インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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海から現れた蒼い天使はいったい…(もうほとんどの人は分かっている)


32話 舞い降りる翼

背中からくる冷たさに目が覚めた。ゆっくりと身体を起き上がると自分の生身の足が見えた。

 

「海……?いや違う。ここは何処かの工場?」

 

工場というには広すぎる空間。天井はとても高く、うす暗い。左右を見るとそれなりの高さがある場所であり、どうやら鉄橋のような場所に寝かされていたようだ。

 

「ガンダムと戦っていて簪を庇ってストライクと一緒に海に落ちていったのに……そうだ! ストライクは!」

 

右手首に付けている待機状態のストライクを見たがスカイブルーをした翼のブレスレットがなく、あるのは僕の手首だけだった。

着ている服装はISスーツではなく宇宙服のような服装でヘルメットを持っていた。

 

「これは……」

 

手すりをつかんで立ち上がり、その物体をみた。

某ショッピングモールにあるロボットに匹敵する程の大きさ、鉄灰色の装甲をしている。4つのブレードアンテナに背中にある蒼い翼…

 

「これはZGMF-X10A『フリーダム』です」

 

女性の声が聞こえ、声がしたほうをむく。

桃色の長い髪していておっとりとした雰囲気。だが、彼女の瞳には信念をもっている。

 

「ラクス・クライン……」

 

SEEDのヒロインで2度の大戦を終結させた歌姫。

 

「どうして……あなたがここに」

「あなたにこのフリーダムを託すためです」

「フリーダムを……託す?」

 

なんで……このフリーダムを僕に託そうとするんだ?

 

「今のあなたには誰かを助けるための力が必要です。そしてその人達はあなたのことを待っています」

 

待っている人……鈴達のことを言ってるんだろう。だけど……。

 

「これは僕が乗るに相応しくありません。僕よりも相応しい人はいます。だから──」

「僕はフリーダムには乗らない……そう言うのかい?」

 

ラクスと反対側から男性の声。濃い茶色髪で僕より少し背が高く、優しく柔和な雰囲気を持つ青年。

 

「キラ・ヤマト……」

 

僕が好きなキャラであるキラ・ヤマトがいた。

 

「僕はガンダムはもう必要ない。だからこのフリーダムは君に託そうと思う」

「どうして僕に託すんですか?」

 

なんで僕じゃなきゃ駄目なのか、なんで僕に託そうとするのか、それが知りたい。

 

「思いだけでも……力だけでも……その2つを持っていても駄目なんだ。本当に必要なのはそれを誰に向けるか。それは君に分かっている筈」

 

力を……思いを……誰に向けるか……。

 

「あなたを想っている人は多くいます。その人達を守るのにこれは不要ですか?」

 

微笑みながら僕をみた。その瞳には意志を秘めているようにみえる。

 

「さあ、君は君が戻る場所に帰らないと」

 

空気が抜ける音が聞こえるとフリーダムのコクピットが僕を迎えるようにコクピットハッチが開かれる。2人に手を引かれてそのコクピット内をゆっくりと入っていく。

 

「自由を得るための翼をあなたに……」

「自由を得るための未来を君に……」

 

ラクスとキラがお互い寄り添うように手を握るとコクピットハッチが閉じられた。

 

「自由を得る……」

 

SEEDを見ていたときの記憶を思い出しながら機体の電源を探していく。

 

「たしかこれだったような」

 

電源をいれるスイッチらしきものを見つけて、押すと駆動音とともにOSが立ち上がり、周りの機材も動き出して光が入っていく。

ふと、モニターにシステム名が書いてあるのを確認すると

 

G eneration

U nsubdued

N uclear

D rive

A ssault

M odule

 

Complex

 

「ガンダム……」

 

頭文字を繋げて読むと計器パネルに次々と光が入っていき、全周囲モニターがオンになる。フリーダムの頭部から見えるメインカメラから確認すると2人の姿はなかった。

頭では理解していないのに自然とキーボードを叩いていて、機体の情報や武装を確認していた。

 

「これも核搭載エンジンか……」

 

機体通りのMSだからこのフリーダムにも核エンジンを搭載したMSなんだな。

 

「僕は……僕を想ってくれる人のために」

 

ヘルメットを被り、レバーを手にかけて前に動かすとフリーダムは僕が操作したように動き出す。

 

「行こうフリーダム」

 

天井のハッチが次々と開かれて奥から星空が見えている。

ペダルを踏むと接続されていたケーブルが次々と外されて僕は自由の翼(フリーダム)と共に飛んでいく。

 

「ありがとうストライク……」

 

僕がはじめて乗る専用機でIS学園に入学してからずっと守ってくれて最後まで側にいてくれた最高の機体。

機体がなくなってもストライクと一緒に過ごした思い出は僕の中でずっと存在し続ける。

 

 

 

 

ザバァン!

 

「はっ!」

 

水飛沫の音で意識を取り戻す。

今のは夢なのか?キラとラクスはアニメのキャラだから夢を見ていたと思っていても──

 

「あれは!」

 

鈴達がガンダムと交戦している。機体も武装もボロボロで顔から疲弊が溜まっているのが分かる。

 

「鈴!」

 

助けないといけないと思っていたら両腰とバックパックの武装を展開させていた。銃口からビームとレールガンが計4つ、ガンダムに向かって放たれると直撃した。

全体を見渡せる程の高さまで飛ぶと動くのを止めて僕は自分の機体を確認する。右手にはストライクのビームライフルに似たライフル。左手は大型の物理シールド。ハイパーセンサーから機体名が表示される。

 

『ZGMF-X10A FREEDOM GUNDAM』

 

「フリーダム……」

 

本当にキラとラクスがフリーダムを僕に託してくれたんだ。とりあえず武装を確認しよう。

 

MMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御機関砲×2

MA-M20 ルプス・ビームライフル

MA-M01 ラケルタ・ビームサーベル×2

ラミネートアンチビームシールド

MMI-M15 クスィフィアス・レール砲×2

M100 バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲×2

 

特殊装備 ???

 

「特殊装備が不明?」

 

フリーダムの特殊装備は確かミーティアだと思っていたけど、もしかすると別の装備が存在しているのか?

 

「考えるのは後にしよう。今は……」

 

4機のガンダムをどうにかしないといけない。

 

「こちらフリーダムのパイロットの山田悠人。貴官らの機体名とパイロット名を求む」

 

今更ながらだが有人機であるのか確認のためにオープンチャンネルを開いてみる。

 

「もう一度言う。貴官らの機体名とパイロット名を求む」

 

相変わらず反応がない。なら……ストライクの57mm高エネルギービームライフルよりも威力があるルプス・ビームライフルを向けた。

 

「これが最後の警告だ。貴官らの機体とパイロット名を言え。でなければ貴官らは敵と見なし、生死問わず機体を破壊する」

 

カラミティが持っているトーデスブロックからプラズマを帯びた砲弾が放たれた。

 

「言葉ひとつ交わさずに発砲……それが答えなんだね」

 

それなら僕がやることはただひとつ……。

 

「お前達は僕の敵だ!」

 

砲弾を避けてルプス・ビームライフルを撃つ。それがお互い敵同士ということを判断した。4機のガンダムは鈴達を無視して僕に向かって来る。

 

 

 

 

「アタシ達を助けたのは悠人なんだよね……」

「そうだよ……あれは悠人だよ……悠人が僕達を助けてくれたんだ」

 

海から現れた全身装甲の機体。その機体から聞こえた声。あの機体に乗っているのは悠人だと全員が思っている。

 

「だが、嫁の専用機はストライクだった筈。確かにストライクに似ている部分があるが」

 

「多分、悠人君の専用機が第二形態移行(セカンド・シフト)したんだと思う」

第二次移行(セカンド・シフト)だと?」

 

悠人の専用機がフリーダムに変わったのはストライクが第二形態移行(セカンド・シフト)をしたからと簪が説明する。

 

「フリーダムはストライクと同じX100系を元に開発された機体。キラは最初、ストライクに乗っていて後半からフリーダムに乗り換えた。だからストライクが第二形態移行(セカンド・シフト)をして第二形態(セカンド・フォーム)がフリーダムに変わってもおかしくない。それとフリーダムにはプロヴィデンスと同じ核エンジンが搭載されている」

「じゃあ悠人の機体なら」

「プロヴィデンスと互角に戦える」

 

ISよりも脅威であるプロヴィデンスと同格となった悠人の専用機。

自分達では無理かもしれないが悠人ならガンダムを倒せると思った。

 

「新たな熱源が二つ! こっちに向かっている!」

 

疑似ハイパーセンサーを発動していたラウラが『何か』が自分達のほうに来ているのを察知した。

 

「もしかして別のガンダム!? みんな、武器はまだ残ってる!?」

 

敵味方の判断をする前に鈴が武装があるのか全員に聞く。

 

「ガーテン・カーテンが心許ないけど重機関銃(デザード・フォックス)とブレット・スライサーが残ってる」

「夢儚と春雷はまだ使える」

「アタシは双天牙月だけ。ラウラはどうなの?」

「待て、この反応は……大丈夫だ。そう身構えなくていい」

 

自分たちに向かっている熱源に警戒をせず、武器を持っていない。

 

「あんた、別の反応が来たって言ったでしょ! なんで落ち着いていられるのよ!」

 

「こういう時こそ落ち着くことが大事だ。それに私達に近付いている熱源は敵じゃない」

 

「敵じゃない?」

 

どうしてそんな風に確信出来るのか分からなかったが近付いて来た『何か』が見えたとき自分達も安心をした。

目視出来る所まで近付いて来たのは……。

 

「悪い、待たせた!」

「みんな、大丈夫か!」

 

白と紅の『IS』だった。




白と紅と聞いて答えはもう分かっているでしょうけど

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