魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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アニメから学べた事って、案外バカに出来ないですよね。

かくいう私自身も、『龍騎』や『リリカルなのはA's』、『とあるシリーズ』、そして『魔法少女育成計画』を観て、改めて『正義』の在り方を考えましたから。


95.きっかけ探し

『ハイドベノン』の衝突により、爆煙が風に乗って九尾達に襲いかかる。

一同が咽ぶ中、2つの人影が爆煙から転がり落ちてきた。ライアと王蛇だ。両者共に相討ちという形で、地面に叩きつけられたようだ。

 

「ライア!」

「ぐっ、ウゥ……!」

 

ラ・ピュセルとトップスピードが真っ先に駆け寄り、ライアの上半身を抱き起こした。一方の王蛇はカラミティ・メアリの助けもなく、自力で起き上がった。あれだけのダメージを受けていながら立ち上がれる気力が残っていた事に、ボロボロのライアは驚きを隠せない。

 

「……アァ! 久々に気分が良いなぁ……! だがまだだ。もっと来い……!」

 

首を鳴らしてさらなる刺激を求める王蛇に対し、ライアはこう言った。

 

「王蛇……! お前に聞きたい事がある」

「アァ?」

「お前は、斉藤 雄一という男の事を知っているか?」

「(⁉︎ そういや、こいつのダチはもう死んでて、それが浅倉と関係してるって言ってたよな……)」

 

これを聞いたトップスピードは、便乗するかのように追加で質問をした。

 

「俺からも聞かせてくれ! あんたは、室田 昇一って奴をどこまで知ってる⁉︎ あんたがやったんだろ⁉︎」

 

ライアやトップスピードだけでなく、その後方から駆け寄ってくる九尾らも王蛇に視線が集まる。

 

「……知るか。いちいち俺をイラつかせた奴の顔なんか、覚えてるわけないだろ?」

 

だが王蛇から返ってきた言葉は、何とも素っ気ないものだった。2人にとって親しかった者に怪我を負わせ、死亡、あるいは夢を断ち切られるといった残虐行為を働いたにもかかわらず、王蛇はバッサリと切り捨てる。龍騎やリップルがこれでもかと睨みつける中、ライアは割り切ったように呟く。

 

「……そうか。なら、いい。だがこれだけは言っておく。俺もトップスピードも、お前によって運命を狂わされた。『人を呪わば穴二つ』。よく覚えておく事だ」

「それがどうした。もっと俺と戦おうぜ……!」

 

溢れ出る力を抑えられないように体を震わせる王蛇。それに対し、ナイトは肩を竦めて呟いた。

 

「行くぞ。これ以上奴らに絡まれるのは面倒だ」

「でも……」

「このままやりあっても埒があかない。用がないなら、もう無理して関わる事はないからな」

「……そうだな」

 

龍騎も賛同し、一同はその場を離れる事に。当然王蛇は黙っているはずもなく。

 

「……おい待てよ。もう帰るのかぁ?まだまだ足りないんだよこっちは! ミラーワールドの中じゃないんだ。時間なんか気にせず戦えるだろ。もっと遊んでけよ!」

「悪いがこっちもお前の遊びに付き合っていられるほど、暇じゃない。帰らせてもらう」

「……フン。勝手にしな。そもそもふっかけてきたのはそこのガキの方だし」

 

メアリもため息まじりに銃を持つ手を下ろし、九尾に目線を向けた。九尾は目をそらし、ナイト達と共にその場から立ち去る事にした。

 

「待てよ……!」

 

王蛇が追いかけようとしたその時、不意に彼の動きが止まり、次の瞬間には地面に仰向けに倒れて、強制的に変身が解除されて、元の浅倉 陸に戻っていた。

 

「……おい?」

 

メアリが気になって近寄ってみると、浅倉の瞳は閉じていた。口からはいびきに近い音が鳴り響いている。ここまでの戦闘で疲労が溜まったのだろう。

 

「……やれやれ。どこまで自由奔放なのか……。ま、こっちも一仕事終わった所だし、ここいらでゆっくりさせてもらうか」

 

メアリも橋の欄干に背中を預けて腰を下ろし、寝転がる王蛇と共にしばらくの間、渓流の水が流れる音に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、しっかし焦ったよな。まさかこんな形であの2人とやりあうなんてさ」

「まぁ、みんな無事だったんだし、良かったよな! 九尾も怪我とかしてないだろ?」

「ま、まぁ……」

 

山奥から遠ざかり、ようやく最凶コンビの魔の手から離れられた一同は会話するだけの余裕が出来た。

 

「相手が悪いのもあるが、今回は賢明な判断だったかもな。あのままでは警官達も無事では済まなかったはずだ。人気のない場所に誘導出来た点はいい事だ」

「別に褒められる事じゃないです……。結局、俺はまだ答えを見つけれてない……。あの2人と戦ってれば、なんて思ってたんですけど、やっぱり人選違いだった所もあるかも」

「まだ、スノーホワイトの事で……?」

 

リップルは九尾の顔を覗き込む。九尾は何も言わずに首を縦に振る。

 

「九尾は……、スノーホワイトの事はこれからどうするつもりなんだ? このままなんて事はないだろ? 俺だって嫌だし」

「そりゃあ、俺だって……。あいつを傷つけたのは間違いなく俺に責任があります。俺があいつの気持ちも知らずに、勝手に先走って……。もし、俺がもっと早くあいつの考えに気づいてやれれば、俺は……」

 

それを聞いて最初に口を開いたのは龍騎だった。

 

「だったら本人に直接話を……ってのは無理か。なら、もっと別の方法でスノーホワイトの事を知るっていうか……」

「なるほどな。だったらラ・ピュセルの方が適任じゃね? だっておたくらは付き合い長いんだし」

 

トップスピードにそう言われて、ラ・ピュセルも頷きながら九尾に語りかける。

 

「僕で良ければ、力になるよ。というよりも、僕としても彼女をこのままにしておけない。同じく『正義の魔法少女』を愛する者として」

「ラ・ピュセル……」

「ラ・ピュセルも魔法少女愛好家か。スノーホワイトと同じだな」

 

なるべく日陰の所を優先的に歩くリップルがそう呟いた。

と、ここでトップスピードからある疑問が。

 

「つーかさ。スノーホワイトって何であそこまで魔法少女に拘ってるのかね。前から気になってたけど、あそこまで魔法少女にくいついてる中学生なんてそういないだろ? ラ・ピュセルみたいに男の間ではどうか分かんないけど、女同士だと何というか……、もう恥ずかしくならね? 昔の俺なら絶対恥ずかしい」

「ラ・ピュセル、何か知っているか」

 

ライアに尋ねられた、スノーホワイトをよく知る魔法少女は次のように答えた。

 

「スノーホワイトが……、小雪が魔法少女にハマるきっかけがあるとしたら、やっぱりアレかな」

「アレ?」

「みんなは、『キューティーヒーラー』ってアニメを知ってるかい?」

「知らん」

「興味ないな、そういうのは」

「俺も、そっち方面は疎いからな……」

「ゴメン。俺も聞いたことないな。令子さんとか島田さんは知ってるかもしれないけど」

「聞いた事があるような……、ないような……」

「あぁ、名前だけなら知ってるぜ! まぁ別に興味なかったし観てはないけど」

 

といったように、皆の反応は様々だった。ただ、スノーホワイトが魔法少女に憧れる原点であると分かってか、九尾はもう少し聞き出すことにしてみた。

 

「その話、もう少し詳しく聞かせてくれ」

「九尾?」

「……やっぱり、俺はあいつを放っておけない。パートナーだからとか、そんな事は関係ない。これ以上、あいつには人の生き方から外れてほしくないから。だから……。俺は、小雪の事を知る必要がある。その為には」

「相手の土俵に立って物事を考える……か」

 

ナイトはそう補足する。その考えで合っていたらしく、九尾は何も言わない。

 

「なるほどな。いいじゃんそういうの!」

「まぁ、パートナーの事を知るのも、良い転換期になるかもしれない」

 

と、ここでラ・ピュセルからある提案が。

 

「なら、僕の家に来ないかい? 今だったら『キューティーヒーラー』シリーズは全部揃えて持ってるし。せっかくなら観て考えても良いと思う。時間があるなら、今からでも準備できるよ。丁度親は出かけてるし」

「……なら、そうするか」

 

そうと決まれば、善は急げ。

一同はその場で解散後、九尾は家に戻り、支度を整えてから、颯太の家へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後。時間通りにやってきた大地は、玄関先で颯太と会ってから部屋まで招かれて、パソコンを立ち上げると、小雪にとって原点ともなる魔法少女アニメを視聴する準備を始めた。

リハビリに励んでいる事もあってか、車椅子から松葉杖に乗り換えている颯太は、大地に支えてもらいながら押し入れの奥に手を伸ばし、そこにあった段ボール箱から、DVDのケースを取り出した。埃が付着しているが、どれも『キューティーヒーラー』と各巻数が明記されている。

 

「最近は魔法少女活動に専念してたから観てないけど、多分このパソコンなら見れるはずだ」

「というより、よくここまで揃えられたな……」

「結構苦労したんだぞ。全巻揃えるのに隣町まで出かけたんだし。親とか友達にバレないように買いに行くのは、ある意味で命がけなんだから」

「隠れキリシタンってのがサマになってるな」

 

以前ライアがそう比喩した事を思い出し、苦笑する大地。

さすがに全ての内容を細かくチェックするほどの時間はない為、颯太の監修のもと、初代の、物語のキーとなる箇所を視聴し、ある程度は飛ばしながら目を通す事にした。大地の目の前の机には、いつの間にか颯太が用意した、『キューティーヒーラー』のガイドブックや魔法少女関連の月刊誌が置かれている。これから魔法少女の事を、小学校時代からの男友達に余すことなく語れる事に興奮しているのだろうか。

そうこうしているうちに、颯太がマウスを操作し、『キューティーヒーラー』の1話目の視聴が始まった。大地には馴染みのない、なんともリズミカルなオープニング曲が流れ始めた。

 

「なんというか、幼児向けって感じがするよな……」

「まだまだだよ。オープニングだけが全てじゃないんだから。そりゃあ子供の頃はそこまで深く考えてなかったけど、今になって観てみると、考えさせられる内容だぞ」

「ふ〜ん……」

「僕はキューティーヒーラーの織り成す必殺技に釘付けだったけど、小雪の場合は決めゼリフ派だったよ」

「なるほど……」

 

大地は画面に映る映像を見つつ、何気なくパンフレットに目を通し、颯太から解説をもらった。

物語の大筋としては割とシンプルだった。ごく普通の女子中学生がある日、謎の妖精と出会って不思議な力を手にして変身。世界の平和を守る為に悪の組織と戦う。

 

「まぁ、今時の女児だったら戦うヒロインっては珍しいし、惹かれるかもな」

「それもある。でもキューティーヒーラーがバカ売れしたのは、やっぱ物語の質とか、キャラのバランスの良さがあると思うんだ」

「バランスねぇ……」

 

ぎこちない様子を見せながらも、ようやく初めて敵を倒し、ホッとしている2人の新星ヒロインを観て、大地は頬杖をついた。

その後も日常を舞台に様々なシーンが流れていくが、ふと大地がある事に気づく。

 

「そういやこの2人。なんというか……。全然正反対な感じがするよな」

「おっ、良いとこに目を付けたな。そうなんだよ。同じクラスメイトでも、初めて変身するまでは全然接点はなかったんだ。例えばこの『キューティーパール』とか、理系で成績トップ、物静かでお嬢様風な家庭で暮らしてるんだけど、逆に『キューティーオニキス』はラクロス部でクラスの親友が多くて、活発なタイプなんだ。見た目も性格も真反対だから、同じクラスでも口も聞いた事がない2人でもある」

「それが終盤になるにつれて、固い友情へ結ばれていく、って事か」

 

そんな会話を交えつつ、物語は進んでいく。やがて大地は物語の最中で目についた点が。物語の要所要所にて、何度か2人が喧嘩して、仲違いするシーンが見られるが、最終的には仲良くなって、また敵を協力して倒している。

 

「こんだけ喧嘩してる割に、まだ仲直り出来るのか」

「あれは、お互いにまだ相手の事を知らないから、些細な喧嘩に繋がると思うんだ。だから、いろんな形で気持ちを伝える。そうやって2人は段々強くなるんだ。誰だって最初は弱いからね」

「……」

 

不意に自分の手のひらを見つめる大地だが、すぐに映像に目線を戻した。

物語の中盤以降、追加戦士が増えていく所で、再び会話が始まった。中にはダークヒーローポジの戦士も出てきて、大地も少しばかりくいついた。

 

「ダークキューティーね……。また随分と酷な役割の戦士が出てきたな」

「小雪は好印象を持たなかったらしいけど、僕はキューティーヒーラーシリーズの中じゃ好きだったよ。割と感情移入がしやすくて、考えさせられるっていうか。孤高のダークヒーローって、案外カッコいいものなんだぜ」

「ダークヒーロー……。まぁ、王蛇とかベルデとか、ルーラとかカラミティ・メアリとかが実際にいたんだしな。ダークヒーローなんて珍しくもないのかもな」

「そ、それは……」

 

乾いたような表情を浮かべる大地を観て、颯太は何も言い返せない。魔法少女も仮面ライダーも、必ずしも正義のヒーローを演じているわけではない。シロー曰く、自らの欲望に突き動かされて、戦う。今、目の前で二次元であるとはいえ、少女達もそういった感情を抱いているのではないか。本物になって現実に目を通した彼らには、そんな疑問を抱かずにはいられなかった。

とはいえ、何ら接点のないクラスメイトが、かけがえのない友達へと成長していく過程の丁寧さには、大地も人気の理由として頷ける箇所はあった。気がつけば、会話は成り立たずとも、物語の展開に注目していた。

ようやく悪の組織を倒し、元の日常生活に戻っても友情は途絶える事なく続いていく。そんなシーンをラストに、初代『キューティーヒーラー』は完結した。

エンドロールが流れて、息を吐く大地。ふと窓の外に目を向けると、夕日が沈みかけていた。思っていた以上に没頭していたようだ。

颯太もそれに気づいて、片付けながら口を開いた。

 

「悪いな。長い時間付き合わせて。でも分かっただろ? 小雪が魔法少女にハマる理由が何となく」

「まぁ、分かる気はするな。俺も昔からお前と一緒に観てたら、案外お前ほどじゃないにしろ、ファンになってたかも」

「そうか。それは勿体無い事したなぁ」

 

互いに笑みを浮かべながら、後片付けを進める親友2人。

確かに、男友達と肩を並べて魔法少女アニメを観るというこの過程は、大地にとって不思議と、無駄とは思えなかった。思えなかったのだが、今ひとつ自分の中でモヤモヤしたものがあり、この魔法少女アニメから何を得たのかは、自身の中でも理解できない。

大地の浮かない表情に気づいた颯太はベッドに腰を下ろしてから、大地に言った。

 

「まぁ、今すぐに答えを出せなんて、難しいよな。僕だってそうだし。もしこれから先、力になれる事があったら相談しろよ。僕の時だって、そうやって立ち直らせてくれたじゃんか」

「……そう、だな。今日はありがとな。じゃあ、俺はもう帰るから」

「あぁ、また後で」

 

そういって一旦自宅に戻ろうと足を動かした大地の耳に、聞き慣れた音が鳴り響く。マジカルフォンを通じての、メッセージ受信だ。颯太と顔を見合わせて、2人はマジカルフォンを起動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファヴ:『はいは〜い! みんな、チャットにぜんぜん顔を出さなくなったけど、元気にしてたぽん?』

シロー:『さて、今回はいよいよ最後のレアアイテム獲得者の発表を行う』

ファヴ:『諸事情で遅れてしまい、申し訳ないぽん。それでは、栄えあるマジカルキャンディー獲得数総合第1位のペアを発表するぽん! そのペアは……『九尾&スノーホワイト』ペアだぽん!』

シロー:『この2人は人員削減以前から人助け等に精を出していたからな。至極当然の結果だったかもしれない』

ファヴ:『素晴らしいとしか言いようがないぽん! これからも、頑張ってほしいぽん!』

シロー:『脱落の枠はあと12名。最後まで気を緩めずに、キャンディー集めに励んでくれたまえ』

ファヴ:『それじゃあ、みんなの活躍、期待してるぽん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ようやく全部揃ったぽん。これでますます刺激的な展開になりそうだぽん!』

『しかし良かったのか。結果的にスノーホワイトにサバイブが行き届いてしまって。クラムベリーは排除したがっていたはずだが』

『あれは運が悪かったとしか言いようがないぽん。ナイトとリップルが邪魔さえしなければ、楽に死ねたはずなのに。そういう意味じゃ、スノーホワイトも悪運が強いぽん。だからちょっとファヴも気になってるぽん。シローもそう思わないかぽん?』

『彼女にも生き残る要素がある……ということか』

『それは分からないけど……、少なくともパートナーを引き立たせる為に死ぬ事になっても、それはそれでアリな気がするぽん。だから、もう少し生かしてやっても良いとファヴは考えてるぽん』

『仮面ライダー九尾に、魔法少女スノーホワイト……。有力候補が次々と消えていく中で、この2人が、やはりこの試験の目玉となりそうだな……』

 

 




今回話題となった『キューティーヒーラー』については、元ネタがよく分からなかったので、初代プリキュアから参照しました。
ちなみに私は初代よりも、三代目の『プリキュア5』の方が印象に残ってるんですよね……。

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