インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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楯無の行動に大ブーイングしてましたね
彼女も簪が大切に思っているので分かってあげてください


40話 力を持つ者の責務

アリーナで行われたタッグマッチが中止になって次の日、学園ではとある話題がもちきりだった。

 

「アリーナに出てきたあのISってガンダムなんだよね?」

「山田君と同じガンダムって聞いたけど」

 

アリーナで悠人と簪対一夏と楯無によるタッグマッチ。

お互いのシールドエネルギーが少なくなり終盤を迎えると思いきや突如、ガンダムが現れてタッグマッチは中止。

生徒や制圧部隊以外の教員はアリーナから外へと避難したが一部の生徒は襲撃したガンダムの姿を見たらしく、そこから襲撃したのはガンダムだと学園中に広まった。

 

「そう言えば専用機持ちの人はアリーナを制圧するために呼ばれてたよね? デュノアさんも専用機持ってるからアリーナ制圧部隊に参加したよね? 機体とか見た?」

「ごめん……私は呼ばれなかったから制圧部隊に参加しない先生と避難誘導をしてた」

 

本当は助けに行きたかったがビーム兵器を持っていないラファール・リヴァイヴカスタムⅡではガンダムには勝てないので教員と一緒に避難誘導をしていた。

 

「あ~あ、なんでこんなタイミングで山田君と更識さんが休んじゃうのかな」

 

ガンダム襲撃により簪は負傷して医務室で治療をしている。悠人達は事情聴取のためか未だに教室に来ていない。

 

 

 

 

場所を変えて1組もガンダム襲撃について話題がもちきりだったが

 

「アリーナに現れたISって4組にいる山田君と似ている機体らしいよ」

「噂じゃ、あのISと関わりがあるって聞いたけど」

「嘘…なら私達を襲う可能性があるってことよね?」

「やめてよ。そんな怖いこと言わないで」

 

4組とは違い、1組はガンダム襲撃に不安を積もらせていた。

 

「気持ちは分かるが抑えろラウラ」

「言われるまでもない。嫁と似ているからと言って根も葉もないデタラメに感情的にはならん」

「ラウラさん……」

 

そう言っているが椅子に深く座り、腕を組んで歯軋りをしているラウラを心配する箒とセシリア。

ロボット系が好きな4組がある意味特殊で他のクラス、学年は1組と同じように不安になるのが普通である。

 

「あれも悠人さんと同じ機体なんですよね?」

「記憶を辿ってみたがあれは嫁が好きなSEEDに出てくるガンダムだ。あれもPS装甲を兼ね備えていると言っていた」

「だから私達も制圧部隊に呼ばれたんだな」

 

アリーナに現れたガンダムは臨海学校で現れたガンダムと同じなのは1年の専用機持ちしか知らない。

周りの女子が悠人に関わりがあると考えても仕方ないことだが

 

「セッシー……アリーナに出てきたのってガンダムなんだよね……? ヤマトが関わりあるって聞いてるけど嘘だよね……?」

 

専用機持ちの持つプレッシャーに他の女子が近付こうとしなかったが本音は悠人は無関係だと思いたくて箒達に近付いて聞いてくる。

 

「当たり前ですわ。悠人さんと似ている機体だからと言って関わりがあるなんてあり得ませんわ」

「あぁ、悠人は生徒を守ろうと戦った。悠人が襲ってくると言った奴は成敗してやる」

 

本音の言葉に箒とセシリアは即座に否定する。

 

「ごめんね。みんな、ヤマトが襲ってくるんじゃないかって言って不安になってたから」

「襲うわけがない。褒められるならまだしも嫁を悪くいう奴がいれば私が直々に教育してやる」

 

襲撃したガンダムとは無関係だと聞いた本音は安心したようだ。扉が開かれると一夏が教室に入ってきた。

 

「一夏、嫁は教室に戻ったのか」

 

昨日から事情聴取をしていた一夏が教室に来たので悠人も教室に行ったのかとラウラが聞くと首を横に振る。

 

「いや、悠人と更識先輩はまだ事情聴取をしているらしい。俺は特に何も言われなかったから解放されたけど」

「そうなのか……」

 

まだ戻っていないと言うとラウラは落ち込んでしまう。

 

「みんな、聞いてくれ!」

 

一夏が教室にいる全員に聞こえるように話し出した。

 

「昨日のアリーナに現れたISは悠人が乗ってるガンダム……悠人と同じ機体なんだ」

 

侵入したISと悠人の専用機が同じだと聞くとざわざわと騒ぎはじめる。

 

「不安になる気持ちは分かる。だけど悠人はみんなを守ろう戦ったんだ! だから悠人を見て怖がったり、逃げたりしないでほしい。頼む!」

「私からもお願いだ。私達はアリーナ制圧部隊に参加してフィールドの状態を見たが悠人は一夏達を守ってくれたんだ」

「悠人さんは本当にみなさんをお守りするために戦ってました。だから悠人さんのことを悪く考えたりしないでください」

「頼む……嫁を悪く言わないでほしい」

 

一夏が頭をさげてお願いすると箒達も頭をさげた。

 

「織斑君って確かアリーナに侵入したISと戦ったんだよね?」

「あぁ、悠人も一緒に戦ってくれた。悠人がいなかったらやられてたと思う」

「そうなんだ……ごめんね織斑君。山田君と同じISと聞いたからちょっと怖くて」

「あとで謝りに行かないとね」

「そのことなんだが嫁はそういうのには敏感だからあまり刺激しないでくれ。普通に接してくれれば私として嬉しい」

「ごめんね、ボーデヴィッヒさん。山田君のことが好きだから変な噂を聞いて嫌な気分になったよね」

「気にしないでくれ。私こそ嫌な雰囲気を出してすまなかった」

「ううん、私達は気にしてないよ」

 

お互い謝罪するとピリピリした雰囲気がなくなった。

 

「みなさん、SHRをはじめますよ」

 

教室の扉が開かれると真耶が入ってくる。

 

「山田先生、ちふ……織斑先生は?」

「まだ悠人と生徒会長の事情聴取をしているわ」

「二人はいつ解放されますか?」

「それは分からないわ……事情が事情だから」

 

悠人は全く無関係だと言いたいが襲撃したのはガンダムで悠人も同じ機体だから関係していると言われてもおかしくはない。

自分は何も出来ないのかと感じて一夏は俯いてしまう。

 

「一夏君、悠人のために怒ってくれるのは嬉しいわ。でも、悠人は仕方ないと思ってる……ほら、自分の席に座って」

 

肩に手を置いて、優しく席まで行かせる。

 

「織斑先生は諸事情で来ません。ですので今日は私が」

 

一夏が席に座るとなにもなかったかのようにSHRがはじまる。

 

 

 

 

「なにかひとつくらいは言ってほしいものだがな」

 

対面して座っている悠人に話かけているが相変わらず口は開かない。

昨日の謎のIS……ガンダムの襲撃で同じ機体だからという理由で悠人は拘束され、謹慎室に連れていかれた。

全く……なぜ機体が似ているからといって謹慎されなくてはいけないのかと私は思う。

 

「自分がやったことは規則違反だが決して悪いことではない。そう考えているのか?」

「…………」

「結果的には更識妹が怪我をしただけだから大事には至らなかったから良しとするが流石にやり過ぎだと私は思う。もし、人が乗っていたら」

「人殺しの責任を持てるのか? と言いたいんですか?」

 

私が思っていたことを悠人が先に口にしていた。

 

「人が乗っていたとしてもやらなければ他の人に被害が遭って最悪、誰かが死ぬことになるんですよ。殺らなければ殺られるんですからどうしようもないじゃないですか。僕達が乗っているのはそれほど危険な兵器なんですよ。なら、それに乗る責任や罪を背負わないといけません」

 

ボーデヴィッヒが言っていたISをファッションとして見ているという言葉。あのときは私を連れ戻そうと言っていたと思っていたが冷静に考えればあまり間違ってはいない。

スポーツとして使われているISだが私達がやっていることは殺し合いだ。それを認識している人は少なく悠人に言われるまで私も気付かなかった。

 

「なぜ、ガンダムを破壊したのか聞きたいんですよね? 話す代わりに条件があります」

「条件?」

「更識先輩はまだ謹慎中ですよね?先輩を解放するなら話します」

 

こう見えても悠人は口が堅い。

デュノアの男装問題でも彼女から話さない限りずっと隠していた。

昨日から事情聴取をしているが他の教員では一言も話さず姉である真耶ですら話してくれなかった。

そこで同じ学校に通っていて真耶の先輩である私に白羽が立った。

 

「わかった。お前がそう言うならすぐに解放する」

「ありがとうございます」

 

謹慎室を出ると隣の部屋……更識がいる謹慎室の扉を開けた。

 

「更識、ここを出ろ」

「ど、どうしてですか?」

 

扉を開けていきなり出ろと言われて驚くのも無理はない。

 

「教員達と話し合った結果、更識も織斑と同じように襲撃したISと関連性がないと判断した。ここに閉じ込める理由がないからさっさと出ろ」

 

これは一夏にも言えることだが今回、襲撃したガンダムには関連性はないと教員達で決めた事なので更識を謹慎室から出させるのはあながち間違ってはいない。

 

「お断りします。いきなり出てもいいと言われても納得出来ません」

「教員で話し合って決めた事だ。異論や反論は認めん」

「納得出来る理由をお話するまでここから動きません」

「理由を言えばここを出るか?」

「納得出来る理由であれば」

 

妹と同じく頑固な奴だ……仕方ない。

 

「山田が侵入したISを破壊した理由を話す条件が更識を解放することだ」

「私を……解放?」

「あいつは口が堅い。実の姉である真耶にすら機体を破壊した理由を話さなかった。納得したならはやく出ろ。時間が惜しい」

 

腕を掴んで無理矢理立たせ、謹慎室から出る。

 

「あの、悠人君と話をすることは」

「時間が惜しいと言った。さっさと教室に戻れ」

 

背中を押して教室に行くように言い、悠人がいる謹慎室に入る。

 

「更識を解放した。理由を聞かせて」

「悠人君!」

 

扉が開かれると更識が入ってきた。まだいたのか……。

 

「教室に行けと言ったはずだ」

「簪ちゃんのことだけど本当に」

「先輩、これから国家機密に関係する内容を話しますので出てください」

 

国家機密?悠人が関係している機密……臨海学校に現れたガンダムのことか。

 

「更識、これから話すことは国家機密の内容だ。はやく出ろ」

「機密? それってどういう意味ですか。悠人君がなんで国家機密の情報を知っているんですか」

「悪いがお前に話せることは何一つない。漏洩すれば私と悠人、お前にも査問委員会からの裁判と数年間の監視がつく。更識家当主の時期に監視が付かれて動きづらくなるのは嫌だろ?」

「わかりました……」

 

納得していない様子だが理解はしたらしく謹慎室を出た。

念のため扉を開けて更識がいないことを確認して扉をしめて椅子に座り、ガンダムを破壊した理由を聞く。

 

「改めて聞く。なぜ学園に侵入したガンダムを破壊した」

「ガンダムを破壊した理由は情報漏洩を防ぐためです」

「漏洩を防ぐだと?」

「ガンダムは架空の兵器であるのにそれが今ここに存在しています。それを回収して研究されて、新たな兵器が産み出されたらどうなります?」

 

ISは他の兵器より凌駕しているが女性しか動かせない。

アラスカ条約によりISを戦争の道具に使うことを禁止して今はスポーツとして使われている。

 

「PS装甲を開発してそれを兵器に利用されればISよりも危険な兵器になります。この意味わかりますよね?」

「その兵器が世界中に配備されれば」

「はい、ISの存在意義がなくなります」

 

コアの数が少なく女性にしか扱えないISよりも男女関係なく扱える兵器。

軍の知識がない私でもどちらを優先して生産すれば良いかわかる。

 

「PS装甲は絶対に開示してはいけません。あれは本当に世界の均衡を崩壊させるものです」

「だからガンダムを破壊して機体の漏洩を防いだのか」

「はい」

 

あまりにも重い事態だった。

PS装甲は電力さえあればシールドエネルギーと同じ装甲になるし、それを使った兵器が配備されればコアを必要とするISを配備する必要がなくなる。

女性権利団体も黙っていないだろう。ISの存在意義がなくなればあいつらは何をするか分からない。

ガンダムで思い出したが悠人にはまだ大事なことを話していなかった。

 

「アリーナに侵入したガンダムもそうだが悠人、信じがたいことだが落ち着いて聞いてほしい」

「信じがたいこと?」

「今回のガンダムと臨海学校に現れたガンダムの襲撃にお前に繋がりがあると上の連中とアメリカ、イスラエル上層部が言い出した」

「な、なんで……あぁ、それは仕方ないですね」

「驚かないのか?」

「よくよく考えてみれば仕方ない事だと思います。僕が怪しまれるのは専用機がガンダムだからですよね?」

「……そうだ」

 

どうしてそんなに冷静でいられるんだ。普通なら落ち着いていられないはずだ。

 

「上層部の人はガンダムのことをよく知らないと思います。全身装甲、ツインアイ、V字のブレードアンテナ。どのガンダムにもこの3つは外せない特徴ですがそのことを知らない筈です。元々僕のフリーダム……ストライクも誰がつくったのか分からないですし、臨海学校やアリーナに現れたガンダムをつくったのは同じ人じゃないかと予測します。それなら辻褄として合いますし、僕も疑われてもおかしくありません」

 

何一つ反論出来なかった。

悠人が言っていることは正論であり、上層部が考えていることだ。ここで否定しても上の連中は簡単に納得しない。

 

「それで僕はどうなるんですか?」

「襲撃したガンダムとは無関係という証拠がなければ査問委員会に出席される。最悪の場合、ISを剥奪され、研究所に送られて人体実験される可能性もある」

「事実上の退学ですか」

 

無言で頷くと顔が真っ青になっている。

 

「完璧とは言わないが無罪と証明してほしいなら査問委員会及びアメリカ、イスラエル上層部が機体の情報開示を」

「駄目です! あれは本当に危険なものです! もし、開示して新たな兵器がつくられたら」

「だが、このままでは査問委員会に呼ばれてISを剥奪される。ここで提出しなくてもISを剥奪されて情報を開示される」

 

結局、情報は開示されると理解した悠人は悔しそうに奥歯を食いしばる。

 

「遅かれ早かれ情報を開示しなければならない。査問委員会に呼ばれる前に情報を開示すればある程度は無罪の方向に運べる。私も無罪だという証拠を集めている」

 

ISとは関わりがなかった悠人がなぜこんな目に遭わなければならない。悠人は私の大事な家族……私と一夏を救ってくれた恩人なのに。

 

「汚いやり方だがこれが上の連中のやり方なんだ。私も納得していない」

 

後ろ盾がないからといって人権を無視している委員会の連中どもに虫酸が走る。

特にアメリカとイスラエルは国籍を変えて自国の国籍にしろとまで言っている。助けられた恩を仇で返すとは恥知らずだ。

 

「どう転がっても開示しなければいけないんでしたら僕にも考えがあります」

考えだと?こんな状態を打破する事が出来るのか?

 

「シャルロットを呼んでください」

「なぜデュノアを?」

「シャルロットの会社であるデュノア社は経済危機なのは知ってますよね?」

「第2世代の最後発で第3世代の機体を完成させていないと言っていたが……まさか」

「査問委員会に情報開示する前にデュノア社に先に情報を渡して第3世代の機体を開発させます」




やっと、デュノア社の第3世代機体の開発の話にいけた
機体が登場するときガンプラでよければ出します

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