インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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年末までには原作3巻終わらせたいですね
夏休み編は完全オリジナルにする予定ですし



26話 天災と架空の兵器

臨海学校2日目。今日は自由時間はなく、丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りをする。専用機持ちはとくに大変で大量の装備のデータ取りに追われる。

 

「全員集まったな……おい、遅刻者」

 

ビシッと姿勢を正したのはラウラ。どうやら寝坊したらしく遅れてやってきたらしい。

 

「ISのコア・ネットワークについて説明しろ」

「は、はい。ISのコアはそれぞれが相互情報交換のためにデータ通信ネットワークを持ち、現在はオープンチャンネルとプライベートチャンネルによる操縦者会話など通話に使われています。それ以外に非限定情報共有(シェアリング)をコア同士が各自に行うことで様々な情報を自己進化の糧として吸収しているということが近年の研究でわかりました」

「さすが優等生だな。遅刻の件は見逃そう」

 

遅刻したことを許されると胸をなでおろした。

最後の部分以外なら僕でも説明は出来たがもし、一夏が質問されたら答えられるか難しいだろうな。

 

「各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。迅速に行うように」

 

崖に囲まれたIS試験用のビーチに集まった女子達と専用機持ちの僕達はそれぞれ移動する。

 

「篠ノ之は専用機持ちのほうに来い」

「えっ? わ、わかりました」

 

専用機を持っていない箒は僕達と同じ場所に移動する。

 

「あの……なぜ私はこちらに」

「お前にも新しい──」

「ちぃぃぃぃちゃぁぁぁぁん!!!」

 

この声はもしかして。

 

「会いたかったよちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 私との愛を確かめ──」

 

飛びかかってきた女性の顔を片手で思いっきり掴んだ。あと、ミシミシと音が聞こえるような……。

 

「黙れ……束」

「むぅ、相変わらず容赦のないアイアンクローだねちーちゃん」

 

千冬さんの拘束をいとも簡単に抜け出した。

そう、この人は箒の姉にしてISの生みの親である篠ノ之束である。

 

「私のところに行く前に自己紹介をしろ」

「え~なんでそんなことしないといけないの~めんどくさぁ」

「やれ」

「は~い。私が天才の束さんだよ。はろ~。終わり」

 

軽っ、自己紹介はしたけど名前しか言ってない。

 

「久しぶりだね箒ちゃん」

「……どうも」

 

この2人はまだ関係の修復は出来なさそうだ。束さんは千冬さんと小学校からの付き合いで姉ちゃんは2人の後輩である。

 

「こうして会うのは何年ぶりかな。それにしてもおっきくなったねぇ……特にそのおっぱいが」

 

手をワキワキして触ろうとしたら束さんの後頭部が叩かれる。

 

「殴りますよ」

「殴ったよの間違いだよ箒ちゃん! 何処ぞの忍の頭領と同じ言葉と行動をしてるよ! しかも叩いたのは日本刀の鞘だし」

 

あ、束さんテイルズ知ってるんだ。時間あったら話をしよう。

 

「あ、あの束先輩。どうしてここに」

「あ、まーちゃんおひさー。まーちゃんまたおっきくなったね~箒ちゃんに負けじとそのおっぱいが」

 

姉ちゃんを見つけると目にも見えない速さで後ろに回って姉ちゃんのおっぱいを鷲掴みしてくる。

 

「えぇ!ちょ、ちょっと、せんぱっ」

「よいではないか、よいではないか~」

 

束さんが悪代官になって姉ちゃんの胸を揉んでいる。

 

「ほほうほうほう。まーちゃんブラまた変えたでしょ?」

「ど、どうしてそのことを……」

「束さんにかかればまーちゃんのスリーサイズなんて一目でわかるものなのさ!」

「あ、そこは……ちょっと、やん」

「いい加減にしろ!」

 

千冬さんの踵落としが束さんの頭にクリーンヒットして地面に叩き付けられる。

 

「お前はそんなことをするためにここに来たんじゃないだろう」

「はいは~い。それではみなさん大空をご覧あれ!」

 

踵落としを何とも言わず立ち上がり真上に指をさすと僕達は空を見上げた。

すると──

 

「うわっ!」

 

ズドーン!と地面を揺らして出てきたのは正八面体の巨大な箱のような物体が落ちてきた。

 

「さあさあ、とくとご覧あれ!これは箒ちゃんの専用機である」

 

面体が消えてなくなるとそこには……。

 

「箒ちゃん専用機のこと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんのお手製ISだよ!」

 

機体名からして装甲の色は真紅に染まっていて太陽の光が反射してとても眩しい。

 

「フィッティングとパーソナライズをはじめようか箒ちゃん!私が補佐をするからすぐに終わるよ!」

「……わかりました」

「箒ちゃん堅いな~。実の姉妹なんだし、もっと柔らかい表情とか」

「はやくお願いします」

「は~い」

 

箒が束さんが開発した紅椿を装着すると束さんが空中投影された複数のディスプレイの操作を1人でやっている。

 

「箒ちゃんのデータはある程度先行していれてあるから、あとは最新のデータに更新っと、近接戦闘を基礎に万能型に調整してあるからすぐに馴染むと思うよ。あとは自動支援装備もついてるからね!」

「それはどうも……」

 

表情をひとつ動かさずお礼を言う。

束さんがISを発表してから箒は転校を繰り返している。今の束さんはなんとも思っていなさそうだが心の中では謝りたい一心だろう。

 

「箒ちゃん剣の腕上がったね。筋肉の付き方をみればわかるよ。お姉ちゃん鼻が高いなぁ」

 

箒は束さんの言葉に一切答えず、紅椿の調整が終わるのを待っていた。

 

「はい、フィッティング終わりっと、終わるの超速いね、さすが私」

 

自画自賛ともいうが束さんの場合はキーボードを操作するというよりピアノの鍵盤を引いていると言っていいほど滑らかかつ素早く操作している。

タイピング検定の特級資格を持っている人が素足で逃げるほどの素早さである。

 

「あとは自動処理に任せておけばパーソナライズも終わるよ。あ、そうだ」

 

箒の紅椿の操作を終えると僕と一夏の方をむいた。

 

「いっくん、白式見せて束さんは興味津々なんだよ」

「は、はい」

「ゆっくんのISも見せてほしいな。ゆっくんのIS、ガンダムだから調べてみたいんだよ」

「わ、わかりました」

 

僕達は待機状態のISを展開させた。

 

「データを確認っと」

 

コードを白式に刺すと白式のデータがディスプレイに投影される。

 

「ほうほう不思議なフラグメントマップを構築しているね。これは見たことのないパターン。いっくん達が男の子だからかな?」

「なんで俺達がISを使えるのかわかりますか?」

「んん~2人の身体をナノ単位まで分解して調べればわかるかもしれないよ?」

 

ナノ単位って、そんなことしたら死んじゃうよ。

 

「束さん、一夏の白式が後付け装備が出来ないのは白式が欠陥機だからですか?」

「ううん、私がそう設定したから」

「せ、設定ってまさか白式も」

「そう、いっくんの白式も束さんお手製ISなの」

 

ま、マジか……だけど束さんが零落白夜を開発したならある意味納得出来る。

 

「欠陥機としてポイされてたから心の広くて情け深い私がもらって動けるようにしたの。日本が開発した白式って元々後付け装備が出来ないらしいよ?まあ、そのおかげで単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)が使えるけどね」

「じゃあ、白式が他の装備を持てないのは」

「はじめからそういう風につくっていたからってこと」

 

なんて言えばいいんだろう。本当に特殊能力に全振りした機体だ。

 

「機密事項をベラベラ話すな」

 

ゴツンと束さんの頭に千冬さんの打撃がヒットした。

 

「いた~い。ちーちゃんの愛情表情は変わらないね」

「あ、あの」

 

2人のコントを見ているとセシリアさんが束さんに……って不味い!

 

「篠ノ之博士のご高名はかねがね承っております。もしよろしければ」

「なにあんた?」

 

あぁ、遅かったか。

 

「私の知り合いに金髪はいないんだけど。そもそも箒ちゃんとちーちゃんといっくんとゆっくんとまーちゃんと数年ぶりの再開なんだよ。涙を流すそういうシーンだよ。空気読めないよね。どういう了見で君はしゃしゃり出て来てるの。理解不能だよ。というか誰?」

「え、あ、あの…」

「た、束さん。僕のストライクを確認するんですよね。準備出来てますから、どうぞ」

「あ、そうだった~。というかゆっくんのガンダムはストライクなんだね。私はユニコーン派なんだよな~」

 

セシリアさんの態度とは180度変わって僕が話しかけるとセシリアさんを無視してストライクにコードを指した。

束さんは僕の家系である山田家と一夏の織斑家と身内以外の人は拒絶反応を起こして冷たい反応しかしない。

前よりかはマシになったんだよね。だって昔は他人を無視していたんだから千冬さんに教育(あるいは調教ともいえる)されて今のように冷たい発言だが他人と話せるようになった。

 

「この装甲はPS装甲だね。ストライク自体にバッテリーを内蔵されているからシールドエネルギーがなくても動けるのは本当らしいね。ストライカーパックもあってエール、ソード、ランチャー、ガンバレル……あ、また新しいのが2つ追加されてる」

「はい、今日はその2つを使う予定です」

「なんか悔しいな。ISの開発者なのに私以上の性能を持つ機体をストライクを見てると」

 

悔しそうにストライクを見ている束さんを見てると学者としてのプライドがあるんだろうな。

 

「PS装甲とかつくるのは難しいそうですか?」

「今の技術では不可能だね。この束さんでもお手上げの状態だよ」

 

やっぱりか……PS装甲というかストライク(ガンダム)自体架空の兵器だし、それを現実に再現するのは難しいだろう。

 

「うん、いいもの見せてもらったよ。ありがとうゆっくん」

「いえ、束さんには見せないといけないと思っていたので」

「ストライカーパックのデータもらっていい?」

「ストライカーパックどころかストライクのデータごともらっていいですよ」

「ホント!?やったー!」

 

玩具を得た子供のようにはしゃいで、ディスプレイを操作してストライクのデータを転送する。

 

「ゆっくんはちーちゃんと違って昔から優しいからお姉さん嬉しいな」

気付いたときには背後をとられて抱き締められて頭を撫でられていた。

 

「んん~あの頃と変わらない髪質だよ~」

「た、束さん!他の人がいるから!」

「えぇ~いいじゃん。久々の感動の再会なんだよ?それに…」

 

束さんの顔が耳元まで近付く。

 

「おっぱい大好きだもんねゆっくんは」

「あ、い、いやそれは」

 

この人、自分の意思で胸を押し付けてる。あぁ…すごい柔らかい。てか、これって直にあたってるような。

 

「うんうんお姉さんわかってるよ。女の子に囲まれてるから溜まってるんだよね。今度二人っきりのときにお姉さんがゆっくんの」

「人前でなに堂々セクハラ発言してるんだ!」

 

千冬さんがまた踵落としをして束さんが地面とキスする。

 

「ちーちゃん酷いよ! 私がゆっくんに盗られて嫉妬してる気持ちはわかるけど」

「私が怒っているのはお前が白昼堂々、私の生徒にセクハラ発言をしていることだ!」

 

た、助かった……あのままだったら男としてちょっと危なかった。

 

「こっちはまだ終わらないんですか?」

「もう終わるよー。はい、3分経った。あ、今のでカップラーメンが出来たね」

 

地面にカップラーメンが置いてあって、それを持つとフタを取って一気に食べてスープまで飲み干してる。熱くないのかな?

 

「ぷは~、ご飯も食べたし試運転もかねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」

「わかりました」

 

赤椿に連結されていたケーブル類が外れていく。ストライクの初登場したときをあのシーンを思い浮かぶ。

箒が意識を集中させると。

 

「うわっ!」

 

砂が舞い上がると紅椿を装着したが箒が上空200メートルほど飛んでいた。

 

「どう箒ちゃん?思った以上に動くでしょう?」

『えぇ、まあ……』

 

オープンチャンネルから箒と束さんの会話が聞こえる。

 

「じゃあさっそく刀を使ってみよう。右のが『雨月』で左は『空裂』ね。武器特性のデータ送るね」

 

データが送られると箒は二振りの刀を抜き取る。

 

「雨月は対単一仕様の武器で打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出、連続して敵を蜂の巣に出来るよ。射程距離はアサルトライフルくらいでスナイパーライフルの距離はないけど紅椿の機動性なら大丈夫」

 

アサルトライフルの距離まで詰めて攻撃というわけか。余談だがアサルトライフルの有効射程距離は300メートルから500メートルでスナイパーライフルは大体800メートル以上の距離を指す。

雨月を突くと赤色のレーザーが球体となって弾丸の如く発射された。

 

「次は空裂ね。こっちは対集団仕様の武器で斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーをぶつけるんだよ。振った範囲に自動で展開するから超便利! ということでさっそくこれ撃つから打ち落としてみて」

 

粒子を具現化して現れたのは軍用の連装式ミサイルポットだった。どうやって軍用兵器を手に入れたんだ。僕がそんな考えしているのを知らずにミサイルが発射された。

 

「はぁ!」

 

箒が空裂を振るうと雨月と同じレーザーが現れて、今度は帯状になって広がり、ミサイル全弾を撃墜させた。

 

「ミサイルを全部破壊した……」

 

圧倒的すぎる……白式の零落白夜よりも恐ろしく、とても強い。

仮に敵として戦ったら勝てるかどうか分からない。いや、勝てないかもしれない。

 

「やれる……私とこの紅椿なら」

 

高スペックを体感した箒は嬉しそうにして装着している紅椿を眺める。

 

「織斑先生!」

 

姉ちゃんが急に慌てはじめて千冬さんに話しかけている。千冬さんの顔も険しい表情をしていて、姉ちゃんと同じように慌てているような感じにみえる。

何度か頷き、姉ちゃんが他の先生の所にいく。

 

「全員注目!」

 

手を叩くと僕達を含めた女子達も千冬さんのほうにむいた。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へ移行、今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機をすること。以上だ!」

 

「え、中止?」

「特殊任務ってなに?」

「なんで待機なの?」

 

異常なことだと理解するとざわざわと騒ぎはじめる。

 

「とっととISを片付けて部屋に戻れ! 以後許可なく室内を出た者は我々で身柄を拘束する。いいな!」

「「「は、はい!」」」

 

千冬さんの一喝で女子達はISの装備と機体を片付けはじめる。

 

「専用機持ちは全員集合しろ。織斑、山田、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰、更識……それと篠ノ之も来い」

「はい!」

 

箒も呼ばれると気合いのはいった返事をして、僕達専用機持ちは千冬さんの後ろをついていく。

 

 

 

 

「では、現状を説明する」

 

旅館の一番奥にある大宴会用の大座敷部屋には大型のディスプレイや外部に連絡するときの機材が置かれており、専用機持ちの僕達と教員達が集められていた。

 

「3時間前、ハワイ沖でアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代型の軍用IS『銀の福音』(シルバリオ・ゴスペル)の試験稼働中に正体不明のISの4機が奇襲、監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

ISが4機も……数少ないコアをどうやってそこまで集めたんだ。

 

「その後、衛星による追跡の結果、時間にして3時間後、正体不明のISはここから2キロ先の空域を通過することがわかった。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった」

 

僕達で対処……どういう機体なのか分からないまま僕達がやらないといけないのか。

 

「教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」

「僕達……ですか」

 

僕や一夏、箒は素人なのに未知のISと戦えと千冬さんは言っている。

 

「作戦会議をはじめる前にアメリカ・イスラエルの上層部より衛星から送られたデータを見てもらう。特に山田」

「は、はい」

「お前が見るときは心して見ろ」

 

なんで僕なんだろう……。

送られたデータを大型ディスプレイに投影される。

 

「これは?」

「これが正体不明のISですの?」

 

箒とセシリアさんは特に驚いたりしていないが──

 

「おい、これって」

「嘘でしょ……」

「だけどこれって……」

「どうみても……」

「なんで……これが……」

 

一夏、鈴、シャルロット、ラウラ、簪は投影された画像に目を疑った。

 

「なんで……こいつらが……」

 

僕も例外ではなかった。いや、『驚くのは必然』と言っていい。

形や色、武装が違えど共通しているものがあった。

 

全身装甲(フル・スキン)

ツインアイ。

V字のブレードアンテナ。

 

そう、銀の福音を襲って今ここに接近している機体。

──それは。

 

「なんで……ガンダムが……」

 

ガンダムだった。




タイトルからしてネタバレしてましたが悠人達が戦うのは福音ではなくガンダムです
どのガンダムかは次回分かります

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