魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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……あぁ、この後の皆さんからのコメントが荒れない事を祈る。


75.自分の為に戦うと決めたら強くなる

それは、午後7時を回ろうとしていた頃の事。中宿の繁華街にあるビルの一角から、スーツ姿の北岡と吾郎が並んで外に出てきた。この日は仕事の関係で、依頼主と書類への書き込み等の為に出向いていた。もちろん内容は汚職関係といった、決して世間には公表できないような内容ばかりだったが。

 

「今回も上手くいきそうですね」

「ま、あれくらいならお茶の子さいさいって感じだね。ちょいと文面を弄れば、どうって事ないよ」

「流石です、先生」

 

吾郎は北岡に賞賛の意を示した。その一方で北岡は右手を腹に当てながら、左腕に巻かれている腕時計に表示されている時刻を見て呟いた。

 

「それにしても、もうこんな時間か。このままどっかに食べに行くのもいいけどさ。今日はゴロちゃんの手料理が良いかも。ちょっとぐらいなら我慢できるしさ」

「ありがとうございます。ちょうど今、冷蔵庫に上等な肉が保存されてますから、それを使いましょう」

「サンキューゴロちゃん。んじゃ、早く食べに行こうか」

「はい」

 

北岡は吾郎の手料理に、吾郎は北岡の『腕』の凄みに絶大な信頼を寄せている。こうして見ると、2人がどれほど固い友情で結ばれているのか、想像するに余りあり得る。

この2人が出会ったきっかけは、吾郎が巻き込まれた傷害事件であり、その際に吾郎を弁護する為に北岡が現れ、吾郎はとても恩義を感じていた。以来、北岡への恩を忘れまいと、彼は北岡の秘書を志願。北岡自身もウマが合いそうだという理由でそれを承諾。その後はバイト先を探して訪ねてきた安藤 真琴を迎え、3人で北岡法律事務所を経営する形となった。もちろん、吾郎が北岡に仕えようとするのにはもう一つ別の理由があるのだが、それは今語るべきではない。

 

「お、見えてきたな」

 

北岡の目線の先には、自身の愛車が停められており、車内ではついてきていた真琴が暇を持て余していた。近づく途中で真琴も2人の存在に気付き、軽く手を振った。

そして吾郎が先導して助手席側のドアを開けて、北岡を中に入れさせようとした瞬間、それは突如として起こった。

 

「「「⁉︎」」」

 

最初に聞こえてきたのは、遠くから鳴り響いた爆発音。それは立て続けに起こり、周りにいた人々も突然聞こえてきた爆発音に戸惑っている。

 

「何だ……? 国道で事故でもあったか?」

「かもしれないっすね。ちょっと裏道から出ましょうか」

 

事故が起きたとなると、駆けつけた警察によって検問が敷かれてしまって、帰るのが遅くなるに違いない。そう思った吾郎は早めに中宿を出ようと、急いで運転席側に乗り込もうとしたその時、またしても爆発音が。しかも今度は国道方面だけでなく、3人がいる地点からそれほど離れていない建物が、突然内側から爆発し、近くを通りかかっていた人々は何が起きたのかも分からぬまま吹き飛ばされた。

 

「うおっ⁉︎」

「先生!」

 

慌てて北岡の元に駆け寄って彼を守ろうとする吾郎。真琴もそれにつられて車から降りた。あちこちで爆発が起こり、その度に呻き声や悲鳴、そして逃げ惑う人々で、辺りは一瞬にして大混乱に陥っていた。

 

「随分派手な事になってますね……!」

「おいおい、花火パーティーにしては張り切りすぎじゃないか⁉︎」

 

冗談めいた一言を呟きながらも、周囲に目を凝らす北岡。すると、彼の目にオシャレな格好をした女性が右足に手を当てて苦しそうにしている姿が目に映った。よく見ると、倒壊したビルの瓦礫が足に挟まっているようだ。

 

「行きましょう先生! ここにいたら危険です……!」

 

吾郎が爆発音が鳴り響く場所からなるべく遠くに逃げようとする人々の流れに乗ろうと、北岡や真琴を誘導しようとするが、唐突に北岡は倒れている女性に向かって駆け出した。

 

「先生!」

「ゴロちゃん、手伝って! 真琴もほら!」

「ちょ、何で逃げないんですか⁉︎」

「ここで女の子助けといたら、後々イメージアップに繋がるだろ!」

 

何とも不純な理由だったが、人助けである事には変わらないだろう。北岡は瓦礫をどかして、女性の肩を担いだ。

 

「先生がそうしたいなら、俺も!」

「面倒ですけど、さすがに放ってはおけませんよね」

 

真琴も普段なら面倒だと一蹴していた人助けも、今回ばかりはという事で北岡や吾郎と共に救助の手伝いをした。彼女自身、人助けは嫌いではない。ただ、どうせ働くのなら金目になる事が望ましいと思っているのだ。

女性を通りかかった別の人物に預けた後、3人はまだ逃げ遅れている人がいないかを確認する為に、辺りを見渡した。あちこちで火の手が上がっており、今なお被害は拡大する一方だ。

 

「……エグい、ですね」

「本当に酷いっすね」

「まったく……。どこのどいつだ? こんなに派手にやらかしたのは」

 

北岡が愚痴をこぼしていた時、真琴はある事を思い出していた。

2人が戻ってくる間、真琴はマジカルフォンを通じて魔法少女や仮面ライダーに関するまとめサイトに目を通していた。その中の一つに、『中宿を中心に、近頃ガンマン風の魔法少女らしき人物が至る所で目撃されている』といったものがあった。

 

「(あれは……、おそらくカラミティ・メアリのものと見て間違いないでしょうけど。まさか、この一件にあの方が関わっているのでは……)」

 

真琴が言いようのない不安を感じていたその時だった。どこからか、子供と思わしき泣き声が3人の耳に入った。

 

「! これは……」

「あっちだな」

 

3人が声のした方に向かうと、爆発の影響からか、支柱が立っているだけで廃墟と化している場所に、1人の少女がうずくまって泣き叫んでいた。

 

「おい、大丈夫か!」

 

北岡が声をかけるが、少女はパニックになって気づいていないのか、ずっと泣き喚いている。よく見ると、少女の周辺には血を流して倒れている大人の姿もあった。すでに事切れているのは遠目からもよく分かった。見ているだけで気分が悪くなる3人だったが、真琴は内心焦っていた。

 

「(姐さんが関わっているとしたら、ここは危険……! こんなところにいたらますます……!)」

 

見たところ、彼女の周りに親らしき人物は見当たらない。途中ではぐれてしまったのかもしれない。

そして真琴が動き出すよりも早く、北岡は前に進んでいた。

 

「ほら、泣いてたら何も分かんないだろ。まぁすぐに助けてやるからな!」

 

女子供は放っておけない主義を持っている北岡がそう言って駆け出そうとしたその時、彼の隣にいた吾郎は、偶然にも気づいてしまった。少女のすぐ目の前に、近くに燃え広がっていた炎に照らされて光っているピアノ線が張られていた事に。

 

「先生!」

「⁉︎」

 

吾郎がとっさに叫んだ時には、すでに北岡は後一歩という所まで迫っており、脛にピアノ線は当たっていた。

罠か。そう気づいた北岡と真琴さん目は見開かれ、直後に爆発音が鳴り響いた。発信源は隣のビル。内部から瓦礫などが弾け飛び、北岡と少女がいる場所に向かって降り注いだ。

 

「やばぁっ⁉︎」

「先生ぇ!」

 

思わずその場で立ち止まってしまった北岡と、恐怖のあまり泣き止んだ少女、死に物狂いで駆け寄る吾郎、そして衝撃のあまり動けずじまいの真琴。

真琴の目の前に瓦礫が降り注ぎ、視界が遮られてしまった。

 

「……!」

 

鈍い地響きが辺りに轟き、呆然とする真琴だったが、すぐに我に返って瓦礫の上をよじ登り、3人がいた地点へと駆け出した。北岡や吾郎、そして少女の無事を祈りながら、懸命に駆け上がった。

やがて最初に目についたのは、地面に尻餅をついている北岡だった。擦り傷こそあるが、大事に至ってはないようだ。では、後の2人はどこへいったのか。真琴が北岡の目線の先に目を向けると、全身がガクガクと震え始めた。

埋もれている瓦礫の中で、吾郎が頭から血を流しながら四つん這いになって、息を荒げていた。その吾郎が天井代わりとなって、少女は縮こまっていた。

 

「ゴロちゃん!」

「吾郎さん!」

 

北岡と真琴は慌てて駆け寄った。吾郎は2人の無事を確認すると、震える声で頼み込んだ。

 

「……この子、を!」

「分かった!」

 

北岡は吾郎に守られた少女を引きずり出した。そして早くこの場から逃げるように真琴が言うと、少女は頷いて、また泣き喚きながら母親の名前らしき言葉を発して、その場を走って立ち去った。1人にしておくのは危険な気もするが、少なくともこの場所にいるよりはマシに違いない。そう思った吾郎はフッと笑った。だがすぐにその余裕も崩れて、口から血を吐きながら、肘をついた。

 

「ゴロちゃん! 今出してやるからな! 真琴も早く!」

「は、はい!」

 

真琴も吾郎を助けようと、彼のそばに駆け寄る。が、吾郎の口から出たのは……。

 

「……2人は、逃げて、ください。また、巻き込まれる、かも……」

「何言ってんだよ! ゴロちゃんも逃げなきゃ!」

「……すいません、どうやら、足が引っかかってる、みたい、で……」

 

首を横に振りながらそう語る吾郎を見て、2人は唖然とした。足が瓦礫に挟まれているといっても、相当奥の方にある為、この場からどかす事は不可能に近い。他の誰かに救助を要請しようとして北岡が首を後ろに向けようとするが、吾郎がとっさに北岡の腕を掴んでそれを遮る。

 

「先生……、俺、幸せ、でした。先生の、そばにいれて、真琴と、楽しくやってこれた、事が」

「な、何で死亡フラグみたいな事言ってるんですか! やめてくださいよ!」

「ま、真琴……。レシピとかは、俺の、机の引き出しに、入ってるから……。俺の分まで、先生に、手料理を……」

「やめて……!」

 

真琴は首を横に振りながら吾郎の腕を掴んで、引っ張ろうとする。が、北岡と協力しても、ビクともしない。

 

「ゴロちゃん……! 勝手に死ぬなんて、そんなの許さないからな! 絶対に……!」

「……すいません。最後まで、先生には、迷惑かけっぱなしで……。あの時だって、俺が無理に、弁護を依頼しなければ、先生は、きっと……」

「それはもう言わない約束だっただろ⁉︎ 俺にはゴロちゃんが必要なんだよ! これまでだって、これからも……!」

「そう、思ってくれる、だけでも、俺、幸せっす……」

 

そう呟く吾郎の吐息が段々と弱くなり始めている事に2人は気づいてしまった。

 

「ゴロちゃん!」

「吾郎さん!」

「先生……。先生は、俺の、誇りです。だから……、生きて、ください。真琴、と、一緒に……。最後まで、最高の、人で、あって、くだ……」

 

声を振り絞って、北岡と真琴に語りかける吾郎だったが、そのまぶたは閉じつつあった。

 

「ゴロ、ちゃん!」

 

北岡が必死に声をかけようとしたその時、まだ倒壊していなかったコンクリートの壁が爆発の影響で脆くなったのか、大きな音を立てて崩れ始めた。吾郎は持てる力の全てを出すように北岡を突き飛ばし、真琴と共に後方へ下がらせた。

 

「……ぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

北岡の叫び声は、瓦礫が崩れ落ちた轟音に掻き消され、辺りは砂埃で見えなくなった。

やがて視界が晴れてきた時には、目の前には埋もれた瓦礫の山しか残っていなかった。その僅かな隙間から、男性の手が覗かせていた。

 

「あ、ぅぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 

真琴は膝をつき、その瞳から光が失われた。北岡は足取り重く、瓦礫の前に向かって歩き、膝をついてその手に触れた。冷たかった。

 

「……んで。何で、なんだよ。ゴロちゃんは、関係ないだろ……!」

 

唇を噛み締め拳を震わせる北岡。彼にとって支えでもあった男が、なぜ死ななければならないのか。北岡はやるせない気持ちで、地団駄を踏んだ。

 

「……メアリですよ」

 

不意に真琴がそう呟いたのを聞いて、北岡は振り返る。

 

「最近この辺りで、あの人の目撃情報が絶えなかったそうです。それに、あの人は武器の威力をあげる魔法を使います」

「……」

 

かつてカラミティ・メアリから指導を受けていた事のある真琴は、確信めいたように呟く。これほどの大規模な爆破を起こすには、火薬の量を増やせば解決する話ではない。何らかの方法で爆発の威力を高める必要がある。言葉では上手く説明できない異能の力があると考えれば、この規模の大きさも頷ける。

 

「結局は、これも戦いの一部ってわけか……!」

 

薄笑いを浮かべながら、立ち上がる北岡。

 

「……もう少し傍観してようかと思ったけどさ。もう嫌になったよ。……全部、まとめて終わらせよっか」

「……ですね」

 

真琴も立ち上がり、何かに取り憑かれるように歩き出した。その先には、爆発によって破裂した水道管から流れ出た水が溜まっている。北岡はポケットから取り出したカードデッキをかざし、真琴はマジカルフォンを掲げる。

 

「「変身」」

 

北岡は右腕を曲げて気合いを入れ、真琴はマジカルフォンをタップする。北岡は鏡像が重なって仮面ライダー『ゾルダ』に、真琴は魔法少女『マジカロイド44』へと変身。一度瓦礫の山に目を向けた後、2人は歩き出した。目指すは、今なお爆発音が鳴り響く国道。そこに戦うべき相手は必ずいる。

 

「……教えてやるよ」

 

ゾルダは、感情など微塵も感じさせない口調で、自分に言い聞かせるように呟く。

 

「自分の為に戦う奴が、一番強いってな……!」

 

 

 




今後、この2人を戦いの舞台に引きずり出すには、これしか無かったんです……! 原作でも最終的には王蛇との一騎打ちで命を落としてますから、一般人だからって死なないとは限らないんですよ……!

ですから、あまりコメント欄を荒らさないでくださいね。

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