インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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4話 応援

「先輩、いいんですか……」

「いいのよ悠人君……」

 

放課後のアリーナ。

このアリーナには生徒会長権限を使って誰も来れないようにした。

つまりこのアリーナは僕と更識先輩しかいない。

 

「あ、あの僕……はじめてでして」

「大丈夫よ、全部お姉さんに任せて……」

 

更識先輩の声でとても緊張する。綺麗だしスタイルもすごい。こんな美少女を独り占めして良いなんて僕はとても幸福なんだろう。

 

「それじゃあ……ゆっくり……ね?」

「は、はい……」

 

僕は緊張しながらゆっくりと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラファール・リヴァイヴを動かす。

 

「大丈夫そう?」

「はい、歩くのが大変ですが馴れれば問題ないです」

 

まさか貸し出し用のISの申請も簡単に済ませてこうも操縦出来るなんて。

 

「なんかモビルトレースシステムみたいですね」

「モビルトレースシステム?」

「Gガンダムですよ。ガンダム知ってます?」

「名前くらいは聞いたことあるわ。妹が見ていたのをたまに見るくらいだけど」

「姉妹だったんですか」

「というより悠人君のクラスにいるわよ?」

 

そういえば窓側の席で更識先輩に良く似た眼鏡をかけた女の子がいたな。

 

「先輩、失礼なことを聞きますけど水色の髪で眼鏡をかけた女の子が……」

「そう、私の大事な妹の簪ちゃんよ♪」

 

扇子には『愛妹』と書かれている。

 

「あの子ちょっと人見知りな部分があってね。出来ればだけど仲良くしてほしいなって。悠人君、部屋でよくゲームしてるわよね?」

「はい、MGS PWですが」

「簪ちゃんもゲーム大好きだから時間に余裕があるときにゲームの話をしてみて。あ、私のことはあまり話さないでくれると嬉しいかな……」

 

姉妹同士、仲が悪いのかな?

不仲なら姉妹で解決すればいいし、これに関しては野暮に突っ込まないでおいておこう。

 

「妹さんってガンダム好きですか?」

「アニメもゲームも好きよ」

「ガンプラは持ってます?」

「ガンプラ……それってプラモデルのこと?それは持ってなかったわね」

「ガンプラ持ってたらそれなりに話が出来たんですが…まあ、大丈夫でしょう。わかりました。明日、妹さんに少し話してみます」

「ありがとう悠人君」

 

 

 

 

「おはよう山田君」

 

教室に着くなりクラスメイトに話しかけられる。

まだ1週間も経ってないがそれなりにクラスの女子と話せるようになった。

このIS学園は寮生活なので意外とアニメや漫画が好きな人が多く、何人かはDVDやBDを交換して見ていたと更識先輩に聞いた。

 

「山田君ってロボット系が好きなんだね」

「ガンダムシリーズは一通りは見たよ。一番好きなのはSEEDだね。SEEDからグラフィックが綺麗になったから」

「私はOOかな。敵キャラもカッコいいし」

「ねぇ、山田君はボトムズは見てる?」

「全部見たよ。好きなのは野望のルーツかな?」

「私はペールゼンファイルズ。鉄のララバイが好きなの」

 

この4組も例外ではなくガンダムならほとんどの人が見ていて、マニアックな人はマジンガーZやゲッターロボ、エヴァンゲリオン等を見ている人もいた。

 

「あ、更識さんはなにが好きなの?」

 

本来なら簪さんと話をするときはもう後のほうが良いと考えていたがアニメ好きな女子がいるおかげですんなりと話の輪に入れられた。

 

「わ、私は宇宙刑事ギャバン……」

 

 

すごい変化球を投げてきた。

 

「ギャバンは見たことないかな……」

「私も……」

 

悪いけど僕も宇宙刑事ギャバンは見てない。

特撮だと戦隊シリーズを少し見たぐらいで平成シリーズのウルトラマンと仮面ライダーなら見てるから問題はないけど。

 

「簪さんってゲームはなにやってる?私はテイルズオブシリーズだけど」

「.hack//」

 

また女子が沈黙してしまう。

アニメが好きでも色んなものがあるから最新のアニメならそれなりに話し合えるがマイナー系が好きな人だと話の輪にはいりずらい。

 

「.hack//なら僕もやったことあるよ?」

 

幸い僕も.hack//をやっていたのでなんとか話の輪に入れることが出来た。

 

「ちなみにどの作品?僕はG.Uだけど?」

「私は初代。けどG.Uもやってた」

「Linkはどう思った?僕は良作だと思ってるけど」

「イマイチ、OPの映像が特にひどい」

「鉄コン筋クリートの人が描いたからね。あそこはG.Uか初代の作画が良かった」

 

これは一苦労しそうだ。

 

 

 

 

 

「第3アリーナはここだね」

 

一夏が決闘する日、更識先輩に頼んで今日の訓練はお休みにしてくれた。

 

「あれが一夏の専用機」

 

観客席から観戦しているとISに身を纏った一夏がピットから出てきた。

ISのコアは476機しかなく、その限られた数を世界各国企業に割り振られて研究、開発、訓練をしてる。

それとコアの取引はアラスカ条約第七条で禁止されている。ちなみに束博士は現在ISの開発はしていない。

一夏の場合は男性操縦者であるのと世界の頂点の座を手にした千冬さんの弟だから実験機として専用のISを送られた。

 

「僕はそこまで欲しくはないかな」

 

一夏が羨ましいと思うが限られた数をそうポンポン渡せない。

僕自身も本当に欲しいのか?と言われてもそれほどではないと答える。

 

「あれがセシリア・オルコット」

 

一夏と対峙しているのは腰まである長い金髪の女子でサイドにカールのような巻き髪をしていた。

訓練機である打鉄やラファール・リヴァイヴとは違う、彼女の専用機であるISを身を纏っている。

 

「逃げずに来ましたわね」

「当たり前だろ」

「ですが、最後にチャンスを与えますわ。ここで棄権してくださるなら許してさしあげても良くってよ?」

 

大型ライフルを一夏に向けて構えた。

 

「そういうのはチャンスとはいわないぜ」

「なら……お別れですわ!」

 

ライフルからレーザーが放たれて間一髪で避けるがレーザーの余剰熱は回避出来ず、ダメージを受けた。

 

「さあ、躍りなさい!わたくしセシリア・オルコットとブルーティアーズの奏でる円舞曲で!」

 

レーザーの雨を回避しているがさすが代表候補生。

的確な狙いで命中させている。

一夏の右手から粒子が現れて形となり、片刃のブレードとなった。

 

「剣で戦うつもりなのか一夏のやつ」

 

剣道をやっているとはいえ、遠距離からの射撃を掻い潜りながら接近するのは至難の業。ISの操縦が素人な一夏でもそれは出来るかどうか……。

 

けど……。

 

「頑張れ一夏!」

 

大声を出すと周りの女子が僕を見たが気にしないで一夏を応援する。

何もしないでただ見てるなんて出来ない。今の僕に出来るのは応援だけだ。

 

「頑張って織斑君!」

「代表候補生が相手でも負けないで!」

 

他の女子も一夏の応援に加わる。

オルコットさんの周りに浮遊しているνガンダムやサザビーのファンネル、ケルディムのライフルビット、アルケーガンダムのファングのようなものを斬り付けて破壊した。

 

「なんですって!?」

「この兵器は毎回お前が命令を送らないと動かない!それに命令を送っている間はお前は撃つことは出来ない!」

 

険しい顔になっているのが観客席にいる僕にでもわかった。

図星であり、弱点でもあったんだろう。そのまま自律兵器を次々と破壊していき、オルコットさんに向かっていく。

しかし……。

 

「おあいにく、ブルーティアーズは6機ありましてよ!」

 

腰に装着されているブルーティアーズが一夏に向けられるとミサイルが発射させる。

 

「ミサイルだと!?」

 

まさかそんな場所にミサイルを付けていたとは思わなかった。ミサイルから逃れようとするが回避が間に合わず……。

ドガァァァァン!

姿が見えないほどの爆発が一夏を包んでしまった。

 

「一夏!」

 

くそ、ここまできて……一夏……。

煙が消えると一夏のISの姿が変わっていた。

金属のような色から白のような色に変わり、凹凸な部分は滑らかなラインへと変わった。

 

「まさか一次移行(ファースト・シフト)!?あなた、今まで初期設定だけの機体で戦っていたって言うの!?」

 

今になって一次移行(ファースト・シフト)だと……。

ISを専用機にするには初期設定(フォーマット)最適化処理(フィッティング)をする必要がある。

それらは動かす前にあらかじめやるのが当たり前であるがまさか初期設定(フォーマット)最適化処理(フィッティング)をしながら戦っていたなんて、僕には絶対出来ないことだ。

 

「ここが正念場だ!負けたら男じゃねぇぞ!」

 

さあ、一夏!ここで逆転劇を見せてみろ!

ブルーティアーズからまたミサイルが発射させるが

 

「うぉぉぉぉ!」

 

ミサイルを斬り捨てて、それと同時に腰のブルーティアーズを切断した。そのまま通りすぎて再度、突貫していく。

 

「いっけぇぇぇぇ!一夏ぁぁぁぁ!」

「これでぇぇぇぇ!」

 

これならいける!

 

 

 

『試合終了。勝者セシリア・オルコット』

 

……は?

 

「えっ……なに、ここまできて……一夏が負けた?」

 

誰もが予想しなかった展開。

普通のバトル漫画ならここで一撃を決めて勝つのに、その一撃を与えられず負けてしまった。

 

 

 

 

「よくもまあ、持ち上げたものだな。それでこの結果か、馬鹿者が」

「おいおい一夏。なんだよあの最後、あそこまで上げるに上げといて負けるなんて……盛り上がったテンション返せよ」

「武器の特性を考えずに使ったからこういう結果になった。明日からは訓練に励め、いいな」

「……はい」

 

僕と千冬さんの言葉に反論ひとつせず、ただ一言『はい』と答える。

 

「織斑君の白式は今、待機状態になっていますけど呼び出そうと思えばすぐに呼び出せます。それと規則がありますのでちゃんと読んでくださいね」

 

姉ちゃんからIS起動における規則のような本を渡される。僕も姉ちゃんが使っていた本を持っていて、それらを読んで覚えている。

 

「帰ろうぜ一夏」

「あぁ……そうだな」

 

僕達はアリーナを出て、寮まで歩いていく。




主人公には国から専用機は渡されません







国からは……ね

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