インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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17話 手段を選ばないなら僕は君を

「一夏」

「シャルルじゃないか」

 

一夏と箒は廊下でシャルルと会う。

 

「今日の第3アリーナ、人の数が少ないんだって」

「セシリアも第3アリーナは人は少ないと言って先に行ったぞ」

「悠人と凰さんも第3アリーナに先に行ったからもしかしたら模擬戦やってるかもしれないね」

「なら、俺達も第3アリーナに行くか」

 

3人で第3アリーナに行くとちらほら生徒がいて、走っていく生徒もいる。

 

「なにかあったのか?」

「もしかして鈴とセシリアの戦いを見に行った人じゃないか?」

 

代表候補生の戦いは普通の戦いよりも激しく、強い。それらを見て学ぶ人もいるんだろう。

 

「なら観客席で見てみる?」

「そうだな」

 

ピットに行くより観客席で見たほうがはやいと考え、観客席に行くことにした。

 

 

 

 

鈴とセシリアさん対ボーデヴィッヒさんの戦いだが候補生2人を相手にボーデヴィッヒさんのほうが有利に動いている。

 

「無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな」

 

鈴の甲龍の装備である龍砲から衝撃砲を発射させるがボーデヴィッヒさんはその場から動いていない。しかしボーデヴィッヒさんのシュヴァルツェア・レーゲンには当たらず衝撃砲は拡散して消えてしまう。

肩に搭載されているワイヤー付のブレードを射出、鈴に目掛けて飛んでいき、鈴の足を絡める。

 

「そうそう何度もさせるものですか!」

 

セシリアさんのスターライトmkⅢと空中で浮遊しているビットがボーデヴィッヒさんを狙って撃つが──

 

「ふん……イギリスの第3世代兵器がこの程度の仕上がりとは笑わせる」

 

スターライトmkⅢの狙撃とビットの視覚外の射撃を簡単に避ける。

 

「動きを止めましたわね」

「貴様もな」

 

ボーデヴィッヒさんの右肩に搭載されている大型レールカノン砲の砲撃がスターライトmkⅢのレーザーを相殺される。セシリアさんが移動しようとしたら。

 

「きゃあ!」

 

先ほど拘束していた鈴をセシリアさんにぶつけて、ボーデヴィッヒさんは瞬時加速(イグニッション・ブースト)で接近する。

 

「この……!」

 

鈴の双天牙月の連撃はボーデヴィッヒさんの手首に装着されているプラズマ手刀に防がれ、両肩のワイヤーブレード以外に腰にも装着されていたワイヤーブレードも追加、鈴は逆に追い詰められてボーデヴィッヒさんの連撃を凌いでいる。

 

「こうなったら……」

 

再び衝撃砲を使おうとしたら──

 

「この状況で空間圧兵器を使うとは愚かな!」

 

大型レールカノン砲によって圧縮された衝撃砲を爆散する。大きく吹き飛ばされた鈴に止めをさそうとしている。

 

「やめ──」

「させませんわ!」

 

セシリアさんがスターライトmkⅢを盾にしてミサイルをボーデヴィッヒさんに向けて発射、その爆発は2人を巻き込んで地面に叩き付ける。

 

「あんた……やること無茶苦茶ね」

「苦情は後でお聞きします。これならあの機体も」

 

ところが煙が消えるとボーデヴィッヒさんの機体はダメージどころか傷ついていなかった。

 

「終わりなら私からいくぞ」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)をして2人に接近する。

 

「やめて!」

 

僕は2人を守るように前に出る。

 

「邪魔だ」

 

ボーデヴィッヒさんに蹴られ僕は吹き飛ばされてしまう。

 

「悠人!」

「悠人さん!」

「2人とも逃げて!」

 

ワイヤーブレードが2人を絡めてボーデヴィッヒさんのほうにたぐりよせる。

 

「ほら、さっきまでの威勢はどうした」

 

ボーデヴィッヒさんの一方的な暴力が2人の機体を壊していく。

腕や脚や体にその無機質な拳がたたき込まれる。

 

「やめてボーデヴィッヒさん! あなたはそんなことする人じゃ──」

「うるさい」

 

大型レールカノン砲が僕を狙って撃たれ、対ビームシールドで防ぐが大きく後退する。

 

「ボーデヴィッヒさん! どうしてこんなことを!」

「織斑一夏を倒すにはこうするしかない」

「2人は無関係なんだ! なんで2人を巻き込むんだ!」

「織斑一夏と戦うには仕方ないことだからだ」

「仕方ないこと……?」

 

鈴とセシリアさんをここまでやることが仕方ないことだと?

 

「ふざけないで!」

「ふざけてはいない。こうでもしないと織斑一夏は私を相手にしない」

「なんで一夏相手にここまでやる必要があるんだ!僕にいえば──」

「お前に私の気持ちのなにがわかる!」

 

急に2人に暴力を振るうのをやめた。

 

「私は織斑一夏に倒したいという純粋な気持ちで勝負をしろと言っている。あいつは勝負しないどころが私を相手にしない。それがどれだけ屈辱的なことか!」

 

今のボーデヴィッヒさんの言葉には怒りや恨みはなく。

 

「お前にわかるか! 討つ相手が目の前にいるのに相手にされない私の気持ちを! 私になくてあいつにあるものに妬んでなにが悪い!」

 

ただ純粋な気持ちを僕にぶつけていた。

 

「そんなのただのエゴだ!」

「エゴだろうとなんだろうと言いたければ何度でも言え、私は止めるつもりはない。織斑一夏を倒すためなら手段は選ばん」

 

それから2人を傷付け、シールドエネルギーが切れて、機体はどんどん……。

 

「やめて……」

 

僕が知っているボーデヴィッヒさんはこんなことはしない。彼女はただ寂しいだけで居場所を盗られたくないだけなんだ。

 

「やめろ……」

 

こんなことをさせてはいけない。2人を傷付けてはいけない。

 

「やめろぉぉぉぉ!」

 

エールストライカーパックを装着して瞬時加速(イグニッション・ブースト)でボーデヴィッヒさんに近付き、エールストライカーに装着されているビームサーベルを抜いた。

ボーデヴィッヒさんが僕の前に手を出すとまるで金縛りにあっているような感覚が僕を襲う。

 

「くっ、なんで……」

 

手に持っているビームサーベルどころか身体全身が固定されているかのように動かない。

 

「このAIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)は相手の動きを停止させることが出来る」

 

なんとか動こうとしているが指一本動かせない。

 

「許してほしいとは言わない。私を嫌ってもかまわない。だから──」

 

申し訳なさそうな顔を見せた。

 

「せめて……安らかに気を失ってくれ」

 

大型レールカノン砲は稼働音をあげて、僕を狙っている。

 

「くそ……」

 

何も出来ないまま終わるのか……。

 

「悠人から離れろぉぉぉぉ!」

 

アリーナの観客席から一夏が雪片弐型を持って接近していた。大型レールカノン砲を一夏に向けて撃ち、ボーデヴィッヒさんは僕から気を反らした。

 

「動ける?」

 

さっきまで金縛りにあっていたのになんで動けるのかわからないがこれはチャンスと思い、イーゲルシュテルンを撃ちながら後退する。

 

「ちっ……」

 

イーゲルシュテルンを回避してボーデヴィッヒさんは2人から離れて距離をとった。

 

「悠人、大丈夫か?」

「僕よりあの2人を心配して」

 

僕と一夏に気を取られたおかげで2人のISはボロボロだが辛うじて起動されたままだ。

 

「僕がボーデヴィッヒさんの相手をする。一夏は2人をお願い」

「お前1人で相手させられるかよ。俺も」

「今、僕達がやることは2人を戦線離脱させることだ!」

 

2人を守りながら戦うのは素人である僕達では無理だ。おまけにボーデヴィッヒさんはドイツの代表候補生。どちらか殿をつとめないと2人を離脱させることなんて出来ない。

 

「一夏の武器は刀一振りだけなんだ。ワイヤーブレードとプラズマ手刀があるボーデヴィッヒさんでは手数で負ける」

「けど、悠人、お前1人で」

「なら、僕が悠人の援護にまわる」

 

シャルルは自分の専用機である『ラファール・リヴァイヴカスタムⅡ』を装着していた。

 

「悠人、僕の装備は銃火器だから援護出来るでしょう?」

「出来たらシャルルも2人を離脱させる手伝いをしてほしいな」

「僕はフランスの代表候補生だよ? 実力からして悠人が離脱したほうが良いんじゃない?」

「冗談じゃない」

「だと思ったよ」

 

ボロボロの状態である2人は一夏に任せてシャルルはアサルトライフル(ヴェント)を取り出して、僕もビームライフルを持つ。

 

「フランスの第2世代型(アンティーク)と素人ごときでこのシュヴァルツェア・レーゲンに挑むのか?」

「ドイツの第3世代型(ルーキー)よりは動けるだろうからね」

「宇宙活動を想定として造られた作業用機械(IS)よりも戦争目的で造られたMS(こいつ)のほうが動けるさ」

 

一触即発の状態。

誰かが動けば戦闘開始される空気。ここまでくればもう止めることは出来ない。僕は──

 

「そこまで!」

 

凛とした声がアリーナに響き渡る。

 

「模擬戦をやるのは構わないがアリーナのシールドエネルギーを破壊してやるのは教師として黙認しかねる」

 

千冬さんがアリーナのフィールドに来ていて、僕達に近づいた。

 

「決着は学年別トーナメントでやれ、いいな?」

「教官がそう仰るなら」

「お前達もそれでいいな?」

 

否定的な言葉を言わせない威圧的な雰囲気で僕達に聞いてくる。

 

「わかりました」

「僕もそれで構いません」

「あ、あぁ……」

「教師には『はい』と返事しろ!」

「は、はい!」

 

一夏は直立姿勢をとって返事をした。

 

「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁ずる。解散!」




今回のラウラは一夏に対する憎しみはあまりなくただ純粋に戦いたいという気持ちなのですが一夏と戦うためには手段を選ばない性格になってます
原作よりは軟化してますかね?

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