インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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悠人「『自由』Tシャツ誰もつっこんでくれなかった」

作者「ざまぁ」


23話 海辺の少女達(シーガールズ)

臨海学校初日は無事に晴れて、空は快晴。バスの窓から海面は穏やかで潮風がゆっくりと揺らいでいる。

 

「そろそろ私達が泊まる旅館に着くから全員、自分の席に座って」

 

エドワース先生の声で席を離れていた女子は自分が座っていた席へと戻り、バスが目的地に止まると次々と降りていく。

 

「それではここが今日から3日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

 

千冬さんの言葉のあと、全員で挨拶した。千冬さんが言うには毎年この花月荘にお世話になっているらしい。

女将さんが丁寧にお辞儀をした。

 

「今年の1年生も元気があってよろしいですね。それじゃあみなさん、お部屋の方にどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますからそちらをご利用なさってください。場所がわからなければいつでも従業員に訊いてくださいまし」

 

女子一同は、はーいと返事をすると荷物を持って旅館の中へ向かう。

 

「こちらが噂の……?」

 

女将さんが僕と一夏を見ると千冬さんに訪ねる。

 

「えぇ、今年は男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

「いえいえ、いい男じゃありませんか。しっかりしていてそうな感じを受けますよ」

「ほら、2人とも挨拶はどうした」

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

「山田悠人と言います。3日間お世話になります」

 

僕達は女将さんに頭をさげると女将さんも頭をさげた。

 

「ご丁寧にどうも、清洲景子です」

「よし、挨拶は終わったのでお前達の部屋に行くぞ」

 

女将さんとの会話を終えて、千冬さんの後ろについていく。

 

「僕達の部屋ってどこなんだろう?」

「さあ?」

 

僕達の会話を無視していている千冬さんの後ろをついていくと

 

「ここがお前達の部屋だ」

 

『教員室』と書かれた貼り紙の部屋だった。

 

「あ~先生の部屋ね。僕達の部屋って」

「お前ら男子だけの部屋だと就寝時間を無視した女子が押し掛けるだろうということになってな。結果、姉弟同士の部屋になった」

 

確かに僕と一夏だけの部屋だと色々危ないね……ん?今、姉弟って言ってなかった?

 

「僕と一夏は別々なんですか?」

「そうだが?」

 

当たり前だろうと言わんばかりの視線で僕達を見ている。

まあ、千冬さんの部屋に僕と一夏が一緒にいると肩身は狭いと思うしね。

 

「織斑先生、悠人はいますか?」

「ここにいる」

 

視線で僕がここにいると伝える。

 

「悠人の部屋は私と同じだから一緒に来て」

「わかった。一夏あとでね」

「おう、あとで海行こうぜ」

 

織斑姉弟と別れて、僕は姉ちゃんについて行った。

 

「ここが私の部屋」

 

襖を開けると床は畳で2人で使うのには広すぎる部屋だった。

トイレ以外にも洗面所、お風呂場もついていて浴槽は足が軽々伸ばせる程の広さだった。

 

「大浴場もあるけど悠人と一夏君は時間交代制。普段なら男女別になっているけどIS学園は女子学園だからね……夜遅いときや朝早くお風呂にはいりたいときは部屋のお風呂を使って」

「わかった。姉ちゃんはこれからどうするの?」

「仕事がまだ残ってるからね。それが終わって時間に余裕があったら泳ぎに行こうかな?」

「じゃあ、僕は先に一夏と一緒に行ってるね」

 

荷物をおろして新しく買った水着とタオルを持って部屋を出た。

 

 

 

 

「あ、山田君だ!」

「やっほ~山田君!」

「山田君、あとで私達と遊ぼう」

 

更衣室で着替えて外にでるとクラスの女子の何人かと会い、彼女達も水着姿だった。

夏だ!海だ!水着の女子だぁぁぁぁ!

ふははは!羨ましかろう弾、数馬!ここにいる海は女子だけで男は僕と一夏しかいないのだぁぁぁぁ!

大声では言えないので心の中で言う。

 

「さて、海にはいる前に軽く準備体操をしてと」

 

準備体操をして身体をほぐしていく。海で溺れたはカッコ悪いしね。

 

「ゆ、う、とぉぉぉぉ!」

 

はぁ……またか。

手を地面につけて腰を曲げると誰かが背中に手をついて僕の上から飛ぶ。

 

「ちっ、今回も無理だったか」

「鈴、もう小学生じゃないんだから普通に来たらどう?」

 

オレンジと白のストライプでヘソ出しタイプのタンキニ水着を着た鈴。

小、中学校の頃もこうやって勢いを付けて飛び付こうとしているで馬跳びをする体勢をとり、鈴が跳んで回避している。

 

「水着、着たから『あれ』やるんでしょ?」

「わかってるじゃない悠人」

 

僕がしゃがむと鈴は肩に乗ったのを確認して立ち上がる。

 

「おぉ~遠くまで見えるね~ちょっとした監視塔ね」

「そうだね」

 

『監視塔ごっこ』曰く、肩車をしている。飽きないよねホント。

 

「おっ、セシリア発見。一夏となにか楽しそうなことしてる」

「楽しそうなこと?」

「気になるんなら行くよ。ほら移動、移動」

 

肩車をしたまま僕は鈴が指示する場所まで歩く。

 

「いちか~」

「り、鈴か」

 

パラソルを刺してのシートの下に寝そべっているセシリアさんにサンオイルを塗っていた。

水着の紐を外したセシリアさんの胸が横から見えて──

 

「ふんっ!」

「あいたぁ!」

 

頭から激痛と共に髪の毛が抜けた。

 

「鈴、髪を引っ張らないで……痛いから。抜けたらどうするんだよ」

「どうせセシリアの胸見てたんでしょ」

「そ、そそ、そんなことないよ?」

 

なんでセシリアさんの胸を見ていたのがわかったのか。エスパーかそれともニュータイプなのか?

 

「なんで慌ててるのよ」

「あ、慌ててないよ?」

「まあ、いいわ」

 

頭をポンポンと叩かれて僕はしゃがむと鈴はおりた。

 

「一夏、アタシやりたいから貸して」

「お、おう。任せた」

「え、鈴さん?なんで鈴さんがサンオイルを?」

「ほらほら一夏が塗れない場所はアタシがやるから」

「あ、ちょ、冷たっ、ま、待ってください鈴さ──」

「はいはい、動かないで」

 

手際よくというより雑と言ったほうがいいような……そんな感じでセシリアさんの身体にサンオイルを塗っていく。

 

「もう、いい加減に」

 

ヤバッ!

僕は海のほうに回れ右をして移動した。その後ろでは何か騒動があるが知らぬが仏、そのままスルーする。

 

「さて、そろそろ」

「悠人~」

 

海に泳ごうとしたらシャルロットが僕を見つけて手を振って近付いてくる。

 

「新しくした水着なんだけど……どうかな?」

 

ビキニのような水着で紐は腰あたりでクロスして結ばれている。

下は水着を隠すようなスカートのようなものを付けていて、黄色と黒の二色がジグザグしている。

 

「似合っているよ……シャルロットの髪の色に合ってるからすごく……」

「あ、ありがとう」

 

お互い視線を逸らして顔を赤くしている。

 

「そうだ、ラウラの水着も見せないと」

 

パッと横に移動する。

 

「これってラウラなの?」

「悠人に見せるのが恥ずかしいから身体ごと隠してるらしいの」

 

シャルロットが横に移動したらバスタオルを全体に巻いたラウラ?がいた。なんかミイラみたい。

 

「えっと…ラウラなの?」

「わ、私だ。ラウラだ」

 

僕の呼び声に反応して、声もラウラだったのでラウラらしい。

 

「ラウラ、悠人に見せたいからって一生懸命選んだんでしょ?ほら、悠人に見せないと」

「いや、この格好は……」

「なら、このまま悠人とどっか行こうかな~?」

 

僕の隣に来ると腕を絡ませてくる。密着しているのでその大きな胸の谷間が僕の腕を挟んでくる。

 

「しゃ、シャルロット!?」

「悠人、ラウラなんか放っておいていこ?」

「いや、でも……」

「せっかく悠人に見せる水着を選んだのに見せないラウラなんか…… ね?」

 

首を傾げてさらに腕を絡ませて胸をあててくる。

 

「ま、待て! 見せればいいのだろ! 見せれば!」

 

バスタオルを素早く外してその姿が露する。

 

「ど、どうだ…」

 

黒の水着というより下着に近く、身体を隠す布の面積がとても少ない。

長い銀髪は鈴と同じようにツインテールにして、もじもじと身体を動かして落ち着かなさそうにしている。

 

「ラウラからして大胆だね……」

「ど、どうなんだ。似合っているのか」

「うん、すごく似合ってる……」

「そうか……ふふっ」

 

はにかんで笑ってくれた。笑った顔も似合うね。

 

「む~ラウラの水着ばっかり見てデレデレして」

 

いまだに僕にくっついているシャルロットが少し頬を膨らましていた。

 

「シャルロットの水着も似合ってるよ」

「なんか社交辞令みたいに聞こえる」

「そ、そんなことないよ。すごく似合ってるから」

「ふーんだ」

 

ど、どうしよう。シャルロットが拗ねてしまった。

 

「え、えっと……シャルロット。このあと一緒に泳ごうか」

「本当?」

「うん、僕も泳ごうとしてたし」

「なら、許してあげる」

 

絡めていた腕を離してくれた。胸があたってドキドキしていたが少し寂しく感じてしまった。

 

「ほら、泳ぐんでしょ? いこ悠人」

今度は手を繋いで海にはいっていく。

 

「シャルロット! 私も嫁と一緒に泳ぐつもりだ。抜け駆けは汚いぞ!」

「早い者勝ちだよラウラ」

「ならば奪うまで!」

 

ラウラが反対側の手を掴んできた。

 

「え、あ、ふ、2人とも」

「嫁よ、海にはいったらさっそく潜水をはじめるぞ」

「潜水って海に潜るって意味で解釈してもいいよね?」

「そうだ。これでも訓練してきたから問題はない」

 

いや、ラウラに問題なくても僕にはある。

軍人の潜水だとかなりの時間潜るから一般人である僕だとすぐ空気を求めて浮上する。

 

「ラウラ、潜水とかしたら悠人は耐えられないと思うよ? ここはゆっくり泳ぐとかにしようよ」

「そうか、ならそうするか」

「あの~泳ぐなら手、離してくれる?」

 

2人に挟まれるように手を握られた状態の僕。この状態で泳ぐのは無理かと思う。

 

「確かにそうだが」

「このまま離したくないんだよね。どこかふらふら行きそうだから」

 

僕は迷子になる子供かよ。

 

「こうなれば潜水はナシにして海にはいるのはどうだ?」

「それでいいんじゃない?」

「いや、あのね」

「ゆうとぉぉぉぉ!」

 

後ろから鈴が……って!

 

「ちょっと鈴、ストップ!」

「アタシを置いていくなんてぇぇぇぇ!」

 

全力疾走で僕を目掛けてジャンプをしてきた。

 

「待って待って!この状態で僕に抱きついたら!」

 

僕の背中に抱き付いて──

 

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

「なっ!?」

「えぇ!?」

 

僕、シャルロット、ラウラ、鈴の順番で声をあげると4人仲良く海に突っ込んだ。

 

「なんで受け止めないのよ!」

「無理に決まってるだろ!」

 

海面から顔を上げる。

手を繋いだままで勢いよく抱き付いてきたら倒れるに決まっている。

 

「2人とも大丈夫?」

「なんとかね」

「驚いたが問題ない」

 

ザブンと音をたてて立ち上がると2人の水着が海水にかかって吸い付いている。

 

「悠人?」

「嫁?」

「あ、いや……」

 

思わず視線を外す。

水着が2人の身体に貼り付いているように見えるから身体つきがより繊細に見えてくる。

 

「えっと……僕、少し海の家で休んでくるから3人はそのまま遊んでて」

 

いかんいかん、このまま水着を凝視しては教育に悪い。僕は3人から離れるように海の家に行く。

 

「悠人って恥ずかしがり屋なのかな?」

「それは違うわね。アイツはムッツリよ」

「ムッツリとはなんだ?」

「今のアタシ達の格好をみて平然としているけど頭の中はスケベな考えをしてるのよ」

「そんなことしなくても見たいなら私は……」

「私も嫁の受け入れ体勢はとっている」

「あ、アンタ達ね……」

 

 

 

 

「あ、ヤマトだ~」

 

海の家に行くと本音さんと簪が海の家に設置されている長椅子に座っていた。

本音さんの水着というよりキツネのような着ぐるみを着ている。

 

「本音さん、それ暑くないの?」

「もちろん暑いよ~」

「なら脱ぎなよ」

「でも、日焼けはしたくないから着ている」

 

納得していいのか分からないが理はかなっている。

サンオイルを塗るという発想もあったがまさか着ぐるみを着て日焼け防止をする考えは思いつかなかった。

 

「悠人君、本音と仲いいのね」

 

簪の水着はラウラと同じ黒でレースを付けて、白いリボンの結び目がある水着を着ている。なぜかむすっとしている。

 

「簪の水着も似合っているよ」

「本音の後付けみたいな言い方に聞こえる」

「そんなことないって、簪は露出とかあまりしないかと思ってたけど、大胆な水着も着るんだね」

「だ、大胆って私は」

「かんちゃん、ヤマトはどんな水着が好みなのか必死に考えてたんだよ」

「ほ、本音」

 

ということは僕のためにこの水着を着たってこと?いやいや、思い違いだよね。

 

「2人は休憩中?」

「そうだよ~さっきおりむー達とビーチバレーしてきた。ヤマトは?」

「鈴達と遊んできて疲れたから休憩」

「なら私達と同じだね」

 

本音さんの着ぐるみを見ているとこっちも暑くなってくる。

 

「本音さん、やっぱりそれ暑いよね。まさか水着とかは」

「もちろんつけてるよ。ヤマトのえっち~」

「あ、はい」

 

水着を着けないというのはないよね。少し期待していた自分が恥ずかしい。

 

「悠人君って本音の水着みたいの?」

 

「見たいのかといえば見ているかな?せっかく海に来てるんだから」

 

「ほぉ~ならばとくとご覧あれ~」

 

本音さんが立ち上がって着ぐるみを脱いで本音さんの水着を見る。

 

「これは……」

 

これは予想出来なかった。いや、予想不可と言っていい。

普通の水着は胸を隠すときは横に隠しているが本音さんの水着は縦に隠している。縦に胸を隠しているので本音さんの大きな谷間が丸見えなのだ。というか本音さんって隠れ巨乳なんだ。

 

「ヤマトの目が狼さんだ~」

「えっ、いや、ちがっ」

「きゃあ~狼さんに食べられちゃう~」

 

脱いだ着ぐるみを持ってそのままどこかへ行ってしまう。

 

「本音の胸、見てたでしょ」

「僕は」

「最低」

 

簪も立ち上がってどこかへ行ってしまった。

 

「はあ……」

 

はやく仲直りしたいと思っているのにどうしてこうなるんだろう……。

 

 

 

 

「なんで怒っちゃったんだろう……」

 

本当は怒りたくなかったのに本音の水着姿を見ているときの悠人君の態度が気に入らなかったのか頭に血がのぼってしまってあんなことを言ってしまった。

 

「いいよね本音は……」

 

自分の胸をみる。本音に比べると私の胸は小さく、今着ている水着が隠れるほど。

悠人君の幼馴染みである鈴や本音と同じクラスのラウラよりも大きいとは思っているが……。

 

「シャルロットの胸……大きいな……」

 

水着姿のシャルロットの胸を見たときは大きいと感じた。

最初は男の人だと思っていたのに女の子だとは思わなかった。シャルロットが自分の正体をばらしたとき彼女よりも悠人君のほうに怒ってしまい、あげくには手をあげてしまった。

 

「あれからかな……悠人君に距離を置いたのは」

 

一緒にお昼を摂るのをやめて、ガンダムを見るのをやめたのは……。

 

「けど、悠人君が悪い部分もある」

 

そう、あれは悠人君が悪い。隠していたことが許せないんではなく女の子と一緒の部屋で暮らしていたことが許せなかった。

私も悠人君と同じ部屋に──

 

「な、なに考えているの私」

 

首を振って考えるのをやめる。

 

「でも……」

 

私の水着姿を見て似合っているって言われたときは嬉しかった。

本当は海には泳がないでただ眺めるだけにしようとしたが悠人君も水着を買ったと言ったときは本音に相談してどういう水着が良いか迷ったほど。

 

「なんでありがとうって言えなかったんだろう」

 

ありがとうってただ一言いえば良かったのにあんな態度をとってしまった。

 

「はあ……」

 

自分が惨めすぎる。悠人君と仲直りしたいのに突き放す態度をとって、本当に情けない。




作者「やーいムッツリ悠人~」

悠人「女の子に囲まれてるから仕方ないじゃん!」

作者「リア充爆しろ」

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