インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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現在、臨海学園の終盤あたりで執筆が難航しています
悠人のセカンドシフトやその後の話がまだ出来てません


24話 疑問

昼はしっかり遊んで時間は夜となり、今は3つ大広間の襖を外して広げた大宴会場で夕食を摂っていた。

 

「お昼もすごいけど夜の食事もすごいよね」

 

入学当初は箸の使い方が下手だったシャルロットは僕の元で一生懸命覚えて今では普通に箸を使って食べられるようになった。

彼女が言ったように僕達の目の前にあるのは刺身に小鍋に焼き魚に山菜の和え物等……かなり豪勢である。

 

「もしかしてIS学園がお金かけてるのはこれが理由かもね」

 

だって、小鍋にあるのは和牛だよ?それも米沢牛。そのお肉は一枚じゃなくて両手で数えられないほどの量。刺身は青森県から取れた大きい身のホタテに静岡県のトラフグ、千葉県で取れたデカい伊勢海老等、焼き魚は真鯛で綺麗な焼き色が食欲をそそる。

 

「シャルロットって生ものは大丈夫なの?」

「今はもう大丈夫かな。生卵を食べる文化は最初、驚いたけど」

 

刺身もそうだが海外からして生卵を食べる日本の文化は異様だと言われている。なぜ日本は卵を生で食べられるのか。それは徹底した衛生管理だからである。

日本の品質管理水準は世界屈指とも言われているので安心して卵を生で食べることが出来る。

日本以外に卵を生で食べる国はイタリア、ポーランド、韓国、台湾だけらしい。

魚を生で食べる文化を知ったセシリアさんとラウラが言うには

 

『わ、私は魚を生で食べるのはあまり……』

『訓練で魚などを生で食べることがあった。日本という国はサバイバル精神というのがあるのか』

 

セシリアさんはともかくラウラ、全部がそうじゃないからね。基本的に食べ物はちゃんと加熱して食べるよ。

 

「僕は普通にうどんや蕎麦、どんぶりとかに生卵をいれて食べているんだけど」

「日本の品質管理はすごいね」

 

日本のことを誉められると日本人として悪い気はしない。

 

「シャルロットの水着も良かったけどその浴衣姿も似合うよ」

「ありがとう悠人」

 

今の僕達は浴衣姿で食べている。この旅館ではなぜか『食事中は浴衣姿でとること』らしい。日本に来た海外の人にむけての配慮かな?

 

「正座とかって大丈夫なの?足、痺れてない?」

「悠人は心配性だね。僕は大丈夫だから」

 

海外からきている子もいるので正座が苦手な人用にテーブル席も用意されている。

 

「けど、悠人にこう心配して貰えるのは嬉しいかな……」

「え、あぁ……うん」

 

無意識とはいえ、シャルロットを心配していたらしく頬をかいて誤魔化す。

 

「い、今は食べようか」

「そ、そうだね。せっかく豪勢な料理なんだし、食べないと勿体ないしね」

 

気持ちを切り替えようと目の前の料理を食べはじめる。

 

 

 

 

「はぁ~露天風呂を独り占めは良いよな」

「そうだね~」

 

豪勢な食事を終えて、一夏と一緒に風呂からあがった。

 

「俺は部屋に戻るが悠人はどうする?」

「自販機でジュース買ってから部屋に戻るよ」

「そうか、んじゃお先」

 

一夏と別れて自販機が数台ある場所に行くと卓球台が置いてあってそれを楽しんでいる女子がいた。

 

「山田君も卓球やってみる?」

「なら少しだけやってみようかな」

 

ラケットを借りると卓球台の前にいく。

 

「いくよ、それっ」

 

ラケットを振ると玉を打ち、玉が僕のほうにくる。

 

「よっ、と」

 

僕もラケットで打ち返していく。

 

「山田君うまいね」

「ラリーなら少しだけね」

 

玉を打ち返していき、ラリーが続いていく。

 

「はぁ!」

 

女子がスマッシュをするとそれに反応出来ず、点をとられる。

 

「やりぃ!」

「あ~くそ、とれなかった」

「ふふん、まだまだこれからだよ?」

 

それから僕は女子達と交代しながら卓球を続けていた。

 

 

 

 

「じゃあね~山田君」

「時間あったらまたしようね」

 

手を振って別れると自販機でコーラを買い、部屋に戻ると鈴、シャルロット、ラウラ、簪の4人が僕と姉ちゃんの部屋にいて、缶ジュースを持っていた。

 

「なんでみんな僕と姉ちゃんの部屋に?」

「ちょ、ちょっと真耶さんと話をしたの」

「そうなんだ」

 

襖を閉めて座り、買ってきたコーラを飲む。

 

「姉ちゃん、話ってどんな話なの?」

「それはこの子達に聞いたほうがいいんじゃないかしら?」

 

姉ちゃんが視線を鈴達にむけた。

 

「あ……えっと……」

「その……」

「…………」

「うぅ……」

 

全員、僕から視線をはずす。

 

「あ~男子が聞くと不味い話だった?」

「い、いや、そんな大層な話じゃないから」

「なら聞いても問題はない?」

「聞いても問題ないのかといえば問題はないのかな……」

 

う~ん、なんか歯切れが悪い。僕が聞いたら不味い話だったのかな?

 

「あ、アタシもう部屋に戻るね」

「ぼ、僕も」

「私もそろそろ戻ろう」

「わ、私も」

 

そう言って立ち上がると襖を開けて出て行ってしまった。

 

「なんだったんだろう?」

「悠人ってたまに一夏君と似てる部分があるのよね……」

 

なぜか姉ちゃんは僕に呆れている。

 

「悠人」

「なに?」

IS学園(ここ)に入学して良かったって思ってる?」

 

IS学園に入学して…か。

藍越学園に入学する予定だったが僕にもISの適正があって、藍越学園の入学がなくなってしまった。

 

「今でも藍越学園にいけるならいきたいって思ってる」

「そう……よね」

 

姉ちゃんは少しだけ悲しそうな顔をした。

藍越学園に入学するために努力していたのは姉ちゃんも知っている。

 

「けど、僕は後悔はしてないよ。IS学園(ここ)に入学して良かったって思ってる」

 

鈴から告白されて、簪の機体が完成して、シャルロットの男装問題を解決して、ラウラが一夏に対する態度が軟化して……みんなが安心して学園生活が出来て良かったと思っている。

 

「そう……」

姉ちゃんの目は悲しそうな目から暖かい目に変わっていた。

 

「あの子達も悠人と会えて良かったって思ってるわ」

「なんで?」

「それは本人から聞いてみたら?」

「知ってるなら教えてよ」

「ふふっ、みんなと約束したから無理な相談かな」

「え~」

 

こうやって姉弟水入らず話をするのは久々かな。

 

「明日は大変だからそろそろ寝るわよ」

「はーい」

 

布団を敷いて僕は眠りについた。

 

 

 

「ん……」

 

深夜になぜか目が覚めて充電しているスマホをみると午前2時をさしている。

 

「少し、外まわろ……」

 

また寝ようとしたが外の空気を吸いたい気分になり、襖を開けて部屋を出る。外の景色が見える縁側で誰もいないのを確認して座った。

 

「なんで僕を好きになったんだろう……」

 

IS学園にいるとき考える時間はなかったが、こう…独りになれる時間と場所があるとふと考えてしまう。

 

「鈴……シャルロット……ラウラ……」

 

僕に告白してきた3人。なぜ僕のことを好きになったのか未だに理解出来なかった。

 

「僕なんかよりも良い人は山ほどいるのに……」

 

得意なものや特技もない。ゲームやアニメ、漫画にプラモ作りが好きというそこら辺にいる普通の男子なんだ。

 

「僕よりも一夏を選んだほうが……」

「一夏がなんだ?」

 

独り言を言っていたら誰かが反応していて、ふと顔をあげたら千冬さんがいた。

 

「千冬さん……」

「織斑先生だ……といいたいが今はいいか。少し夜風を浴びようとしてな。隣、いいか?」

「どうぞ……」

 

小さく頷くと千冬さんが僕の隣に座った。

 

「言うのが遅くなったな。悠人、本当にすまない……私の弟のせいでお前の入学がなくなってしまうことになって」

「いえ、一夏自身もここに来たかった訳じゃないのは知っています。逆の立場なら僕も申し訳ない気持ちになります」

「そうか……」

 

僕と同じように姉しかいない。一夏だって好きで動かした訳じゃないし、望んでここに来たんじゃない。だから一夏のことを恨んだり怒ったりしたいはしない。

 

「なにか悩んでそうだな」

「どうしてそう思うんですか?」

「目を見ればわかる」

 

ラウラと同じ言葉を千冬さんにも言われた。ラウラが言ったこの言葉は千冬さんから貰った言葉なのかな?

 

「気休め程度だと思うが吐き出したらどうだ?」

 

僕は黙ってしまう。

これは僕自身の問題だし、千冬さんの手を借りなくても……。

 

「言わないなら当ててみよう……悩んでいるのは女子のことだろ?」

「なんで鈴達のことを」

「私は鈴とは一言も言ってないが?」

 

うっ……。

 

「それで鈴達のことを悩んでいるんだな?告白のことか?」

「なんで告白されたことを知って」

「ほお、告白されたのか」

 

また墓穴を掘ってしまった。ここでなにかしても墓穴を掘ってしまうのがオチだろう。

 

「はぁ……わかりましたよ。正直に話しますから」

「最初からそうすればいい」

 

千冬さんには敵わないな……。

 

「実は鈴が学園に来て間もない時に鈴から告白されたんです」

「前に言ってたな。あのお転婆娘は随分乙女になったな」

「それとシャルロットからもなんです。正体を明かしたその夜に」

「ほぉ……」

「その次の日のお昼にラウラからも」

「聞いたぞ?食堂でラウラとキスしたんだろ?」

「はい……」

「それで誰を選ぶかだろ?」

「えぇ……」

 

また黙ってしまう。

3人からそれぞれ理由を聞いたが僕なんかよりも良い人がいると思っている。

 

「告白されたのはすごく嬉しいですよ。こんな僕みたいな人でも好きと言ってくれる人がいるとは思わなかったんですから。でも、僕よりも良い人はいると思うのでそんな人を見つけたほうがいいと考えてます」

「贅沢な悩みだな」

「もし、同じ立場なら千冬さんはどうするんですか」

「断るな」

 

ズバッと答えるなこの人。

 

「言っておくが私と同じことをしようとするなよ? あいつらが悲しむからな」

 

悲しむ……そうだよね。僕を好きになったのに僕から断ってしまったら絶対に悲しむと思う。

 

「それで誰を選ぶんだ?」

「僕は」

「鈴か?鈴はお前のことをよく知っているし、料理も上手い。お前を引っ張っていく性格だから相性は良いだろう」

「いや、その」

「ならシャルロットか?あいつは愛想はいいし、お前の空気も合うだろう」

「あ、あの」

「もしかしてラウラを選ぶのか?性格に問題があるが惚れた男には一途だ。キスした仲だろ?」

「まあ……しましたが」

 

まだなにも言っていないのに……。

 

「どうした?」

「なんで僕を好きになったのか分からないんです」

「理由は聞いたのか?」

「好きになった理由はちゃんと聞きました」

「なら、わかっているんじゃ」

「いえ、そう意味じゃないんです。僕なんかよりも良い人はいるのになんで僕を選んだのか……それが分からないんです」

 

鈴はともかくシャルロットとラウラの理由が分からない。あれは時と場合の問題だったし……。

 

「シャルロットの男装問題やラウラのあの事件で僕を好きになるのはやっぱり理解出来ないんですよ……」

 

あの事件はただ偶然、僕が解決しただけで僕じゃなくても良かったかもしれない。

 

「お前の性格かもしれないな」

「性格ですか?」

「シャルロットが正体を明かしたとき、お前は退学覚悟だった。普通の男なら自分が通っている学校を捨ててまでやる奴はいない」

「そうなんですか?」

「ラウラがVTシステムに飲まれるときお前は助けだそうとしただろ? 自分になにがあってもそんなの知るかという勢いで」

「あのときは冷静に判断出来なくて感情赴くままにやっただけです」

「だが、その行動がお前を好きになる理由になったんだろ?」

 

今までの行動が僕を好きになる……か。それなら一夏を好きになるって意味にもなるんだよね?

 

「僕がいなくても一夏がいれば」

「あの馬鹿でも出来ないことはある」

「出来ないこと?」

 

僕よりも出来る一夏に出来ないことがあるの?

 

「鈴とセシリアがラウラと戦っていてお前は2人を救出するとき冷静に判断していたとアリーナ担当の先生が話していた。学年別トーナメントのときは私も舌を巻いた。私が手塩をかけて育てたラウラをあそこまで追い込むとはな。あの作戦はお前が考えたんだろ?」

「はい、僕がラウラを相手して。一夏は箒の相手をする作戦は」

「あいつは頭で考えずにただ一直線に進むしか脳がない。お前のような状況を判断出来る奴が必要だ」

「リーダーには向いてませんよ」

「そうだな。どちらかと言えば参謀寄りだ」

「参謀……ですか?」

 

三國志で言う孔明みたいな立ち位置なのかな?

 

「周りをよく見てパートナーの性格をよく理解して考えている。リーダーよりも参謀のほうが似合ってる。参謀が出来る人材は意外と少ないぞ?」

「千冬さんは参謀とリーダー、どっち寄りですか?」

「私は斬り込み隊長かもしれないな」

「き、斬り込み隊長ですか……」

「なにかおかしいか?」

「いえ、千冬さんの場合ですと大将として本陣で待機しているより斬り込み隊長として前線で戦っているほうが似合っているかと思いまして」

 

確かに大将よりも斬り込み隊長として本陣に突っ込んでそのまま敵大将を討ち取っているほうが千冬さんに合ってそうだ。

 

「待っているのは性に合わない。待つなら攻めて行ったほうがいいだろう」

「千冬さんらしいです」

「与太話はここまでにして明日は……いや、今はもう次の日だな。朝日が出たら忙しくなる。部屋に戻って寝ろ」

「はい、そうします」

 

腰を上げて立ち上がる。

 

「それでは僕は部屋に戻ります」

「あぁ、しっかり休め」

 

頭をさげて僕は部屋に戻った。




活動報告にてストライカーパックの開発の途中報告をしました
司馬健太郎様、アイデア提供ありがとうございます

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