魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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今回でゲリライベント編終了……! そして新たな脱落者が!


79.激化の果てに……

「くっ……! てこずらせやがって……!」

 

ミラーワールドを出て、立体駐車場から離れたベルデは右足を引きずりながら、出口付近まで足を運んでいた。辺りからはサイレンが至る所で鳴り響いているが、今のベルデに外の様子を確認するだけの余裕はなかった。

ベルデの脳裏には、先ほどライアから告げられた宣告が焼き付いている。

 

「(破滅する未来だと……? ふざけやがって。運命だか何だか知らねぇが、力を手にしている今の俺が何かに負けるなんて事はもう、あってはならねぇんだよ……!)」

 

自分にそう言い聞かせながら1歩ずつ前へ進むベルデだったが、唐突に立ち止まった。目の前に、胸の大きい水着姿の少女がいたからだ。

 

「スイムスイム……!」

「……」

 

水着姿の魔法少女『スイムスイム』は、声をかけられた事で顔をベルデに向ける。龍騎サバイブとトップスピードサバイブからの攻撃による直撃を避けるために逃亡していたのだが、無我夢中で逃げていた為、今いる場所がどこなのか把握出来ていなかったようだ。

 

「何でここにいやがる……! 他の奴らはどうした!」

「……龍騎とトップスピードの攻撃を避けてて、気づいたらここにいた。他のみんなは、国道で他の魔法少女や仮面ライダーを襲ってる」

「何……? 誰がそんな事を命じた」

「リーダーの命令」

「あ……? 俺は何も」

「……私が、手下達に言った。今なら、一気にやっつけれるから」

 

スイムスイムは無表情のまま、ベルデに平然と回答するが、ベルデの方は内心ご立腹だった。

 

「おい……! 俺の指示もないくせに勝手に動かしやがったのか! テメェはルーラのようなリーダーになろうとしてたんだろ。だったら先ずは俺を無視して勝手に指示を出すな! お前が仕切った所でまとまりが無くなるに決まってるだろ、それにも気付かねぇクズなのかテメェは!」

「……」

 

ベルデからの罵声を受けても、スイムスイムは平然としている。聞こえているのか定かではないが、無反応な所がベルデをよりイラつかせた。

 

「……フンッ。まぁ良い。向こうでドンパチやってるなら、ついて行ってやるよ。どう動くかは俺が指示を出す。リーダーの言う事は絶対だ。力の差を分からせてやるよ。お前なんかより、俺が指示した方がずっとやりやすいだろうよ」

 

ベルデがここまで苛立っているのは、九尾に最後の最後で逆転を許してしまい、絶命寸前まで追いやられたことが要因と見られる。自分の力の強さを証明する為にも、スイムスイムに見せつける必要があると考えたベルデは、スイムスイムを通り越して、国道がある方へと向かおうとする。

と、その時、背後から声がかけられた。

 

「……ルーラは、2人もいらない」

「アンッ?」

 

不意にベルデが立ち止まった、まさにその瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルデの腹から、銀色の鋭い刃が突き出たのを、ベルデ本人が確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッグ、ガバッ……⁉︎」

 

背後から貫かれた事で、ベルデの前方に自身の血が溢れ出て、地面に落ちた。やがて刃は引き抜かれて、傷口や口から多量の出血が起き、ベルデは震えながら振り向いた。

 

「て、テメェ……! 何の、真似、ダァ……!」

 

ベルデの殺気に満ちた鋭い目線は、血で染まったルーラを手に持つスイムスイムの姿が。スイムスイムはベルデが振り返ったタイミングで体を一捻りした後、ベルデに向かって斜めにルーラを振るった。衝撃が装甲を貫通して、再び血が噴き出た。全身に痛みと熱さが襲いかかり、ベルデは片膝をついた。

 

「……忘れてた。……あなたがリーダーなら、あなたはルーラと同じ。でも、それでは私は、ルーラにずっとなれなくなる」

「ハァッ……⁉︎」

「私はルーラになりたい。ルーラは可愛くて、賢くて、気高くて、優しくて、カッコ良い。……キャンディーを奪ったあの時だって、ルーラは独り占めしなかった。だからルーラが好き。だからルーラの言う事は絶対」

「お、前……! そこまでルーラを、執拗に……! ストーカーじゃねぇかよ……!」

 

ベルデが血を吐きながら呟く中、スイムスイムはゆっくりとベルデに歩み寄った。

 

「……でも、そこが甘かった。それだけじゃあ、ルーラが自ら打ち立てた理想像には、いつまでも追いつけない。だから私が理想のルーラになるの。ルーラの為に」

「ルーラルーラってなぁ……! しつけぇんだよ……! こんな事してどうなるか分かってんのかテメェは……! 大体なぁ、ルーラはもう死んだんだよ! そんな奴気にしてるとか、どこまで能無しなんだぁ……!」

 

歯ぎしりしながらスイムスイムを睨みつけるベルデ。すると、スイムスイムは倒れているベルデの前に立つと、膝をついて、ベルデを見下ろしながら、血に染まった手をとった。

 

「大丈夫。ルーラは死なない」

「アァ……⁉︎」

 

その時、ベルデは見てしまった。スイムスイムがほんの少しではあるが、とろけたような表情を見せ、その瞳にベルデを映すことなく、うっすらと笑みを浮かべていたのを。

 

「だって、私がルーラになるから。だからルーラはずっと生きてる。あなたがなれなかった本物のルーラに、私は必ずなってみせる」

「て、メェ……!」

 

刹那、ベルデによぎったのは自分の脱落。ルーラを目指す魔法少女の手によって、ルーラの名を出しておけば自由に動かせる駒によって、自分は殺される。

そしてスイムスイムは、手に持っているルーラの刃先を、ベルデの首元につけてから、静かにこう言った。

 

「今までご教授ありがとう。これからは、私がルーラとして、みんなの為に、頑張るから。だから、あなたはもういらない」

「こ、のぉ……! スイム、スイムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

そして。

スイムスイムが右腕を一回振るうと同時に、その身に血を浴びた。しばらくして、弱々しい呻き声と共にベルデの変身が解かれ、スーツ姿の高見沢の姿が露わとなった。斬られた首からの出血は勢いをなくし、やがて完全に物言わぬ肉塊と化した。

人の形をした肉塊が静かになったところで、スイムスイムは立ち上がり、近くに転がり落ちた、カメレオンの紋章が刻まれたカードデッキから、1枚のカードを取り出した。レアアイテムの『サイズベント』である。

と、そこへパートナーのアビスが合流を果たした。アビスは倒れこむ高見沢に一度目を通してから、スイムスイムに顔を向ける。スイムスイムは手にしたカードをアビスに差し出した。

 

「……これは、あなたが持ってて。私には、これがあれば充分だから」

「分かった」

 

アビスはカードを受け取ると、自らのカードデッキに仕舞い込む。スイムスイムは高見沢を引きずるように引っ張って、近くの壁際に座らせた後、一礼してから、アビスと共にチームメイトがいる国道へと向かっていった。

物言わぬ死体と化した高見沢の全身は、赤黒い液体で染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして国道では、炎や煙が充満する中でもライダーと魔法少女が激しく火花を散らす修羅場となっていた。

 

「ウォォォォォォォ!」

「緩いぬるい。前もそうだったけど、やっぱ大した事ないねお前。戦うのに躊躇ってるみたいだけどさ。俺はお前と違って、トドメを刺すのに迷ったりしないよ」

「うるさい!」

 

ラ・ピュセルはそう一喝した後、接近して斬りかかろうとするが、ガイのメタルホーンによって受け止められてしまう。彼らの近くでは、ハードゴア・アリスとタイガが、黒いドラグセイバーとデストクローを打ち合っている。

ちょうどその時、九尾、スノーホワイト、ライアが戦場と化した舞台に姿を現した。九尾を発見し、ここまでの事情を説明し終えた一同は、ラ・ピュセル達の所へ戻ってきたのだ。とはいえ九尾も、ベルデとの戦闘で体力をほぼ使い果たしており、現在はスノーホワイトに支えられながら歩いている。スノーホワイトは目の前で加速する戦いの模様に唖然としていた。

 

「そんな……! まだ、みんな戦ってるの……⁉︎」

「ラ・ピュセルが危ないな……。スノーホワイト、九尾を頼む。俺はラ・ピュセルを助けにいく」

「ら、ライアさん!」

 

『SWING VENT』

 

ライアはスノーホワイトに九尾を任せた後、エビルウィップを召喚して駆け出した。

一方、ラ・ピュセルは一旦距離を置いて、手に持っていた剣をより肥大化させようと試みるが、それを見たガイがカードを取り出してベントインした。

 

『CONFINE VENT』

 

「! またか……!」

「ヘヘッ。これでその剣も役立たずだね」

 

魔法を打ち消され、元のサイズに戻った剣を握るラ・ピュセルに向かって斬りかかろうと、ガイがせせら笑いながら突撃する。が、その間に割って入ってきたのはライアだった。エビルウィップを振るってガイを弾き飛ばすと、ラ・ピュセルの隣に立った。

 

「大丈夫かラ・ピュセル!」

「ライア! 九尾の方は⁉︎」

「あぁ、無事だ。それよりも、早くこの状況を何とかしないとな」

「へぇ。2人がかりかぁ。ま、いいよ。そいつ全然相手にならないし。これぐらいでちょうど良いかも」

「ナニィ……! バカにするのも良い加減にしろ!」

「落ち着けラ・ピュセル!」

 

ライアの制止を振り切って、ラ・ピュセルは怒りの形相でガイに斬りかかる。だが、防御面なら格段上のガイに、ライアの援護を加えても攻撃がほとんど通じていない。

 

「ラ・ピュセル、ライア……!」

「くっ……!」

 

すると、九尾がスノーホワイトを突き放し、前に一歩踏み出そうとした。

 

「九尾⁉︎ どこに行くの!」

「戦うに、決まってんだろ……! 俺にはもう、それしか無いんだぁ!」

「九尾ぃ!」

 

スノーホワイトが止めるよりも早く、九尾はラ・ピュセルとライアを追い抜いてガイに飛びかかった。

 

「おっと。今度は3人かよ」

「九尾!」

「九尾! 今までどこに……!」

「んな事より、前に集中しろよ!」

 

そう言って九尾は再び突撃を試みた。が、さすがに見てられないと思ったのか、それまでガイの後ろに隠れ潜んでいた、たまが九尾にしがみついて、進行を阻止した。

 

「……邪魔だ!」

「ヒャア⁉︎」

 

九尾は舌打ちし、たまに向かって拳を振るった。たまは悲鳴をあげながら逃げ惑った。

 

「だいちゃん……! やめてぇ!」

「ウォォォォォォォ!」

 

スノーホワイトの叫びは、パートナーには届いていないようだ。否、届いていないのは他の面々も同じだろう。

 

「こんのぉ!」

「ハッ!」

 

特にミナエルは、リュウガを殺したい一心で、両手につけたデストクローをめちゃくちゃに振り回している。こんな状況では、説得など皆無に等しい。

 

「ダァッ!」

 

すると、ミナエルに向かって横手から飛び蹴りを放ち、吹き飛ばす影が。それは、スノーホワイト達にとって何度も見慣れた姿だった。

 

「龍騎さん!」

「スノーホワイト! 良かった、無事で……!」

 

スイムスイムとアビスを追い払ってから時間が経った事で、サバイブが解けて元の姿に戻っていた龍騎が、スノーホワイトのみならず辺りを見渡していたその時、リュウガの姿が目に入って、思わず凝視した。それもそうだろう。初めて見るライダーの姿が、色違いというだけでほぼ瓜ふたつなのだから。

 

「お前、何で俺と同じ……⁉︎」

「……お前が龍騎だな。なるほど、見れば見るほど俺と同じだ」

「どうなってんだよ……」

「オラァ!」

 

だが、龍騎が疑問を解決する事はなかった。ミナエルが怒り狂った形相で、攻撃を仕掛けてきたからだ。

 

「ミナエル! もうやめろ! 今は戦ってる場合じゃないだろ!」

「うるさい! もうお前の説教は聞き飽きたんだよ! 大体、いっつもあたしの邪魔ばかりしやがって!」

「……やかましいのはお前も同じだ。お前も妹と同じ所へ送ってやろうか」

 

リュウガがそっけなく呟いて歩き出そうとしたが、それを遮るかのように龍騎の叫びがこだました。

 

「いつまで、こんな戦いを続けなきゃならないんだよ……! こんなのが運命だなんて、俺は絶対認めないからな!」

「何わけの分かんない事言ってんだよ! ユナのいない世界なんて、もういらない! 戦ってお前らも、みんなまとめてぶっ殺してやる!」

 

ミナエルの復讐心は、想像以上に煮え滾っており、最早戦う事以外に解決策は望めないようだ。

 

「結局こうなるのかよ……!」

「だったらさっさと変われ龍騎!」

 

すると、龍騎の前に後から追ってきたナイトが降り立った。

 

「ナイト! でも……!」

「戦ってこいつらを屈服させる事でしか、もう分かり合えるはずも無い!」

「調子に乗るなぁ!」

 

逆上したミナエルがナイトに襲いかかるが、ナイトの剣捌きには全く通用しない。

 

「スノーホワイト!」

 

と、そこへスノーホワイトの元にトップスピードとリップルが駆け寄ってきた。トップスピードもリップルやナイトと合流した直後は変身を解いていたが、まだ事態は終息を迎えていない事から、変身して現場に向かう事にした。リップルはこの時、トップスピードの変身者であるつばめやお腹の胎児を気遣ってか、彼女だけの撤退を命じたが、本人の意地を通す姿勢に根負けし、「何があっても前に出るな」と約束する事を条件に、同行を許可した。故に現在、リップルはトップスピードに対してかなり過保護になっているようだ。

 

「! トップスピードさん、リップルさん!」

「とんでもねぇ事になっちまったな……」

「これも全部、カラミティ・メアリの仕業だ……! 私と龍騎への嫌がらせが目的だった……!」

「! やっぱり……」

 

出来ることなら外れて欲しかった、同じ魔法少女によって今回の事件が引き起こされた、という事実。スノーホワイトは唇を噛み締めた。

 

「うわっ⁉︎」

 

すると、龍騎が呻き声をあげて倒れこむ姿が目に映った。よく見ると、ミナエルの両脇にアビスとスイムスイムの姿があった。龍騎達と交戦してから行方をくらましていたが、チームメイトの援護に駆けつけたのだろう。

 

「……! あいつら……!」

 

2人の姿を見た瞬間、リップルの頭に血が上った。それもそのはず。現れた2人は、トップスピードを、仲間を殺そうとした張本人。後で聞いた事情からして、龍騎がいなければ確実に殺されていただろうと思うだけに、リップルが戦いに出向く理由としては、十分だった。

 

「……トップスピード。ここにいて!」

「な⁉︎ リップル、お前……!」

「スノーホワイト、トップスピードを代わりに守って!」

「えっ⁉︎ リップルさん⁉︎」

「……あいつらは、私が殺る!」

 

トップスピードが肩を掴むよりも早く、リップルは駆け出して、咆哮と共にスイムスイムに短刀で斬りかかった。スイムスイムはルーラを使って短刀を受け止める。よく見るとルーラの刃先に血が付着しているのが見えたが、そんな事はどうでも良かったのだろう。リップルはスイムスイムを睨みつけながら叫ぶ。

 

「お前……! どうして、トップスピードを殺そうとした……!」

「……倒すべき相手だったから。あの人を倒せば、アビス達はいなくならない。ルーラだったらきっとそうする」

「お前ェェェェッ……!」

 

正当な理由も無しにトップスピードに手をかけようとした事に、リップルは腹を立てて、懐から取り出した手裏剣をスイムスイムに向かって投げつけた。が、追尾機能もあり、確実に命中したはずの手裏剣は、彼女の体をすり抜けていった。

 

「⁉︎」

 

血の一滴さえ流れない事に驚きながらも短刀を振り回してダメージを与えていこうとするが、スイムスイムには傷一つつかない。魔法の類かと推測したものの、打開策が浮かばず、リップルは舌打ちした。

 

「お、おい! やめろよ!」

「リップルさん! ダメ……!」

 

トップスピードも説得に加わるが、全く応じる気配がない。

すると、遂にスノーホワイトにも限界が来たのか、全身を震わせながら、辺りを見渡した。あちこちに炎上したままの乗用車やトラック、そして無数に転がり落ちている、手遅れと化した死体。それらを放置して、戦う事だけに集中する一同を見ているうちに、恐怖よりも怒りを覚えたのだろう。

 

「どうしてこうなるの……⁉︎ 戦ってる場合じゃないのに……! こういう時だからこそ、みんなで協力して助け合うのが私達じゃないの⁉︎」

「それは果たして正論と言えるのでしょうか?」

「「!」」

 

不意に背後から声をかけられ、振り向くスノーホワイトとトップスピード。そこには、ここまで街やライダーと魔法少女同士の争いを見物していた、クラムベリーとオーディンの姿が。

 

「! クラムベリーに、オーディンまで……!」

 

2人の姿を遠目で確認していたラ・ピュセルは、全身を震わせた。それは、スノーホワイトとは違って恐怖から成り立つものであった。変身前の、自身の足を再起不能寸前まで追いやった、事の元凶を作り出した人物達であり、出来るなら2度と相手にしたくない者達を目撃して、再びあの時の戦いで感じた恐怖が甦りつつあるようだ。

一方で、ラ・ピュセルの方には興味がないのか、2人は淡々とスノーホワイトとトップスピードに語りかけた。

 

「ライダーも魔法少女も、自分の意思で戦いをしている。それは自分の求めるものの為だ。それを止める権利など、誰にもないのだよ」

「そんな……! そんなの間違って……!」

「話はこれくらいにしておいて、せっかくこれだけ集まったのですから、私達もここから混ざる事にしましょう。さぁ、あなた達にも戦うだけの力がありますから、相手になって差し上げますよ。私の目的の為に」

「……!」

 

クラムベリーはマジカルフォンをタップして、ゴルトセイバーを両手に持つと、ゆっくりと2人に近づいてくる。トップスピードが身構え、スノーホワイトが納得いかないような表情を浮かべて固まっている。

が、そこへさらなる乱入者が姿を現す事になるとは、誰も予想だにしなかった。

 

「ハッハッハ!」

「なっ……! 王蛇!」

「あたしの事も忘れてもらっちゃあ困るなぁ」

 

ベノサーベルを振るって現れた王蛇に加えて、銃火器を構えながら歩み寄るカラミティ・メアリの姿が。よもやこのタイミングで、会ってはならない人物達と鉢合わせする事になり、スノーホワイトはトップスピードと共に右往左往していた。

 

「まだ戦いは終わっちゃいないんだ。相手してくれよ」

「……私を相手にしますか。これでも一応協力を申し付けた身なんですが」

「ハッ。んなのもう知ったこっちゃないね。龍騎もリップルもあんな調子じゃ、まともに相手してくれそうにないから、あんたで我慢してやるよ!」

「……ガッカリさせないでくださいね」

 

カラミティ・メアリとクラムベリー。新たな対戦カードが出来上がる中、王蛇とオーディンの方でも戦闘がすでに開始されていた。

 

『SWING VENT』

 

途中でベノサーベルから、エビルウィップに持ち替えてオーディンに叩きつけようとするが、オーディンは素早く王蛇の背後を取り、叩きながら、格の違いを見せつけようとした。だが王蛇はお構いなしに攻撃を続けている。その訳を、本人が直接口で語った。

 

「まだ抗うか。やはりお前は戦う事に生き甲斐を感じているようだな」

「……ハッ。ライダーってのは良いよなぁ。戦えば戦うほど、イライラが無くなる。俺をここまで楽しませてくれたんだからなぁ!」

「そいつは良かったな」

 

『SHOOT VENT』

 

「……アァ?」

 

不意に、王蛇へ話しかける声と、ベントインした音が鳴り響き、近くにいた一同が目を向けると、ギガランチャーを構えるゾルダの姿が。ここまでほとんど人前に姿を見せなかった仮面ライダーの登場に、何人かは目を見開く。そしてゾルダの放った砲弾は、王蛇の近くに着弾し、王蛇は地面を転がった。

 

「お前……!」

「本当はもうちょっと高みの見物と洒落込んで、潰しあってくれると助かったんだけどさ。……もうそんなのどうでも良くなった。脱落する人数も限られてるんだし、ここら辺で潰すのもアリかなって」

「ゾルダさん……!」

「……イラつかせる奴だ。俺に喰われたいのか?」

「喰われるのはお前の方だよ王蛇。……いや、浅倉 陸!」

 

刹那、ゾルダのその言葉を聞いて、何人かが動きを止めて、王蛇……もとい浅倉に注目した。

 

「浅倉って……! 嘘だろ⁉︎ まさか、あの脱獄犯の……!」

「王蛇が……! 昇一を殺したあの……!」

「……!」

「へぇ。でもそれなら納得かも。ますます面白くなってきたじゃん!」

「あ、あわわ……!」

 

浅倉の名を聞いた瞬間、龍騎とトップスピードは全身が震え上がった。龍騎にとっては、元カノだったファムの変身者である美華の姉を、トップスピードにとってはかつての夫だった昇一を殺害した男が目の前に仮面ライダーとして立ちはだかっている。その事実は、ハンマーに殴られたような衝撃を覚えさせた。

否、この時ライアもまた、人知れず拳を握りしめている事に、誰も気づいていない。

すると、王蛇が何かを察し、不意に高笑いを始めた。

 

「ハッハッハァ!」

「な、何だ……?」

「そうか。お前、どこかで会ったような気がするとは思ってたが、あの役立たずの弁護士だったか。そうだろ北岡ァ!」

「ご明察。ようやく分かったよ。お前が脱獄したって聞いて以来、世間に顔を出さなくなったわけが。本当に皮肉だよな。こういうのってさ」

「お前がライダーだったなら、話は早い! 良い機会だ。ここでお前を潰してやるよぉ!」

「悪いけど、今の俺、結構イラついてるんだよね。だからさ。早めに決着つけさせてもらうよ。……みんなまとめて、吹き飛ばしてな」

「なっ……⁉︎」

 

ゾルダの冷たい呟きに反応するトップスピード。すると上空から、彼のパートナーであるマジカロイド44が足裏のブースターから火を噴かせながら、側に着地して語りかけた。

 

「周辺を見回してみまシタが、近くに生きてる人はいなそうデス。思いっきり、派手にやっちゃって良いデスよ」

「あいよ。そういうわけだからさ。まとめて消えな」

 

『FINAL VENT』

 

ゾルダがマグナバイザーにカードをベントインさせると、目の前に契約モンスターであるマグナギガが姿を現した。

 

「ちょ、マズイって……!」

「や、やめて!」

「やめろと言われマシテも、もう止まりまセンよ」

 

マジカロイドも、肩を竦めながらスノーホワイト達の説得を反故した。ゾルダがマグナバイザーをマグナギガの背中に接続させると、マグナギガの表面にあった数多くの銃弾や銃口が、龍騎達に向けられた。

 

「や、ヤバイって!」

 

龍騎が慌てて逃げ出そうとしたその時だった。

 

「な、何が起きてるの……!」

「! 今のって……! 令子さん!」

 

『GUARD VENT』

 

声のした方を振り向くと、炎上している車を一台挟んだ先に、検問をかいくぐり、現地に取材をしに来た令子の姿が。このままでは、ゾルダのファイナルベントに巻き込まれて、一般人の令子は無事では済まない。龍騎は迷わずドラグシールドを構えて令子に向かってダッシュした。

 

「危ない! 伏せて!」

「えっ……」

 

声のした方を振り向く令子。

そして仮面ライダーや魔法少女達も、目の前の脅威を察して、各々が行動を開始した。

 

「ヒィィィ……!」

「「「……!」」」

「クソォ!」

 

たまはとっさに魔法で形成した穴に飛び込み、アビスとタイガもその中へ。スイムスイムは全身を道路に沈み込ませて、回避する事に。ミナエルは透明外套を被ると、ある地点に向かって飛び込んだ。

 

「! トップスピード!」

 

リップルは全速力でトップスピードの元に向かいながら、マジカルフォンをタップして背中にウィングウォールを羽織り、トップスピードに覆い被さった。トップスピードは訳もわからぬまま、呻き声と共に地面に倒れた。

 

「くっ……!」

 

『『GUARD VENT』』

『COPY VENT』

 

続けて九尾とリュウガがカードをベントインし、九尾の腰から9本の尻尾を模したフォクステールが生えて、とっさにスノーホワイトに抱きついて2人まとめてその全身を尾が閉じ込めた。リュウガも黒いドラグシールドを構えており、ライアはコピーしたフォクステールを使い、近くにいたナイトとラ・ピュセルも巻き込んで守りに徹した。

クラムベリーとオーディンも、ゾルダのしようとする事を察して後退し、王蛇とカラミティ・メアリは、龍騎達がいた方へ飛び退いた。

 

「無駄だ」

 

ゾルダが一言そう呟くと同時に、トリガーは引かれ、マグナギガからの一斉射撃が、王蛇達に襲いかかる。

『エンドオブワールド』が、国道にあった車や死体をもまとめて容赦なく薙ぎ払い、大爆発と共に辺り一面に悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国道で大爆発が起こった瞬間を、一般人に紛れて、OREジャーナルの大久保や島田はしっかりとその目に焼き付けていた。警察官も含め、一同は軽くパニック状態に陥っていた。

 

「な、何だよアレ……⁉︎ もうテロってレベルじゃねぇぞ⁉︎」

「凄い威力……!」

「令子……城戸……! お前ら無事でいてくれよ……!」

 

大久保は、あれから1度も連絡が取れなくなっている正史や令子の安否を、爆破地点から遠く離れた位置でただ祈るばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、グゥ……」

「ハァッ、ハァッ……!」

 

ようやく辺りに静けさが戻り、顔を上げた九尾とスノーホワイトは、荒廃した景色に愕然としていた。ちらほらと炎がくすぶっているが、ほとんど消し飛んだようにも見える。よく見ると近くには、腕や足だけの死体が転々と転がっている。エンドオブワールドの影響で、ちぎれ飛んだのかもしれない。

遠くの方では、龍騎が令子に覆い被さっていた。令子の方はエンドオブワールドの衝撃で気絶しているが、外傷は見当たらない。

 

「! アリス! 大丈夫⁉︎」

 

ふと見ると、近くにいたハードゴア・アリスが服についた埃を払っていた。が、右腕は爆発に巻き込まれたからか、引きちぎれており、近くに転がり落ちていた。スノーホワイトの不安げな目線に気づいたのか、アリスは右腕を拾って、ボソボソと口を開いた。

 

「……大丈夫、です。これくらいなら、すぐに、元に戻ります」

「そ、そっか……」

 

アリスの魔法が何なのかを思い出したスノーホワイトはホッとした。すぐそばにはリュウガも無事な様子で歩み寄ってくるのが見えた。一方、近くにいたナイト、ライア、ラ・ピュセルも起き上がり、リップルとトップスピードの所へ駆け寄った。

 

「うぐっ……!」

「お、おいリップル! しっかりしろ!」

「だ、大丈夫……! それより、トップスピードの方こそ、怪我してないよな……!」

「お、俺は平気だけど」

「本当なんだろうな……!」

「いやだから大丈夫だって。お前にこうして守ってもらったんだから」

 

トップスピードの言う通り、彼女は無傷だったが、リップルの方はエンドオブワールドによる爆風をウィングウォール越しに直に受けた為、痛みが全身を貫くほどに広がっていた。が、トップスピードを守る為ならば、と言いたげに、リップルはようやくホッと一息ついて、座り込んだ。

 

「へぇ、まだ生きてたのか」

 

ゾルダが、リップル達の姿を確認すると、声をかけた。ライアはゾルダをすぐに咎める。

 

「なんて危ない真似をしてくれるんだ。王蛇だけならともかく、俺達まで巻き込むな」

「俺はこういうごちゃごちゃした戦いは好きじゃないんでね」

「そういうわけデス」

 

そう言ってゾルダとマジカロイドは背中を向けて立ち去ろうとしたが、不意に何かの気配を察して、前方に向き直った。

クラムベリーとオーディンの姿はなく、エンドオブワールドが発動する前に立ち去ったようだ。

そして、穴に隠れていたアビス、タイガ、たまも顔を出した。

 

「う、ウゥ……。みんな、大丈夫……?」

「あぁ、何とかな」

「……あれ⁉︎ ミナちゃんは?」

「透明になって、どこかに隠れたみたい」

 

タイガがそう説明し、たまは周囲を見渡した。その時、たまの目にパートナーの姿が映った。あれだけの一斉射撃が炸裂した中でも、ガイはその場に立っていたのだ。

 

「が、ガイ! 良かった、大丈夫だっ」

 

が、次の瞬間、たまは言葉を失った。一見突っ立っているようにも見えたのだが、そうではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前のめりに倒れたガイの背後には、全くもって無傷の王蛇とカラミティ・メアリの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。

ガイは耐えたのではなく、向かってこられた王蛇とカラミティ・メアリによって、強制的に盾の役割を担わされたのだ。

 

「ガイ!」

「……フゥ。あたしに対抗して銃撃を仕掛けるとは、味な真似をしてくれたねぇ。けどまぁ、ありがとよ。ガードベントさん」

 

カラミティ・メアリが笑いながらガイにそう言うと、ガイが地面に手をつけて、ヨロヨロと起き上がりながら、2人を睨みつけた。

 

「お、お前ら……! 俺が、ゲームを、面白くして、やったのに……!」

「……アァ?」

 

王蛇は首を鳴らして、ガイを指差しながらこう言った。

 

「近くにいた、お前が悪い」

「……あ、の、さぁ」

 

そう呟くガイは、明らかに苛立っている。

 

「ゲームを、そうやって、白けさせてんじゃねぇよぉ!」

 

ガイはとっさに王蛇に殴りかかったが、逆に殴り飛ばされて、地面を転がった。その様子を見たカラミティ・メアリが、被っていたテンガロンハットをクイっと上げてから、肩を竦めてガイに近づいた。

 

「口では分かってたくせに、いざとなったらその反応。なら、やっぱり体に分からせてやらないと、いけないようだねぇ。冥土の土産に、3つ良いことを教えといてやるよ」

 

メアリが四次元袋から取り出したのは、手入れが施されているショットガン。それを先ずガイの右肩に向けると、引き金を躊躇なく引いた。

 

「カラミティ・メアリに逆らうな」

「グァッ⁉︎」

 

魔法で強化されたショットガンの威力は、至近距離で撃ち込まれている事もあって、防御力の高いガイの装甲を貫き、右肩にどす黒い穴が開いて、血が噴き出た。そして1発撃った後はスライドして弾を装填し、次は左足へ。

 

「カラミティ・メアリを煩わせるな」

「アグッ……⁉︎」

 

左足にも、同じように穴が開き、ガイは片膝をついた。そしてメアリはガイの目の前に立ち、銃口をガイのど真ん中に当てると、ニヤつきながら口を開いた。

 

「カラミティ・メアリを、ムカつかせるな」

 

そして引き金は引かれ、ガイの中心部を弾丸が貫き、ガイは血を吐きながら、後方によろめいた。ポッカリと空いた穴からは血が流れ落ちている。

一同が目を見開く中、カラミティ・メアリは、色が違う弾丸を手に取り、ショットガンにリロードした。それは、メアリが特別に作り上げた、火薬が多量に含まれる弾丸である事を、本人以外は知る由もない。リロードを終えたメアリは、王蛇に顔を向けてサインを送った。王蛇はベノバイザーを取り出すと、カードデッキから取り出したカードをベントインした。

 

『FINAL VENT』

 

王蛇の背後から、契約モンスターよベノスネーカーが迫り、王蛇はガイに向かって駆け出した。

 

「ハァァァァァァァ……!」

 

そして飛び上がり、一回転してから両足を突き出すと、ベノスネーカーが毒液を吐く体勢に入った。

 

「……あ」

「ダメ! 逃げてぇ!」

 

たまが必死に叫ぶが、もうガイに逃げるだけの気力は残っておらず。

 

「消えな」

 

カラミティ・メアリはショットガンをガイの、穴の空いた心臓部分に銃口を向けて、王蛇が毒液と共に発射されたのと同時に、その引き金を躊躇なく引いた。

 

「ハァァァァァァァ!」

 

先に凄まじい威力の弾丸が、ガイに直撃。それに続いて王蛇の『ベノクラッシュ』が、ガイの心臓部分に向かって炸裂し、強烈な一撃が穴を通じて全身に襲いかかった。

 

「グァ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

ガイの、芝浦の絶叫が辺りに響き渡り、全身から火花を散らせながら、ガイのいた地点を中心に、弾丸の火薬に引火した影響で再び爆発が起きた。その成り行きを見ていたスノーホワイト達は思わず目を背けた。

轟音が鳴り止み、煙がモクモクと上がっていた地点に目をこらす一同。ガイがどうなってしまったのかを確認するためだったが、ようやく煙が晴れたところで、彼らは確認しようとした行為を後悔する事に。

みれば、先ほどガイがいた地点には、下半身だけの男性のものらしき肉塊が、仰向けに転がっていたのだ。腰から上、つまり胴体や頭部は爆発によって消し飛んでおり、下半身からは腸や臓器が零れ落ちて、その下半身を中心に、血の海が広がりつつあった。

やがて、パートナーの叫びとも悲鳴とも泣き声ともつかない声が、九尾達の耳に入り、スノーホワイトは膝をつき、胃の中にあったものが全て吐き出され、地面にぶちまけられた。九尾らも、あまりにも無残な芝浦の最後を目の当たりにし、その場から動けない。

だが1人だけ、龍騎だけは王蛇とカラミティ・メアリを睨みつけながら口を開いた。

 

「お、お前ら、何でこんな……!」

「おいおい。何を今更」

「ハハッ。こういうもんなんだろ? 戦いってのは」

 

違うか?

そう言いたげな目線を龍騎に向ける2人。メアリは鼻で笑いながら、芝浦に歩み寄り、近くに落ちていた、灰色のカードデッキを拾うと、中にあったカードをすべて抜き出して確認した。

 

「せっかくだ。戦利品って事でもらってくか。どうせあたしには使えそうにないけど」

「や、やめ……!」

「へぇ。まだ使ってないアイテムがあるじゃないか。こいつをもらってく事にするよ。ほら、使いな」

「め、メタルゲラス!」

 

メアリが手に取った、ガイが購入したレアアイテムの『コントラクト』を王蛇に投げ渡そうとするが、そうはさせまいと、たまがメタルゲラスを呼び寄せ、妨害した。

 

「何の真似だい」

「さ、触らないで、ください……! それは、ガイの……!」

「いちいちムカつかせる犬が。黙らせてやる」

「危ない!」

 

そう言ってたまに向けてショットガンを撃つが、龍騎がとっさにたまを押し倒す事で直撃は避けられた。が、その隙にメアリはコントラクトのカードを王蛇に渡し、王蛇はそのカードを手に取って眺めていた。

 

「大丈夫⁉︎」

「は、はい……!」

 

龍騎はたまの無事を確認すると、起き上がって今一度2人を睨んだ。が、王蛇は臆する事なく龍騎に向かって駆け出し、殴りかかった。

 

「ハッハッハァ! せっかくこれだけライダーも魔法少女も集まったんだ! もっと楽しませろよぉ!」

「お前ら、何も感じないのか⁉︎ あんな簡単に、人の命を奪って、パートナーを悲しませて……! 何も……!」

 

龍騎は王蛇の猛攻をかわしながらも2人に向けて怒鳴り散らすが、2人はそれに応じる事はなかった。

 

「答えろよ!」

「オォ、これだぁ……! この感じだ!これだけでも、ライダーになった価値は充分にある!」

「なぁ、正義の味方さん。大体こうなったのも、全部あんたやリップルのせいだって、まだ気づかないのかい?」

「何⁉︎」

「あんたがさっさとあたしらに跪いてさえいれば、こんな騒ぎも起こらなかったわけだし、ガイも他の奴らも死ななかった。全部、お前らが悪いに決まってんだろうよ! アッハッハ!」

「カラミティ・メアリ……! 王蛇……!」

 

メアリの悪びれた様子もない発言に、九尾は拳を固め、殺意を込めた目線を向けて前に出ようとするが、そこへ聞こえてきたのは、龍騎による今までに聞いた事のないぐらいの怒声だった。

 

「ざけんなぁ! お前ら、最低だ! 最低の仮面ライダーに、最低の魔法少女だ! お前らだけは、絶対に……!」

「最低、ねぇ。あんたさ。まだ自分の立場理解してないのかい? いい加減口を閉じたら?」

「アァ、イラついてきたなぁ……! じゃあ、北岡の方を後回しにして、次にお前が死ぬか? まだ時間はたっぷりある。戦いを続けようぜぇ!」

 

王蛇が全身をゾクゾクさせながら龍騎に近づこうとするが、再びメタルゲラスが王蛇とカラミティ・メアリに向かって突進してきた。

 

「!」

「どうしてこう、邪魔が入るのかねぇ……」

「よほど俺を気に入ったのか……? なら、良いぜ。使ってやるよ」

 

そう言って王蛇は、手に持っていたコントラクトのカードを、メタルゲラスに向けた。その瞬間、コントラクトのカードは光り出し、無地から灰色へと変わった。そして何も描かれていなかったはずのカードに、メタルゲラスの姿が映し出された。メタルゲラスは変色して黒く染まり、王蛇達に襲いかかる事なく、その場にとどまった。

 

「う、嘘……⁉︎」

「あいつ、契約した……!」

「……面倒な事になったな」

「マズい……! 今の2人は、ライアだけじゃなくて、ガイの力も使えるって事に……!」

 

王蛇とカラミティ・メアリの周りに、黒いメタルゲラスに加えて、ベノスネーカー、そして黒いエビルダイバーが集まり、圧倒的な威圧感を放った。

これを見たライアは、龍騎を含むチームメイトに声をかけた。

 

「龍騎! ここは一旦退くんだ! 今のままでは、勝ち目がない!」

「けど、俺は……!」

「その人を守りながら、戦えるのか!」

 

ライアが指差した先には、倒れている令子の姿が。確かにこのままでは令子まで被害を被る可能性も低くない。

 

「! クッソォ……!」

 

国道の火災がほとんど鎮火に向かっているのか、辺りからサイレンが近づいてくる。これ以上この場にはいられない事を察した龍騎は、令子を抱き抱え、王蛇とカラミティ・メアリを睨んでから、ライア達と合流した。

それから龍騎は、そばにいたリュウガとハードゴア・アリスにも呼びかけて、2人もついていく事となった。その際、アリスはいつも携帯していたウサギのぬいぐるみを探し、瓦礫の陰に隠れていたぬいぐるみを掴み上げて、リュウガの後を追った。

 

「俺達もここを離れるぞ」

「……嫌だぁ! だって、ガイが、芝浦さんが……!」

 

スイムスイム達も撤退しようとするが、たまだけは変わり果てた芝浦と離れたくないのかと駄々をこねている。仕方なしにと、スイムスイムはたまの腹を殴り、無理やり気絶させた。

たまは寸前まで芝浦の名を呼び続け、スイムスイムは少し申し訳なさげに彼女の頭を撫でた後、タイガ、アビスと共にその場を後にした。

その一方で、ゾルダとマジカロイドも興が削がれたかのように、王蛇達と戦う事なくその場を後にしようとする。

 

「おい待てよ北岡ァ。お前まで帰るなんて言わねぇよなぁ。俺と戦えよ……!」

「悪いけど、迎えに行かないといけない人がいるのを思い出したからさ。やりあうのはまた今度にしとこうよ」

「そういうわけデスので、今日はこのくらいデ」

「……チッ」

 

王蛇はイラついたものの、カラミティ・メアリに肩を叩かれ、仕方なしに地面を蹴るだけに落ち着いた。ゾルダは咳き込みながら、とある場所で眠っている親友を迎えに、マジカロイドと共にその場を後にした。

九尾は龍騎達と共に、誰よりも顔を青ざめているスノーホワイトの背中をさすりながら、足取り重く歩き出す。

そんな彼らの背後から、背筋を凍らせるほどに低い声が耳に入ってきた。

 

「……なぁ、本当に楽しいよなぁ。ライダーと魔法少女の戦いってのは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪中間報告 その9≫

 

【ベルデ(高見沢 大介)、ガイ(芝浦 淳一郎)、死亡】

 

【残り、魔法少女11名、仮面ライダー10名、計21名】

 

 

 




……はい。だいぶ駆け足になってしまいましたが、以上でゲリライベント編完結です。

ガイはやっぱり原作とほぼ同じ展開にしました。ガードベントネタはどうしてもやりたかったので、ゲリライベントに最適かなと思いまして……。

ですが、もうお判りかと思いますが、戦いはまだ終わりませんよ。

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