魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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今回は、亜子とOREジャーナルが交流を深める回です。

あとがきの方で、皆さんにこの回を通じてお願いしたい事がありますので、是非そちらもご覧ください。


83.私の逃げ場所

「おっそいなぁ、正史の奴」

 

明け方から降り続いている雨を、社内の窓から大久保が、自作のてるてる坊主を弄りながら見つめていた。

 

「1時間24分46秒の遅刻ですね」

 

なぜかてるてる坊主に派手なデコレーションをしている島田が、依然として出勤してこない正史がどのくらい遅刻しているのかを秒数単位まで測っている。

令子はパソコンに向かい合いながら、2日前に中宿で起きた騒動について、片っ端から情報を仕入れていた。

 

「またどこかで道草食ってたりしてるんじゃないですか? なんというか彼は……。トラブル体質といいますか……」

「にしたって、限度ってもんがあるだろうよ。……そろそろ本気で減給するか」

「早く帰ってこ〜い」

 

島田が意味もなくにやけながら、正史に似せたてるてる坊主を完成させた直後、扉が勢いよく放たれて、話題の中心人物が滑り込むように入ってきた。

 

「おう正史。お前また遅刻だぞ! 良い加減……」

 

だが大久保が小言を言うよりも早く、正史の大声がそれを遮った。

 

「すいません編集長! それよりも早くこの子を……」

「……ん?」

 

そこで大久保を含む全員が、正史の横に小柄な少女が佇んでいる事に気付いた。雨に濡れた影響で、ポタポタと制服から雫が垂れている。

 

「……隠し子⁉︎」

「んなわけないでしょ結婚してないんですから! っていうより、冗談抜きに……」

 

島田が本気で驚いた口調で叫んだ事に対して正史のツッコミが入ると、令子がアッと叫んだ。

 

「! あなた、それ……!」

 

令子が指さしたのは、正史が連れてきた少女、亜子の背中につけられている、斜めに裂かれた傷。そこから少量ではあるが、血が流れている。大久保もそれに気づいて駆け寄った。

 

「おいおいどうしたんだよこの傷……! 何があった⁉︎」

「とにかく今は、この子の手当てを……」

「お、おう分かった。島田、そこの棚に救急箱があるだろ。手当てをしてやってくれ」

 

大久保は島田に指示を出し、令子はハンカチを取り出して、亜子の背中についた血を拭こうとした。が、亜子は洗ったばかりであろう、綺麗なハンカチを見ると、拒みはじめた。

 

「そ、そこまでしてもらわなくても……。汚れちゃいますよ……」

「そんなの気にする事ないわ。こんなの見せられたら、放っておけるわけないでしょ」

 

そう言って令子は軽く亜子の背中にハンカチを押し付けて、血を拭き取った。亜子は黙り込み、正史は安心させるように亜子の手を握り続けた。

その後、亜子を椅子に座らせてから、島田が背中や腕に消毒液やガーゼを使って、応急処置を始めた。

 

「ちょ〜っと痛いかもしれないけど、我慢してね〜」

「……はい」

 

亜子は小さくコクリと頷く。現在、亜子は上半身の服を全て脱いでいる。が、胸部の方は亜子がタオルを抱えて隠してある。

その間に、正史は大久保や令子に、亜子が怪我を負った理由を話し始めた。ただし、仮面ライダーや魔法少女の事は話さずに、2人には彼女は通り魔に襲われた、と誤魔化しておいた。

 

「白昼堂々通り魔出現か……。こいつは警察に相談しておいた方が良いかもな。ウチだけでどうこうなるもんじゃない」

「編集長。とにかく先ずは病院に連絡を……」

「そうだな。えぇっとこの辺なら、大病院の方が良いから、番号は……」

 

大久保がカバンからメモ帳を取り出そうとした時、カバンの中に入っていたものに目が止まった。

 

「そういやこれ、カバンに入れっぱなしだったなぁ」

 

そう言って大久保が取り出したのは、ウサギのぬいぐるみ。それを見て、正史だけでなく、ずっとそれを探していた少女が思わず身を乗り出した。

 

「! それ……!」

「あ、まだ動かないで」

 

島田に止められて、座り直す亜子。その様子を見て、令子はある事を察した。

 

「ひょっとしてこれ、あなたの?」

「……はい」

「編集長、それどこで拾ったんですか⁉︎」

「あぁ。中宿で調べまわってた時に落ちててな。あのままにしておくのも後味悪かったし、そのまま持って帰ったんだよ。けど、お前さんがこのぬいぐるみの持ち主だったとは、縁があるなぁ」

 

大久保はウサギのぬいぐるみを亜子に返却した。亜子は片方の手でようやく手元に戻ってきたぬいぐるみを抱き、ホッと一息ついた。

 

「あら? 現場に落ちてたぬいぐるみの持ち主が見つかってるって事は、あなた2日前に、現場にいたって事よね⁉︎」

「……! は、はい」

 

令子の読み通り、亜子は確かに現場にいた。そして事故に巻き込まれた人を救う中でスノーホワイト達と合流し、そして現れたタイガらと戦った。全ては、スノーホワイトや九尾を守るための行為だと、自分を納得させていた。が、結果的にその行為はスノーホワイトを失望させてしまった。魔法少女を、仮面ライダーを否定してしまった。

表情を暗くした亜子を見て、令子はメモ帳をポケットに仕舞った。

 

「……事情はまた今度聞かせてもらうとして、今はその怪我の治療が最優先ね。それにその通り魔の事も調べておかないと」

 

どうやら次の記事内容を決めたようだ。

と、その時だった。

 

「……どうして」

 

亜子が質問をした。皆の視線が集まる中、亜子はさらに言葉を続ける。

 

「どうして、私なんかの為に、ここまで……。私、みんなに優しくしてもらう、理由なんて……」

「理由って……。そんなのいらないよ。困ってる子を放っておけるほど俺だってバカじゃないから」

「……でも」

 

正史が慰めるが、亜子は自分自身に納得がいかないようだ。

 

「……でも、私は、誰にとっても不必要で、ただ、迷惑を振りまいてるだけで……」

「そ、そんなわけ」

「どうして、自分の事をそう思うのかしら?」

 

正史が問いかけるよりも早く、令子が顔を覗き込むようにして、亜子が自己嫌悪に陥っている理由を聞いてみた。対する亜子は、一度ウサギのぬいぐるみに目をやってから、静かに自らの経緯を話し始めた。

 

「……私、見たんです」

「見たって、何を?」

「……お父さんが」

「?」

「お父さんが、お母さんを。……刺し殺す所を」

 

雨音がより一層皆の耳に響いてきた。あの島田でさえ、ガーゼを持った手を止めてしまっていた。亜子は、皆の反応をさぞ予測していたかのように、淡々と話を続ける。

聞くところによると、月が煌々と輝いていた日に、偶然目が覚めた亜子が、物音のする台所へ足を踏み入れたところ、父親が包丁を持って、何度も鈍い音を響かせて、ぐったりとした血まみれの母親に向かって突き刺している現場を目撃してしまった。亜子は目の前で起きている、にわかに信じがたい事態に、ただ「お母さん」や「お父さん」と涙を流しながら呟くだけで、止めようともせず、その場に立ち尽くしているだけだった。

その後警察の手で父親は逮捕された。詳しい動機は聞かされていないが、些細な罵り合いがきっかけで殺人事件まで発展してしまったのだと言う。

 

「あの時、私がその場にいてあげれたら、もしかしたら、喧嘩を止めれたかもしれなくて……。でも、怖くて、何も出来なくて……」

 

亜子の全身は自然と震えていた。

以来、亜子は母方の弟にあたる叔父の家に引き取られて暮らしているのだと言う。寝食の場を提供してくれただけでなく、家が変わってからも今までと同じ学校に通い、お小遣いももらい、何不自由ない生活があった。

だが亜子にとってそれは、『大迷惑のかけ通し』のようなものだった。

 

「一度だけ、お父さんのいる刑務所に行って、会ってきました。……でも、こう言われました。『もう二度と来るな』って」

「……!」

 

正史の拳が強く握られている事に気付いた大久保は彼の肩を叩いて、彼の顔を見た。正史は自然と肩の力を抜いた。

曰く、父親にとってさえも亜子は不必要な存在だったのだと、彼女は語る。

学校では、誰も彼女に話しかける者はいなかった。亜子の父親が母親を殺したという事実は、何故か学校中に知れ渡っていた。おそらく近所の同級生の父母の間で話が広がっていたのだろう、と亜子は推測する。何をされたわけでもなく、亜子の通う学校の生徒達はただ、ヒソヒソと噂するだけで、誰も亜子に近づく者はおらず、遠巻きにしていた。直接的では無いが、ある意味で間接的な『いじめ』を、彼女は受けていた。

 

「……だから、私はこれからもずっと、みんなにとって邪魔な存在でい続けるんだって、そこで気付いたんです。私は何をやっても迷惑を振りまくだけの存在だって……」

 

随分と思い込みが激しいな。大久保は心の中でそう呟いていた。

亜子はウサギのぬいぐるみをギュッと握りしめると、こんな事を話し始めた。

 

「だから私、死んじゃおうと思ってました」

「……え」

「ずっと迷惑をかけ続けるぐらいだったら、死んだ方が良い。そう思って、準備を進めてたんです……」

 

そして亜子は、死ぬ為の準備を始めた。それまで溜め込んできた思い出の品は全て処分し、遺書も書き残した。薬も少しずつではあるが、溜め込み始めて、ようやく目標の量まで達しようとしたある日、彼女は出会った。

きっかけは、バイトが終わって家までたどり着いてから鍵を落としてしまった事に気付いて、探していた時の事だった。

 

「これ以上、迷惑をかけたくなくて、死のうと思ってたのに、余計な迷惑をかけちゃう。そう思うと、悲しくて、辛くて……。そうしてたら、声をかけられたんです」

「声?」

「綺麗で、可愛い声でした……。その声の人は、私が鍵を失くして『困ってる』事を知っていて、気になって振り向いてみたんです」

「(! 困ってる事を知ってて……。まさか……!)」

 

正史の予想通りの言葉が、亜子の口から出た。

 

「……そこには、白い魔法少女と、白い仮面ライダーが、いたんです」

「えっ⁉︎ 白、って確か目撃情報が特に多い2人……」

「ホントにいたのかよ……⁉︎」

「……マジだったんだ」

 

令子、大久保、島田が驚く中、亜子が口にした2人と密接な関わりを持つ正史も、そこでようやく理解した。何故彼女が必要以上に九尾やスノーホワイトに近づこうとしているのかを。

 

「……あの2人と会ってから、私の中で、死のうという気持ちは無くなりました。それから、私もあの2人みたいに、必要とされるような人になりたい。そう思うように、なりました……」

 

でも……、とここで亜子は再び表情を暗くしたので、令子もまた顔を覗き込む。

 

「でも、現実は、甘くありませんでした。どれだけ頑張っても、私の事を、認めてはもらえませんでした……。やっと一緒にいられると思ってた人も、私にとっての魔法少女や仮面ライダーを、否定して……。今でも、苦しんでます」

 

『魔法少女も、仮面ライダーも、もういない!』

 

正史の脳裏に、ライダーや魔法少女の戦いの有り様に絶望して、全てから逃げ出してしまった少女の言い分がよぎった。

 

「……だから私、迷ってるんです。私がやろうとしてる事って、他の人にとって邪魔にしかならないのかな、って……」

「なるほどねぇ……」

 

大久保は唸りながら、いつの間にか手にしていた孫の手で軽く肩を叩いていた。令子と島田も複雑な表情を浮かべている。

すると、正史が口を開いた。

 

「そっか……。実はさ。俺もちょっと似たような事で悩んでて、ビックリしちゃった」

「……?」

「自分が正しいって思ってやってる事が、実は相手にとって全然正しくないパターンに出くわす時が、最近はよくあるんだ。そういう時はいっつも悩むんだけど、『正しい事』って、結局何なんだろうな? ……なんて思ってさ」

 

苦笑いを浮かべながら髪の毛を搔きむしる正史。正史や大地らと同じ境遇に立たされている亜子にとっても、無関係とは言えないだろう。スノーホワイト……もとい小雪にとって、魔法少女や仮面ライダーは、正しい事をやってのける象徴だと思っていた。だが現状を見るに、その理論は間違っているようにも見える。何が本当に正しいと言えるのだろうか?

 

「へぇ。正史も悩む時があんのかぁ。ど〜りでここんところ、しょげてる訳だ」

 

だが大久保の次の言葉が、2人の心を揺れ動かす事になる。

 

「正史。それと亜子ちゃん、だったな。今から言う事はオレ流のジャーナリズム精神に基づく言葉だ」

「どんなですか?」

 

正史と亜子が耳を傾けると、大久保はこう言った。

 

「『真実は一つだが、正義は一つじゃない』」

「正義は、一つじゃ、ない……」

「んでもって最終的には、自分を信じるしかないんだよ。考えてもみろよ? 同じ記事のネタ一つでも、書き手によって、全然考察が違うだろ? そして書かれてる内容は全部、書き手がこれだ! って思って他人に読めるものにしたもんだ。読み手に伝わるかは本人の努力次第だが、自分自身が信じるものがそこにあるのは確かだ」

「……そうね。私も同感です。というより、そういう所が気に入って、この会社に入った訳ですから」

「令子さん……」

「……」

 

不思議な気分だった。気がつけば、正史も亜子も、憑き物が落ちたような感覚に見舞われた。2人の表情に微妙な変化が見られた所を確認した大久保は一人頷くと、ハッキリとした口調で喋り始めた。

 

「さてと! んじゃあこの手の話はこれくらいにして、これから亜子ちゃんを病院に連れてく事になるが……。令子はどうする?」

「私は、亜子ちゃんが襲われたっていう現場に向かおうと思います。まだ目撃情報が多いと思われますから、今のうちに集められる情報を集めてきます」

「あっ! だったら令子さん、俺も連れてって……」

「バカヤロー! お前には溜め込んでたデスクワークを片付ける仕事が残ってるだろ。それが済むまで、今日は帰さないからな」

「ゲェッ⁉︎」

「てな訳で島田。ちゃんと正史が仕事をやってるか、監視しとけよ〜」

「フフフ……。正史君、今日は逃しませんからね〜」

「ヒィィィィィィィィ……!」

 

ヒステリックな叫び声や、笑い声が社内を包み込む様子を見て、亜子は新聞記者に対する偏見的なイメージが変わったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大久保の連絡で大病院に亜子を連れて行く事になり、亜子は大久保が運転する車に乗車した。亜子の叔父と叔母にも連絡を入れて、病院でおちあう事になっていた。令子は亜子から事件現場を聞き出した後、すぐに取材に向かった。正史は島田の監視の下で、デスクワークに追いやられていた。

 

「とりあえずさ。何か困ったりしたら、俺達の所に来てもいいよ。ナイトやリップルには上手く言っておくからさ」

 

会社を出る間際に、正史から小声でそう言われて、亜子は小さく頷いた。なるべくなら、迷惑をかけないようにしよう、と自分に言い聞かせてはいるが。

 

「ま、背中をつけてたら体に毒だろうから、寝転んでても良いぞ。安全運転は心がけてるからな」

 

大久保は笑いながらシートベルトをつけて、車を発進させた。亜子は普通に座ろうかと思ったが、下手にシーツに背中の血をつけてしまっては申し訳ないので、言われた通りにうつ伏せに寝転ぶ事にした。

雨は依然として止む気配がない。故に車の数も少ない為、割とスムーズに病院に向かえそうだ。

 

「予報だと、夕方まで降るって話だったなぁ。ま、最近はあてにならないけど」

「そう、ですね……」

「けどまぁ、話は変わるけど、よく堪えてる方だよな。ほかの人に迷惑かけまいと、自分を抑えてて……。俺には出来ない芸当だな」

「そんな事、ないと思いますよ……」

「ある意味、お前さんと正史は似てる所もあるな」

「えっ?」

「あいつ、普段は底ぬけに前向きなクセして、悩む時はとことん悩んじまう。出来の悪いあいつが1人で何もかも抱え込んでたって、マトモな答えを出せる訳でもないって、大学じゃ何度も言い聞かせてるんだがよ……」

「正史さんと、同じ大学、だったんですか?」

「あぁ。だからあいつの事はなんとなく全部分かってる。それなりに腕もある奴だと思って、会社に俺が引き入れた。それで全部分かってたつもりなんだけどなぁ……」

 

赤信号で止まった時、大久保が不意に表情を変えて、遠くを見つめ始めた。

 

「近頃のあいつは、かなりデカいヤマを抱えてるみたいでな。それも人に絶対言えないようなものだ。見てりゃ分かる。仮にも後輩だからな。今のあいつが背負ってるもんは、多分俺には何も教えてくれないな」

「……」

 

そうだろう、と亜子は考える。打ち明けてしまうと、その瞬間、資格は剥奪される。それは即ち、人としての『死』を意味する。今まで、亜子は死を恐れる事はなかった。それは自身の魔法がそうさせる所もあるが、他人に迷惑をかけたくないという想いが強かったからか、『死』について深く考える事はなかった。この時点で人間味が薄れてるとも言えるかもしれないが、それも過去の話だ。今は違う。スイムスイムらに襲われ、そこで初めて死ぬ事に対する恐怖を覚えた。

死にたくなくなった。真実は話せなくとも、心の拠り所が、無性に欲しくなった。今住んでいる家だけでは足りない。もっと別の空間が欲しい。

 

「なぁ、亜子ちゃん」

「! は、はい」

 

不意に名前を呼ばれて返事をする亜子。大久保はその様子に苦笑しながら、話を続けた。

 

「この先生きてりゃ、楽な事ばかり続くわけないし、時にはでっかい敵にぶち当たる。1人じゃ絶対に突破出来ないぐらい、強い敵だ。そういう時、1人じゃ無理だと分かったら先ず何をすれば良いか分かるか?」

「……?」

 

悩む亜子を尻目に、大久保は解答を提示した。

 

「大勢の奴がいるところに逃げ込むんだよ」

「えっ……」

 

逃げ込む、という予想だにしない発想に、亜子は自然と口を開けている。

 

「逃げ込んだ先に誰かいれば、誰か1人くらいは相談に乗ってくれる。んでもってそいつと協力して敵に立ち向かう。それでもダメそうだったら、また別の所に逃げ込む。んで協力してもらう。そうやって人同士が繋がってけば、最後はでっかい岩みたいに一丸になって、それまで出来なかった事が出来て、新しい事に気づける。要するに、『自分だけの逃げ場所』を確保しておく事が大事だ」

「私の、逃げ場所……」

 

誰かに助けを求める。そんな簡単に、見つけられるだろうか。亜子の疑問は、大久保が解消してくれた。

 

「ま。小難しい事はほっといてな。辛くなったり、困った事があったら、『OREジャーナル』っていう『逃げ場所』があるって事だけは忘れるなよ。お前さんの味方になれるのは、正史だけじゃなくて、俺や令子、島田もだからな」

「……はい!」

「お、見えてきたぞ」

 

両目にうっすらと溜まり始めた水滴を軽く拭った亜子は、窓の外から大久保の言うように、病院が見えて来たのを確認する。

今はまだ、素直に気持ちは伝えれないかもしれない。魔法少女としてももちろんだが、鳩田 亜子として、自分を必要としてくれる人には、まだ出会えないかもしれない。

 

「(それでも、これだけは、言わせてほしい)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ありがとう〜

 

 

 

 

そんなありきたりの言葉が、自然と口から出せた。

 

 

 

 

 




これでハードゴア・アリスも、少しは救われた……かな?

近年、小学生や中学生を中心に、数多くの『いじめ』が発生しており、そのせいで学校に通えなくなったり、酷い時には自ら命を絶つ者も決して少なくありません。私自身、小学生の時は一時期ではありますが、いじめを受けた事があります。なのでその辛さはよく分かります。

そこで皆さんにお願いしたい事が一つ。
もし、周り近所でそういった『いじめ』に遭ってる人がいたら、今回、大久保編集長が述べたように公共施設(図書館や児童館など)に逃げ込む事を勧めてあげてください。最近では、公共施設はそういった『いじめ等で困ってる人達に対する居場所造り』に力を注いでいます。そこで働く大人達は決して見捨てたりしません。心の拠り所が、今の子供達には必要だと思います。私的に図書館がオススメです。

この小説を読んでもらった方々が、少しでもこの事に共感できたら幸いです。

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