インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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タグにガンプラと追加したほうが良いでしょうか?
22話のタイトルを変更していた報告を忘れてました。すいません


45話 姉妹はよく似る

「フォームシステム?」

「それって悠人君が考えたバックパック?」

「簡単に言えばIS版ストライカーパック。せっかくストライクを新機体にしてるからストライカーパックも必要でしょう?」

 

休み時間になるとシャルロットと簪にデュノア社の新機体以外の物を作っていると話していた。

 

「シューターとブレードは同じバックバックを使っているけど違うのは肩掛け式ビーム砲か刀を装着しているかだね」

 

スマホで撮った素組のストライクの背中には自作ストライカーパックを付けている。

 

「ブレードはソードインパルス。シューターはランチャーストライクというよりカラミティのバックバックを参考にしたかな」

「ガンプラってこういう風にオリジナルも作れるの?」

「プラモデル全体に言えることだね。一から作る人もいればこうやって色んなパーツを合わせて作る人もいる」

 

原作に忠実な人もオリジナルを考える人もそれぞれ良い部分がある。

 

「簪にお願いがあってね。このフォームシステムをISの装備として造って貰えるかな?」

「でも、ガンプラで作ってるなら必要ないんじゃない?」

「ガンプラだけ作っても不安がある。外型だけでも良いから造って確認したい」

「わかった。やってみるよ」

「このフォームシステムだけど簪のお姉さんにも手伝ってもらうから」

「お姉ちゃん……そうだね、お姉ちゃんは私よりも優秀だから……」

 

あれ……なんで更識先輩も手伝うと言ったら暗くなって……。

 

「今のは良くないよ悠人」

 

小声でシャルロットが言ってくる。何が良くないの?

 

「更識先輩も手伝ったほうがすぐ出来るから」

「そう意味じゃなくて」

 

ならどういう意味なの?仲直りしたから一緒にやっても問題ないでしょう。

 

「あぁ……なんでこんな時に悠人も一夏みたいになるのかな」

 

いやいやそれは心外だよ。一夏は箒とセシリアさんの態度とかちゃんと見てないけど僕はそういうのは反応する。特にあの大きい胸を当てられたら──

 

ユウト……。

 

ヨメ……。

 

「……ッ!」

 

突然の幻聴に教室を見渡す。

な、なんだ……今の重苦しい圧力。ひとつは肉切り包丁のような分厚いプレッシャー。もうひとつは鋭いナイフのようなプレッシャー。

 

「どうしたの悠人? 顔色悪いよ?」

 

いきなりの事にシャルロットは心配そうにしている。

 

「大丈夫だよ。うん、大丈夫……重苦しいプレッシャーはなくなった」

「プレッシャー?」

 

シャルロットは感じなかったらしい。僕だけ反応したのかな?

 

「ううん、何でもない 」

 

僕を襲うプレッシャーは消えたから問題ないだろう。

 

 

 

 

授業が全部終わって部屋で新たなフォームシステムのバックパックを作っていると扉がノックされる。ガンプラ制作を中断して扉を開けた。

 

「来ましたね。準備は出来てますのでどうぞ」

「えぇ、お邪魔するわ」

「お、お邪魔します」

 

簪と更識先輩を部屋に入れる。

 

「簪ちゃんから粗方聞いたわ。デュノア社の新機体以外に装備も作ってるからその試作型を造ってほしいのよね?」

「はい、事情が事情なので整備科の人達にはお願い出来なくて」

「私達にしか話してないから仕方ないわね。それに機密性も高いわ」

 

デュノア社の第3世代機体開発は学園はおろか世界中が知らない事。

表向きはデュノア社が開発したと報道するが僕達のような子供が新型機体を開発したら驚くだろう。

 

「バックバックは出来てますので設計図を元に造ってください」

「この設計図通りに造ればいいのね」

 

ガンプラで作ったバックパックと設計図データを渡した。

 

「まだバックパックを作ってるの?」

「高機動用のバックパックをね。M1アストレイのバックパックをそのまま使って開発してるから出来るのに時間がかかる」

「じゃあ設計図通りに造ってくるわね」

 

部屋を出た簪と更識先輩がいなくなって僕はバックパックの開発を再開した。

 

 

 

 

整備室にいる私と簪ちゃんは悠人君のお願いでプラモデルで作ったバックパックをISの装備として造ってほしいと頼まれて設計図を貰った。

 

「こうして見ると上手く出来てるわよね」

 

色んなパーツを繋げて作ったプラモデルを見ていた。悠人君が言うには素人でも簡単に作れる程度らしいが本当にそうなのかと思える。

 

「お姉ちゃんも興味あるの?」

「そうね……色んな種類があるのよね?」

「うん、悠人君もガンダム以外も作ってるって」

 

好きな趣味の事なのか楽しそうに話している。簪ちゃんと同じ趣味の人は更識家に仕える布仏家の本音ちゃんくらいしかいなかったので本当に嬉しかったんだろう。

 

「そうなの……」

 

なんでだろう……簪ちゃんに好きな人が出来て嬉しいのに悠人君が相手だとモヤモヤしたような気分。

 

「あとザクとかのガンプラもいっぱい作って」

 

簪ちゃんを盗られたからなのかしら……だけどそれだとこんな気分にはならない。もっと違うような……。

 

「お姉ちゃん?」

「な、なに?」

「ずっと暗い表情だけど気分良くないの?」

「そ、そう?」

「うん、いつものお姉ちゃんみたいじゃない感じ」

 

心配させちゃったらしいわね。妹に心配させられたら姉として情けないわ。ここは笑っておかないと。

 

「大丈夫よ。ほら、悠人君に任された作業をしましょう」

「そうだね。デュノア社の新しい装備を造らないと」

 

デュノア社……そうだったわね。悠人君の頼みとはいえこれってシャルロットちゃんを救う為にやる事だった。それに簪ちゃん以外にもシャルロットちゃんの事を考えるとなんでまたモヤモヤした気分になるのかしら……。

 

 

 

 

「設計図通りに造ってみたけど……」

「これが悠人君の考えた装備……」

 

外型だけなのですぐに完成した。

近接格闘用バックパックと遠距離砲撃用バックパックの二つをISの装備として造ってみたが何て言えばいいのか……凄いの一言しかない。

 

「アニメやゲームの世界も馬鹿に出来ないわね」

「ガンダム以外にもACやマブラヴ、フレームアームズとかも参考になるよ」

「そういえば簪ちゃんのクラスってどうなの?」

「ロボット系が好きな人が多い。最初は私に話を合わせてたのかなって思ったけどみんなもガンダムとかのロボット系が好きだと言ってた」

 

それは良かった。簪ちゃんの趣味は男の子らしい物なので女子とは合わないかと思っていたが問題はないようね。

 

「これどうする?」

 

処分するのは勿体無いし、このまま置いといても邪魔になるわね……そうだ。

 

「あとで悠人君に見せるから私が持つわ」

「私が持っていくから大丈夫」

「簪ちゃんは疲れてると思うからお姉ちゃんに任せて」

「これくらい平気。打鉄弐式のときもこれ以上の作業をしたから問題ない」

 

意外と強情ね。でも、ここで退いたら姉としての威厳が成り立たない。

 

「ここはお姉ちゃんに任せて」

「お姉ちゃんに頼ってばかりじゃ私も成長しない。だから私が持つ」

「そんな事ないわよ。簪ちゃんはちゃんと成長してるわ」

「なら私が持っていってもいいよね?」

「それとこれとは話は別よ」

 

なぜか分からないけどこのバックパックは簪ちゃんには譲れない。

 

「なら……どちらか片方を持っていくのは?」

「それでいいわ。二つもあるからそうしましょう」

 

もしかしてだけどこれを予想してあえてバックパックを二つ造ってほしいと頼んだのかしら。それだと悠人君ってかなり策士ね。

 

「「じゃあ私はこっち……えっ?」」

 

お互い、近接格闘用バックパックに指を差した。

まさか同じのを選ぶとは思わなかった。これは簪ちゃんも驚いている。

 

「簪ちゃん、ここはお姉ちゃんに譲ってくれる?」

「お姉ちゃんこそ、私の色んなものを奪ったんだから渡してよ」

 

貼り付いたような笑顔を見せ合う。ふふっ……妹と同じなのは嬉しいけど、この場合は話は別ね。

 

「こういうときは……」

「公平に」

 

手を天井に振り上げ──

 

「「最初はグー!ジャンケンポン!」」

 

 

 

 

結果、私が勝ったわ。

近接格闘用バックパックを拡張領域に入れる。

 

「機体のほうは作ってるのかしら」

 

装備も開発しているが本命は機体である。いくら装備を造っても機体を完成させなければ意味がない。

 

「様子を見に行ってみようかしらね」

 

そうと決まればさっそく悠人の部屋に行くわよ!

 

「確か1040号室だったわよね?」

 

一年生の寮に入って悠人君の部屋に行く。

 

「懐かしいわね……」

 

まだ数ヶ月しか経ってないのに懐かしく感じる。

初めて会ったときはからかいを含めて水着の上にエプロン姿で迎えて──

 

「わ、私……なんであんな姿で悠人君に挨拶しちゃったのかしら」

 

今、思い出すとかなり恥ずかしい、よく思い切った行動したわね私。

それに下着にワイシャツ一枚で過ごしたり。からかって悠人君の身体を触ったりもした。

 

「あ、あぅ……」

 

顔を真っ赤になってしまう。私……あんな大胆な事をしてたの。けど、悠人君もちゃんと反応して恥ずかしそうにしていて面白いから。

 

「考えるは止めましょう。えぇ、そうしましょう」

 

これ以上は考えないようにしていたら部屋に着いたわね。ノックをして、しばらくして悠人君が出てきた。

 

「更識先輩? どうしたんですか?」

「あ、え、あの、その……」

 

な、なんで怖じ気づいてるの私!いつものように話し掛けないと。

 

「さ、さっき貰った設計図でバックパックを開発したの」

「思ったよりはやく出来たんですか」

「外型だけだからすぐ造れたわ。確認する?」

「そうですね……まだやってる途中だけどいいか。確認します」

 

部屋に入ると拡張領域にある近接格闘用バックパックを広い場所に置いた。

 

「あの、もう一つのバックパックはどうしました?」

「簪ちゃんが持ってるわ」

「えっ、先輩が二つ持ってるんじゃないですか?」

「二つも造ったからどっちか片方を持つんじゃないかと思って」

「なんで、そんな面倒くさいことしたんですか」

 

あれ~?私、勘違いしてたのかしら?二つあるから片方づつ持てばいいのかと思ってたのに。

 

「時間あるときに整備室に行きますからそこで見ましょう」

「ごめんさない……」

 

近接格闘用バックパックを拡張領域に仕舞う。

 

「悠人君ってご飯は食べたの?」

「はい、時間が勿体無いんでカップラーメン食べました」

「カップ……ラーメン……」

 

よく見たらゴミ箱にはカップラーメンの容器が大量に捨ててある。ちょっとこれは見逃せないわね。

 

「コンビニ行ってくるわ」

 

ダッシュでコンビニに行って必要な物を買って悠人君の部屋に戻る。

 

「キッチン借りるわ」

「何するんですか?」

「夜食を作るの」

「あの、さっき食べたばっかりなので」

「駄目よ! 時間短縮だからといってカップラーメンばかり食べてたら健康に悪いのよ! 今から作るからちゃんと食べなさい!」

 

勝手ながら冷蔵庫を開ける。ちゃんと整理整頓はしているけどあまりないわね。

カップラーメンだから野菜が圧倒的に足りない。これだとサンドイッチが良いわね。コンビニで買った食パンと野菜の千切り、ツナ缶、マヨネーズを袋から出す。

 

「すぐ出来るから待ってて」

「ですから僕は」

「返事は!?」

「は、はい!」

 

腕捲りをして手を綺麗に洗ってさっそく作る。ツナ缶を開けて、汁を捨てて野菜の千切りと一緒にボウルに入れる。それからマヨネーズで和えて塩胡椒で味を整えて、耳を切った食パンに挟んで完成。

 

「出来たわ」

「もう出来たんですか」

「サンドイッチだから5分もかからないわ」

 

テーブルにサンドイッチを置いた。

 

「いただきます」

 

私が作ったサンドイッチを大きくかぶり付く。男の子だから一口が大きいわね。

 

「シンプルな味付けで美味しいです。先輩、料理上手ですね」

「サンドイッチくらい誰でも作れるわよ?」

「誰でも作れるからこそ美味しく作れる人が少ないんです」

 

哲学的な事を言うわね。悠人君って文系男子?

 

「サンドイッチありがとうございます。美味しかったです」

「はい、お粗末さま」

 

さっき食べたと言っていたのにサンドイッチを完食した。

 

「一つ聞きたいことがあるけどいいかしら?」

「何ですか?」

「最近、食堂で見かけないけどもしかしてカップラーメンで済ましているの?」

 

ゴミ箱にあるカップラーメンの量からして偏った食事をしているに違いない。

 

「そうですね。ほら、今はデュノア社の機体を開発していますから」

 

やっぱり。この様子だと栄養バランスが悪い……簪ちゃんは悠人君が好きだからこんな食生活をさせたら不味い。

 

「よし、決めた。これから悠人君の栄養管理のために私が毎日作るわ」

「大丈夫ですよ、そんな事しなくても」

「全然大丈夫じゃないわ。偏った食事ばかりしてたら将来、大変な事になるのよ」

 

簪ちゃんのお婿さんになる人だからちゃんと健康的な身体になって貰わないと。

 

「という事だから明日の朝から作るからよろしくね」

「明日からって先輩」

「じゃあね悠人君」

 

返事を聞かずに私は悠人君の部屋を出た。

 

「毎日ご飯作るって言ったけどこれって告白だよね……」

 

勢いで言っちゃった……健康管理のため言ったが本当は私の手料理を食べて貰いたいから。

 

「私……」

 

気付いたときにはもう遅かった。

自覚した瞬間、想う気持ちが溢れて止めようにも津波のように大きく流されてしまう。

 

「だめ……やっぱり私……悠人君のことが」

 

気付かない内に異性として見ていて、簪ちゃんのお見舞いのとき強引に手を掴まれたのが引き金となった。

 

「は、はやく部屋に戻ろう」

 

今の私の姿を誰にも見せられない。走って一年生の寮を出た。

 

 

 

 

「好き、好き……悠人君、好き」

 

ベットに潜り込んだ楯無は何度も好きと言い続ける。

想っていることを口にすれば気持ちが落ち着くと思ったが逆効果で余計に緊張してしまう。

 

「なんで悠人君のことを考えちゃうの……」

 

簪と和解して昔のように戻れたがそれと同時に悠人が頭から離れなくなった。

食事中でも授業中でも生徒会の仕事中でも夢の中でも出て来てしまう。

 

「優しいからかしら……」

 

優しいとはただ甘やかすだけではない。

厳しくする時もあれば苦しい思いをさせる時もあるがどんな時でも決して見捨てたりしない。

 

「もし、私が告白したら悠人君はどうするのかしら」

 

彼の性格なら誰か一人を選ぶだろう。

忠実で潔い恋愛をするだろうから二股や浮気は絶対しないと楯無は考える。

 

「ううん、告白はしない。簪ちゃんの幸せのためよ。この想いは伝えないでおこう」

 

しかし楯無は告白をせず、既に諦めていた。

世界で注目を浴びた代償が最愛の妹を傷付けた事。これ以上奪えば簪が深く傷付いてしまう。

 

「ごめんね簪ちゃん……お姉ちゃんは悠人君に告白しないけどせめて恋人ごっこはさせて。それでけじめを付けるから」




ちょっとご都合主義になりましたが楯無にもフラグを立てました

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