魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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今回はタイトル通り、あの魔法少女がいよいよ戦線復帰します!

そして2組目のサバイブ獲得ペアはというと……。


68.女騎士、復活

「退院おめでとう、そうちゃん」

「ありがとう、みんな」

 

ミナエルの襲撃から2日後の夕方。学校帰りに早速大地と小雪は、退院した颯太の家を訪れていた。道中で出くわした手塚も同行している。

 

「無理に活動を再開する事も無いと思うが、良いのか?」

「大丈夫ですよ。いつまでもベッドの上にいるわけにはいかないし、これから徐々に慣らしていかないと」

 

依然として満足に歩ける状態ではない為、普段は車椅子を使って生活する事になるのだが、魔法少女でいる時には地面に足をつけて動く事になるようだ。

 

「みんなに迷惑かけた分、きっちりと頑張っていかないとね」

「そっか。まぁ、無理すんなよ」

「分かってるさ。もう、僕だけで何もかも背負い込みはしないさ」

「(颯太……。良い顔をしてるな。これならもう、彼の運命も安泰だろうな)」

 

パートナーの成長を心から喜ぶ手塚。その時、マジカルフォンから着信音が鳴った。ファヴとシローからのメッセージのようだ。

 

『はいはーい! 今日はみんなにとっても良い事を報告させてもらうぽん!』

『先ほど、ここまで一線から退いていたラ・ピュセルが現場復帰する事が決まった』

『ファヴもシローも、ラ・ピュセルが元気に戻ってきてくれて嬉しいぽん!』

 

ファヴがそう言うが、大地達の表情は険しい。魔法少女や仮面ライダーの席の奪い合いという状況下で、これまでの言動を見ていて胡散臭さしか感じられない。

 

『さぁて、そんなラ・ピュセルとライアに、ファヴ達から復帰祝い的なものをプレゼントするぽん!』

「プレゼント……?」

 

小雪が訝しんでいると、颯太と手塚の持つマジカルフォンが一瞬輝いた。皆が目を見開いていると、シローが言った。

 

『実は今回、配布の対象になったのは、3番目に成績が良かった、『ライア&ラ・ピュセルペア』だ。偶然にもこのタイミングで配布が決まるとは、正直私も予想だにしていなかった』

『てなわけで2人とも、これからもキャンディー集めやモンスター退治に精を出してもらうよう、頑張ってほしいぽん! それじゃあ、次の配布ペアが決まるまで、シーユーぽん!』

 

そう言ってファヴとシローのメッセージは途切れた。

颯太の部屋にいた一同は早速マジカルフォンやカードデッキを確認した。手塚のカードデッキには、右翼と雷の背景が描かれている、新しいカードがあり、颯太の持つマジカルフォンには、新たにカードと同じ絵柄のアイコンが追加されている。『雷電』を思わせるそのイラストの上には、『SURVIVE』と表記されている。

 

「これは……!」

「そうちゃんと手塚さんにも、サバイブのカードが……!」

「……」

 

サバイブの凄さ。それは昨日大地と小雪、そして手塚は実際に使用したナイトとリップルから直に聞いている。颯太はまだ目にしたわけではないが、激レアアイテムの追加はマジカルフォンを通じて耳にしていた。

 

「僕が、サバイブを……」

「この先の運命をも変える可能性を秘めている力。まさか自分の手に渡る事になるとはな」

 

手塚はそう言いながらカードをデッキに戻すと、マジカルフォンから音が鳴り響いた。モンスター出現の知らせだった。

 

「! 出たか……」

「僕も行くよ!」

 

大地、小雪、手塚は近くにあった鏡に向かってカードデッキやマジカルフォンをかざした。颯太はまだ足が動かない為、ベッドの上でマジカルフォンを操作する。

 

「「「「変身!」」」」

 

大地、手塚はポーズをとってVバックルにカードデッキを差し込んで九尾、ライアに変身。小雪、颯太はマジカルフォンをタップして光に包まれると、スノーホワイト、ラ・ピュセルに変身した。

そして一同は鏡を通じてミラーワールドに突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場に向かうと、視線の先にモンスターの姿を捉えた。両腕に音叉状の爪をつけた、クラゲ型のモンスター『ブロバジェル』が、その先の鏡から現実世界にいる女性を襲おうとしている。これを見た九尾とライアは同時に飛び蹴りをした。

ブロバジェルは不意の一撃で倒れこみ、後からついてきたスノーホワイトとラ・ピュセルも2人の隣に並んだ。

 

『SWORD VENT』

 

「ハァッ!」

「! 九尾!」

 

九尾はすぐさまフォクセイバーを手に持って、真っ先に攻撃を仕掛けた。

 

「ど、どうしたんだ九尾は⁉︎」

「九尾……、また自分から戦いに行ってる……!」

「どういう事だ?」

「分かりません。でも、最近の九尾はいつもこんな調子で……」

「ウォォォォォォォ!」

 

九尾は素早いステップで足を動かし、フォクセイバーを振るってブロバジェルにダメージを与えていく。が、隙をついてブロバジェルが爪でフォクセイバーを押さえつけると、全身につけられた球状の電極から電気エネルギーが流れ出し、爪を伝ってフォクセイバーへと流れ込み、そして九尾の全身に電流が襲った。

 

「グァァァァァァァ……!」

「九尾!」

 

スノーホワイトとラ・ピュセルは九尾に駆け寄った。

 

「大丈夫⁉︎」

「くっ……! 体が、痺れて……!」

「気をつけろ! こいつの体には、相当値の電圧が流れているんだ! グゥ……!」

 

ライアがブロバジェルの電流を含んだ突きを受けて、倒れこむ。ブロバジェルは2人の魔法少女に向かって突進してきた。

 

「スノーホワイト、危ない!」

「えっ⁉︎」

 

ラ・ピュセルはスノーホワイトを突き飛ばし、背中から抜いた大剣でブロバジェルを寄せ付けないように振り回した。が、大剣に触れた途端、再び電流が大剣に流れ込み、手に持っていたラ・ピュセルも全身に痺れを感じた。

 

「ウァッ!」

 

思わず背を向けてしまった所へ、更に追い討ちとばかりにその背中に爪を置いて、電流を流し込んだ。

 

「アァァァァァァ……! と、とてつもない……!」

 

ラ・ピュセルが倒れこみ、唯一立ち上がっているスノーホワイトへ歩を進めるブロバジェルだが、そこへある程度回復した九尾が突進して、直接殴りかかった。が、その度にブロバジェルの電撃が容赦なく九尾を襲う。

 

「九尾……!」

 

必死に立ち上がったラ・ピュセルが、九尾の援護に向かおうとしたその時、近くにいたライアがカードをベントインした。

 

『STRIKE VENT』

 

「フンッ!」

 

ライアがエビルバイザーを横に振るって、ソニックブームを放ち、ブロバジェルを九尾から引き離した。

九尾が一歩退いて息を整えている中、ライアが不意に口を開いた。

 

「ラ・ピュセル」

「? どうしたんだい、ライア?」

 

急に名前を呼ばれて困惑するラ・ピュセル。対するライアは淡々と語る。

 

「ここに来る前に、この一戦で、九尾は大怪我を負うという運命が占いで出た」

「えっ……」

「だが、運命は変えられた。運命に絶対なんて存在しない」

 

なぜそう言えるか分かるか?

ライアはそう尋ねる。

 

「俺は今まで、運命は先に見通して、その事態を予測する事で初めて回避されるものだと、そう思っていた。そう思い込んで、俺は占いとライダーの力を合わせて使ってきた。……だが、どうやらそれは間違っていたらしい」

「ライア……?」

 

ライアは静かに息を吐き、懐から出したコインを見つめた。

 

「運命は、誰かの手が加わって変わるものじゃない。運命を変える為に本当に必要なもの。それは『当事者の意志』だ」

「意志……」

「そうだ。運命は、自分の力で変えるものだったんだ。自分から動き、自分に相応しい未来を見つけた時、初めて定められた運命は大きく変わると言えるんだ。そしてそれを教えてくれたのは他でもない。ラ・ピュセル、君だ」

「……!」

「あの時、君と九尾が来てくれなければ、運命は変わったとしても、満足出来る結果とはならなかったはずだ。俺は2人に感謝してる」

 

すると、ライアはカードデッキに手を置いて、1枚のカードを引き抜いた。そしてそれをラ・ピュセルに見せた。そこには、『SURVIVE』と表記されていた。

 

「俺は決めた。この力は龍騎と同様に、モンスターから人を守る為に使う。その運命を変える為に」

「ライア……」

「これからも一緒に戦ってくれるか?」

 

そう言われたラ・ピュセルだが、答えは既に出ていたと言っても過言ではない。

 

「もちろんだ。この剣に誓ったように、僕はライアや九尾、スノーホワイトを守る者として、そして今度は自分自身を守る事を約束して、定められた運命を覆す!」

「決まりだな。行くぞ、ラ・ピュセル」

「あぁ! スノーホワイト、下がってて!」

「う、うん」

 

スノーホワイトは九尾と共に一歩下がり、ライアは手に持ったカードをブロバジェルに見えるようにかざし、ラ・ピュセルもマジカルフォンを取り出してタップした。すると2人の周辺に電流が走った。ブロバジェルが狼狽えていると、ライアの左腕につけられていたエビルバイザーは、巨大なエイと弓を併せ持った形をした『エビルバイザーツバイ』へと変化した。同時にラ・ピュセルの左腰にもホルダーが出現する。

そしてライアは口の部分にカードをベントインし、ラ・ピュセルはマジカルフォンをホルダーに差し込んだ。

 

『『SURVIVE』』

 

その音と共に、ライアに鏡像が重なり、仮面や弁髪が金色に変化した。頭部にはマンタの口鰭を模した、銀色の角が2対。腕や膝には金色のエイの装飾品があり、装甲も金のラインが目立つ『ライアサバイブ』へと変貌した。

そしてラ・ピュセルは、両手首に従来よりも頑強なガントレットがつけられ、手もアーマーで覆われており、両腰の鎧が強化され、新たに腹にも鎧が追加され、動きやすさだけでなく、防御性にも特化されていた。頭から生えていた角や尻尾も、竜を彷彿とさせるものへと進化し、後ろ足には竜の爪が生えている。胸元は水着から布状へと変わり、首まわりにも鎧がつけられ、マジカルフォンの色も青からピンクへと変わっている『ラ・ピュセルサバイブ』へと変貌を遂げていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

[挿入歌:果てなき希望]

 

「凄い……! 確かに力が溢れてくるかも……!」

「なるほど、これがサバイブか」

 

ラ・ピュセルサバイブもライアサバイブも、自身の体を見渡して調子を確かめている。と、そこへブロバジェルが突進してきた。

 

「危ないよ!」

「任せて!」

 

ラ・ピュセルサバイブが駆け出し、剣を魔法で肥大化させると、ブロバジェルを薙ぎ払った。サバイブになった事で攻撃力も数段上がっているように感じられる。

起き上がったブロバジェルは、今度はライアサバイブに標的を変えて電流を溜め込んだ両手の爪を突き出した。が、直撃したにもかかわらず、ライアサバイブは痺れる事なく平然としていた。その理由を、ライアサバイブは察した。

 

「なるほど、今は俺もラ・ピュセルも電気エネルギーが全身に流れているから、これくらいの電撃はもう通じないというわけだな」

 

ブロバジェルもそれを察したのか、電撃に攻撃を止めて、足払いでライアサバイブを転ばせた。そして踏みつけようとしたその時、それまで後方で成り行きを眺めていたスノーホワイトが駆け出して、ブロバジェルにしがみつくとライアサバイブから引き離した。

 

「スノーホワイト! 無茶だ!」

「私、だって……! もう、ラ・ピュセルやみんなが、苦しむ所を、見てるだけなんて、嫌だ……! だから、私なりに、頑張る……!」

 

ブロバジェルはスノーホワイトを引き離そうと、電気エネルギーをスノーホワイトに流し込む。当然耐性もないスノーホワイトは全身が痺れるが、それでもブロバジェルを先には行かせまいと堪えていた。

 

「スノーホワイト!」

 

『ADVENT』

 

だが、このままでは危険だと感じたライアサバイブはカードをベントインし、契約モンスターを呼んだ。現れたのは、エビルダイバーの進化形態『エクソダイバー』。より鋭くなったエイヒレでブロバジェルを軽く吹き飛ばした。

 

「無茶し過ぎだよスノーホワイト」

「ご、ゴメン。でも私、何も出来ないのが辛くて……」

「大丈夫。その気持ちはしっかり受け取った。後は僕とライアに任せて。行こう、ライア!」

「あぁ、決めるぞ」

 

『FINAL VENT』

 

ライアサバイブは飛び上がって、旋回していたエクソダイバーの上部に掴まった。するとエクソダイバーの腹から車輪が浮き出て、セグウェイのような形の二輪バイクへと変化し、ライアサバイブは開けた座席に乗った。

 

「ラ・ピュセル!」

「あぁ!」

 

ラ・ピュセルサバイブもそれに続いて飛び上がり、ライアサバイブの後方の座席部分に立った。ブロバジェルが全身に電流を流して突進してきたが、それで臆する2人ではない。エクソダイバー・バイクモードは周囲に放電して敵の逃げ場を無くさせた後、全速力でブロバジェルに突撃した。新たなる必殺技『ハイドバースト』によって掠めとるように体当たりして吹き飛ばされるブロバジェル。そしてラ・ピュセルサバイブは、後部座席から飛び上がって、両手で大剣を構えて、勢いよく振り下ろした。

 

「これで、トドメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

パワーアップし、更に電撃を吸収した大剣は宙に浮いていたブロバジェルを真っ二つに斬り裂いて、ブロバジェルは空中で絶叫と共に爆散した。

 

「やった……! やったよだいちゃん!」

「あ、あぁ」

 

特にこれといった活躍を見せなかった九尾も、興奮しているスノーホワイトに同情した。ラ・ピュセルサバイブが地面に降り立つと同時に、マジカルフォンからキャンディー獲得の知らせが入った。ラ・ピュセルサバイブは改めて自分の両手を見渡して、サバイブの凄さを実感した。

 

「凄い力だ……。これなら、運命を変える事も、出来るかもしれない」

「かもしれないじゃない。絶対だろ?」

 

ライアサバイブにそう指摘されて、笑みを浮かべるラ・ピュセルサバイブ。頷いた後、右拳を突き出して、同じく右拳を突き出したライアサバイブと軽くぶつけた。

 

「お疲れ様、ライア、そうちゃん!」

「だからこの姿でそうちゃんはやめてくれよ……って、聞いてるのかな? ……まぁいいや」

 

ラ・ピュセルサバイブは肩を竦めながら、ライアサバイブと共に、仲間の所へと戻った。

そして隣を歩くパートナーにこう言った。

 

「これからもよろしく、手塚さん」

「あぁ、こちらこそ、だな。颯太」

 

運命は変えられる。

それを改めて確信した颯太と手塚は、新たなる力を持って、これからも運命に立ち向かうだろう。今は、そう思わせるような堂々とした姿が、そこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、ラ・ピュセルは不意にこう思ってしまった。

 

「(それにしても、今日の九尾を見てると、やっぱり変だ……。スノーホワイトが言ってたみたいに、自分から危険な事に足を踏み込んでいる。何か、やるべき事でもあるのかな……)」

 

 

 

 

 




ライアサバイブに関しては、検索すればその画像が出てきますので、そちらをご参照ください。

今回描いたラ・ピュセルサバイブですが、リップルサバイブ以上に全体的な色合いやフォルムが変わってしまっておりますが、何卒ご了承ください。(似合う色の色鉛筆が見つからなくて……)


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