魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今回はあの新人魔法少女だけでなく、2人の魔法少女と、あのライダーが登場!

それにしても、今季は当たり系のアニメが多そうですね。


3.白き魔法少女

 

姫河(ひめかわ) 小雪(こゆき)は、魔法少女に憧れる、妄想癖がちょっと強めな中学2年生であった。

 

 

 

 

幼少期から休日の朝に放送されている、奇跡の力を得た魔法少女が悪と戦うようなテレビアニメに魅了され、常にテレビの前で、買ってもらった変身アイテムやら武器等の玩具を持って少女達の真似をしたりしていた。

魔法少女は人々の幸せを守る為にどんな危機にも挫けず、時には1人で、またある時は仲間と共に力を合わせて悪に立ち向かう姿に、小雪は感銘していた。

将来は魔法少女になる事を、女友達や幼なじみの男子にも堂々と宣言していた時期もあった。

とはいえ、時と共に周りの同級生達は、そんなものはもう幼稚だと切り捨てて、誰も口に出すような事はしなくなる。単純に恥ずかしいからだ。そんな中でも、小雪は魔法少女に固執し続けた。ただ、周りに語るのはやはり恥ずかしかった為、心の内に秘め続けるだけにしておいたが……。

唯一口に出して語れる相手は、幼なじみの男子だけだった。彼もまた、魔法少女が好きであり、親戚から昔の魔法少女系アニメを借りて、小雪に貸していた。そんな彼も中学に上がる頃には学区の違いを理由に別々の道を進む事になり、疎遠になりつつあった。

周りで魔法少女について語り合う相手がいなくなって、何とも言い難い寂しさを覚えつつも、魔法少女を崇め続けた。

 

 

 

 

 

〜それでも私は、夢見てる〜

 

 

 

 

 

 

という言葉を自分に言い聞かせて。

 

 

 

 

 

 

そんな彼女が『魔法少女育成計画』の事を知らないはずも無く、先日やっと親からの許可を得てスマホを手にした時には、真っ先にダウンロードして、プレイし続けた。当然『魔法少女育成計画』や、その男子版として人気の『仮面ライダー育成計画』に関する都市伝説も耳にした。

もっとも小雪自身は最初からその噂を信じて『魔法少女育成計画』を始めた訳ではない。極端に言えば、信じてさえいなかった。なれたらなりたいし、なれなくても魔法少女のゲームはやってて楽しいし、非課金だから続けていきたい。そんな気持ちで毎日欠かさずプレイしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おめでとうぽん!あなたは本物の魔法少女に選ばれたぽん!』

 

右半身が黒、左半身が白で、蝶のように片羽をはためかせている『魔法少女育成計画』のマスコットキャラクター……ファヴが小雪にそう告げたのは、ゲームを始めてから28日目。モンスターを倒し、下の階から母親が夕飯の準備が出来た事を告げられて、ゲームを中断しようとした矢先の事だった。

最初はまた『仮面ライダー育成計画』との合同イベントの類かと思っていたが、事前に通知も無かった事に訝しんでいると、ファヴはフルフルと横に揺れながら呟いた。

 

『違うぽん。君は正真正銘、本物の魔法少女に選ばれたんだぽん』

「へ、返事した⁉︎」

『姫河 小雪。ファヴは君の事をずっとチェックしてたぽん。あなたは魔法少女における行動、性格、知力が全て適正であると判断したぽん』

「嘘、でしょ……? 私が……⁉︎」

 

突然告げられた内容に、小雪は整理が追いついていなかった。

そうこうしている内に画面は切り替わり、魔法陣と『魔法少女になる』と『画面をタップするぽん↑』という表示が出た。ここまで本格的に表示されているところから見て、魔法少女になれるというそれが事実であると判断した。

 

『魔法少女になりたくないのかぽん?』

 

中々タップしない小雪に痺れを切らしているように急かすファヴだが、小雪は胸の高鳴りが抑えきれないほどに強くなっていた。

 

「(魔法少女に……! 本物の……!)」

 

次の瞬間、小雪は迷うことなくタップする。すると画面から光が溢れて、小雪を包んだかと思うと、その姿は一変した。

先ずは自分で腕や足などを確認し、その後鏡に映る全身を見つめた。学生服をモデルにして、全体的に白く、スカーフはフリルで縁取られている。プリーツスカートには白い花飾りを散らしてあり、白いブーツを履いている。オリジナルの腕章が左腕についており、プラチナブロンドはリボンと白い花飾りで彩られている。

その姿に、小雪は見覚えがあった。幼い頃に流行っていた漫画の主人公が通う中学校の制服を基調とした、彼女が画用紙にわざわざ描いたりと、常に理想の魔法少女として思い描いていて、それをそのままゲーム内でアバターとして作り上げた姿そのものである。

 

「え、えぇっ⁉︎ これ、本当に……⁉︎」

 

目を見開きながら全身を見回している小雪に対し、ファヴは得意げに話しかけた。

 

『おめでとうぽん! 君は魔法少女『スノーホワイト』になれたんだぽん!』

「……! やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

夢ではない。自分が諦める事なく憧れ続けた魔法少女に、14歳の自分がなれたのだ。歓喜のあまり、小ジャンプのつもりで飛び上がったのだが、気づいた時には自室の天井に頭を打っていた。そして床に叩き落とされて痛めた箇所に手をやっていると、母親が近くに駆け寄ってくるのが分かった。いつになっても来ないし、突然大きな音が娘の部屋から聞こえてきたので、母親としては何事かと思い、階段を上ってきたのだ。スノーホワイトは母親が部屋に入る前に慌てて小雪の姿に戻り、転んだだけだと若干無理のありそうな言い訳で追い返して、気配がなくなったところで再びスノーホワイトに変身した。

ホッと一息ついていると、再びファヴが話しかけた。

 

『魔法少女になれば、あらゆる身体能力は非常識なまでに向上するぽん。だから気をつけるぽん』

「は、は〜い……」

『じゃあ、手を出すぽん』

 

スノーホワイトが言われた通りに手を出すと、見た事のない端末が光と共に現れた。

 

『魔法の端末「マジカルフォン」だぽん! 基本的なチュートリアルはもちろん、マジカルキャンディーの数のチェックや、自分のデータも確認できるぽん。マジカルフォンは仮面ライダーにも支給されるから、仲間の魔法少女だけでなく、仮面ライダーとの連絡も取れる、優れものだぽん!』

「仲間……? それに、仮面ライダーって、本物の……?」

『もちろんだぽん。君と同じく、「仮面ライダー育成計画」を通じて、シローが厳しくチェックして選ばれた、魔法少女と同じ力を得た戦士だぽん。この街には、つい先ほど、シローからの報告で15人目の仮面ライダーが誕生したと聞いてるぽん。そして君も今日から15人目の魔法少女。これでこの街にいる魔法少女と仮面ライダーは全部で30人になったぽん』

「さ、30人⁉︎」

 

スノーホワイトは同胞の多さに驚く他なかった。

夕飯を食べ終え、両親が寝静まったところで小雪はスノーホワイトに変身し、外に出て誰もいない校庭で密かに自身のステータスを、跳んだり跳ねたり、パンチしたりキックしたり、宙返りしたりと、体を動かしながら確認した。

ファヴから告げられた、魔法少女としての役割は主に2つ。1つは困っている人達の手助けをする事。もう1つはこの街に出没するモンスターを退治する事。

後者に関してはあまり実感が湧かなかったスノーホワイトだが、現場に立ち会った時に対処しようと考えた。基本的に写真や動画に撮られても、正体が判明しないようにファヴやシローが設定しているらしく、堂々と活動してくれても構わないと言う。

憧れ続けた魔法少女になったと実感し、喜びと興奮が押し寄せる中、スノーホワイト……もとい小雪は魔法少女にしてくれた、魔法の国に感謝した。

次の日の夕方から、スノーホワイトは本格的に活動を開始し、瞬く間にブログでは人気を博す事となった。その事に関しては特に気にしてないスノーホワイトだが、唯一気になったのは、スノーホワイトと同日に仮面ライダーになったとされる者の事だった。どことなく縁を感じるので、近いうちにどこかで会ってみたい。そんな事を思いつつも、今宵も人助けの為に夜の街を駆け巡る新人魔法少女、スノーホワイトであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無論、N市で活躍しているのはスノーホワイトや、同日仮面ライダーになった九尾だけではない。各所で魔法少女や仮面ライダーは目的こそ違えど活動している。

N市に出来た、鏡を隔てた先にあるもう1つの世界『ミラーワールド』の一角では2つの人影が、巨大な蜘蛛のモンスター……ディスパイダーにトドメを刺そうとしていた。

 

「ふっ……!」

 

着物をモチーフにしつつ水着のような露出度の高い服装……もといコスチューム。高下駄に手裏剣型の髪留め。赤い襟巻きと鉄色の髪留め以外は黒系一色でまとめられたその魔法少女の姿は、一言で例えるなら『忍者』。そんな魔法少女は俊敏に駆け回りながら、手持ちの手裏剣を地面に向かって投げつけて、ディスパイダーの行動範囲を狭めている。一寸も狂わず正確に円形に投擲出来るその技術は、ただの人間はもちろん、本物の忍者でも上級者でなければ出来なさそうな芸当を、難なくその魔法少女はやれている。それもそのはず。その技こそが彼女の魔法なのだから。

 

「ナイト……!」

 

ある程度投げ終えた魔法少女は、少し離れた所にいたもう1人に合図を送った。

月明かりに照らされ、兜のフェイスシールドの奥から青い複眼が見える、コウモリをモチーフとした西洋の騎士らしきその姿は、正しく仮面ライダー。魔法少女に促された仮面ライダー『ナイト』は頷くと、カードデッキから1枚のカードを引き出し、手に持っていた剣状の召喚機『ダークバイザー』の、ナックルガード部の翼を広げるように展開し、カードをベントインする。

 

『FINAL VENT』

 

直後、ナイトは飛び上がり、どこからか現れたコウモリ型の契約モンスター『ダークウィング』がナイトの背中に張り付く事で合体し、マントのようになると、ドリル状に全身が包まれ、急降下。

 

「はぁっ!」

 

ナイトの必殺技『飛翔斬』が抵抗する間もないディスパイダーを貫き、ディスパイダーは爆散。辺りが炎に包まれる中、ナイトは静かに立ち尽くしていた。そしてゆっくりと炎から抜け出て魔法少女の側に寄った。直後、マジカルフォンからミラーワールドでの活動時間のタイムリミットが迫っている事を知らせる音が鳴り響いた。

 

「……行くぞ、リップル」

「えぇ」

 

リップルと呼ばれた魔法少女はそれだけ呟き、2人は近くの鏡からミラーワールドを後にした。

先ほどまでディスパイダーがいた場所に、黒い瘴気が集まっている事に気づく事なく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界に戻ったナイトとリップルは、人目のつかないビルの屋上で近くの手すりにもたれかかり、今回の戦闘で獲得したマジカルキャンディーを確認した後、まとめサイトの該当記事をチェックしていた。

 

「随分と派手にやってるようだな」

「これ、本当……?」

 

2人が見ているのは、N市城南地区を『縄張り』としているガンマンスタイルの魔法少女『カラミティ・メアリ』と、暴君としてカラミティ・メアリと共に行動している、野蛮な噂が絶えない仮面ライダー『王蛇』がマフィアを壊滅させたという情報だった。

リップルの疑問に答えたのは、彼女のマジカルフォンから飛び出してきたファヴだった。

 

『ガセかもしれないぽん。マジかもしれないぽん』

「曖昧だな」

 

ファヴが宙返りする度に、体から舞い散る鱗粉の眩しさを鬱陶しそうにしながら、ナイトが冷ややかなツッコミを入れる。

 

『あの2人ならそれくらいやってのけるぽん。特に王蛇はカラミティ・メアリ以上に、手当たり次第力を振るってるから、結構無茶やらかす事があるぽん』

「という事は本当……?」

『そんなのファヴもそうだし、シローの口からだって言えるわけないぽん。他の魔法少女や仮面ライダーが何かしましたーなんて事、いちいち報告してたらチクリ屋扱いされて他の妖精から嫌われるぽん』

「……ふん」

 

ナイトはファヴに聞こえない程度で、鼻で笑った。

すると、リップルが不意にマジカルフォンから目を離し、腰掛けていた手すりから飛び降りた。ナイトも最初は分からなかったが、飛び降りようとする彼女を見て何かを察し、同じように飛び降りて、2人は地上に着地した。ファヴは首を傾げるような動作をした。

 

『急にどうしたぽん?』

「鬱陶しいのが来たから、目につかない場所に行こうとしただけ……」

『鬱陶しいぽん?』

「もっとも、気付かれたみたいだけどな」

 

ナイトがビルの谷間から見上げながら呟いていたのでファヴもそれにつられて顔を上げる。そこでファヴもようやく2人が隠れようとした理由が判明した。

月明かりに照らされる夜空に、飛行機とは思えないスピードで動く黒い点が見えた。やがてそれは人型だと分かるほどに近づいてきて、30メートルほどになってファヴは声をあげた。

 

『あっ! トップスピードだぽん!』

「ヤッホ〜。2人とも元気してたかい?」

 

ナイト達の前に姿を見せたのは、とんがり帽子に、その下から見える二房の三つ編みにまとめた金髪と、大きくてクリクリと動いている青い瞳に、首から提げたお守り袋。丈の長い紫地のコートと黒いワンピース姿の、典型的な魔女の格好をした魔法少女だった。何よりも特徴的な、様々な装置が取り付けられた魔法の箒にまたがりながら、トップスピードと呼ばれた魔法少女はハイテンションで話しかけてきた。

 

「相変わらずしつこいな」

 

嫌味を含んで呟くナイトに対し、リップルは挨拶代わりに大きな舌打ちをする。トップスピードは慣れてるのか、苦笑いしながらリップルの顔を覗き込んだ。

 

「リップルも相変わらずツンデレだね」

「……早く隠れればよかった」

「まぁまぁ。魔法少女も仮面ライダーも、同じ目的を持って活動する者同士、仲良くしないとダメっしょ」

「うざっ……」

「リップルは訳あって別だが、他の奴らと馴れ合うつもりはない」

「そんな事よりもさぁ」

 

リップルの舌打ちと、ナイトの言葉が聞こえていないのか、トップスピードは咎める事なく話を勝手に進めた。度を超えたマイペースな点が、トップスピードらしいのだが、それが2人だけでなく、他の魔法少女や仮面ライダーを困らせている一因なのだ。が、もちろん本人は気づいていない。流石のファヴも呆れるほどである。

 

「今日の記事、見てみなよ! ほら!」

 

そう言ってトップスピードが見せたのは、今日投稿された特設サイトだった。内容は魔法少女や仮面ライダーに関する事が全てなのだが、この日は2人の魔法少女と仮面ライダーについての事が一面を占めていた。

2人も気になって覗き込むと、そこには、

 

『自転車を盗まれた際、白い魔法少女が取り返してくれた』

『カツアゲにあっているサラリーマンの所に、白い魔法少女が現れてその人を抱えて逃がした』

『木の上に登って降りれなくなった飼い猫を、白い魔法少女が救助してくれた』

『溝にはまっていたタイヤを、狐のような騎士が車を持ち上げる事で助けてくれた』

『鏡から出てきた怪物を、狐の戦士が鏡の中に引きずり戻した』

 

などと、特定の人物に関する目撃情報が掲載されていた。全体的には白い魔法少女の方が多数を占めていたが、ナイト達の興味を惹くには充分だった。

 

「こいつらは……?」

「俺も初めて見る奴らだから、新人だと思うけど。どうなんだ、ファヴ?」

『トップスピードの想像通りだぽん。この子達は昨日新しく誕生した、魔法少女『スノーホワイト』と、仮面ライダー『九尾』だぽん! シローの話だと、九尾は中々に強いらしいぽん。それにスノーホワイトは、魔法少女になれた事をとても喜んでたぽん。昨日なったばかりなのにこれだけ働ける魔法少女は、ファヴも初めて見るぽん!』

「へぇ! 新人なのに頑張るねぇ〜!」

 

得意げに語るファヴと、感心したように大きく頷くトップスピードに挟まれて、ナイトもリップルも居心地が悪くなるのを感じた。

 

「んでさ! こないだ北区の方でガイがさ……」

 

ファヴが帰ってからも、一度話し出すと止まらないのがトップスピードなので、気がつけば彼女がやって来てから長時間経っており、流石にこれ以上は我慢出来ないと思ったナイトは強制的に遮った。

 

「その辺にしておけ、トップスピード」

「え、何で? 今からが良いところなのに……」

「大体その話、こないだもしてたはずだろ。俺はともかく、リップルは明日も早い。そろそろ帰って寝させてもらおうか」

「……!」

 

リップルが、ナイトの言葉に反応を示すと、トップスピードも納得したように頷いた。

 

「や、こいつは失敬したな。んじゃあ今日はこの辺で。またな!」

 

口早にそう叫んだトップスピードは、あっという間にビルの谷間から上空に飛んでいった。ナイトはやれやれと言いたげな動作を見せ、リップルに顔を向けた。

 

「そういう事だ。もう帰って良いぞ」

「……ありがとう」

 

リップルは背を向けながら、恥ずかしそうにそう呟いて、高く跳躍してその場を去った。ナイトもそれを見送りながら、周りに誰もいない事を確認して、カードデッキをVバックルから外して、変身を解除した。

キリッとした顔つきのその青年は、首から下げていた、写真入れのついたペンダントを開いて中を見つめた。

 

「……」

 

しばらく眺め続けた後、青年は夜風に吹かれながら、明日に備えて、家に帰っていった。

 

 

 

 

 

 




というわけで、ナイトとリップル、そしてトップスピードも登場しました。

次回はいよいよ、あの2人が出会う……!

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