは寂しい」
エール、ソード、ランチャーの三つがあってこそストライクなんだから。
「これってストライクのエールストライカーパックに似ているけどオリジナルなの?」
「少し違うかな。エールストライカーパックを固定装備にしたM1アストレイのバックパックをストライカーパックにして造った」
「簡単に説明するとエールストライカーパックを固定装備にしたM1アストレイのバックパックを換装装備として改造したの」
「つまり換装装備だったのを固定装備にして、その固定装備をまた換装装備にしたってこと?」
「それで合ってる」
分かりやすく説明してくれた簪のおかげで分かったらしい。
「みんなを呼んだのはバックパックを着けた感想が欲しくて」
「なるほどね。なら、さっそく着けてみるわね」
鈴達がISを展開させて専用機を装着するとフォームシステムのバックパックを着けはじめる。
「ランドセルタイプだから着けるのは楽だね」
「アタシのだと双天牙月が当たって無理だわ」
「これを直に着けるとなると排熱に不安がある」
「リヴァイヴは元々、他方向加速推進翼があるから必要あるのかな……?」
それぞれの意見を聞くが簪以外はあまり良い反応がない。
「剣とランチャーのバックパックって片方は別の装備に変えることは出来るの?」
「それは問題ないです。右側は刀、左側にビームランチャーという組み合わせも出来ます」
ガンプラで左右に違う装備を着けたバックパックを見せると更識先輩が嬉しそうにしている。
「それを聞いて安心したわ。両方の装備も着けてみたいと思っていたから」
「ガンプラでは作ってないですがこれらを一つにしたフォームシステムも開発してます」
「マルチプルアサルトストライカーパックのこと?」
「そうだよ。可動スラスターにはミサイルコンテナを着けて撃ち終わったら自動的にパージしてデッドウェイトを防ぐようにしてる」
設計図を投影させて三つのフォームシステムを組み合わせたバックパックを見せる。
「機体を開発しないといけないからこれは見送りする予定」
「デュノア社に任せたらどうかな?夏休みに私と一緒にフランスに……あ」
「ちょっと待ちなさい。今、一緒に行くって言ったわよね?」
全員がシャルロットを見る。
口を滑らしたシャルロットはダラダラと冷や汗をかいて鈴達の視線を見ないようにして下手な口笛を吹いている。
「悠人、夏休みはどう過ごす予定なの?」
「デュノア社の新機体を開発するからフランスに行ってISの専門的な知識も一緒に学ぶつもり」
「それだけなの?」
「それ以外に何があるの?」
あくまでデュノア社の第3世代の機体開発のために行くだけで旅行に行くとかではない。
「夏休みになったら私はドイツに帰国する予定だが一緒に来ないか? 勿論、デュノア社の機体開発が終わって暇を持て余しているならの話だが。来たときには我が部隊が盛大に歓迎する」
「だったら私の家に来る? 日本だから日帰り旅行も出来るよ?」
「悠人、アタシと中国に来なさい。前に悠人と会ったことを話したらお母さんが悠人の顔を見たいって言ってた」
デュノア社に行くと聞いてそれぞれが私と一緒に夏休みを過ごそうと言い出した。遊びに行くんじゃなくて勉強のためにフランスに行くんだけど。
「夏休みに女の子と旅行に行くなんて羨ましい立場ね」
『色男』と書かれていた扇子を持った更識先輩にはトゲが含んでいるような雰囲気を出している。
「夏休み前に機体を完成させないといけないのは分かるけどお姉さんからして誰を選ぶかそろそろ決めて欲しいわね」
次に『選定』と書かれてた扇子を開いて真面目な表情になる。
「みんなが悠人君の事が好きなのは知ってる。でも、このまま答えを聞かないまま過ごすのは流石に感心しないわ」
何も言えないというより言う権利がないと言ったほうが正しい。
告白されているのを知っているのにも関わらず今まで普通に過ごしていた。
「私からして簪ちゃんを選んで欲しいけど決めるのは悠人君だから他の人を選んでも文句は言わない。みんなもそうでしょう?」
「そう……ですね。アタシが一番最初に告白したけど決めるのは悠人自身だから」
「私もそう思う。悠人は優しいから誰かが悲しむことをしたくない。でも、誰が好きなのかハッキリして欲しい」
「嫁と言っているがまだ正式に結婚というのをしていない」
「私を選ばないと思うけど。もし、悠人君の彼女になれるなら嬉しい……かな」
鈴もシャルロットもラウラも簪も勇気を出して僕のことが好きだと言ってくれた。みんなの好意を無下にしたまま過ごすのは良くない。
「夏休み前……いえ、機体が完成するまでには決めます」
◇
三つのバックパックを僕の
(そろそろ誰が好きなのか決めないと……)
猶予はデュノア社の第3世代の機体が完成するまで……か。
「悠人く~ん。ご飯出来るわよ」
もうそんな時間か。製作していた設計図のデータを保存する。
誰がご飯を作るか揉めていたが平等になるように僕の事が好きではない更識先輩が作る事になった。
「今日はウハーという魚のスープよ」
深めの皿に入れたのはスープと一緒にニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ。それと鮭の切り身もあった。
「鮭をそのまま使ったんですか」
「ボルシチよりもはやく出来て簡単だから悠人君にも作れるわよ」
「作るときは教えてくれますか?」
「そ、そうね。機会があれば一緒に作りましょう」
いただきますと言ってスープを飲む。
「鮭の皮は剥がしてないんですね」
鮭を食べようとしたら皮を剥がしていないのに気付く。
「もしかして皮は苦手だった?」
「大丈夫ですよ。むしろ皮は大好物です」
「それは良かったわ……」
安心したのか一息ついている。どうしてなんだろう?
「悠人君って魚の皮は剥がさないで食べるの?」
「いえ、先に剥がして身を食べたあとに皮を食べます」
軽く炙った鮭の皮をお茶漬けにしたり、そのまま食べるのは格別である。
「なら、明日のお昼は鮭の皮を具にしたおにぎりにしようかしら」
「それはちょっと……」
「冗談よ、冗談」
でも、それも悪くないかもしれない。皮だけのおにぎり……。
「この揚げたパイは春巻みたいで美味しいです」
「チェブレキのことね。薄く伸ばした皮に具を包んで揚げてるから春巻にも似ているわね」
かじると皮がパリパリしていて中のひき肉の旨味が口の中に広がる。
「これけっこう好きですね」
「す、好き?」
「はい。このチェブレキが」
「そう、なの……チェブレキが好きなのね……」
チェブレキが好きな食べ物になりそうなのになんで暗い表情するんだろう。
「先輩?」
「あ、ううん。食べたいならお昼に用意するわよ?」
「はい、お願いします」
その後、ウハーとチェブレキを美味しく頂いた。
◇
悠人君の部屋で夕食を摂って自分の部屋に戻った。
「好き……か」
いきなり好きと言いだして驚いたがチェブレキが好きと言って落胆する。
「この生活もあと少しで終わるのね……」
夏休みになる時期が迫っている。遅くても夏休みになる前日には完成させる予定である。
「誰を選ぶのかな……」
鈴ちゃんはグイグイ引っ張っていく性格でシャルロットちゃんは優しくて周りを和ませてくれる。ラウラちゃんは無知な部分が多くて放っては置けなく、簪ちゃんは良い所がいっぱいあるから言い切れないわ。
「悠人君って女心を知ってる性格よね。一夏君と違って朴念仁じゃないから余計に困るわ」
そんな悠人君を私は好きになった。
笑ってくれると私も嬉しくなって手料理が美味しいと言ってくれるともっと美味しい料理を作りたいと努力する。
毎日、悠人君に作ってあげたい。もっと私の手料理を食べて欲しい。朝食も昼食も夕食も夜食もお菓子も全部……全部食べて欲しい。
「私……最低な女ね。簪ちゃんの好きな人まで奪おうとしてる」
簪ちゃんの好きな人まで奪おうと考える私自身に嫌悪する。
諦めないといけない。分かっているつもりでも好きと言ってしまって悠人君が私を選んだら。
「駄目よ……知らなかったとはいえ私は簪ちゃんを無意識に傷付けた。だから今度は私が傷付く番なの」
好きといえばどれだけ楽になれるか。私を選んでくれたらどれだけ嬉しいことか。
でも、そんな事をしたら簪ちゃんが傷付いてしまう。簪ちゃんが悲しんだ分、私がその罪を償わなければいけない。
それが好きな人に告白しないで妹の幸せを祝福するためでも。
「ごめんね簪ちゃん……お姉ちゃんは悠人君に好きって言わないから……だから、あと少しだけ悠人君を私の物にさせて。それで諦めて簪ちゃんの幸せを祝福するから……」
心がとても痛い。締め付けられるように押し潰されるように痛い。
でも、私は簪ちゃんにこれ以上に辛くて悲しいことをさせた。
だからこれは私への罰。私の罪なんだ。
「ごめんね……ごめんね簪ちゃん。こんな最低な私が簪ちゃんのお姉ちゃんごめんね……」
辛くて苦しくて誰にも聞かされないように声を押し殺して小さな声で泣いた。
姉らしさが出たなぁ……と感じます