魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今日から「ゆゆゆ」のアプリが配信されましたね。私は投稿後にやってみるつもりです。


93.漢の勝負 龍騎vsゾルダ

マグナギガから放たれた、無数に近い銃撃の嵐は、対峙する龍騎に向かって一直線に覆いかぶさっていく。

 

「(やっと終わったか)」

 

トリガーを引き終えたゾルダは、肩の力を抜いた。

 

「(これでもう、あいつとは2度と顔を会わせる事はない)」

 

罪悪感はなかった。相手はライダー。ライダーは魔法少女同様、戦う定めにある。約束の件もあったが、相手を潰す事を決断したゾルダは、深く息を吐いて、マグナバイザーを下ろす。

だが、ゾルダはまだ知らない。『龍騎』と呼ばれるライダーの、底知れぬ根性を。

 

『BROOM VENT』

 

その電子音を、ゾルダは聞き逃さなかった。ハッとしたゾルダの視線の先に、『エンドオブワールド』によって出来た爆炎が広がっている。その炎の中から、信じられないスピードで飛び出してきた影があった。

 

「ウォォォォォォォッ⁉︎」

 

ゾルダの見間違いでなければ、絶叫と共に箒らしきものにしがみついて飛んでいるのは、龍騎に違いなかった。

エンドオブワールドに巻き込まれる直前にパートナーカードの『ブルームベント』を使って龍騎版ラピッドスワローで逃げ切ろうとした龍騎は、跨ってはおらず、ラピッドスワローにぶら下がって落ちないように必死にしがみついているという、何ともシュールな光景であったが、少なくとも致命傷を負っている様子はない。

 

「……!」

 

だが傍観してばかりもいられない。龍騎がラピッドスワローもろとも、こちらに急接近している。正規の方法で乗車していないので、コントロールが上手くいってないようだ。たまらずマグナバイザーを構え直して撃ちまくるゾルダだったが、空をフラフラ飛んでいる敵に必中できるほどのスキルは持ち合わせていない。

そして龍騎はそのまま体当たりする形でゾルダと激突し、両者は地面を転がってようやく停止した。

 

「ってぇぇぇぇ……!」

「うっ……!」

 

両者は気力を奮い立たせて立ち上がり、体に力を込める。そして龍騎が少し誇らしげに胸を張って呟く。

 

「へへっ。悪いけど、今日の俺はしぶといよ」

「みたいだな。そうやって根拠もない癖して抗う。俺にとっちゃ、お前見たいのが一番つまらないんだよ!」

「北岡さんにとってそうでも、俺は、諦めが悪いんだよ! ッシャア!」

 

ひと吠えした龍騎が再びゾルダに向かって突撃する。また無策に突っ込んでくるか。ゾルダはバックステップしながら、マグナバイザーで牽制する。が、龍騎には2度も同じ手は通用しない。そればかりか、一直線にゾルダにタックルし、地面に倒そうとする。が、ゾルダにも意地があるのか、倒れることなく抵抗している。

幾度となく繰り返される、タックルと銃撃の応酬。先に痺れを切らしたのはゾルダの方だった。

 

「ったく、お前ってさぁ、全然変わってないよ、何もかも! さっきから同じパターンばっかりで、本気で俺に勝つ気ある⁉︎ それとも、まだライダーや魔法少女の戦いを否定する気⁉︎ 少しは考えも変わったかと思えばこのザマか?」

「考えを……、ライダーや魔法少女同士が戦う事を否定するって考えは、変えるつもりなんてないよ」

 

ようやく龍騎が口を開いたのは、ゾルダを殴り飛ばして、引き離した後だった。そして首を横に振りながら、こう語る。

 

「……いや。そこだけは変わっちゃいけなかったんだ。俺は、一度それを忘れた事がある。俺が、ライダーになった理由を」

 

龍騎の脳裏に、美華を殺され、自棄になっていた頃にナイトを始め、九尾やスノーホワイトらと戦ってしまった際の情景が。

 

「俺は、人を守る為にライダーになったんだ。俺にはまだ、ライダーや魔法少女を倒すって事の重さが分かってないのかもしれない。でも、だから今の俺にできる事は、それだけなんだ。戦いが何だろうと、俺は俺にできる事を最後までやる」

 

そして拳に力を込めて、ゾルダに向かって突き出す。

 

「俺は、この戦いに勝って、亜子ちゃんと、亜子ちゃんのお父さんに、もう一度話し合う機会を作る。あの子の笑顔を、守れるのなら、俺は、戦える!」

「……! バカっていうより、お前はなんか、ズレてるみたいだけどな!」

 

『SHOOT VENT』

 

「それでも、俺は……!」

 

『STRIKE VENT』

 

龍騎はドラグクローを、ゾルダはギガランチャーを手にして、攻撃の体制に入った。ゾルダはギガランチャーの銃口を龍騎に素早く合わせる。ギガランチャーの威力を、向こうが知らないはずもない。それに恐れをなして、必ず回避行為が行われる。ならば確実に龍騎が取る手段は先ず、銃撃をかわそうとして、弾が飛んでくる瞬間に飛んで回避すること。そうすれば、一度の発射に多少のタイムラグが起こるゾルダの裏をかいて、ドラグクローを当てる事が可能だ。

ならば、トリガーを引く『ふり』をして、更に裏をかいて龍騎がバランスを崩したタイミングで、確実に狙い撃ちする。自分のタイミングで、確実に仕留める。

駆け抜けてくる龍騎を見据えながら、ゾルダは脳内イメージを決行する。

数十メートル、数メートル……。段々と距離が詰められていく。龍騎は走ることを止めない。まだその時は来ないか。ゾルダは引き金を握る手に力を込める。

 

「ウォォォォォォォ!」

 

射程圏内に入り、ゾルダは更に意識を眼前に集中する。龍騎はまだ走ってくる。肘を曲げて、右腕についたドラグクローを後ろに引く。

……と、ここでゾルダの中でふとした可能性がよぎった。それは彼を驚かせる事に他ならない。

もし、龍騎が最初からゾルダにドラグクローを当てる事だけを考えて突撃してくるのだとしたら? ギガランチャーの殺傷力など、気にもとめていなかったとしたら?

 

「! マジか……⁉︎」

 

その予感が確信へと変わった時には、今度は龍騎の方が間合いに入っていた。契約モンスターのドラグレッダーが上空から龍騎の後方へと接近し、右腕をアッパーの要領で振り上げると、両方の口から火を吹いて、『ドラグクローファイヤー』がギガランチャーに直撃した。

 

「!」

 

ギガランチャーはゾルダの手元から離れて、空中へ飛び上がり、そのまま上空で爆散。

 

「ダァァァァァァァァァァ!」

 

だが龍騎の猛追はそこで終わらない。ギガランチャーの行方に視線が泳いでしまったゾルダは、ドラグクローによる、龍騎のパンチをかわせるはずもなく、殴り飛ばされた。

親父にも、お袋にもぶたれた事なかったのに。朦朧とする意識の中、地面に背中から叩きつけられたゾルダは、唐突に意識を取り戻した。頭を揺さぶられた影響からか、起き上がるだけの気力は残っていなかったが、顔だけは動かす事ができた。

腰を下ろして息を整えた龍騎は、仰向けのゾルダに近寄り、口を開いた。

 

「ハァッ、ハァッ……! 今ので、あんたを地面に伏せれたし、これは俺の勝ちって事で良いよな」

「……チッ」

 

舌打ちするゾルダだが、反撃するだけの気力は残っていない。今のままでは龍騎に分がある。これ以上抗っても、無理があると察したゾルダは、両腕を地面に垂らした。

 

「……お前、少しはやるようになったって所か」

「そうかな……?」

 

不意に龍騎は頭を掻いて、首を傾げる。

 

「あの状況で逃げずに、バカみたいに突っ込んでくるとか、サバイブ……だっけ? あれを使わずに俺に挑んでくるんだもの。大した根性持ってるな、お前」

「……」

 

ゾルダの評価を黙って聞いていた龍騎だったが、しばらくして、こう返答した。

 

「こんな事言うのは悪いかもしれないけど……。ゾルダ、あんたの方が弱くなっちゃったんじゃないの?」

「ハァッ⁉︎ 俺が⁉︎」

「だってそうだろ。あんたは……」

「前にも言っただろ……! 俺は自分が一番可愛いんだよ。他人の為にの犠牲は美しくない! ……最低だと思うか? 思うよな、お前だったら。でも、だからこそ強くなれる。結局どう取り繕った所で、自分の為に戦うって決めるしか、生き残る術はないんだよ! それが分かってたら、ゴロちゃんは……!」

 

息を荒げてそう言い返すゾルダ。それに対し龍騎はというと……。

 

「言ってる事は分かるよ。北岡さんに何かあったのは分かる。何を背負って戦うのかは人それぞれだし、戦い方だって人それぞれだよ。俺はそれを否定するつもりはないよ。でも、ただ捨てれば良いなんて事は絶対ないよ。あんたは心の中で、大切にしてたものを捨てて、俺と戦った。だから俺に勝てなくなっちゃったんじゃないの?」

「俺が、捨てたもの……」

「それが何なのかは、俺には分からない。けどこれだけは言える。俺は、『誰かを守る為に変身する』って気持ちだけは捨ててない。変わってない。変えるつもりもないし、これからも、それを忘れずに、戦い続ける。それだけだよ」

「……ハッ」

 

ゾルダは深く息を吐く。どうやら自分が思っていた以上に、龍騎は想像を超えていた。完敗を認めるつもりはないが、今は負けを認めるしかない。

ゾルダは腰に力を入れて、上半身を起こした。

 

「……で、お前が会いたいのは、鳩田 重蔵……だったか? まぁ、面会できるように連絡ぐらいは入れといてやるからさ。とりあえず、今日の所は帰ってくれよ」

「! 北岡さん……!」

「ここいらで漢意気を見せておかないと、カッコ悪くてゴロちゃんに顔向けできないし」

 

そう言って立ち上がろうとするゾルダ。そこへ龍騎が無言で手を差し伸べる。気に食わなかったが、ゾルダもまた、無言でその手を握り返し、立ち上がってミラーワールドから出る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

娘との面会を断ってから3日後。妻を殺害し、留置所でいつ終わるかも分からない生活をしていた鳩田 重蔵に、面会を命じられた。また亜子が来たのかと思いつつ、断ろうと思ったが、今回はそうはいかなかった。3日前と違う点は2つ。

1つは面会者が亜子ではないとの事。そしてもう1つは、その面会があの有名弁護士の北岡 賢治によって半ば強引に決められた事。重蔵自身は罪を認めているため、今更名のある弁護士に弁護してもらうつもりはないが、気になった重蔵は言われるがままに承諾。

パイプ椅子に座って面会相手を待っていると、警官と共にその後ろをついてくる、1人の男性が。重蔵は首を傾げた。少なくとも、ヘルメットを片手に持つ、オレンジ色の上着を着た男性に見覚えがない。

その後警官は部屋の外に出て、男性は重蔵の顔を見て挨拶を始めた。

 

「えっと……。初めまして、ですよね。俺、城戸 正史って言います。OREジャーナルの新聞記者見習いです」

 

そう言って正史は名刺を重蔵に見せる。ガラス窓で隔たれているため、さすがに渡す事は出来ないが。だが、重蔵が聞きたいのはそこではない。

 

「……それで、あなたは一体、私と何の関係が」

「あっ。それは、その……。亜子ちゃんと最近知り合った仲なんです」

「亜子と……」

 

なるほど、とようやく納得する重蔵。しかし、それでもまだ疑問に残る点もある。

 

「で、亜子の知り合いが、私に何の用で?」

「亜子ちゃんから、あなたの事は聞いてます。あなたが、亜子ちゃんとの面会を拒んでる事も……。でも俺、どうしてもこのままじゃ納得がいかなくて……。だから、北岡さんに個人的に頼んで、こうして会いに来たんです」

「……それはつまり、亜子の意思とは関係なく、あなた自身が、という事ですか」

「そうです。亜子ちゃんからじゃ無理だと分かったから、俺から頼みに来たんです。亜子ちゃんに会って、もう一度話し合うべきなんですよ! お願いです!」

 

正史は頭を下げて、亜子との面会の機会を作ろうとしていた。だが重蔵も素直に首を縦に振るわけもなく。

 

「……あなたが何を考えて、私と亜子を会わせようとするのかは分かりませんが、そういう話なら、お断りです。私には、亜子と話す資格はない」

「……何で、ですか」

「些細な理由とはいえ、私は妻に手をかけた。そのせいで、亜子は苦しんでいる。こんな人殺しなんかに事を気にかけていたら、それだけで重荷になる。だから早く、私の事など忘れて、普通の女の子として生活を続けて欲しい。亜子を引き取っている家族の方にも、そう言伝を済ませています。だから、あなたがやろうとしてる事は結局亜子を……」

 

重蔵が面会を締め括ろうと、正史に目を向けるが、そこでハッとした。正史の目は鋭く、重蔵を睨みつけている。

 

「……あんた。亜子ちゃんの親父さんなのに、そんな事も気づかないのかよ……!」

「何?」

「亜子ちゃんは、ずっとあんたの事を気にかけてたんだぞ! 人殺しだとか、そういう事は関係ない! あんたと亜子ちゃんは、血の繋がった家族なんだぞ! 家族の事を想うのは、人として当たり前じゃないか! その優しさに、どうして気づいてやれないんだよ!」

「!」

 

正史は息を整えた後、こう語りかける。

 

「……すいません、取り乱して。でも重蔵さん。あんたを見ててやっぱり親子だって思ったよ。あんたと亜子ちゃんは、よく似てる。誰かに迷惑をかけたくなくて、自分1人で何でも抱え込もうとしてる。俺や会社のみんなに全部明かしてくれた時も、亜子ちゃんはそんな感じだった」

 

でも……、と言葉を区切る正史。

 

「だからって1人で抱え込んでたって、何も変わらない。確かに、変えちゃいけない信念もあると思う。でも俺から言わせたら、誰にも頼らずに全部抱え込んでたって、本当の意味で強くなれない。本当に強い人ってさ。周りにそういう、頼れる人がたくさんいる奴を指してるって思うんだ」

「頼れる人……か」

「少なくとも、俺には頼れる人がそれなりにできた。後さ。亜子ちゃんにとって一番頼れる人って、俺はやっぱり親父さんだと思う。今はこうして離ればなれになってるけど、その繋がりが消えたわけじゃない」

「……」

「重蔵さん。最後にもう一度お願いするよ。亜子ちゃんに会って、親子として、話し合ってくれ」

 

今一度頭を下げる正史。本来なら赤の他人である彼の、懸命な姿を見ているうちに、重蔵の中で、新しい息吹に当たりたくなる感情が芽生え始めた。

そして彼は、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計に目をやった真琴は北岡と共に、面会時間が終わった事を確認した。やがて、正史が警官に連れられて、2人の元へ戻ってきた。

留置所を出て、正史が最初に行ったのは、2人に礼を言う事だった。

 

「ありがとう、北岡さん、真琴ちゃん。2人がいなかったら、重蔵さんと話ができなかった」

「俺は機会を取り繕っただけだし。まぁ、あの勝負で勝ったのはお前の方だしな」

「……それで、向こうは何と?」

 

真琴が尋ねると、正史も少し上機嫌になって、重蔵からの返答を伝えた。

 

「『気持ちの整理がついたら、近いうちに考えておく』だってさ」

「じゃあ、まだ完全に決めきったわけじゃないんですね」

「まぁそうなるね。でも、これで良いと思う。まだ亜子ちゃんがお父さんと会えるチャンスが潰えたわけじゃないし」

「つくづく考えの読めない奴だな、お前ってさ」

 

北岡は肩を竦めて、停めておいた車に乗り込もうとする。

 

「あっ、ちょっと待って」

 

と、ここで正史は持参していた紙袋を真琴に差し出した。

 

「何ですかこれ?」

「約束を守ってくれたお礼って事で。出来立てじゃないけど味は確かだから、みんなで食べてみて。それじゃあ! 今日はありがとな!」

 

正史は手を大きく振って、その場を後にする。

真琴が気になって紙袋の中を覗き込んでみると、そこには丸皿に綺麗に並べられた、こんがりと焼けた餃子があった。

 

「得意料理……なんですかね?」

「やれやれ……。お返しがこれって、最後までバカ丸出しだな。ま、丁度腹も減ってたし、もうこの際だから、口に入るものなら何でも良いかも」

「ですね」

 

真琴も車に乗り込み、発進してから3つ目の交差点で信号待ちしている間、北岡は自分の手のひらを見つめていた。不意に咳き込み、再び手のひらに目を向けると、赤い液体が点々と付着している。

 

「(こいつはそう長く持たなさそうだな……。ゴロちゃん、こんな俺でも、まだ正義のヒーロー気取れるのかね……?)」

 

迷いを見せ始める北岡の問いに対し、その人物からの返答は、もうない……。

 

 




そういえば、新仮面ライダーの情報が徐々に出回りつつあるようですが、今度は何をモチーフにするんでしょうね? 一応平成二期のテーマとして、数字が関係してますが、『10』で思いつくものって何だろう……?

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