魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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今回はタイトルからもお判りになる通り、いよいよあのモンスターが猛威を振るう……!


94.獣帝ジェノサイダー

「……あぁ。随分遠くまで来たな」

 

橋の欄干付近で休憩していた大地は自転車を近くに止めて、道中で買った缶ジュースを口に持っていきながらそう呟く。

母親から買い出しを頼まれて、いつも通い慣れている商店街に向かったのだが、目的の品がいくつか売り切れており、止むを得ず遠出する事になった。

冬はもう近いはずなのに、この日は朝から雲ひとつない青空が広がっており、直射日光の影響で暑いこと、この上ない。俗に言う温暖化が関係しているのだろうか。

だが、今の大地には暑さ以上に彼を悩ませている事がある。

仮面ライダー『九尾』として、そしてスノーホワイトのパートナーとしての、今後の事である。

 

「……理由なんて、考えた事なかったな」

 

復讐心の代償と言わんばかりに、スノーホワイトとの決別、更にシローから指摘された言葉が、彼に重くのしかかる。

 

「(……死にたくないのは俺も同じだ。だから戦う理由に……なるのか? まだモヤモヤしてるけど、もっと違う理由があるはずだよな。仮にそれが分かったとしても、どうやってそれを小雪に伝える……?)」

 

改めて、自分は不器用且つ退屈な人間だな、とつくづく痛感してしまう大地。気がつけば、缶の中は空になっていた。

ため息を一つついて、自宅兼神社に戻ろうと、自転車のハンドルに手を伸ばしたその時、近くからサイレンの音が聞こえてきた。まだ遠くの方ではあるが、何となく気になった大地は、音のする方へペダルを漕ぎ進んだ。

しばらくして、近道をしようと裏路地に進入した大地は途中で急ブレーキをかける事になる。

 

「……!」

 

みれば、目の前には数人の警官がうめき声をあげながら、重なって倒れている光景が。そしてすぐさま銃声が鳴り響き、男の悲鳴が大地の耳に届いた。路地の奥に、足を押さえてうずくまる警官が見えた。その太ももからは血が流れている。自転車から降りて駆け寄ろうとした大地だが、撃たれた警官が何者かによって蹴り飛ばされた。ロングブーツが見えた。

やがてその人影は、背を向けた状態で姿を見せた。テンガロンハットに、ビキニらしき下着をつけた人物。カラミティ・メアリだ。大地はそう直感する。その隣からは、やはりというべきか、紫色の蛇をモチーフにした仮面ライダー『王蛇』が現れる。普段は城南地区を拠点にしている2人がなぜこの場にいるのかは不明だが、見て見ぬ振りは出来ない。

王蛇は勘が鋭いのか、すぐに後方を向いて大地の存在に気づいた。カラミティ・メアリもパートナーに続いて後方を確認し、そして不敵な笑みを浮かべる。

 

「ったく、あいつらも世話を焼かせる。何もこんなクソ暑い真昼間にあたしらを駆り出すか普通? おかげで警官どころかガキまでくっついてきやがる」

「フンッ。うるさい連中だが、この際相手は誰でもいい」

「お前ら……!」

「何だい坊や。あたしらが気に入らないのかい? ならさっさと退きな。でないと……怪我じゃ済まなくなるかもよ!」

 

そう言って大地に向かって、手に持っていたハンドガンを構えて引き金を引いた。大地は横に飛んで、物陰に隠れる事でやり過ごした。銃弾が金属を掠める音を聞きながら、我ながら上出来な反応だと思いつつ、ポケットからカードデッキを取り出す。

 

「(さすがに相手が悪すぎるな……! けど、このまま逃げるなんて、俺には出来ない。だったらとことん……!)」

 

どの道このまま隠れていても、殺されるのがオチだ。すぐさま大地は壁を背にして、近くにあった鏡にカードデッキをかざす。

 

「変身!」

 

すぐさま九尾に変身し、物陰から出て、王蛇とカラミティ・メアリの前に立った。変身と叫んだ声とその主の姿を見た2人の反応は様々だった。

 

「なるほど。坊やが九尾だったのか。にしてもあんたみたいなガキが仮面ライダーなんてね。ま、ガキだからって手加減するつもりないけど。運が悪かったと思えばこれくらい」

「こいつらじゃ物足りない。けどお前となら楽しめそうだなぁ……。久々にライダーと殺り合えるんだからなぁ……!」

 

王蛇は首を鳴らして、早くも臨戦態勢だ。その間、九尾は視線の先で倒れている警官に目を向けた。

このまま戦ってしまうと、無防備な警官達も巻き込まれる。中宿での惨劇のように、これ以上一般人を巻き込む訳にはいかない。そこで九尾が最初に取り出したカードは……。

 

『ADVENT』

 

『グルルルル……!』

「オォッ……!」

 

王蛇に飛びかかったのは、九尾の契約モンスターである『フォクスロード』。2人がフォクスロードに気を取られている隙に九尾も突撃し、カラミティ・メアリにタックルした。そうしてフォクスロードと共に2人を押し出して、広い道路沿いに出てから口を開いた。

 

「ここじゃ人目につく。ついてこい(それにこいつらと戦っていれば、もしかしたら何か答えに繋がるものも見えてくるかもな)」

 

そう言って2人に背を向けて、近くの山に向かって飛び上がった。

 

「イライラするぜ……!」

 

そう吐き捨てて、王蛇も九尾を追いかけた。メアリもやれやれと思いつつ、2人の後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九尾が誘導する形で、戦いの舞台となったのは、山の近くにある渓流が見える崖。普段から人が立ち寄る事は無いため、確かに人目につかずに戦うには十分だろう。

下流に向かって流れる川の音が響き渡る中、狐は、蛇とガンマンと対峙する。カードデッキからカードを取り出し、左腕についているフォクスバイザーにベントインした。

 

『SWORD VENT』

 

2刀のフォクセイバーを握り、2人に向かって斬りかかった。

 

「ハァッ!」

「おっと!」

「フンッ!」

 

2人は横に飛び、王蛇は体勢を整え直した後、ベノバイザーを取り出し、カードをベントインする。

 

『SWORD VENT』

 

ベノサーベルを手にした王蛇は、九尾に反撃する。刀身の細いフォクセイバーでは太いベノサーベルを抑え付けられないと判断した九尾は受け流すように、振り下ろしてくる王蛇の猛攻を捌き切っていく。

 

「チィッ!」

 

軽やかに戦う九尾を見てイラついているのか、カラミティ・メアリはAKに持ち替えて、その足元めがけて撃ちまくる。九尾は王蛇を押し倒してから、回避に専念する。

その後もフォクセイバーのしなやかな斬撃が、王蛇を押し返し、遂には腕を掠め取り、血を流させた。これを見た王蛇は、追い詰められているにもかかわらず、昂ぶり始めた。

 

「そいつの武器の方が面白そうだなぁ……!」

 

そう言ってベノサーベルを放り捨てて、別のカードをベントインした。

 

『STEAL VENT』

 

すると、九尾の両手に握られていたフォクセイバーは勝手に手元から離れて、王蛇の両手に行き渡った。

 

「⁉︎ 俺の武器を奪うカードか……!」

「ハァッ!」

 

勢いよく振り回す王蛇。ベノサーベル以上に鋭い切れ味を持つフォクセイバーを前に、さすがの九尾も回避するしか選択肢はなかった。加えてカラミティ・メアリの銃撃も容赦なく迫ってくる。

 

「ほらほら! そっちばっか気にしてると、痛い目をみるよ!」

「くっ……!」

 

次第に追い詰められていく九尾は、いつの間にか、崖の端まで下がっていた。後方には崖の下に広がる川しかない。

 

「あんたも中々にできる奴だったけど、結局ここまでだったみたいだね。あんたのパートナーがあんな奴じゃなければ、まだ勝機はあっただろうに」

「スノーホワイトを……、バカにするな……!」

「遅ぇよ。んなこと口にしたってさ!」

 

カラミティ・メアリの魔法で強化されたAKが火を噴く……事はなかった。そのAKに手裏剣が直撃し、壊れはしなかったが、軌道がズレた。地面に落ちた手裏剣を見て、メアリは舌打ち混じりに叫んだ。

 

「リップル……! また邪魔しに来たのかい! 正義の味方気取りしやがって、どこまで甘ちゃんなのかねぇ!」

「私は……、私のやりたいようにやるだけだ!」

 

そう言って3人の横手からリップルが登場し、さらにクナイを投げつける。2人がそれをかわしている間に、九尾の元にリップルだけでなく、龍騎、トップスピード、ナイト、ライア、ラ・ピュセルが姿を現した。

 

「九尾! 大丈夫⁉︎」

「あ、あぁ。けど、どうして……」

「さっきネットの情報で、警察官が倒れてるってあって。それで詳しく聞いたら、狐みたいな仮面の人が、ガンマン風の人や紫色の蛇みたいな仮面の人を連れてどこかに行ったって書いてあって、多分君の事だと思ったんだ」

「んでもって俺が上から調べてたら、お前らが戦ってたのが見えて、みんなをここに案内したってわけ」

 

龍騎とトップスピードが手短に説明し、ラ・ピュセルが心配そうな顔つきで九尾に駆け寄る。

 

「九尾! 無事でよかった……!」

「悪いな。心配かけさせて。けど、これは俺個人の問題だ。後は俺が……」

「そんな事認めるわけないだろ! 僕達も協力するに決まってる! 同じチームだろ⁉︎」

「チーム……か」

 

ラ・ピュセルにそう言われ、黙り込む九尾。

その一方で、ライアは仮面の下から王蛇を睨みつけている。

 

「浅倉……!」

 

変身者の名前で呟き、拳を構えるライアだが、王蛇は鼻を鳴らした。

 

「お前に興味はない。さっさと俺をそいつと戦わせろよ!」

「随分と余裕があるのか、単に戦いたいだけのバカなのか知らないが、お前の敵は九尾だけじゃない」

「数を揃えて余裕をかましてるのはどっちかねぇ? そういう奴ほど、足元すくわれるのにさ!」

 

ナイトの言葉を一蹴するカラミティ・メアリに、リップルの投擲が迫る。が、これを器用にかわし、リップルを睨みつける。

 

「……目障りだね。そういや初めてあんたと会った時も、あたしみたいにそんな目をしてた。あの時からあんたはあたしをムカつかせ続けた。同じ目をする奴は2人もいらない。そろそろ決着つけとくか? あんたで良ければ」

「私は、お前とは違う」

「あっ?」

「確かに、昔の私と今のお前は似ている。……たった一つだけ、ナイトやトップスピードみたいな存在がいるかどうかという違いを除けばな」

「リップル……!」

「私は……、お前のように力を屈服させる事だけに使うようなクズにはならない! 自分の正義を貫きながら、誰かを守っていけるような力を求めるバカになら、なってやる!」

 

珍しく感情的になったリップルを見て、一同は彼女に目線を向ける。が、それもほんの数秒後には緊迫した雰囲気へと変わる。

 

「……気に入らない。潰してやるよ。その後ろにいるくだらない連中と共になぁ!」

 

そう言ってAKを構え直すカラミティ・メアリだったが、そこへ四方八方からうめき声と共に、ヤゴ型のミラーモンスター『シアゴースト』が飛びかかってきた。当然メアリや王蛇だけでなく、九尾達にも被害が及んだ。

 

「おわっ⁉︎」

「くっ……! 複数で攻めてくるタイプか!」

「こ、のぉ!」

 

龍騎がしがみついてくるシアゴーストを払いのけようとしたその時、トップスピードの飛び蹴りが決まり、シアゴーストは吹き飛ばされる。

 

「トップスピード!」

「こいつは俺が何とかしてやる! だから姐さん達を止めてくれ! リップルも俺を手伝ってくれ!」

「……分かった!」

 

リップルは後退し、トップスピードと共にシアゴーストを九尾達も所から遠ざけようと動いた。2人の魔法少女が駆け回りながら注意を引かせて、シアゴースト達を誘導した。

その間に、龍騎達は2人の最強最悪コンビを相手に、戦いを始める事に。

 

「……フンッ。戦う相手は多い方が良い……!」

 

『STRIKE VENT』

 

王蛇は、元々ガイの武器であった『メタルホーン』を装着し、ナイトらに襲いかかる。メアリもそれに続き、銃撃を始めるが、龍騎達もかわしながらドラグセイバーやウィングランサー、エビルウィップ等で対抗した。

そして、リップルとトップスピードは渓流に建てられている大橋へとシアゴーストを誘導する事に成功した。これだけ広ければ、戦うには申し分ない。リップルが短刀を手に持とうとしたその時、トップスピードが声をかけた。

 

「あ〜、リップルさんよ」

「何?」

「さっきは、結構思い切った事言ったよな。俺、安心したよ。リップルならもう、ちょっと前までみたいに危なっかしい所を見ずに済みそうだし」

「あ、あれは、その……」

「さすがツンデレさん。でも、俺も同じ気持ちだ。守りたいものがあるからな。魔法少女のこれは、その為に授かった力だ」

 

トップスピードはマジカルフォンを取り出し、タップすると周りから炎が吹き荒れた。それを見てリップルもまた頷いて、同じようにマジカルフォンをタップすると、風が吹き荒れた。

 

『『SURVIVE』』

 

[挿入歌:果てなき希望]

 

両者同時に、ホルダーにマジカルフォンをはめ込み、トップスピードサバイブ、リップルサバイブへと進化した。

 

「ッシャア! いっちょ派手に暴れるか!」

「あまり無茶するなよ。何かあったら、すぐに私に任せろ」

「頼りにしてるぜリップル!」

 

トップスピードサバイブはドラグバイザーツバイを手に持ち、ドラグブレードとしてシアゴーストに斬りつける。リップルサバイブもダークブレードを取り出して、シアゴーストを翻弄する。そこに加えて、リップルサバイブが魔法を駆使して手裏剣を投げつけて、シアゴーストを一箇所に固めた。散ろうとするシアゴーストは、トップスピードサバイブがラピッドスワローに乗りながら囲むように飛び回ることで乱れないようにしている。

 

「ある程度固まったな。よし、いくぞリップル!」

「分かってる!」

 

2人は横に並び、マジカルフォンをタップした。

 

「ハッ! ハァァァァァァァァァァァァァッ!」

「ヤァッ!」

 

トップスピードサバイブが腕を曲げると、本来ならドラグランザーが出てくるところだが、進化前のドラグレッダーが姿を現し、トップスピードサバイブの周りを旋回し始める。一方でリップルサバイブもまた上空に飛び上がり、ダークレイダーからダークウィングに姿を変えたコウモリが、リップルサバイブの背中にしがみついて、リップルの背中にマントが取り付けられた。

そしてトップスピードサバイブは飛び上がり、空中で一回転すると、右足を前に突き出し、リップルサバイブはマントが彼女を覆い、ドリル状になってシアゴーストに狙いを定めた。

2人のその姿は、まさに互いのパートナーの必殺技の体勢そのものだ。サバイブの力を得た魔法少女は、パートナーの必殺技を受け継いでいたのだ。

 

「イッケェェェェェェェェェ!」

「オォォォォォォォォォォォッ!」

 

トップスピードサバイブの『ドラゴンライダーキック』と、リップルサバイブの『飛翔斬』は、固まっていたシアゴースト達をまとめて塵一つ残さず一掃した。一息ついた2人は互いに顔を見合わせた。

 

「やったな、相棒!」

「……あぁ」

 

普段は無愛想な表情しか見せないリップルも、この時はかすかに笑みを浮かべて、トップスピードとハイタッチした。

が、すぐに表情を引き締めて、九尾達のいた方へ顔を向ける。

 

「こんな事をしてる場合じゃない。早く戻らないと」

「あ、あぁ。そうだな! よし、後ろに乗れリップル!」

 

トップスピードサバイブは早速ラピッドスワローに跨り、リップルサバイブに手招きした。リップルサバイブは迷うことなくトップスピードサバイブの後ろについて、ラピッドスワローは急発進した。

そんな中、リップルサバイブは心の中で呟いていた。

 

「(力が弱くても、戦えなくても、スノーホワイトみたいに誰かに必要とされるような魔法少女になれたらそれでいい。私の魔法は誰かを幸せにできるものでは決してない。でも、それでも、今あるこの関係だけは、絶対に壊されたくない。壊させない)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、九尾達の方も激しい戦いが続いていた。

 

『『『『SURVIVE』』』』

 

龍騎、ナイト、ライア、ラ・ピュセルはサバイブとなり、応戦を始めた。加えて人数差でも優位に立っている事もあって、王蛇とカラミティ・メアリを押し返していた。

 

『BLAZE VENT』

 

「ハァッ!」

「チィッ!」

 

まだサバイブを獲得していない九尾も、仲間が来てくれた事で精神的にも回復したのか、持ち前の身体能力を駆使して『ブレイズボンバー』でメアリにダメージを与えていった。

 

「ベノスネーカー! やれ!」

 

たまらずメアリはパートナーの契約モンスターを呼び出し、九尾達に向かって毒液を浴びせようとした。

 

『SHOOT VENT』

 

だがそこへダークブレードをダークシールドに収め直したナイトサバイブがベントインしたカードの効力で、ダークバイザーツバイの両端の弓が開き、ボウガンとなって光の矢が放たれ、ベノスネーカーに直撃した。

 

「貴様もだ!」

「グゥッ……!」

 

おまけの一射として『ダークアロー』がメアリの足元に放たれ、メアリは不安定な足場である岩を転がった。

 

『THUNDER VENT』

 

「王蛇ぁ……! くらえ!」

 

ライアサバイブがカードをベントインすると、王蛇の上空にエクソダイバーが出現した。ちょうど王蛇の真上に位置をつけると、腹に収納されていた車輪が勢いよく回転し、そこから真下にいた王蛇に向かって雷が落雷した。『ヴェイパースパーク』が王蛇に直撃し、爆発と共に王蛇を吹き飛ばす。ヴェイパースパークを直に受けて全身が痺れた王蛇に、ドラグブレードを構える龍騎サバイブと、魔法で肥大化させた大剣を構えるラ・ピュセルサバイブは同時に剣の先端を突き出し、王蛇を突き飛ばした。王蛇は崖下の岩場に落下し、平たい部分に体を打ち付けた。さすがに無抵抗で叩きつけられては、王蛇とてすぐには動けない。そう思った龍騎サバイブは下にいる王蛇に向かって叫んだ。

 

「もう終わりだ浅倉! 大人しく刑務所に戻れ!」

「フハハハハハハッ!」

 

だがどうだろう。王蛇は体を大きく振り動かし、痺れを無理やり振り払った。そして何事もなかったかのように龍騎サバイブ達のいる所へ飛び上がって着地する。

 

「浅倉ぁ!」

「! 待ってライア!」

 

ラ・ピュセルサバイブの制止も無視してライアサバイブが飛びかかるが。

 

『ADVENT』

 

「グワッ!」

 

王蛇が呼び出した、黒いエビルダイバーがライアサバイブの死角から体当たりして、彼を弾き飛ばした。

 

『ADVENT』

 

さらに追撃とばかりに今度は黒いメタルゲラスを呼び出し、倒れているライアサバイブに向かって突進してきた。

 

「! ライア!」

 

『ACCEL VENT』

 

九尾は高速移動でライアサバイブに接近して担ぎ上げて、メタルゲラスから遠ざけた。

その一方でカラミティ・メアリも勢いを取り戻したのか、ナイトサバイブを退けつつ、ベノスネーカーと共に王蛇と合流した。

王蛇、カラミティ・メアリ、ベノスネーカー、黒いメタルゲラス、黒いエビルダイバー。5体から発せられるオーラは、九尾達に異様なプレッシャーをかけてくる。

と、ここで王蛇が今までに見せた事のないような笑い声を発した。

 

「お前らと戦ってる方がよほど面白い。ライダーも魔法少女も、こうこなくっちゃなぁ……。良いぜ、お前らに面白いものを見せてやるよ。俺のとっておきを」

 

そう言って王蛇が取り出して九尾達に見せたのは、磁石のような絵柄の特殊能力系のカード。それをベノバイザーにベントインした。

 

『UNITE VENT』

 

一同が初めて見るアドベントカードに身を引き締める中、信じがたい現象が5人の目の前で起きた。彼らが契約モンスターとして使役していたベノスネーカー、メタルゲラス、エビルダイバーが一つに重なり、ベノスネーカーを軸に、その姿を変えていった。メタルゲラスのようなツノのついた頭部に、両手と両足。背中にはエビルダイバーの鰭のような翼が生えて、その姿はまるで竜。

3体合体によって誕生したキメラ型の契約モンスター『ジェノサイダー』が、ここに姿を現した。

 

「う、嘘だろ⁉︎」

「モンスターを合体させるカードまであるなんて……!」

「これが奴らの切り札、というわけか」

 

ナイトサバイブも冷静に見てはいるものの、初めて見る相手にどう対処すれば良いのか分からず、ジリジリと後ずさっていた。

それを見てカラミティ・メアリは余裕と言わんばかりに笑った。

 

「どうやら形勢逆転みたいだね。にしてもこいつは良いな。モンスターを一つにまとめて強化するカード。フォルムも嫌いじゃないよ」

「やれ」

 

王蛇が一言、そう命じただけで、九尾達に向かってジェノサイダーは口から光弾を吐き出した。光弾は九尾達に直に襲いかかり、口々から出た悲鳴は爆発音に掻き消されるほどに凄まじい攻撃が、目の前の敵を薙ぎ払っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆音が耳に届いた事で、リップルとトップスピードの間で緊張感が生まれる。さらに速度を上げて爆発音のした地点に向かうと、そこから少し離れた、道路が通っている地点に九尾達の姿が見えた。見たところ、5人とも健在だったが、明らかに傷を負っている。

 

「みんな!」

 

2人はすぐそばで着地し、ラピッドスワローから降りて、5人の元へ駆け寄る。サバイブになっていた龍騎達はすでに皆、元の形態へと戻っている。時間が経った事で強制解除されたようだ。なお、ここに来る途中でリップルもトップスピードもサバイブの効力が切れて元に戻っていた。そんな7人と対峙する王蛇とカラミティ・メアリの方も、まだ余力が残っている様子だった。ジェノサイダーの方は、サバイブ同様時間切れになったのか、その姿はない。

 

「フフッ。遅かったねぇお嬢ちゃん達。けどこれで分かっただろう? あんたらみたいに、ありもしない正義を振りかざし続けてる強者気取りが、あたしらに勝てるどころか、サバイブすら使いこなせないって事がさぁ!」

「メアリ……!」

「くっ……!」

 

トップスピードとリップルは2人を睨みつけ、リップルに至ってはクナイに手を伸ばして、いつでも戦闘に入れるような体勢を作っている。

 

「まだ、だ……!」

 

だがそこへ、ライアの力強い声が聞こえてくる。

 

「まだ、運命は変わっていない……! こんな事でやられる俺達じゃない事は、自分達自身がよく知っている……! それに浅倉、お前には聞きたい事があるからな……! 話が聞けるように、大人しくしてもらおうか!」

 

『FINAL VENT』

 

ライアが震えながらエビルバイザーにカードをベントインすると、後方から現れたエビルダイバーに飛び乗って、王蛇めがけて突撃を始めた。

 

「……ハハハ!」

 

『FINAL VENT』

 

これに対し王蛇もカードをベントインし、身構える。後方から、黒いエビルダイバーが出現し、ライアと同様に黒いエビルダイバーに飛び乗り、ライアめがけて突撃する。

目には目を、『ハイドベノン』には『ハイドベノン』を。

両者共に同じ必殺技が真正面から激突するまで、さほど時間はかからなかった。

 

「ライアぁ!」

 

パートナーであるラ・ピュセルの叫び声は、ハイドベノン同士がぶつかった衝撃で起こった爆発によって掻き消されてしまった……。

 

 

 




最近は『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』に没頭してますが、本当に面白いソーシャルゲームですよあれ!
まだ「結城友奈の章」しかストーリーが進めれていませんが、原作とほぼ同じ流れなので、まだ本編を観てない方でも、十分新鮮な気持ちで楽しめますよ!
今ならガチャも大当たりが出やすいし、マジでお勧めしたいです……!

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