インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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IS対ガンダム



29話 海上開戦(マリンウォーズ)

『現在位置からガンダムとの接触までおよそ3分。各自、気を引き締めろ』

「はい、わかりました」

 

オープン・チャンネルから連絡を受けてから通信を切る。

 

「ラウラ、セシリアさん。ガンダムが見えたら遠距離から砲撃をして。他の人は砲撃したあとは散開してさっき言ったツーマンセルでガンダムと交戦」

 

僕がそう言うと全員頷いた。

 

「目標を確認、あれは正体不明のガンダム…嫁が説明したガンダムだ」

 

眼帯を外したラウラは疑似ハイパーセンサーを発動させて4機のガンダムを目視した。

 

「みんな、状況に応じて他の人の援護射撃をして。ラウラ、セシリアさん、砲撃用意。カウント5で撃つ」

「わかりましたわ」

「了解」

 

エールストライカーに装着されているアグニを持つ。

 

「カウント5。5……4……3……2……1……撃て!」

 

高プラズマエネルギー砲とプラズマを帯びて威力を上げた砲弾、レーザーがガンダムに向けて放たれる。

砲弾は回避され、レーザーはレイダーに掠り、高プラズマエネルギー砲はフォビドゥンの肩部に被弾した。

 

「散開!」

 

散り散りになって離れると僕達が留まっていた場所にビームが撃たれる。撃ったのはカラミティのスキュラだろう。

僕はアグニを戻してビームライフルを構えるとプロヴィデンスはユーディキウム・ビームライフルを撃ち、回避しながら僕もビームライフルを撃つ。

同じPS装甲とはいえ、僕はバッテリー式で相手は核エンジン。被弾や無駄弾を撃つことは出来ない。

 

「ちぃ!」

 

男なのにISの適正があることが発覚して数ヶ月経ち、それなりに動かせるようになったが技術不足なのか被弾してシールドエネルギーが減る。お互い撃ちあっているとプロヴィデンスの動きが鈍くなっている。

 

「私がAICを使っている内にビームを叩き込め!」

 

シュヴァルツェア・レーゲンのAIC…ありがとうラウラ。アグニとビームライフルを持ってプロヴィデンスに向けて撃った。

シールドエネルギーで機体には被弾しなかったがこれで大幅に減らせただろう。

 

「ありがとうラウラ!」

「お礼は終わってからだ。油断するな!」

「う、うん!」

 

ラウラに叱喝され、気を引き締め直す。偶然当たっただけでまだ堕ちていないので油断は出来ない。

 

「ラウラ、回避行動! ドラグーンが来る!」

 

AICを発動する前にバックパックにはドラグーンが射出されて僕とラウラに向けてビームを撃つ。ラウラはなんとかビームの雨を避けているがパーフェクトストライカーを装備している僕はその大きさに何発か被弾してしまう。

 

「嫁!」

「僕はいいから他の人の援護に行ってAIC使って!」

「しかし」

「いいからはやく行って!」

「ッ!分かった」

 

ドラグーンから放たれるビームの雨を掻い潜り、プロヴィデンスから離れた。

 

「みんな、各々の状況とガンダムの状態を教えて」

 

ビームライフルを撃ちながらオープン・チャンネルで状況を聞く。

 

『悠人、アタシとセシリアはなんとかシールドエネルギーを削ってるわ』

『わたくし達のシールドエネルギーはまだ平気ですわ』

 

レイダーと戦っている鈴とセシリアさんはなんとかなっているようだ。

 

『悠人君、私達のシールドエネルギーは大丈夫だけど』

『フォビドゥンガンダムのビーム曲射と対ビーム防御シールドが邪魔でうまくシールドエネルギーが減らせない』

 

手前味噌の作戦だがやはりエネルギー偏向装甲が厄介だな。

 

「シャルロット、簪。ラウラをそっちに向かわせる。AICで動きを止めたら一気にけりをつけて。ラウラ」

『あぁ、聞いている。今から援護に向かう』

 

AICで動きを止めてゲシュマイディッヒ・パンツァーを破壊すれば最初に堕ちるだろう。

 

「一夏、箒。カラミティとの交戦状況を」

『悠人、ガンダムのほうはあまり減らせなくて、こっちのシールドエネルギーが少なくなっている』

『俺もそろそろ…ってあれは!』

『一夏、どうしたんだ!』

『なんで船が……あぁ、くそ! 密漁船か!』

『まて、一夏!』

 

一方的に通信を切られてどういう状況か分からなくなった。

 

「ラウラ、援護をやめて箒と一夏の状況を確認して!」

『わかった!』

 

通信を切って僕はドラグーンとユーディキウム・ビームライフルのビームを回避しながらラウラが状況を伝えるのを待つと。

 

『緊急事態だ! 一夏が箒を庇ってカラミティガンダムのビームを受けて戦闘不能! 戦闘不能になった!』

 

オープン・チャンネルから聞かされた事実。一夏が倒れたとラウラから伝えられた。

 

「箒の状況はどう?」

『髪を結んでいたリボンが焼かれただけで身体はなんとも』

「違う、箒は戦えるの?戦えないの?」

 

1分1秒が惜しい。箒は戦えるのかはやく言ってほしい。1人ならともかく2人が戦えないならかなりの痛手になる。

 

「ラウラ、箒はどうなんだ! 戦えるの! 戦えないの! どっち!」

『……無理だ。一夏が倒れたことで戦意喪失している』

「総員撤退!」

 

箒が戦える状態じゃないと聞いて次の行動は瞬時に決まった。戦える状態じゃない人が2人いるなら撤退だ。守りながらガンダムと戦うのは僕達の腕では不可能、最悪全滅もあり得る。

 

「これより戦線離脱する! 鈴、ラウラは一夏と箒を連れて先に撤退! 簪はカラミティを足止め、他は現状維持! ガンバレルストライカー!」

 

メビウス・ゼロを呼び出してシャルロット達の援護に向かわせる。

 

「迎撃はしなくていい! とにかく撃って撃って撃ちまくって!」

 

プロヴィデンスにアグニとイーゲルシュテルンを撃つが焦燥感があるのかなかなか当たらない。

一夏と箒が戦えなくなったのを嘲笑うかのようにドラグーンのビームが四方八方から撃たれる。

 

「くっ!」

 

ビームの被弾が多く、シールドエネルギーが底を尽きそうになる。そう思っているとPS装甲の色がグレーに変わってしまった。

 

「フェイズシフトダウン!? くそっ、なんでこんなタイミングで」

 

アグニとビームライフルの撃ちすぎが仇となってバッテリーが切れてしまった。

 

「パーフェクト、パージ! ランチャーストライカー!」

 

これ以上マルチプルアサルトストライカーでの戦闘は無理と判断してストライクから外して、プロヴィデンスに向かって飛ばすとユーディキウム・ビームライフルで撃たれて破壊される。

ランチャーストライカーを装着してPS装甲はグレーからトリコロールカラーに変化する。

 

『悠人、旅館についたわ。今からそっちに』

「鈴とラウラは旅館で待機、僕達も離脱する」

『なに言ってるの! アタシも』

「通信は以上」

 

鈴との通信を切った。

 

「一夏達は先に戻った! 僕達も離脱する! 簪、山嵐は使えそう?」

『山嵐は完成してるけどマルチロックオンシステムがまだ未完成で』

「撃てる撃てないどっち!」

『う、撃てる!』

 

なら、作戦は決まった。ミサイルによる爆撃と煙幕に紛れて脱出だ。

 

「簪は山嵐を起動、シャルロットとセシリアさんは簪が撃つまで時間稼ぎして。撃てるようになったら瞬時加速(イグニッション・ブースト)の準備、タイミングは簪に任せる」

『わ、わかった』

 

対艦バルカンとミサイルを撃って簪が狙われないようにする。

 

『悠人君! 撃てるよ! 』

「ランチャー、パージ! エールストライカー!」

 

ランチャーストライカーからエールストライカーに変更すると同時にメビウス・ゼロが堕とされてしまった。

2つのストライカーパックが堕とされるのは惜しいが仕方ない。

 

『山嵐、起動!』

 

打鉄弍式から8連装式ミサイルポットが6門。計48発のミサイルがフォビドゥン、レイダー、カラミティ、プロヴィデンスに向かって発射された。

 

「総員撤退! 瞬時加速(イグニッション・ブースト)で現戦域を離脱!」

 

セシリアさんとシャルロットは瞬時加速(イグニッション・ブースト)をして離脱をはじめる。

 

「簪! 僕につかまって!」

「えっ、ゆ、悠人君」

 

返事を待たずに簪を抱え、エールストライカーとストライクによる二重瞬時加速(ダブルイグニッション・ブースト)で離脱する。

 

「あ、あの」

「舌噛むから喋らないで」

「は、はい……」

 

後ろがどうなっているか分からないが今は旅館に戻るのが先決だ。とにかくスラスターを最大出力にして離脱しないと

 

 

 

 

「すいません織斑先生……作戦は失敗しました」

「気にするな。織斑が重症とはいえ全員が戻ってきた」

 

旅館に戻ると一夏の治療を終わって部屋に寝かされていて箒は一夏の看病をしているらしい。

 

「状況に変化があれば召集する。それまで待機して休んでろ」

 

拳を握りしめる。

僕のせいで一夏がカラミティの砲撃を喰らってしまった。僕がしっかりしていなかったせいで……一夏は……。

 

「悠人、誰もお前のせいとは言わない。あのまま戦っていたら全滅もあり得た。専用機の武装を考えて凰とボーデヴィッヒを先に離脱させて更識のミサイルを煙幕に離脱した。あの状況でよく冷静に判断をした」

 

僕の気持ちを察知したか分からないが千冬さんが僕の肩に手を置いた。

 

「お前はよく頑張った。誰も置いていかずここまで戻ってきたからな」

「ありがとう……ございます……」

 

僕から離れると作戦室である大宴会場のほうへ行ってしまう。

 

「くそっ!」

 

壁を思いっきり殴った。

なにがよく頑張っただよ。作戦が失敗してそのうえ一夏が重症になったじゃないか。

僕がしっかりしていなかったから……ガンダムを破壊出来ず、一夏も倒れて……。

 

「くそ……ちくしょう……」




一夏が倒れたのはお察ししている人はいますが倒れた理由は次回コメントしてください

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