魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜 作:スターダストライダー
ファヴ:『う〜ん。みんな、チャットへの参加率が減ってきてる気がするぽん。ファヴもシローも寂しいぽん』
シロー:『強制ではないとはいえ、重要な情報提供をする場合があるから、なるべくなら参加して欲しいのが我々の本音だ』
ファヴ:『まぁ、いない人の事を気にしてても仕方ないとは思うけど、やっぱりみんなには積極的にキャンディー集めも頑張ってほしいから、ここでファヴとシローからとぉ〜っても良いことを発表するぽん! それは、新しいレアアイテムの追加ぽん!』
シロー:『今回のレアアイテムは、これまでとはわけが違うものだ。それ故に、簡単に皆の手に渡るようではアンフェアだと我々は考えている』
ファヴ:『というわけで、今回そのレアアイテムを手に入れれる条件として、ペアで残っていて、且つこれまでの通算成績トップ4組だけが来週から受け取れるようにするぽん! 欲しい方はこの短期間でもっと頑張るぽん。ただし、無理をして体を壊さないようにしてほしいぽん。このアイテムを手に入れれば、それはもう凄くパワーアップ出来るし、モンスター退治もうんと楽になるぽん! どんなアイテムかは、その時までのお楽しみぽん。それじゃあ、また来週!』
「おはようございます」
「……おぉ、令子。おはよう」
「おはようございま〜す……」
普段通りに出勤してきた令子にとって、特に何の変哲もない朝。ドアを開けると、いつものようにパソコンと向き合っている島田と、椅子に座って新聞を読んでいる大久保が見えたが、どうも大久保の様子がおかしい。そればかりか、普段とは全然違う社内である事にに気付いた令子は、大久保に尋ねた。
「……編集長、城戸君は?」
「……」
大久保は返事をする代わりに、持っていた新聞のとある一面を、令子に見せた。令子が手にとって記事に目をやると、そこには『N市内の某公園にて、20代の女性の変死体発見』という見出しが。
「これって……?」
「そこに、害者の名前で『霧島 美華』ってあるだろ」
「えぇ、確かに」
「……城戸の、元カノだ」
「……!」
令子は思わず目を見開き、正史の仕事場のデスクに目をやった。物は散乱しているが、本人はそこにはいない。大久保は令子に背を向けた状態で、項垂れた様子のまま正史と美華の関係について語り始める。
「大学で俺と城戸が一緒だった頃、入部したばっかのあいつを飲み会に誘って、同じ大学だった美華をナンパ気分で呼んで、俺が紹介した事があってな。それで飲んだり食ったりしてるうちに、思った以上にあいつら意気投合してな。次第に付き合い始めたんだ」
「意外です。城戸君に彼女がいたなんて……」
「ま、結局金銭云々が原因で別れてからは特に連絡をとってなかったはずだが、今回の事を知って、あいつ相当堪えてたな」
「そのせいで彼、今日からしばらく落ち着きが戻るまで来ないみたいなんです。寂しい……」
島田がへの字に口を曲げて呟き、令子は島田の言った事が気になった。
「城戸君、来ないんですか?」
「あんな状態でここにおられても、邪魔で仕方ないだろ。ま、ここんところ張り詰めてる感じがしてたし、今は休ませた方が良いだろうよ」
口は悪いように見えるが、その表情からは、本気で後輩の正史を心配しているのは間違いなかった。
「ったく。ここんところ、俺達の周りじゃこんな事ばっかだよな。こないだは香川 俊行の事故死に、今回は元カノの変死。どうなってんだろうな、この街は」
「その事で編集長、ちょっとお話が」
「?」
令子がカバンから、分厚いファイルを取り出すと、ページを開いて大久保に見せるように手渡した。そのページには、何人かの名前や履歴のリストが掲載されていた。
「三条 合歓に木王 早苗、東野 光希、須藤 充、……香川 俊行まで……。何だこれ?」
「ここに載っているのは、約1ヶ月半前から、市内で亡くなった方々の中から不審な死を遂げている人物を、ピックアップしてみたものです。今週になって、新たに天里 優奈、そして昨日火事で亡くなった羽二重 奈々に、そのマンションの屋上で発見された亜柊 雫、編集長が言っていた霧島 美華が同じく謎の死を遂げているとカウントされますから、これで9人になります」
どうやら行方不明事件を追う傍ら、この9人の相次ぐ不審死に、ジャーナリストとして引っかかるところがあるらしく、独自で調べていたようだ。
「以前私と城戸君が調査で訪れた、三条 合歓に関しては、幼少期に患った持病の再発が死因とされてますが、ご家族と再度接触して話を伺って聴いてみても、やっぱり腑に落ちないところがあるそうなんです。そしてその事件を担当していた刑事の須藤 充も、私がアンティークショップで彼に襲われた事件の後、頭と左腕を潰された状態で発見されています」
「あぁ。確か、普通じゃありえないような潰され方をして殺されてたってやつか。アレは聞いてても結構キツかったな」
「他にも、商店街では東野 光希が心臓麻痺によってその場に倒れて死亡している事にもなっていますが、彼に持病がない事は警察の調べでも分かっています。そして須藤 充の遺体発見から数日後に、山奥で木王 早苗の腐敗した遺体が見つかっています。腹部に数カ所刺された痕がありましたが、鋭利な刃物としか断定できないほどに、凶器が未だに分かっていません。そして2日後、香川 俊行が北区の大橋の真下で、首の骨が折れた状態で発見されました」
「けど、それは事故死って事になってただろ?」
大久保がそう言うが、令子は首を横に振って口を開いた。
「それにしては変なんです。あの辺りで足を滑らせた事になっていても、それ以前から雨が降った形跡もなく、足を滑らせる要因なんて、見つからなかったんです」
「何……?」
「そして一昨日は天里 優奈が、頭部の複雑骨折による脳内出血で死亡。昨日は羽二重 奈々が焼死。そのマンションの屋上に置かれていた亜柊 雫は、両手を切断された状態だったらしく、死後数日は経っているそうです」
「ううん……。こうして見ると、この短期間で若者を中心に謎の不審死ってのは、確かに引っかかるな」
「おまけに、この香川 俊行、亜柊 雫、羽二重 奈々、そして霧島 美華は、同じ大学のゼミという共通点があります」
令子は取り出した色ペンで、4人の名を丸で囲った。
「けど、それ以外は特に特徴的なのは……。強いて言うなら、先ほど編集長が言っていた、若者ばかりってぐらいでしょうね」
「他に分かってる事とかはあるか?」
「いいえ、これ以上はまだ調査の途中経過ですから……。ただ、最初にリストに挙がった三条 合歓の事件の少し前から、頻繁に魔法少女や仮面ライダーと思しき人物の目撃情報が多数寄せられていた、ぐらいの事はありました」
「ってことはアレか? この一連の事件、その魔法少女や仮面ライダーが関わってるって事か?」
「さすがにそれは無いかと……」
令子は苦笑混じりに呟いた。が、彼女自身、心の片隅で引っかかるところはあるらしく、何となくではあったが、自身のスマホに目を向ける。
「一応、こちらの方も調査は続けていきます。一昨日、木王 早苗が生前勤めていた、高見沢グループが率いる会社に話を伺おうと思ったのですが、社長の高見沢 大介から直接断られてしまって……。とりあえずは、香川のいた大学のゼミ生から詳しく聞き出そうと思っています」
「そっか」
「じゃあ編集長、早速行ってきます」
「おう。無理はすんなよ。城戸がいない今、お前が倒れたらウチの会社はやってけないからな」
「大丈夫です。体の健康は常に意識してますから」
そう言って、令子は早速香川達が通っていた大学に足を運んだ。
「ま、令子がそう言うなら大丈夫か」
「……あの。まだ私がいるんですけど」
1人、置いてけぼりにされている島田が涙目で自分を指差しながら大久保に存在感をアピールするものの、大久保は上の空だった。そして窓の外に目を向けて、深刻そうに呟く。
「……早く戻ってこいよ、正史。またその間抜け面を、俺達の前に見せてくれよ」
夕暮れ時の、車の交通量が多くなる時間帯。大通りから少し外れた道を、2人の少女が並んで歩いていた。小雪の友人、芳子とスミレだ。道端を歩きながらお喋りしていた2人だったが、その近くを、葬式帰りであろう霊柩車が通り過ぎたところで、それまでの話題をガラリと変えた。
「……あ、またあの車だ。ここんところしょっちゅう見かけるよね」
「そーそー。昨日また出たんでしょ、死んだ人」
「あー、マンションが一部屋焼けて、焼死体が発見されたってやつ? しかも原因が分かって無いって事でミステリアスな感じの」
2人の間で、昨晩起きた事件について論議した後、スミレがこんな事を口にした。
「ってかさ。小雪、今日も来なかったね。どうしたのかなぁ」
「もう3日連続だよね。こないだの忌引きで休んだ時以外、滅多に休む事なんて無かったのにさ……」
「忌引き……。あぁ、小雪が小学校の時の先生だった人のやつでしょ? 名前忘れちゃったけど、この街じゃ有名な人だったらしいよ」
「私らは全然関わりないけど、やっぱ昔の担任が死んじゃうのは、ショックだよね」
「ショックっていえばさ。忌引きで休む前も、めっちゃ落ち込んでた時あったじゃん。あれ何だったんだろ?」
「あれ? スミ知らないの? その前の晩に、幼馴染みが轢き逃げ事故で大怪我負ったらしいよ」
「えっ⁉︎ まさかあの、いわくつきの『中学生轢き逃げ事件』に、小雪とその幼馴染みが関わってたの⁉︎」
「いわく? 何それ?」
スミレの言い方が気になった芳子。スミレはネットで拾った情報を彼女に教えた。
「だってその事件で使われたトラックで、その被害者が足を思いっきりシャッターと挟まれて重傷だったって話なんだけど、そのトラックの運転席には誰も乗ってた痕跡が無いって噂だよ!」
「うわっ、何それ。都市伝説っぽいじゃん」
いよいよ気味が悪くなり始めた芳子がわざとらしくブルブル震えていると、スミレも興奮したように喋りまくった。
「でしょ! 何か例の魔法少女、仮面ライダーの都市伝説と関係があると私は推理するね……!」
「……いや、それは無いでしょ」
さすがに都市伝説マニアの少女の度を超えた発言に、相方は冷ややかなツッコミを入れた。
「大体魔法少女や仮面ライダーの目撃まとめサイトだってさ。あれ絶対CGとかやらせだって」
「いやだってさぁ。小雪も信じてたし、何か感化されて調べてるうちに面白くなっちゃってさー」
まぁ、とりあえずこれ見て、と言ってスミレが見せたのは、スマホの画面。そこには、この数日間で目撃された魔法少女や仮面ライダーに関するまとめサイトが。
「以前からこの街では多くの魔法少女や仮面ライダーが目撃されてた。特徴から振り分けても、いま現在判明している限りでは、ざっと30人前後ってとこね」
「30人か……。めっちゃ多いね」
「そんでもって最近は魔法少女だと、とんがりハットの魔女に忍者、双子の天使と犬っぽい子、そして一番目撃者が多い白いお花の子。仮面ライダーだと、ドラゴンやコウモリ、エイ、サメ、サイ、ホワイトタイガー。後は狐ぐらいしか目撃談が上がってこなくなってて……。あ、でも最近だと山奥でしか見られなかった、バラの魔法少女や金色の鳥みたいな仮面ライダーが街で目撃されるようになったっけ」
何かが動いている。そう熱く語るスミレだが、芳子にはまださっぱり分かっていないようだ。
「……で、それが例の事故とどう繋がるのよ?」
「あの事故以外にもね。不審な死を遂げた若い男女が、何人もいるらしいの」
「……あ。だから最近霊柩車を見かけるようになったのかな?」
「実は私の近所に住んでたお姉さんが、山の中で凶器もわかってないような刃物でお腹を何箇所か刺されて殺されてたのが見つかったらしいよ。仕切りたがり屋でうるさい時もあったけど、良い人だったんだよ」
「そうなんだ……。で、どういうオチなの?」
そう言われて、スミレは本題に入った。
「よく考えてよ。魔法少女とか仮面ライダーって、多くても5人グループで何とかやってけるレベルじゃん。ニチアサの特撮とか、ヒロインものとか……。30人もいたら多すぎでしょ。よっちゃんだって、さっきそう言ってたでしょ?」
「うん。まぁそうだよね」
そして、スミレは結論を強く言い放つ。
「ズバリ! この街では今現在、魔法少女や仮面ライダー同士が、その資格の椅子を命がけで奪い合っているの!」
「……!」
芳子は思わず立ち止まり、何気なく足元に目をやる。すぐそばでは、干からびたカエルの死骸に、無数のアリが巣へ運ぼうと群がっている。気味が悪くなり、慌てて目線を逸らした芳子は引きつった笑みを浮かべる。
「ま、まっさかぁ……。そんなメルヘンチックな話、現実的にあり得る?」
「そりゃあ不思議な力を手に入れて、仲間と力を合わせて一緒に巨大な悪へ立ち向かう、なんて王道よりはリアリティがあるっていうか」
「考えすぎじゃない? そんな事って……」
一旦立ち止まった2人だが、すぐさま歩き始める。人通りが多くなる道に差し掛かった所で、再び魔法少女関連の話が浮き出た。
「……そういえば、小雪は何で魔法少女になりたいんだろうね? よっちゃんは、もしなれるよって言われたらどーする?」
「えー? やだよ私は。普通で良いよ。スミは?」
「私も同感。自分の事で精一杯だし、小雪みたいに人助けとかガラじゃないもん」
「うわっ。案外スミも現実的だったんだ」
「案外って……」
友人のあんまりな評価に、若干ヘコむスミレ。
「まぁ、魔法とか使えたら、それはそれで面白いかもしれないけどね。でも、いつかは現実見なきゃならない時も来るし……。夢なんていつかは覚めるもんだし」
「そうそう。魔法とかなくても、頑張ろうって思えば大抵何でも出来るって、先生言ってたしね」
「……全ては自分の努力次第ってやつね。小雪だったら何て言うかな? 後、だいちゃんは……まぁ、私達と同じ事言いそうかな」
「うんうん。でもまぁ、明日は来てくれると思うよ、小雪。そん時に聞こっか」
2人は仲睦まじく、家路を急いだ。
「……人がどんな環境下に置かれていても、必ず持っているもの。それが、『欲望』。その欲望が背負いきれないほどに大きくなった人物こそが、力に選ばれ、戦う。それが仮面ライダー、それが魔法少女」
……2人が通り過ぎた店のショーウィンドウの片隅から、黒龍を思わせる仮面の人物が、2人に目を向けているとも知らずに。
「……神頼みすることでしか、魔法という異能の力を望む事でしか、地獄から這い上がれない人間もいる。それを知らないお前達は、それだけ幸せ者なんだろうな……」
黒龍は、昨晩戦利品として手に入れた金色の指輪を握りながら、背を向けた。その姿が完全に、空気に溶け込むように見えなくなるまで、誰1人として、そのショーウィンドウに目を向けて気づく者はいなかった……。
戦隊ヒーローって大体初期は5人、もしくは3人が王道でしたけど、今日から始まったやつは確か9人から始まるんですよね。どんなストーリーになるのか気になりますね。
その代わりに、今年の『キラキラプリキュアアラモード』は5人からのスタート(ただし変身アイテムを見るからに、中盤で1人増える可能性大)でしたね。不思議と5人から始まるタイプのストーリーって、結構当たりだと個人的に思います(遊戯王5D'sしかり、プリキュア5、スマプリしかり)。
まぁ、今後に期待しましょう。
さて、長くなりましたが、次回から怒涛の展開になります。注目すべきは、愛していた者を目の前で失ったあのライダーですよ。