インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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タイトルからして誰がどうなるか分かってるでしょうね


34話 優れた因子への覚醒

鈴達を無視して僕に向かって来たのは僕として有難い。正直、僕を無視して鈴達と戦っていたら…いや、考えるのは止めとこう。

 

「キラだってストライクで同時期に開発されたMSと戦ったんだ」

 

それに比べればまだ僕のほうが余裕があるがストライクよりも出力があり過ぎるので機体の性能に振り回されている。

ルプス・ビームライフルを撃つが照準が合わない。1機に絞ろうとすれば他のガンダムに迎撃される。

手数で攻めようとクスィフィアス・レール砲とバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を展開させようにも隙を与えてくれない。

 

「このままじゃ……」

 

諦めるつもりはないがこのまま長引いたりしたら鈴達に……。

 

「悠人をやらせるかぁぁぁぁ!」

 

カラミティに向かって刀を振るった白い『IS』。あれは!

 

「一夏!」

「悠人! こいつらは俺達に任せろ!」

「俺『達』?」

「悠人!」

 

箒を筆頭に鈴、シャルロット、ラウラ、簪、セシリアさんがいた。

 

「みんな、どうして……」

「私は自分の力に溺れていた。もうあのような事はしない!」

「アタシは悠人が好きだから! だからアタシは悠人と一緒に戦う!」

「僕……私は悠人の側にいたい! 悠人と一緒に過ごしたい!だから私も戦う!」

「嫁……いや、悠人! お前の力はその程度じゃない筈だ! 私を助けたあのときのように強い信念がある! その力を今ここで出すんだ!」

「悠人君、私はもう逃げない! 私は悠人君に謝りたいから、だから悠人君に向き合う!」

「悠人さん! わたくしも戦います! 代表候補生ではなくオルコット家でもなくセシリア・オルコット個人として!」

 

こんな僕のためにみんなが助けてくれた。

誰かに支えられて情けないがそれと同時に嬉しくもあった。

 

「思いを……力を……誰に向けるのか」

 

そうだ、簡単なことだった。

僕は強くなろうと思っていたが強くなった後、その強さを誰に向けたらいいのか分からなかった。

僕の『思い』とガンダムの『力』を誰に向ければいいのかずっと分からないでいた。

鈴、シャルロット、ラウラの告白を保留させていたのも強くなった後、その強さを鈴達に向けていいのか分からなかったから。

 

「みんなが僕を想ってくれた」

 

だから僕は思いを……力を……!

 

「僕は……僕を想ってくれる人達を守りたい!」

 

そのとき僕の中にある『何か』が弾け飛んだ。

 

「これ以上……みんなを傷付けさせたりはしない」

 

『何か』が弾け飛ぶ感覚が消えると頭の中が急激に冴えていた。

バックパックのウィングを展開させて高機動空戦(ハイマット)モードに切り替える。

何をすればいいのか頭ではなく身体が知っている。カラミティのシュラークが僕に向けて放たれるがバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を撃つ。

カラミティのシュラークがバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲にかき消され、機体に被弾した。

 

「発射時到達時間……熱量の処理……重力による弾道の軌道修正……一夏達の予測移動範囲……」

 

フリーダムが複数のターゲットをロックオンしている。

クスィフィアス・レール砲とバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を展開させてルプス・ビームライフルを掲げて一斉に発射させ、フォビドゥン、レイダー、カラミティの機体に被弾したがプロヴィデンスはドラグーンを盾に被弾を免れていた。

 

「少しは頭が回るようだねプロヴィデンス……いや、今はこう言ったほうが良いかな」

 

左手でラケルタ・ビームサーベルを抜いてプロヴィデンスに向かって飛んでいく。

 

「ラウ・ル・クルーゼ!」

 

シールドに内蔵されたビームサーベルとラケルタ・ビームサーベルのつばぜり合いがはじまる。

 

 

 

 

「今が好機!」

 

フリーダムの高機動一斉射撃(ハイマット・フルバースト)による大きなダメージに隙を見た箒がフォビドゥンに接近した。

 

「切り捨て御免!」

 

空裂で腕を斬り裂き、雨月で腹部に突き刺した。

シールドエネルギーがなくなったフォビドゥンの機体は箒の斬撃を直に喰らい、斬られた腕は鮮血ではなくケーブルの線がバチバチと火花を散らしていた。

動力源を破壊したのかフォビドゥンは海へと墜ちた。

 

「悠人の言う通り、本当に無人機だったんだな」

 

フォビドゥンが墜ちるのを確認して別のガンダムの迎撃に移動する。

 

「シャルロット、弾幕を張れ!」

「分かってる!」

 

シャルロットの武装である重機関銃(デザート・フォックス)の一挺を譲り受けたラウラはカラミティに撃ち続けている。

カラミティのシュラークが2人を狙って放たれる。

 

「ガーテン・カーテン!」

 

ビームシールドを発動させてシュラークのビームを拡散させているとスキュラを放っていた。

 

「ラウラ! ガーテン・カーテンじゃ、持たないから逃げて!」

「仲間を見捨てるわけにはいかない! AICで止める!」

「無理だよ! この出力じゃ、止められない!」

 

このままではやられると思っていたら。

 

「2人をやらせるかぁぁぁぁ!」

 

一夏が前に出て左手の雪羅から零落白夜のビームシールドを発動させた。カラミティのシュラークとスキュラのビームを拡散させて2人を守った。

 

「悠人の……俺の仲間を傷付けるんじゃねぇぇぇぇ!」

 

雪片弐型を右手で構えてカラミティに突貫する。

トーデスブロックから放たれる砲弾を斬り裂いて、手に持っているトーデスブロックを斬り上げて切断する。

 

「まだまだぁ!」

 

勢いを殺さず、ビームシールドを展開させていた雪羅をビームクローに変えて、両肩のシュラークも切断した。

 

「これで!」

 

腹部を突き刺そうと腰だめで雪片弐型を構えるが刀身から光が消える。

 

「エネルギー切れ!? くそっ! なんでこんなタイミングで!」

 

止めを刺そうとした瞬間、零落白夜によるエネルギー切れを起こした。

この大きな隙をカラミティは逃すはずはなく腹部から光が集まっていた。

 

「一夏をやらせるかぁぁぁぁ!」

 

空裂による弾幕でカラミティは箒に向かってスキュラを撃ち、一夏はカラミティはから離れた。

 

「サンキュー箒!」

「油断するな馬鹿者!」

 

カラミティから離れると一夏と箒はシャルロットとラウラを守るよう前に出る。

 

「一夏、お前は本当に無茶をする」

「男ってのはそれぐらいやらないと強くなれないんだよ」

「無茶をしないと強くなれないのか?」

「それは……」

 

何時のときもそうだった。一夏は相手の手札を確認せず、前に進んで行く。そして何度も無茶をしてボロボロになっていた。

 

「お前が無茶をするなら私が支える。お前が無茶をして戦わないように私が側にいてやる」

「……なら、頼むぞ箒。俺の背中を守ってくれ!」

「あぁ!」

 

一夏が無茶をしないようになるまで私が支える。いや、ずっと支え続ける!

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『繝燗舞踏』発動

 

「これは……」

 

紅椿から赤と金の光の粒子が溢れ出す。ハイパーセンサーからシールドエネルギーが全回復しているのが分かった。

 

「一夏、私の手に触れろ!」

 

箒が一夏の手を握ると赤と金の粒子が一夏を包む。

 

「シールドエネルギーが……箒、これって」

「説明は後だ。今はガンダムを倒すぞ!」

「お、おう!」

 

白式のシールドエネルギーが回復して再び零落白夜を発動させた。

 

「いくぞ一夏! 挟み撃ちで攻めるぞ!」

「任せろ!」

 

カラミティがスキュラを放ってくるが2人には迷いがなく、ただ真っ直ぐ進んでいく。

 

「もう撃たせはしない!」

 

雨月と空裂をクロスさせて斬りつけて腹部のスキュラは破壊された。

 

「一夏!」

「終わりだぁぁぁぁ!」

 

背後から雪片弐型を一文字斬りをした。TP装甲は零落白夜に耐えきれず武装を失ったカラミティの機体は真っ二つに切断された。

 

「「あと1機!」」

 

フォビドゥン、カラミティを撃墜させ、残すはレイダーのみ。

プロヴィデンスは悠人しか倒せない。だから自分達がやれることをやる。

レイダーがツォーン、2連装52mm超高初速防盾砲、マシンガンを撃ちまくり一夏達が近付けないようにしている。

 

「ラウラ、アタシが盾になるからその間に!」

「ガンダムが1機だけなら!」

 

双天牙月を盾にした鈴の後ろにいるラウラがAICを発動させてレイダーの動きを封じ込める。

 

「セシリア!」

 

ラウラの合図でセシリアは大型BTレーザーライフル『スターダスト・シューター』を構える。

 

「海の藻屑と消えなさい!」

 

スターライトmkⅢよりも高火力のレーザーがレイダーに向かって放たれて動力源を撃ち抜いた。

 

 

 

 

ビームサーベルが何度も干渉している。

右手に持っているルプス・ビームライフルを撃とうにもプロヴィデンスの複合兵装盾のビームサーベルが射撃の隙を与えず、距離をとればドラグーンのビームが撃たれる。

 

「どうする……」

 

このままビームサーベルでつばぜり合いを続けても疲れが溜まって僕が圧される。

 

「被弾覚悟で後退しかない」

 

ピクウス76mm近接防御機関砲を撃ちながら後退するとドラグーンが僕の周りに展開され、ビームを撃つ。

 

「このくらい!」

 

ルプス・ビームライフルを腰のマウントに装着してラケルタ・ビームサーベルの二刀流でビームを弾き、宙返りして避けるとバラエーナ・プラズマ収束砲を撃ち、ドラグーンを破壊する。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

プロヴィデンスに向かって飛んでいき、次々とドラグーンを斬り捨てて近づき、お互いのビームサーベルが重なる。

 

「その程度!」

 

もうひとつのラケルタ・ビームサーベルでシールドを突き刺してシールドを破壊する。

対空機関砲と僅かなドラグーンを撃つプロヴィデンスが後退していくがラケルタ・ビームサーベルを連結されて『アンビデクストラス・ハルバード』に切り替えた。

 

「逃がすかよ!」

 

ビームを防がず被弾しながら近づき、ドラグーンを斬り捨てながら近づき

 

「これでぇぇぇぇ! 終わりだぁぁぁぁ!」

 

腕を切断して心臓部を突き刺した。スラスターから熱がなくなり、プロヴィデンスは動かなくなった。

 

「…………」

 

ガンダムを全て破壊すると冴えていた感覚が消えていく。

一夏達が僕に近付いてくる。

 

「悠人……本当に悠人なんだよな?」

 

今更だが一夏が僕が悠人なのか聞いてくる。全身装甲だから僕の姿が分からないらしいので顔だけ部分解除した。

 

「そうだよ、いち……」

「「悠人!」」

「嫁!」

「悠人君!」

 

顔だけを部分解除して僕だと分かると鈴、シャルロット、ラウラ、簪が抱き付く。

 

「悠人だ……本当に悠人が生きてる……」

「よかった……本当によかった……」

「全く、嫁は本当に……」

「悠人君……ゆうとくん……」

 

絶対に離さんと言わんばかりの力強さで抱き付いている。ここまで心配させたのは本当に申し訳ない気持ちだ。

 

「ごめんみんな……心配したよね」

「当たり前でしょ! あんた、なんであんな無茶したのよ!」

「僕が庇ってなかったら簪が墜ちていたからね」

「ごめんなさい悠人君。私のせいで悠人君が……」

「大丈夫だよ簪。僕はちゃんと生きてるんだから」

 

泣きそうな簪の頭を撫でた。

あのとき簪を庇ってなかったらストライクが第二形態移行(セカンド・シフト)していなかったし、ガンダムを破壊出来なかった。

 

「ガンダム破壊任務は無事に完了したし、帰ろう」

 

鈴達から離れて旅館へと戻ろうとしたとき空は蒼から紅に染まり、暁の水平線が僕達の勝利を祝うように日差しが射し込んだ。




次回で原作3巻終わります

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