魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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遂に80話目!

そしてファヴとシローから連絡がありますが、始めに言っておきます。私は一切責任を負いません。悪いのはこの2匹です。

そして最後の方では、あの魔法少女が……。


80.戦いは終わらない

「ひでぇな、こいつは……」

 

目の前に広がる、瓦礫の山と化した中宿の国道周辺を見渡しながら、OREジャーナルの編集長を勤める大久保の口から出た第一声はそれだった。爆発も収まり、ようやく記者団達に混じって取材を始めれる体制が出来たわけだが、あまりにも惨たらしい現場を目の前にして、多くの記者が先に進むのを躊躇うほどだった。

依然として自衛隊や消防隊、救急隊がこぞって瓦礫の撤去や、遺体を運び出したりと、忙しく働いている。

と、そこへ着信音が鳴り響き、大久保が携帯を手に取ると、令子からのものだと分かった途端に、慌ただしく応じた。

 

「令子! 大丈夫だったか⁉︎ さっきから連絡が取れなかったから、心配したぞ!」

『あ、はい。ごめんなさい。私もついさっき気がついたところで……』

「気がついたって、お前ひょっとしてあの時の爆発に巻き込まれて……!」

『え、えぇ……。でも、直前で誰かが庇ってくれたおかげで、大した怪我はありません。ただ、その後気絶しちゃって、顔までは確認出来なくて。……すいません』

「とにかく、お前が無事でよかった……! 今どこにいる?」

『えぇっと……。多分現場からそうも離れていない公園のようですね。誰かがここまで運んでくれたのかもしれませんね。編集長はどちらに?』

「国道の近くだ。一応島田は、近くに停めてある車に待機させてある」

『了解しました。私もすぐそちらに向かいます」

「大丈夫か? 無理はすんなよ」

『平気です。さっきも言ったように、目立つような怪我はしてませんから。……あ、それと編集長。そっちはどうなってますか?』

 

令子から現場の状況を尋ねられて、大久保は辺りの惨状を、簡易的に説明した。

 

「とにかく、酷い有り様だな。こっちの調べじゃ、復興まで何年かはかかるって話だ。かなりの一般市民が被害に遭ってるしな」

『今、私の方でも情報を仕入れてますけど、一部報道では、テロによるものと断定付けているそうです。予告も犯行声明もあるわけではないそうですが……』

「それ以外に世間を納得させる理由がない、って事か……」

『今頃、閣僚達が動き出して、討論が行われているのかもしれませんね』

 

今回の大規模事件の実態を耳にして唸る大久保だったが、どこか納得がいかない表情を浮かべている。

 

「確かにこれだけの被害状況から見ても、テロの可能性も充分あるかもしれないが……。何だろうな、こいつはもっと違う何かが働いているような気がするんだよなぁ……」

『奇遇ですね。私もそう思ってたところです』

 

大久保も令子も、今回の一件が単なるテロ行為とは思えないらしく、もっと別の事態が人知れず関与しているのではないか、と考察していた。そう考える辺りが、真実を常に追求し、追い求めるというOREジャーナルならではのものだろうか。

 

「とにかく、一度現場に戻ってきてくれ。無理しない程度にな」

『了解です。一応城戸君にも連絡を入れてみますね』

「あぁ頼む。あいつとあれから一度も連絡取れてないからな」

 

電話を切り、スマホをポケットにしまった大久保は、そこでため息をついてから、再び辺りを見回しながら歩き始めた。世間はテロと考えているが、OREジャーナルは、この一件に必ず裏があると思い、真実を究明しようと、一つ気合いを入れて調査を始めた。

しばらく周辺を歩いていると、あるものが目に入り、手にとってジッと見つめた。白いウサギのぬいぐるみだった。少し汚れてはいるが、これだけの被害の中であるにもかかわらず、傷一つ付いていなかった。事件に巻き込まれた子供が持っていたものだろう。幼い子供まで無慈悲に命が奪われた事を思うと、大久保も胸の奥が痛んだ。このぬいぐるみの持ち主の犠牲を無駄にしない為にも、自分達がこの事件を世間に知らせて、一人ひとりに考えを持ってもらう必要がある。

大久保は決意を新たに、ウサギのぬいぐるみをカバンにしまって、次の現場へ歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倶辺ヶ浜の一角に、長い石階段がある。昼間は近辺に住む子供達の遊び場になっているが、そこには街灯が一つもない為、夜になると、子供はおろか、大人でも立ち寄らない。唯一立ち寄るとすれば、魔法少女や仮面ライダーぐらいか。

そんな石階段に、スノーホワイトを初め、九尾、ラ・ピュセル、ライア、龍騎、トップスピード、ナイト、リップルといったチームに加えて、合流したハードゴア・アリスとリュウガも同席して、腰を下ろしていた。そこにいる誰しもが、疲れていた。原因はもちろん、つい先ほどまで繰り広げられていた、カラミティ・メアリと王蛇が引き起こした騒動にある。

改めて振り返ってみると、巡るましい展開ばかりが続いていた。

事の発端は、メアリが龍騎とリップルを誘い出し、殺害しようとしたところから始まった。トップスピードやナイトの介入もあって難を逃れたものの、メアリは逃すまいと、一般市民を襲う事で2人を連れ戻そうとした。当然2人も黙っていられるはずがなく、人命救助も含めながら、カラミティ・メアリと王蛇のペアと対峙した。そしてその騒動に拍車をかける為に、密かに手を組んでいたであろうガイが生き残っている魔法少女やライダーを招集し、人命救助に勤しんでいたスノーホワイト達をも巻き込んで、人助けをよそに、大乱闘を始めた。

その間にも、九尾はオルタナティブとヴェス・ウィンタープリズンの敵討ちとばかりに、ベルデと戦っていた。あと一歩というところで、とどめを刺すことが出来ず、彼を探しに駆けつけたスノーホワイトとライアの介入もあって、ベルデは逃亡した。九尾は、ただ嘆くばかりだった。

その一方で、龍騎とトップスピードにもアビスとスイムスイムの魔の手が迫り、トップスピードが殺されかけたが、龍騎がこれを阻止し、サバイブに覚醒した事で、事なきことを得た。その際、ナイトとリップルにもトップスピードが抱えていた秘密がバレてしまう事になったが……。

そして一同が国道に戻ってからも、乱闘はとどまることを知らず。加えてクラムベリーやオーディン、ゾルダ、マジカロイド44も参戦し、事態は悪化の一途をたどった。ゾルダの身に何があったのかは分からなかったが、全員を抹殺しようと、超弩級の必殺技である『エンドオブワールド』を放った。その結果、ガイは王蛇とメアリの盾にされ、逆上したガイは返り討ちにあって、王蛇とカラミティ・メアリによって惨殺された。

彼らは撤退し、途中で巻き込まれかけた令子を安全な場所に運んだ後、一同は人気のないこの石階段にやってきて、そして現在に至る。

スノーホワイトは、膝を抱えて縮こまっている。九尾やラ・ピュセルは声をかけようかと思ったが、負のオーラが漂っている彼女を見ていて、気が引けてしまった。

 

「……そういや龍騎。お前肩の怪我は大丈夫だったか」

「ん? いや、これくらいなら平気だけど」

「バイ菌が入るとヤバいかもしれないからさ。とりあえず脱いで、薬塗ってやるよ。必要なもんは持ってきてるし」

「えっ? ま、まぁ良いけど……」

 

スノーホワイト達の前でならともかく、初めて出会ったリュウガの前で変身を解くのもどうかと思った龍騎だが、仕方なしにとカードデッキを取り外し、その姿を露わにした。

正史の姿を見て、リュウガが僅かに腰を上げたが、ラ・ピュセルやアリスからの視線を察した事で、再び座り直した。

トップスピードはカバンの中から取り出した薬や包帯などを器用に塗ったり巻いたりして、スイムスイムの一太刀で受けた傷の処置を済ませた。正史がお礼を言った直後、ナイトが口を開いた。

 

「賭けは俺の勝ちだったな。こんな事なら、何か賭けておくべきだったな」

「ハァッ⁉︎ 賭けるってなんの事だよ」

「今日の事だ。お前は随分とあいつらに期待してたようだが、結局はこのザマだ。やはり、人はそう簡単に変われるわけがない。奴らを見てれば分かる事だろ?」

 

ナイトの呟きに、正史も反論する術を失ってしまった。正史自身、本気でメアリと王蛇が態度を改めて、話し合いをしてくれる気になったと思っていた。が、蓋を開けてみれば、向こうは最初から自分やリップルの抹殺を目論んでおり、それに伴って、多くの市民が巻き込まれた。その過程で、ガイも殺されたのだ。九尾にとっては2度目の光景だったが、目の前で同じライダーが死ぬ瞬間は、今でも全員が鮮明に覚えている。それら全てをメアリは、龍騎やリップルが悪いのだと笑いながら答えた。

 

「俺だって信じられねぇよ……! あんな人間が、ライダーや魔法少女やってるなんて……!」

「正史……」

 

正史が知らず知らずのうちに震える握り拳を固めながら語るの姿を、トップスピードは表情を暗くしながら見つめる。そんな正史に、ナイトは冷ややかに呟く。

 

「人間? 何を言い出すかと思えば、今更だな」

「えっ……」

「あいつらは人間じゃない。モンスターだ。戦う事以外何も知らない、飢えた怪物だ」

「……っ!」

 

それを聞いたスノーホワイトは、息を詰まらせて、皆に背を向けた。

王蛇もカラミティ・メアリも、モンスター。それを聞いてふと脳裏によぎったのは、美華が生前、彼女の姉を殺した浅倉をモンスターと評していた事。その浅倉が王蛇の正体だと思えば、納得してしまうところもあった。

そんな中、トップスピードは反論した。

 

「お、おい待てって。そりゃああいつらがやってる事は、はっきり言って許せないけど、だからってそんな風に言わなくても、元は俺達と同じ人間だったんだろ? ……なぁ、お前らからも何とか言ってくれよ」

 

そう言ってハードゴア・アリスとリュウガに顔を向けるが、両者共に無反応だった。ならば、とライアに意見を求めるが、彼の口から出たのは、トップスピードの予想と少しばかり反していた。

 

「……正直、俺もあいつらを許し難い。大勢の人間を危機に晒したのは事実だ。それに、王蛇の正体が浅倉だったという事も、少なからず衝撃を受けている。何の因果か知らないが、まさかあいつがシローの手でライダーに選ばれていたなんて思わなかった」

「……どういう事」

 

やや強めの潮風に吹かれて前髪が目をくすぐっているのを鬱陶しく思いながらも、リップルは尋ねる。ライアはラ・ピュセルに顔を向けると、こう語り始めた。

 

「ラ・ピュセル。前に俺がライダーに選ばれたのは、死んだ雄一の代わりだと話したのは覚えてるよな?」

「う、うん。確か雄一さんは、事件に巻き込まれて、それで両腕に怪我をして……」

「その事件で、雄一を襲った通り魔は、浅倉だ」

 

ライアの告白は、その場にいた全員からの注目を集めるには十分な衝撃だった。トップスピードやファムと同様に、ライアもまた、浅倉の手によって関係者が命を落としたり、夢を絶たされている。浅倉がいかに危険な人物か、身に染みて理解できる。

 

「ただ、勘違いしてもらっては困るが、今の俺は奴らの挑発に乗るつもりはない。例え相手が、親友に手をかけた奴だとしてもな。できる事なら、ライダーや魔法少女同士の無駄な争いは避けたいし、止めたい」

 

ライアはそう念を押した。

すると、ちょうどそのタイミングで皆のマジカルフォンに、ファヴとシローからのメッセージが送られてきたので、一同はチャットに目を通した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファヴ:『えーっと、さっきまでみんなキャンディーがたくさん集められるような事が起きていていたから疲れてるかもしれないけど、お疲れ様と労うと同時に、今回は皆さんに大事なお知らせがあるぽん。先ず一つ目は、脱落者の発表ぽん!』

シロー:『今回脱落したのは、仮面ライダー側から2名。「ベルデ」と「ガイ」だ』

ファヴ:『これで残ってる魔法少女は11名、仮面ライダーは10名。順調に数は減ってるし、規定の16名まで、後少し! ……と言いたいところだけど、残念な事に、不測の事態が起きてしまったぽん』

シロー:『それがもう一つの連絡事項である、人員の削減追加だ』

ファヴ:『何でそうなったのかは、今から説明するぽん』

シロー:『皆には先日レアアイテムを購入してもらった。それによりモンスター退治はしやすくなっただろうが、あのアイテムはこの土地の魔力を使用する。今日は特にアイテムの使用率が高かった為か、このままでは魔力の供給が足りなくなり、16名まで残したとしても、再び枯渇問題が浮上する恐れが出た。これは完全にこちら側の誤算だった事もある。皆には申し訳ないと思っている』

ファヴ:『というわけで、みんなには大変心苦しいお話ではあるのだけれど、16名だった枠が、もう半分の8名になったぽん』

シロー:『ちなみに、それ以上のルールの変更はない。これまで通り、キャンディーの数が少ない者から順に、8名になるまで脱落する事になる』

ファヴ:『いや〜、本当にごめんなさいぽん。怒りたい気持ちも分かるけど、こればっかりはどうしようもないぽん。ゲームの仕様変更はよくある事だし、みんなならきっと残れるはずぽん。それじゃあ、さよならぽん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んだよこれ……!」

「16名から、8名……」

 

トップスピードが絶句し、ハードゴア・アリスが誰ともなしに呟いた後に、海岸に響いたのは、罵声の数々だった。

 

「フッザッけんなよ!」

「チッ……!」

「この上さらに人数削減だと……!」

「いい加減にしろよ……! めちゃくちゃにもほどがあるじゃないか!」

 

ラ・ピュセルは怒りのあまり、近くにあった手すりを殴りつけた。騎士にあるまじき行為だったが、それだけファヴとシローからの伝達に腹が立っているのだ。

 

「まだ5人も残ってるのに、これから先も、もっと多くのライダーや魔法少女が死ぬ事になるのかよ……!」

 

正史が頭を抱える中、一同にはもう一つ気になる事が。

 

「っていうより、ガイだけじゃなくて、ベルデまで死んでたなんて……」

「……」

 

ライアは、皆に悟られぬように九尾に目をやった。九尾もまた、この結果に驚きを隠せない。あの時、仕留めきれなかったはずのライダーが死んだ。こうなると、可能性は2つ。一つは九尾との戦闘によって致命傷をどこかで受けて、そのまま死に至ったか。もしくは別の誰かがベルデを殺したのか。

いずれにせよ、復讐すべき敵はもういなくなってしまった事になる。

 

「……っ! 俺には、無理だっていうのかよ……! 誰かと戦うなんて、殺す事なんて……!」

 

九尾の呟きは、偶々近くにいたスノーホワイトにしか聞こえてないようだ。その証拠に、トップスピード達は別の会話に移行している。

 

「どうすんだよ……! まだこんな戦いが続くって事なんだろ⁉︎ やっと、終わりが見えかけたかもしれないのに……!」

「だったらその分、他の奴らを潰すしかない。ここまで来ればキャンディーの数なんてどうでもいい。いかに自分の身を守れるかを考えるしかない」

「そんな……!」

「だが待て。今この場には、10人いるんだぞ」

「……つまり、最低でもこの中の2人は、確実に脱落する事になる」

 

リュウガの一言で、一同は静まり返る。ここまで苦楽を共にしてきた仲間が、協力してもらえた者達が、何人かは消えてしまう。空気はより一層重くなった。

黙り込んでいる状況に居心地が悪くなったのか、正史が口を開きかけた、その時だった。

 

「……何も、したくない」

 

そう呟いたのは、中宿を離れて、倶辺ヶ浜にたどり着いてから一度も口を開こうとしなかった魔法少女だった。彼女はゆっくりと立ち上がった。皆が突然立ち上がったスノーホワイトに注目する。

 

「何も、したくない……! もう、こんなの嫌だ……!」

「……スノー、ホワイト」

「スノーホワイト! どうしたんだ急に!」

 

ハードゴア・アリスとラ・ピュセルが、異変に気付いて声をかけるが、そこで彼女の両目から、水滴が流れ落ちるのを見た。

 

「魔法少女が、仮面ライダーが、戦いあって、殺しあって……! こんなの、もう、絶望しか、ないよ……!」

「……!」

 

九尾は、かける言葉が思いつかない。そうこうしているうちに、彼に、否、ラ・ピュセルや龍騎達にとって、口にしてほしくなかった言葉が、白い魔法少女の口から出た。

 

「……もう、やめたい」

「なっ……⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法少女なんて、もうやめる……!」

 

 

 




全てに絶望し、魔法少女である事を捨てると宣言したスノーホワイト。
だが、彼女はまだ知らない。その選択が、彼女にとって地獄を味わう第一歩となってしまう事に……。

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