インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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不味い…年末までに原作3巻終わるかな…


30話 変わる少女と変わらぬ少年

「ふざけんじゃないわよ!」

 

一夏の様子を見ようと部屋に行って襖を開けようとしたら鈴の怒鳴り声が聞こえて慌てて襖を開けると鈴が箒の頬を叩いていた。

 

「アタシ達にはやるべきことがあるでしょう!」

「鈴、抑えて!」

 

箒と鈴の間にはいった。何があったか分からないが止めないと。

 

「あんた、一夏が好きなんでしょ! 一夏をこんな目にしたあいつらが憎いんでしょ! 今、戦わなくてどうするのよ!」

「私はもう……ISには乗らない」

 

箒の言葉に激昂して再び叩こうと手を大きく振ろうとしたが僕は鈴の手を掴んだ。

 

「邪魔しないで悠人! この甘ったれは」

「いい加減にしろ鈴!」

 

感情的になって声を荒げてしまったがそんなことはどうでもいい。鈴は僕の声で手に力をいれるのをやめた。

 

「一夏をこんな状態にしたのは周りを把握していなかった僕の責任だ。箒を責める権利はない」

「だけど悠人、こいつは」

「好きな人がこんな状態になって悲しむのは当たり前だよ。鈴だって僕が一夏みたいに倒れたら泣くでしょ?」

「それは……」

 

一夏が昏睡状態になって箒の心が傷付いている。僕がこんな状態になったら鈴以外にシャルロットやラウラも同じように悲しむだろう。

 

「僕達が今やることはここで喧嘩することじゃない。次の作戦を考えないと」

 

鈴の手を離して箒を見る。箒の目には生気がなく、ただ虚ろな姿だった。

 

「箒、僕達はガンダムを倒しに行くけど箒はどうするの?」

「私は……」

 

声に覇気がなく魂が抜けたような声をしている。こんな状態で戦えとは言えない。

 

「無理そうだね。鈴、箒は参加しないそうだ」

「えっ、でも悠人」

「時間が惜しい、みんなを呼んできて。作戦を伝える」

 

ここにいても一夏が起きる様子はない。

そういえばラウラは軍隊に所属しているんだった。ガンダムの居場所はラウラに頼んでみてみよう。

 

「箒……見ないうちに変わったね」

 

昔の箒ならどんな相手でも立ち向かっていたが箒だって女の子だ。一夏……好きな人が倒れてショックを受けて精神的に辛いだろう。

鈴を連れて部屋を出る。

 

 

 

 

 

悠人は鈴と共に部屋を出た。この部屋には私と一夏しかいないが一夏は未だに目を覚まさず眠っている。

 

「私は変わった……か」

 

悠人が言ったあの言葉が私の胸を締め付ける。

違う、私は昔から変わってない。強い力を手に入れるとその力に流されてしまう。

剣道のときもそうだ。技も技術もなく、ただ力だけで相手を薙ぎ倒して、ねじ伏せて相手を倒していた。

 

あのときだって……。

 

『あぁ、くそ! 密漁船か!』

『馬鹿者! 犯罪者など庇って!』

『箒、そんなこと言うな! 力を手にしたからって弱いヤツのことが見えなくなるなんてお前らしくない!』

『わ、私は……』

『逃げろ箒!』

『あ……』

『箒ぃぃぃぃ!』

 

私のせいで一夏が倒れて……そのせいで…

 

『総員撤退! これより現戦域を離脱する! 鈴、ラウラは一夏と箒を連れて先に撤退! 簪はカラミティを足止め、他は現状維持!ガンバレルストライカー!』

 

作戦は失敗して鈴とラウラに抱えられて旅館に戻ってしまった。

 

『作戦は失敗。一夏は担架で運んで医務室で治療。他は待機だ』

 

『待ってください! 悠人達がまだ戻ってないんですよ! アタシは行きます!』

『駄目だ。今は機体の修理を最優先に』

『悠人、旅館についたわ。今からそっちに……なに言ってるの! アタシも……悠人!ッ……切られたわ……』

『凰、勝手な行動はするな』

『…………』

『今回は見逃すが次は特別カリキュラムをやらせる。いいな』

『……はい』

『鈴、今は少しでも身体を休めておこう』

『わかった……』

 

 

「私のせいで一夏は……」

 

私が浮かれていたから作戦は失敗して一夏が……。

 

「箒ちゃん……はいっていいかな?」

 

部屋の廊下から姉さんの声が聞こえた。

 

「…………」

 

姉さんがISを開発させたせいで一夏と悠人と離れ離れになってしまった。今でも私はあの人ことは……。

 

「やっぱり無理だよね。わかった、ここで話すね」

 

何も言ってないのに姉さんは勝手に話をする。

 

「ゆっくん、いっくんの仇をとるために行くらしいよ。箒ちゃんは行かないの?」

 

今更行って何になるんだ?一夏が昏睡状態になって……。

 

「ゆっくん、昔から変わってなかった。本当はいっくんが倒れて辛いのにそんな顔ひとつ見せないでみんなを引っ張って。昔のゆっくんも辛い顔を誰にも見せなかった」

 

姉さんの声はとても弱々しい声だった。いつものような周りに迷惑をかける姉さんとは大違いだ。

 

「箒ちゃん、このままだとゆっくんもいっくんみたいになるかもしれない。私のことは嫌ったままでいい。だけどゆっくん…ゆっくんのことは助けてあげて。ゆっくんも箒ちゃんといっくんとちーちゃんとまーちゃんと同じように大切な人だから」

 

私は……。

 

「じゃあ……私いくからね。ごめんね箒ちゃん……」

「姉さん!」

 

襖を開けて姉さんをいれようとしたが姉さんの姿はなかった。

 

「どうして……私は」

 

なんで私は正直になれないんだ。姉さんだって本当は辛いのに……それなのに私は……。

 

 

 

「ここから30キロ離れた沖合いにある無人島に目標を確認した。ステルスモードになっているようだが光学迷彩は持っていないようだ。衛星による目視で確認した」

「元々ミラージュコロイドは光学迷彩だけどフォビドゥンのゲシュマイディッヒ・パンツァーは対ビーム防御シールドだから光学迷彩は搭載されていない」

 

姉ちゃんがいない僕の部屋に箒と一夏を除いた専用機持ちメンバーが集まっていた。

 

「今回の作戦は前と同じガンダムの相手をしてもらうけど状況に応じて他の人の援護にまわって。ラウラは単独行動じゃなくて鈴達と一緒に」

「悠人……あんたまた1人でやるつもりなの」

「こうでもしないと成功率が上がらないからね。そういえばパッケージがあるって言ってたけどみんなは変えたの?」

 

ISにはパッケージ……ストライクと同じ、換装装備というものを持っている。例えばランチャーストライカーパックのような砲撃パッケージやソードストライカーパックのような近接格闘パッケージ等……作戦に応じて各々のパッケージを換装して作戦を行う。僕が使っているストライクは言うまでもなく標準装備(デフォルト)である。

 

「強襲用高機動パッケージ『ストライクガンナー』が送られまして、今さっきインストールが完了しましたわ」

「僕も防御用パッケージ『ガーデン・カーテン』をインストールしたよ」

「私も砲撃パッケージ『パンツァー・カノニーア』はすでにインストール済みだ」

「私のはまだパッケージは用意されてないけどシールドエネルギーの補充と機体の修理は終わってる」

「鈴はどうなの?」

「……機能増幅パッケージ『崩山』のインストールは終わってる」

 

仏頂面だが鈴もパッケージのインストールは終わっていたらしい。

 

「なら、準備が出来次第、出発する。解散」

 

 

 

 

夕日が落ちて空は満月が顔を出していた。

 

「みんな準備はいい?」

「いつでもいけるわ」

「わたくしも準備は出来ています」

「防御パッケージがあるから悠人は僕達のことは気にしないで戦って」

「私もいける」

「いつでもいけるよ悠人君」

 

各々パッケージに変更した僕達は日が落ちて神秘的に見える海の上を飛ぶ。




本来なら鈴が発破をかけて箒は戦意を取り戻しますが悠人の介入によって止められたので箒は参加しません

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