インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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この小説ではじめての修羅場です



47話 ロシアの昼食と夕食

背中が柔らかいものに乗っているような感覚。これは……ベット?

目が覚めると入学してからずっと住んでいる部屋の天井だった。

 

「お目覚め?」

 

横を向くと更識先輩が隣のベットに座っていた。

 

「あの、もしかして僕は寝てたんですか?」

「ぐっすりとね」

 

なんでベットに……ご飯食べたあと紅茶を飲んで一息ついたら更識先輩がからかってきて胸を……胸を──

 

「す、すいませんでしたぁぁぁぁ!!!」

 

自分がやった失態を思い出してしまい更識先輩に土下座をする。

 

「あれは違うんです! 出来心……じゃなくて」

 

なんて言えばいい、なんて言えばいいんだ。更識先輩が挑発したとはいえ、僕がその挑発に乗ってあんな恥ずかしいことしたから弁明の余地なんてないけど何か言わないと。

 

「い、いいのよ。先にやった私が悪いから。それに……役得だったし」

「や、やく?」

 

聞き間違いかもしれないが今、役得って言ったよね?

まさかだけど更識先輩ってそういうのされるのが好きなの?

 

「と、とにかく私は大丈夫だから」

「で、でも先輩は不快な思いをしたんですから」

「不快じゃないから、むしろ嬉し……じゃなくて全然大丈夫よ」

「本当ですか?」

「えぇ、大丈夫よ。そう、うん、大丈夫なはず」

「ですけど何かしらお詫びしたいんですが」

「お詫び?」

 

大丈夫と言っているが僕としては引き下がれない。

 

「先に言っておきますが僕が出来ること限定です。セクハラっぽいのは禁止ですから」

「セクハラっぽいことじゃないなら良いのよね?」

「それは僕が判断します」

 

ここで男には二言はないとは言わない。更識先輩のことだからセクハラギリギリのことをさせるかもしれない。

 

「じゃあ……悠人、こっちにおいで?」

 

ベットの中心に座ると膝をポンポンと叩いた。なにこれ?

 

「なんで膝を叩いたんですか?」

「膝枕をしようと思って。ほら、はやく」

 

膝をポンポンと叩いて来てと言っている。

膝枕ってセクハラにはいるのかな?でも、普通に膝に寝るだけだし、シャルロットにもされたから問題ないか。更識先輩に膝に頭を置いた。これってお詫びなのか?

 

「どう? お姉さんの膝は?」

「落ち着きますね」

「つまらない感想ね」

 

なんで膝枕程度で感想なんか言わないといけないのかと言いたいがややこしくなりそうなのでやめとく。

 

「そういえば今、何時ですか?」

「7時30分。2時間以上は寝てたようね」

 

かなり寝すぎたようだが頭の中がスッキリした気分だ。

 

「ずっといたんですか?」

「そうだけど?」

「部屋に戻っても良かったんですよ?」

「悠人君の寝顔をじっくり見たくてね」

「それだけの為にずっといたんですか?」

「そうよ?」

 

女の人ってよく分からない。それから教室に行く時間になるまでずっと膝枕をされた。

 

 

 

 

午前中の授業を終えて時間はお昼時になった。鈴とラウラが教室に入って来る。

 

「悠人、食堂行くわよ」

「はやく行かないと席を確保出来ない。迅速に行動するぞ」

「ごめん、今日は先客がいるから先に行ってて」

「先客?」

「先客とは誰なんだ」

「おじゃましま~す」

 

更識先輩が教室に入ってきた。

 

「悠人君、お弁当持ってきたわ」

「分かりました。先に席を取っとくからゆっくり選んで良いよ」

「えっ、あ、ちょっと悠人」

 

更識先輩と一緒に教室を出て食堂に行く。

 

「お昼ってなんですか?」

「それは食堂についてからのお楽しみ♪」

 

お弁当が気になるけど食堂まで我慢しよう。

食堂に着くと空いている半円形のテーブルを陣取り、しばらくするとトレーを持った鈴達が来た。

 

「これが今日のお昼よ」

 

お弁当を開けると揚げたパンのような物があった。

 

「カレーパン?」

「残念、これはピロシキ。ロシアの惣菜パンよ」

 

魔法瓶を開けるとコンソメの匂いが漂う。これはコンソメスープだ。

 

「はい、どうぞ」

「いただきます」

 

更識先輩が作ったピロシキを食べる。これは……挽き肉?それにキャベツとジャガイモ、玉ねぎに……春雨も入ってる。

 

「ピロシキは聞いたことはありましたが美味しいですね」

「ジャムをいれた甘いピロシキもあるわよ」

「それってただの揚げたジャムパンですよね」

「そうとも言うわね」

 

揚げパンといえば小学生の定番だったな。きな粉やココアパウダーをまぶしたのもあってIS学園に入学してからは口にしてない。

 

「なんでお姉ちゃんが悠人君にお弁当を渡したの」

「そうね。それはアタシも気になるわ」

 

そう言って簪はうどん、鈴はラーメンをずるずると啜っている。

 

「悠人君がカップラーメンで済ませてるから健康管理のためにご飯作ることにしたの」

「カップ……ちょっと悠人! あんた、部屋で自炊してるって言ってたじゃない! まさか嘘付いてたの!? というよりカップラーメンは健康に悪いからやめなさいって前に言ったでしょ!?」

 

やばっ……最近、食堂に行く時間が勿体ないからカップラーメンで済ましていて鈴には部屋でご飯を作っていると嘘付いていた。

鈴は意外と健康面にうるさく自炊が面倒くさくてカップラーメンで済ましていた時期に健康に悪いからと言って無理矢理、中華を食べさせられた事があってそれから自炊しない日は店に来いと約束された。

 

「すいません先輩、うちの悠人が迷惑かけて」

「うちのって……僕は鈴のものじゃ」

「あんたは黙ってなさい」

「はい」

 

有無も言わせない威圧で僕は口を閉じる。

 

「先輩にも迷惑かけてますのでこれからはアタシが作ります」

「ちょっと待て。なぜ、お前がご飯を作る必要がある」

 

鈴がご飯を作ると言うとラウラが異論を唱えた。

 

「アタシの家は元だけど料理店だったの。悠人のご飯を何度も作ったから何が好きなのか知ってる」

「なら、私も立候補しよう。部隊ではローテーションを組んで食事係をしていた」

「僕も参加する。前に悠人にご飯作るって約束したからね」

「私も作る。お姉ちゃんほどじゃないけど私も料理は出来る」

 

ご飯作ってくれるのは嬉しいけどこれって修羅場になるんじゃない?口喧嘩なら止めないけどISを使うならアリーナにしてね。

 

「気持ちは嬉しいけど悠人君と約束しちゃったから大丈夫よ。みんな、ごめんね」

 

さらりと大人の対応をしている更識先輩。歳がひとつ上だけでこうも変わるんだな。

 

「気をつかなくてもけっこうです。料理は得意なので」

「そうだ、私も問題はないから全員やらなくていい」

「僕が作るから良いよ」

「美味しいご飯作れるからお姉ちゃんはさがって」

「あら、私のほうがみんなよりも上手く作れるわよ?」

 

あ~ヤバい、修羅場になってる。これは逃げたほうが良いな。

ピロシキを口に放り込んであまり噛まずにコンソメスープを飲み、食堂を出た。

 

 

 

 

「明日になれば乾くからこれで作業は終わりだね」

 

スプレー缶を使ってガンプラを塗装していた。勿論、換気扇を回して窓を開けた状態にしている。

時間が足りないのでスプレー缶で塗装をしているが僕は筆で塗って色付けする派である。

 

「ここまでやるとようやくガンプラを完成させたって感じる」

 

素組してヤスリ掛けして塗装。ガンプラを組むならここまでやるのは普通だよね。

コンコンコン。

 

「誰?」

 

塗装して手は汚れているから手を洗っていると扉をノックされる。

 

「は~い」

 

手を綺麗にして扉を開けた。

 

「はいるわよ悠人」

 

扉を開けるや否やズカズカと入って来る。

 

「なんなの鈴、いきなり入ってきて」

「ご飯作るの」

「ご飯?」

 

キッチンには鈴が持ってきたのか食材が置かれていた。

 

「更識先輩が作るから鈴がやらなくてもいいのに」

「アタシが気にするの。人手が足りないときはアタシも働いていたから家の手伝い程度の人には負けるわけにはいかない」

 

不味い意味でスイッチが入った。こうなると鈴を止めるのが難しくなる。

コンコンコン。

 

「ちょっと待って」

 

またノックされたので扉を開ける。

 

「シャルロット?」

「悠人、入っていいかな?」

 

入ってはいけないと言いたいが駄目とは言えなくてシャルロットも部屋にいれた。

 

「前にフランスの家庭料理が食べたいって言ってたから作ろうと……」

 

エプロンを付けて手を洗っていた鈴と鉢合わせてしまう。

 

「シャルロット……あんたも」

「鈴もなんだね……」

 

ここで効果音が見えてればバチバチと火花が散ってるのが見える。

 

「なんの用? アタシ、これから悠人のご飯作るつもりなんだけど?」

「僕も作ろうと思ってね。悠人には色々してもらってるからお礼にご飯作ろうと」

「お礼なら日を改めて来なさい。今日はアタシが悠人のご飯を作るって決まってるから」

「それは無理かな。鈴のことだから毎日作るつもりでしょ?」

「よく分かってるじゃない」

 

ヤバい、ヤバい、ヤバい。ドンパチになる前にはやく止めたほうが良い。

 

「ふ、2人とも。今日は更識先輩が来るからご飯はまた今度で」

「カップラーメンで済ましている悠人には発言権なんてないわよ」

「そうだよ。僕の料理が出来るまで悠人は大人しく待ってて?」

 

ギロリと睨む鈴とニコリと笑うシャルロット。共通して言えることはお互い目が笑ってない。

 

「扉が開いている? もしかして襲撃──」

 

声と共に突然、扉が開いた。僕達は扉を見ると食材が入った袋を持ったラウラがいた。

 

「なぜ、お前達がいる」

「悠人のご飯を作るから」

「それは私がやることだ。さっさと部屋に戻れ」

「なら悠人と一緒に部屋に戻るけど?」

 

なんで僕まで行かないと──

 

「ひ、卑怯だぞシャルロット! 私と同じ部屋だからと言って嫁と一緒に戻るのは卑怯だ!」

「同じ部屋? シャルロットとラウラって同じ部屋なの?」

「ラウラは一人部屋だったから織斑先生にお願いして同じ部屋にしてもらったの」

 

そうだったんだ。シャルロットは4組でラウラは1組だから同じクラス同士の部屋かと思ったがまさか同じ部屋だとは思わなかった。

 

「そうだ。ラウラ、ここは共同戦線しない?」

「共同戦線だと?」

「僕とラウラは同じ部屋だから悠人を連れて部屋に戻ればご飯も作れて一緒にいられるよ?」

「そ、それはとても魅力的な選択肢だが」

 

僕と二人きりになりたいらしく渋っている。

 

「僕はラウラが一緒でも問題ないよ?」

「うっ、むぅ……」

 

シャルロットの提案でかなり迷っているらしいが僕からすればさっさと戻ってほしい。

 

「迷ってる暇があるなら自分の部屋に帰りなさい」

「わかった、いこ悠人」

「なんで悠人も連れて行こうとするのよ!」

「鈴が戻れって言うから」

「悠人を連れていく必要ないでしょ!」

 

腕を鈴とシャルロットに掴まれて引っ張られている。

 

「痛い痛い痛いっ!」

「悠人が痛がってるから離して」

「離すのはあんたのほうよ!」

 

いやいや、両方だよ!

コンコンコン。

 

「まさかだが」

 

鈴とシャルロットに綱引きをされている僕の代わりにラウラが扉を開けてくれた。

 

「悠人く……みんなも同じ考えなんだ」

 

ノックしたのは簪で言うまでもなく食材が入った袋を持っている。

 

「これはどうなってるの?」

 

簪から見ればラウラが扉を開けて、僕の腕を掴んで引っ張っている鈴とシャルロット。

すごくシュールな絵だ。

 

「えーと、ものすごく噛み砕いて言えば誰がご飯を作るか決めていた」

「それで悠人君が引っ張られているんだ」

「……はい」

 

全員固まっていて誰が先に動くか牽制し合っている。

 

「とりあえず鈴、シャルロット。腕が痛いから離して」

「あ、うん。わかった」

「ごめん悠人……」

 

僕が最初に微妙な空気を壊したことで2人は腕を離してくれた。

 

「えっと……とりあえず各自、自分の部屋に戻って」

「ほら、悠人が言ってるからあんた達ははやく出なさい」

「鈴もだけど」

「なんでよ」

 

全員、出てくれないと誰一人出ないからだよ。

 

「部屋に戻るのはいいけど悠人も一緒だよ?」

「だから僕は」

「シャルロット、例の件だが仕方なくだ。承諾しよう」

「ほら、ラウラも言ってるから一緒にね?」

「だ・か・ら! なんでを連れて行こうとするのよ!」

「そうだよ! 部屋に戻るなら悠人君を連れて行く必要なんてないよ!」

 

また振り出しに戻ってしまった。なんか面倒くさくなってきた。もう、どうにでもなれ。

そう思っていたら──

 

「なんの騒ぎだ?」

 

部屋の扉が開いたままだったのでみんなの声が聞こえていたらしく、声の主は一年生の寮長である千冬さんだった。

 

「山田、これはどういう状況だ?」

「えっと、その……聞きたいですか?」

 

第三者から見れば呆れてものも言えないことなんだけど。

 

「言うならはやくしろ」

「……実は誰がご飯を作るか決めてまして」

「それで騒ぎになったと」

「……はい」

 

くだらない理由で騒ぎになった話すと千冬さんはため息をついた。

 

「物は壊してないからいいが面倒事は勘弁してほしい」

 

千冬さんの言い方からして物を壊す程の喧嘩をした生徒がいるらしい。どれだけ壮大な喧嘩したんだろう。

 

「それに料理ならちょうど良い。山田に食べさせるなら私にも食べさせる流れになるな」

「食べさせるとはどういう意味ですか教官?」

「織斑先生だ」

 

出席簿でペシンと叩かれるラウラ。

 

「あの、なんで悠人君のご飯が織斑先生も食べる事になるのですか?」

「真耶は私の後輩で悠人は一夏の幼馴染みだから一緒に食事をすることもあった」

「かいつまんで言えば僕の家と一夏の家は家族絡みで仲が良いから一緒に食べることがあったの」

 

あの頃はとても楽しかった。千冬さんは僕のことを実の弟のように可愛がられたし、姉ちゃんも一夏と遊んだりして……遊んだり……して……。

 

「……まあ、悠人が満足いく食事を作りたいなら私の舌を唸らせてみろということだ。どうだ、小娘共?」

 

わざとらしい笑みで挑発をして鈴達を見る。

 

「分かりました、中国に戻ってからもずっと磨いていたアタシの中華の腕をお見せします」

「私もお母さんの手伝いをしていましたから料理は得意です」

「織斑先生、貴女の舌が満足いく料理を作ってみせます」

「わ、私もやります!」

「そうか……なら、ついて来い! お前達が作る料理が悠人が食べる料理に相応しいか私が見極めてやる!」

「「「「はいっ!」」」」

 

千冬さんの後ろをついて行くとぞろぞろと僕の部屋を出た。

 

「……嵐は去ったよね?」

 

カリスマ性がある千冬さんのおかげでなんとか収まった。

 

「どっと疲れた……寝よう」

 

部屋の鍵を閉めるとベットにダイブして意識を手放す。

 

 

 

 

目を開けると膝枕をされていた。天井を見ると──

 

「お母……さん?」

 

何故か分からないが僕はお母さんの膝で寝ていた。

 

「悠人……泣いているの?」

 

僕は泣いてたらしく、ハンカチを持って目元を拭いてくれる。

 

「どうしたの? 起きたら急に泣いてるからお母さん、心配したのよ?」

「……怖い夢をみたんだ」

「怖い夢?」

 

僕が怖い夢を見たと言うと首を傾げる。

 

「お父さんとお母さんが死んじゃう夢を見たの……」

「それは怖い夢ね」

 

お母さんは僕の頭を優しく撫でてくれる。

 

「大丈夫よ、悠人が見てたのは悪い夢だから」

「そうだよね」

 

お母さんがこうしているから僕が見ていたのは夢だったんだ。

 

「いえ……夢じゃなくて現実よ」

「お母さん?」

 

ヒビが入ったような音が響く。

 

「悠人が見ていたの夢は現実よ。私もお父さんもいないわ」

「なに言ってる? だって──」

 

ガラスが割れるように周りが壊れてお母さんとの距離が離れていく。

 

「現実を見なさい……たとえ叶えられない夢を求めても現実を見なければ」

 

やめて……そんなこと言わないで!僕は……僕は!

 

 

 

 

「悠人君、しっかりして! 悠人君!」

 

大きく揺すられて目を覚ました。

 

「せん……ぱい?」

「大丈夫? 酷くうなされてたから心配で」

 

なんで先輩が……そうだ、鍵を持ってるのを思い出した。

 

「……水を持ってきてくれますか?」

「わかったわ」

 

キッチンに行き、水を注いだコップを持ってきてくれた。

 

「ありがとうございます」

 

コップをもらってゆっくり水を飲んで心を落ち着かせる。

 

「あの……今、何時ですか?」

「8時30分ね。今日は生徒会の仕事が多くて6時ぐらいに終わったあと買い物に行ってて、部屋に来るのが遅れたの」

「今日は遅れて来て良かったですよ」

「良かった?」

 

更識先輩が生徒会の仕事と買い物をしている時、鈴達が部屋にやって来てご飯を作ると言っていたら千冬さんが現れて、連行されたことを説明した。

 

「今日ばかりは虚ちゃんに感謝しておこうかしらね……」

「確か、本音さんのお姉さんでしたっけ?」

「えぇ、私のひとつ上で三年生よ」

 

三年の先輩なのにそんな風にフランクに話していいんだろうか?

 

「ご飯作ってる途中ですか? もし、そうなら手伝いますけど」

 

「あとは煮込んでいるだけだから大丈夫よ」

 

もうすぐ出来るから待ってほしいと言われて大人しくしていると鍋を持ってきた。

 

「今日はロシアの定番料理ボルシチを作ってみたわ」

 

蓋を取ると赤一色のスープで湯気が部屋中に広がる。

 

「うわぁ、美味しそうですね」

「美味しそうじゃなくて美味しいのよ」

 

底が深い皿にボルシチを入れた。

 

「いただきます」

「はい、召し上がれ」

 

さっそくボルシチを食べてみると酸味があって親しみやすい味で食べやすい。

 

「トマトスープかミネストローネみたいですね」

「トマトも使ってるからあまり間違ってないわよ」

 

凄く美味しいのですぐに平らげてしまう。

 

「おかわりお願いします」

「そう言うと思ってたくさん作っておいたからどんどん食べて」

 

嬉しそうに笑ってまたボルシチを入れた。それから4回程おかわりをした。

 

 

 

 

更識先輩が作ったボルシチに満足して紅茶を飲みながら一息ついていた。

 

「悠人君ってよくガンダムを見るけどオススメはなに?」

「そうですね……SEEDが一番好きですけどちょうどガンプラを作ってますからビルドファイターズ見ます?」

「ビルドファイターズ?」

「ガンプラを使って戦う話です。ガンダムを知らない人でも分かりやすいですよ」

 

DVD-BOXからビルドファイターズを取り出してDVDプレイヤーに入れる。

 

「あれ? 宇宙にいるけど」

「まあまあ見ててください」

 

敵機体であるザクⅡにビームライフルを撃つと思いきやビルドストライクの腕が突然、ポロリと外れてガンプラだと分かるようにガンプラのパーツが露出する。

 

「夢オチ……」

「はい、夢オチです」

 

やられると思ったが夢オチというお約束であった。

 

「そういえばビルドストライクって言ってたけどあれって悠人君の専用機を改造しているのよね?」

「ストライクですよね? 今、夢オチで起きたセイもストライクを元にオリジナルのガンダムを開発したんです。それに僕が作ったストライクもビルドストライクの大型スラスターを使っています」

 

それから更識先輩と一緒にビルドファイターズを見ていた。

 

 

 

 

「凰は当然合格でデュノアもなかなか上手いな」

「当たり前ですよ。悠人にもお墨付きをもらってますから」

「お母さんの手伝いをしていましたので」

 

鈴とシャルロットは合格点をもらって一安心している。

 

「ボーデヴィッヒは悪くないがレパートリーを増やせ」

「り、了解です」

「更識はまだまだだな。精進しろ」

「はい……」

 

ラウラはギリギリ合格で簪だけは不合格だった。

 

「腹が膨れたからそろそろ本題にはいるか」

 

それぞれの料理を食べ終えた千冬の視線が鋭くなる。

 

「最近の悠人はどんな感じだ?」

「どうって言われましても……」

「いつも通りと言えば良いんでしょうか……」

 

デュノア社の機体開発をしている以外は普通に過ごしているとしか言えなかった。

 

「私は悠人の担任じゃないからどういう風に過ごしているか分からない。何でも良い、気になったことを話してくれ」

 

IS学園での生活をどう過ごしているか教えてほしいと言う千冬に簪がおずおずと手をあげる。

 

「お姉ちゃんが悠人君にご飯作ってることですかね。料理が上手なのは知ってますけど私が知るには家族以外に作ったことはないと思います」

「更識姉がか?」

「それがですね。悠人がカップラーメンで済ましているからなんですよ。身体に悪いからやめなさいって前に言ったのに……」

「そうか……」

 

カップラーメンばかり食べている悠人に鈴が愚痴ると千冬は考え事をしてしまう。

 

(まさかだが悠人は集中するために他の時間を削って……あのとき泣く姿を見るのは数年振りだ。何もなければいいが……)

 

悠人の涙を流した姿を見たのは唯一血の繋がった家族である真耶以外だと幼馴染みである一夏とその姉ある千冬。デュノア社の件で居たシャルロットしか見ていない。

幼馴染みである箒と鈴は残念ながら悠人の泣く姿は見ていない。

 

「織斑先生?」

「ん? あぁ、すまない」

 

鈴に声をかけられて考え事をやめた。

 

「それ以外は特に変わった事はないんだな」

「はい。あと、悠人が言うにはデュノア社の機体はもう少しで完成すると言ってました」

「もう完成するのか」

「といってもガンプラですけどね」

「ふっ、ふははははっ! あいつらしいな。ISの設計図をプラモデルでつくるとは……ふふっ」

 

納得するかのように笑っていた。

 

「悠人君はガンプラとかよく作っていたんですか?」

「少なくとも月にひとつは作っていた」

 

単純計算をすると最低でも年間12体のプラモデルを作っていることになる。

 

「言うまでもないがこの話は他言無用だ。真耶にも話すなよ」

「どうして真耶さんもなんですか?」

「真耶をあまり刺激させたくない。悠人に何かあれば倒れることがあるかもしれない」

「分かりました。この事は私達だけの内密ということですね?」

「そういうことにしてくれ。そろそろ消灯時間だから部屋に戻れ」

 

部屋に戻って寝ろと言われて鈴達は出ようとした。

 

「ひとつ言い忘れたことがある」

 

出ようとしたら千冬が呼び止める。

 

「悠人を頼む。あいつは変に強情だから何があっても受け入れてくれ」

「あの、千冬さん。それってどういう意味で──」

「悪いが今のお前達にはまだ話せない……話せないが頼む」

 

有無言わせない威圧感はなく、今の千冬は臨海学校でお願いされた真耶と同じ雰囲気を出していた。

鈴達は何も言わずに頷いて部屋を出た。




流石、千冬さん!こんな修羅場を簡単に収めて、自分のご飯を作るように仕向けるとは!そこに痺れる!憧れる!
あと物を壊す程の騒ぎをしたのはお前の幼馴染だからな悠人(アニメ1話の一夏と箒)

冗談はさておき、悠人についてまた触れましたね



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