魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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先日ブックオフで『龍騎』シリーズの超合金フィギュアをたくさん買えた事が嬉しい作者であります。後はタイガ、リュウガ、ファムをゲット出来ればcomplete!




65.嘆きと決意

「何だお前ら……。どこから来た」

 

突然王蛇とカラミティ・メアリの前に姿を現したクラムベリーとオーディン。オーディンは王蛇の質問に答える事なく呟いた。

 

「お前にその気があるのなら、戦いの舞台を用意しよう。お前が望んでいるものは何だ?」

 

戦いの舞台を用意する。それを聞いた王蛇は少し考える素振りを見せる。

 

「今は……、ハードゴア・アリス……だったか? 後は、龍騎あたりも良い。まぁ、1分後にはお前らに変わってるかもしれないがな」

「あなたにとって、あらゆる者が敵というわけですね。社会も人も、運命も、自分の中に溢れてくる憎しみに、溺れそうになっている。変わった趣向の持ち主ですね、あなたは」

 

クラムベリーの発言にイラっときたのか、王蛇が2人に向かって歩み寄る。

 

「……アァ。1分もいらなかったな」

 

そう言って王蛇は不意の右ストレートを突き出す。が、その拳は空を割き、気がついた時には、2人は王蛇の真横に移動していた。これには王蛇だけでなく、そばで成り行きを見ていたカラミティ・メアリにも動揺が走った。一瞬腰のホルダーからピストルに手をかけようとするメアリだったが、すぐに手を下ろした。

 

「……妙な手品を使う奴らだね。ま、あんたらはあたしに逆らう訳じゃなさそうだから良いけどさ。……で、見返りは何を?」

「難しい事ではありません。魔法少女やライダーと戦う姿を見てみたい。それだけです」

「……ほぅ。前々から変わってるとは思ってたが、ようやく本性をさらけ出してきたってとこか」

 

カラミティ・メアリは不敵な笑みを浮かべた。否、それはクラムベリーも同じく。

 

「おっと、あんたらはあんたらで要望に応えてほしいそうじゃないか。そいつを先に聞かせてくれたら、考えてやるよ」

「始末してほしいライダーがいます。彼はこれ以上生かしておいても得になりませんから」

「……誰だ」

「仮面ライダー『ライア』。奴を倒せ」

「……ほぅ」

 

2人はそれほどライアと接点があったわけではないが、龍騎やリップルと行動を共にしていて、どちらかと言うと平和主義者というイメージを、メアリは抱いていた。シスターナナほどではないにしろ、見ていてイラつかせる所はあるな、と思っていると、王蛇は肩を竦めて呟いた。

 

「まぁ、ライダーでも魔法少女でも、正直誰でも良いかな」

「それは頼もしい。では、彼らが次に拠点とする所をお教えしましょう」

 

そう言ってクラムベリーが、ライアやその仲間に関する情報を伝えた後、オーディンと共にその場を立ち去った。静まり返った後、カラミティ・メアリは手すりから背中を離して、王蛇に顔を向けた。

 

「なら、いいカモになりそうな奴が、クラムベリーの口から出てたし、そいつをエサに、おびき寄せてやるか。あんたも良いだろ?」

「……ハッ。戦えるなら、何でもやってやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の夕方、小雪はスノーホワイトに変身して、街中で1人、人助けをせっせとこなしていた。街を駆け回る最中、脳裏によぎったのは、ライアの占いによって暗示された、ライア自身の死だった。

 

「(……ライアさんの占いは、ここまで全部当たってるって言ってた……。それじゃあ、もうライアさんが死ぬのを待つだけしかないの……。そんなの嫌だけど、心を読むだけの魔法しか持たない私には、どうする事も……)」

 

何度も打開策を考えては否定し、その繰り返しが続いていると、マジカルフォンからモンスターが近くにいる知らせを告げた。思わず路地裏に立ち止まるスノーホワイト。ただ、その気配はいつもとはまるで違う。これは、契約モンスターの気配だ。

そう気付いた直後、背後からスノーホワイトに向かって、胴の長い巨大な蛇が迫ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、スノーホワイトのパートナーである九尾の変身者、榊原 大地は大病院を訪れていた。親友の颯太の見舞いの為だ。

いつものようにノックするが、返事は返ってこない。その事に訝しみながらも、大地は扉を開けた。個室に一つしかないベッドの上で、颯太は膝を曲げて顔を埋めていた。

 

「……おい、大丈夫か」

「……」

 

颯太は何も答えない。大地は自身のマジカルフォンを取り出して、颯太のマジカルフォンにここまで獲得したキャンディーを分け与えようとするが、ここで颯太が初めて口を開いた。

 

「……そんな事して、どうするんだよ」

「……あ?」

「……もう、嫌なんだ。友達や、周りのみんなに迷惑かけっぱなしの僕が。決められた運命が、僕の周りから親しかった人達を奪っていく姿が」

「颯太……!」

「大地や小雪を、みんなを守りたい。魔法少女として人の役に立ちたい。悪い奴はやっつけたい。そう思ってあの時、戦ったのに、結局後に残ったのは、夢を押し潰されかけて、どんどん人は死んで……。もう、何一つ役に立てない僕には、魔法少女でも、岸辺 颯太として生きる価値なんて」

 

この先、真っ当に生きていける自信がない。

そんな意味を含めた言葉を口に出した直後、颯太の右肩に強い痛みが走った。そして強制的に振り向けられたその先に、大地が突き出した右拳が。

殴られる。そう直感して目を瞑ったが、来るべきはずの苦痛が襲ってこない。恐る恐る目を開けると、拳は眼前で震えながら静止していた。そして右拳を下ろし、だが肩を掴んでいる左手は離す事なく、大地は颯太の目を真っ直ぐ見ていた。その表情は、悲しげな雰囲気を醸し出している。

やがて彼はポツリと呟いた。

 

「……悔しく、ないのかよ」

「……え」

「お前、悔しくないのかよ……! クラムベリーとかオーディンとか、まだ会って日も浅い奴らなんかに、これまでお前が築き上げてきた理想を全部否定されて、夢も奪われかけて、本当に、何も悔しくないのかよ……!」

「……!」

「俺は、悔しいよ……! 悔しいに決まってる! あぁそうだ! めちゃくちゃ悔しいんだよ! あの時お前を助けに行ったのに、結局お前を危険に晒して、挙げ句の果てにこんな大怪我までさせちまって、活躍出来るはずだった大会に出る機会を失くして……! こないだだって、先生を目の前で殺されて、その時だって、何も出来なくて……! ベルデを倒して、先生の仇を討とうと思っていたのに、今度はその仲間が全員やられて……! 空想にまみれた正義が、全部俺に歯止めをかけて、それで、何一つ守れなかった! 俺は、そんな自分が許せないんだ……! だからもう、俺は変わらなきゃって決めたんだ……! その為なら、俺はこれから先、全てが血で汚れても、戦う!」

「大地……!」

「お前は、どうなんだ。今言ったのは全部俺の我が儘だ。お前は……」

「……」

 

震える声でそう問いかける大地に対し、しばらく黙りこんでいた颯太は……。

 

「……僕だって」

 

ようやく口を開いたのは、夕日が沈みきった頃。ゆっくりとした動きで大地の両腕を掴み、震える唇を動かした。その瞳からは、涙腺に沿って液体が流れ出ている。

 

「僕だって、悔しいよぉ……! 何か見返りを求めてた訳じゃないし、誰かを殺してまで生き残ろうだなんて考えもしなかった! それが魔法少女のあるべき姿、みんなと協力して悪に立ち向かう、そんなサスセスストーリーを夢見ていた! それなのに、あいつらはそんな僕の全てを否定した……! あいつらがやっている事は決して許される事じゃない! なのにどうしてあいつらばかりに優遇されてしまっているんだよ⁉︎ 何で正しい事をしてる人達から先にこんな仕打ちを受けなきゃならないんだ……! そんな運命、受け入れられるはずがないじゃないかぁ……! でも、僕にはこれからどうしたら良いのか、分からないんだ! ウァァァァァァァァァァァァァ……!」

 

話が進む度に、颯太の声は大きくなり、次第に腕を掴む力は強くなり、終盤では泣き叫びながら、大地に抱きついていた。大地も、抵抗する事なく、逆に颯太を抱きしめ返した。体を震わせながら、颯太の後頭部に手を回し、なるべく今の自分の顔を見せないように頭を近づけた。

しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した両者だが、先に口を開いたのは大地だった。

 

「……正直さ。ちょっと安心したかも」

「……?」

「ここでお前がまだ自分の生き方を否定するなら、もう諦めてたかもしれない。……でも、お前は自分に正直になれた。我が儘を言えるぐらいには、まだ心は折れてなかったんだなって」

「……それは」

「こんなの言うの恥ずかしいけどさ……。やっぱり、お前と友達になれて、マジで良かったと思う。……ありがとな。俺と、出会ってくれて」

「やめろよ。こっちまで照れるだろ」

 

薄っすらと笑みを浮かべる颯太。久しぶりに見れた事に、大地はどことなく満足していた。が、すぐに気持ちを切り替えて、窓の外に目をやった。

 

「さっき、こんな運命を受け入れられないって言ってたよな」

「? そうだけど……」

「俺だって受け入れたくないものがある。……ライアが、手塚さんが死ぬ運命なんて、何が何でも、変えたいんだ」

 

これを聞いて、パートナーの颯太は動揺するが、大地が思っていたものとは明らかに違うリアクションだった。

 

「⁉︎ ちょっと、待って……! 手塚さんが死ぬってどういう事だよ……⁉︎ だって手塚さんが、次に死ぬかもしれないって言ってた人は……」

「? 待ってくれ。何か食い違いがあるのか……?」

 

颯太の言い方に疑問を抱いた大地は、颯太に手塚から見舞いに来てくれた際に話してくれた、占いの結果を聞き出した。全てを聞き終えて、今度は大地が愕然とする番だった。

 

「まさか、手塚さん……、あんたは……!」

 

何かを悟ったその直後、マジカルフォンが鳴り響いた。メッセージのようだ。大地がいち早く取り出して、内容を確認する。

そこに記載された文面に目を通し終えると、大地は腕を震わせながらマジカルフォンを握りしめていた。気になった颯太が声をかける。

 

「ど、どうしたんだ……?」

「……王蛇からの連絡だ。小雪が、スノーホワイトが、人質に捕らわれた」

「なっ……!」

「何のつもりか知らないけど、俺達を呼び出してきてる。多分だけどパートナーのカラミティ・メアリもそこにいると思う。他のライダーや魔法少女を連れてきても良いって話だ。こなかったら、スノーホワイトを殺すって書いてあった。あいつの事だ。俺達と戦って楽しむのが目的かもな」

「そんなの……!」

 

颯太は思わずベッドから飛び降りたが、足に激痛が走り、床に両手と膝をつけた。

 

「颯太、落ち着け」

「落ち着いていられるかよ……! 小雪が危険な目に遭ってるのに……!」

「あぁ、そうだ。俺だって見過ごすわけない」

 

絶対にスノーホワイトは助け出す。誰1人殺させはしない。

そう呟いて、決意を固めた後、颯太と目線を合わせるように膝を曲げて、ハッキリとした口調で、親友に告げる。

 

「ぶっ壊そうぜ。こんなふざけた運命なんて、俺達でさ」

 

 

 




王蛇&カラミティ・メアリペアに捕まってしまったスノーホワイト。果たして、彼女を無事に救出する事は出来るのか? そして、手塚が示した運命は変えられるのか?

その答えは次回、衝撃の展開と共に、明らかになる事だろう……。

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