魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

59 / 144
最近ふと思った事が。

「お婆ちゃんが言っていた。『友情』は『友』の『心』が『青臭い』と書くってな」(by天の道を行き総てを司る男)

「ルーラが言ってた。手下とリーダーの関係はあっても友達なんていい加減な関係はない」(byお姫様になろうとした魔法少女)

この2人って雰囲気は似てるけど、会話の内容が全く正反対だよな、と。

……余談はここまでにして、もう1人の脱落者が発表されると同時に、あいつが猛威を振るう事に……!


55.介入者

「確か、この辺って言ってたわよね⁉︎」

「えぇ、そのはずですが……」

 

その頃、シスターナナとファムは未だに拠点の、廃スーパーにやってこないヴェス・ウィンタープリズンを探しに、彼女が向かいそうな場所を片っ端から捜索していた。が、その最中にマジカルフォンから連絡が入った。ウィンタープリズンからだ。少しトラブルが発生したので、来てほしいという内容だった。

今までどうしていたのかを聞きたかったが、先ずは彼女と合流する事を最優先にして、待ち合わせ場所まで直行する2人。たどり着いたのは、門前町に入って少し進んだ先にある橋の手前。

 

「ここでウィンタープリズンが、との事ですが」

「何でよりにもよってあいつらが拠点にしている所に……」

「そりゃあもちろん、俺達が呼んだからね」

 

不意にどこからか声がしたかと思うと、近くの鏡から姿を現す者が。ベルデ、アビス、スイムスイム、タイガ、ミナエル、ユナエル、ガイ、そしてたまの順に、2人の前に姿を見せた。

 

「あんた達……!」

「ねぇねぇ。2人ともウィンタープリズンを探しに来てたんでしょ?」

「でしょ?」

「! どうしてあなた方がそれを……。もしかして、ご存知なのですか⁉︎ ウィンタープリズンがどこにいるのかを⁉︎」

「もちろん。ほら」

 

そう言ってガイは、肩から担いでいた何かを2人に向かって放った。よく見るとそれは人だった。顔が地面に伏せられて、誰だか分からなかったが、次第にシスターナナの顔が青ざめていくのを見て、ベルデとガイは仮面の下でニヤついた。

赤い服を着ているのかと思ったが、そうではない。それは血で染まった跡である事が、背中についている大きな傷が物語っている。さらに2人が注目したのは、その人物の服装だ。元は白と思わしきTシャツにサスペンダー。該当する人物が1人だけいる。

 

「何キョトンとしてるのさ? ちゃんと返してあげたでしょ? おたくの大好きな人」

「……ぁ。し、しず……」

「……!」

「あ、そうそう。これも返しとくわ。どうせ持ってても邪魔なだけだし」

 

ガイが続けざまに投げ渡したのは、黒のマフラー。それを手に取ったシスターナナは、膝から崩れ落ちた。そのマフラーは、かつて自分が雫にプレゼントしたもの。そして目の前に転がる、傷だらけの変わり果てた死体の正体は……。

 

「……い、イヤァァァァァァァァァ⁉︎」

「雫……! そんな……!」

 

ファムも、シスターナナほどではないが、仲間の死を目の前にして、動揺を隠せない。

一方、ベルデ達は平然とした態度で事の次第を説明した。

 

「言っとくがな。そいつは俺達の拠点に奇襲をかけようと単独で乗り込んできた。向こうから仕掛けてきたんだから、やり返すのはライダーとか魔法少女とか関係無しに、人として当たり前だろ?」

「お前……!」

「ま、そういう事だからさ。正当防衛ってやつ? だからこうなってもしょうがないでしょ。ってかどうせ誰かは殺っとかないと勝ち残れないゲームだしさ。これでまた1人脱落って事で、また生き残れる可能性が増えたんだよね〜。でも結構頑張った方だとは思うよ? この人数相手にそこそこ戦えてたし」

「あ、あぁ……!」

 

シスターナナは激しい動揺でガイ達の言葉が耳に入ってきていない。一方でファムは最高潮の怒りを覚えたが、現状2人で、しかもうち1人は戦闘向きではないという事実は、それなりに不利が生じていた。

ならば……、と、ファムはシスターナナの手を掴んで叫んだ。

 

「逃げるわよシスターナナ! このままじゃ危険よ!」

「で、でもウィンタープリズンは……!」

「無理よ! 彼女を担いでる暇なんてない! 今は、生き延びなきゃ! 先生や、雫の想いを無駄にしない為にも!」

「!」

 

ファムの言葉を聞いて、シスターナナは葛藤したが、やがて意を決して立ち上がり、ファムに引っ張られる形で彼らとは反対方向に駆け出した。

 

「(……ごめんなさい、雫!)」

 

シスターナナは心の中で謝りながら、精一杯逃げる事に専念した。

 

「逃すわけないでしょ!」

「そーでしょ!」

 

無論彼らもそれを見過ごすはずもなく、8人は2人を追いかけた。

後には雫の死体が橋の上に転がっているだけとなったが、それからしばらくして、雫の死体に近寄る者達が現れた。

 

「……これが、ウィンタープリズンだった人間(モノ)ですか」

「彼女もここで脱落、か」

 

死体を仰向けにして顔を確認したのは、オーディンとクラムベリーのペアだった。つい先ほど、ファヴとシローから連絡を受けて駆けつけてきたのだ。

 

「リサーチの段階では、オルタナティブに次ぐ候補者として名が挙がってたが、思っていたよりあっけなかったな」

「アイテム解放のタイミング、やはり早すぎたのでは……?」

 

2人がそう話し合っていると、マジカルフォンからファヴとシローが姿を現した。

 

『解放のタイミングはこれでバッチリだとファヴは思うぽん』

『お前達は目をかけていたようだが、シスターナナが協力している時点で、参戦派とはならなかったはずだ』

『そうそう。このままベルデ達がシスターナナを始末してくれれば、もっとスピーディーに事が運びそうだから、是非とも頑張ってほしいぽん』

 

どうやらファヴはベルデ達にそれなりの期待を寄せているようだ。一方でオーディンはこんな事を語った。

 

「そう上手く行けばいいがな……。そろそろ奴が動き出してもおかしくない」

『奴? 王蛇の事ぽん? それともカラミティ・メアリの事ぽん?』

「どちらでもない。アレは事前調査した者の中で、それ相応の実力の持ち主だ。ある意味、生き残る可能性が高い」

『ふーん。……あ』

「どうかしましたか?」

『また脱落者が出たみたいだから、ちょっと様子を見に行ってくるぽん。シローも行くぽん』

『あぁ』

 

そしてファヴとシローは姿を消し、再び辺りに静けさが戻った。

クラムベリーはため息をつきながら、橋の欄干に腰をかけて呟いた。

 

「できる事なら、彼女とは預けた勝負を今一度つけようと思っていたのですが、残念です。彼女の事も、もう少し知りたかったというのもありますが」

「だが、脱落すればそこまで。それがこの試験だ」

 

そう言ってオーディンは雫を抱き上げて、歩き始めた。

 

「……どこへ行くのですか?」

「このままにしておくのもアレだからな。彼女に敬意を表して、せめてシスターナナの近くに手向けておこうと思ってな」

 

そう言ってオーディンは雫の死体を連れて、その場を立ち去った。クラムベリーは地面についた血痕を見下ろしながら、一言呟く。

 

「……彼も、変わった美学を持っていますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと歩くその男は、飢えていた。

かつて自分からあらゆる幸せを奪い、そのくせ何も責任を感じていない、友と呼んでいた男と、身勝手なままに自分と縁を切った女への、復讐に。今までの自分なら、陰ながら呪うだけの存在だっただろうが、今は違う。今の自分には、力がある。自分に不幸を与えた者達をこの手で倒す事のできる、絶対的な力を。

そしてこの世界に入り、復讐すべき相手が同じ力を持っていた事に気付いた時は、何が何でもこの手で殺すと誓った。

彼女を探しに、とある地区を散策していた時、前方で騒ぎが起こっている事に気づいた。注意深く観察してみると、6人のライダーや魔法少女が、白いライダーと交戦しているではないか。その近くには怯えた表情の魔法少女が。が、その男が目に付いたのは、白いライダーの方だ。かなり劣勢に置かれている。

まだ奴はこんな所で倒れさせるわけにはいかない。男は左腕についていた、龍の頭を模した召喚器をスライドし、腰についていたカードデッキから、1枚のカードを取り出して、ベントインした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ、ハァッ……!」

 

ファムとシスターナナが逃げ込んだのは、門前町に唯一存在する立体駐車場だった。狭い空間や死角を利用して撹乱させようという魂胆だ。

が、逃げ回っているうちに、前方からピーキーエンジェルズが回り込んできて、行く手を遮った。慌てて後ろに引き返そうとするが、ベルデ、アビス、タイガ、ガイ、たま、スイムスイムが立ちふさがっている。逃げ場を失ってしまったようだ。

 

「ほらほら、鬼ごっこはこれでおしまい。次はもっと面白いゲームを始めよっか。……ライダーや魔法少女同士の戦いってやつを」

「(やるしか、ないわね……!)」

「ファム⁉︎ 何を……!」

「……こいつらだけは、絶対に許せない! あたし1人でも、倒してやる! シスターナナは危ないから下がってて!」

 

ファムはシスターナナを柱の後ろに避難させると、ブランバイザーを構えて、1枚のカードをベントインした。

 

『GUARD VENT』

 

ファムの左手にウィングシールドが握られると、戦闘態勢に入った。

 

「ハァッ!」

 

先行してアビスがアビスバイザーを構えて斬りかかったが、ファムは軽い身のこなしで回避し、逆にアビスに向かってブランバイザーを突き出して、アビスにダメージを与えた。

 

「なんのー!」

「まだまだー!」

 

と、今度はミナエルがデストクローを、ユナエルがガゼルスタッブを構えてファムを挟み撃ちした。ファムはウィングシールドを使って受け流すも、バランスを崩して倒れこんだ。

 

「このぉ……。鬱陶しいわね!」

 

『FINAL VENT』

 

先ずはあの双子から。そう決めたファムはブランウィングを呼び出して、油断していたピーキーエンジェルズをファムに向かって吹き飛ばした。

 

「「おわ〜⁉︎」」

 

あまりの速さに旋回する事が出来ないピーキーエンジェルズ。ファムはウィングスラッシャーを構えて、ピーキーエンジェルズに斬りかかる。が、その時ミナエルが懐からあるものを取り出して放り投げた。

 

「ハァッ!」

 

ファムはミスティースラッシュで双子を真っ二つに斬り裂いた……と思っていたのだが、様子がおかしい。手応えがないのだ。

 

「えっ⁉︎」

 

ファムが後ろを振り返ると、地面には真っ二つに斬られた人形が転がっているだけ。一方のピーキーエンジェルズはケタケタと笑っているだけで、無傷だった。ファムは瞬時に理解した。

 

「身代わり人形か……!」

「正解」

 

ハッと声のした方を振り返ると、ガイがメタルホーンの付いた右手を突き出して、ファムを吹き飛ばした。

 

「ファム! ……!」

 

不意に何かの気配を感じて、シスターナナが振り返ると、いつの間にか背後に回り込んでいたスイムスイムが、ルーラを突き出しており、シスターナナはギリギリのところで回避した。コンクリートの柱にルーラは突き刺さり、その傷の深さから、武器の威力が凄まじいものだと悟ったシスターナナは、涙ながらに尋ねた。

 

「どうして……! どうしてこのような非道を、あなた方は……!」

「ルーラが言ってた。強いやつはどんな手を使っても倒せ。だから、あなたもファムも、倒さなきゃ、いけない」

「……!」

 

絶句するシスターナナに向かって、スイムスイムは再びルーラを振るった。悲鳴と共にファムの近くに逃げ寄るシスターナナ。

 

「ナナ、大丈夫⁉︎」

「え、えぇ……!」

「こいつら、本当に狂ってる……!」

 

ならば容赦はしない。ファムは新たなカードを取り出した。

 

『SWORD VENT』

『SCYTHE VENT』

 

対するベルデも、レアアイテムの1つ『サイズベント』で死神の大鎌を彷彿とさせる武器『デスサイズ』を構えて、ファムに向かって振り下ろす。すると、ファムが構えたばかりのウィングスラッシャーを難なく真っ二つに斬り落としてしまったではないか。

 

「そんな⁉︎」

「さすがは寿命縮ませて買っただけの価値はあるな。こいつなら……」

「なら、こっちだって……!」

 

ファムは購入したレアアイテムの、金の指輪を左の薬指にはめると、再び振るってきたデスサイズの攻撃をバリアで受け流した。

 

「チッ! 小癪な!」

 

ベルデの猛攻に耐えながら後ずさるファムだが、

 

「「そぉれ!」」

「きゃあ!」

 

背後がガラ空きだった事もあって、ピーキーエンジェルズの攻撃が命中して、倒れこんだ。

 

「ファム!」

「みっともなく泣き叫んじゃってさ。ウザいから消えて」

 

ファムに手を伸ばすシスターナナに対し、ガイが心底呆れた様子でシスターナナに攻撃を仕掛ける。タイガもそれに便乗してデストバイザーで斬りかかる。

 

「させない!」

 

『WALL VENT』

 

ファムは一瞬の隙をついて、カードデッキからヴェス・ウィンタープリズンのアバター姿が描かれたパートナーカードをベントインし、シスターナナの周りにコンクリートの壁を形成した。これで少なくともシスターナナの身は安全だ。そう思っていた矢先、ガイは笑いながら1枚のカードをベントインした。

 

「んなのもう一回見てるし。飽きちゃうんだよねぇ」

 

『ADVENT』

 

ガイはメタルゲラスを呼び出すと、壁に向かって突進するように命じた。メタルゲラスの突進攻撃は、ファムの想像していた以上に威力が大きく、シスターナナは崩れた壁に埋もれながらメタルゲラスに吹き飛ばされた。

 

「ギャア⁉︎」

「ナナ!」

 

とっさに覆った両腕にいくつもの切り傷をつけたシスターナナは、すぐには立てなかった。ファムが介抱しようとする中、ガイが新たなカードを取り出し、メタルバイザーにベントインする。

 

「んじゃ、そろそろ終わらせよっか」

 

『FINAL VENT』

 

メタルゲラスがガイの後ろに回り込み、ガイはメタルホーンの付いた右手を叩きながら、冷ややかに呟く。

 

「これで本当の、ゲームオーバーだね」

「「!」」

 

ニヤリと笑ったガイは、駆け出したメタルゲラスの肩に足を乗っけて、メタルホーンを突き出したまま高速で突進してくる必殺技『ヘビープレッシャー』を、ファムとシスターナナめがけて発動する。

これで2人は文字通りゲームオーバーだ。ベルデチームの面々は、誰もがそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこからともなく現れた黒龍が、ガイとメタルゲラスに体当たりして吹き飛ばす瞬間を、目撃するまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ⁉︎」

 

たまが思わずそう叫んでしまうのも、無理ないのだろう。ファムとシスターナナでさえ、目の前の現象に戸惑いを隠せない。

 

「ってぇ〜。何なんだよ」

 

ガイが腰に手を当てながら、妨害してきた黒龍が向かう先に目を向けた瞬間、心の中で首を傾げた。

立体駐車場内を旋回する黒龍の中心に、誰かがいる。全身の至る所が黒一色で、赤い複眼が、禍々しさを感じさせている。そして左腕には龍の頭を模した召喚器が。その姿を見て、真っ先に口を開いたのはファムとシスターナナだった。

 

「……えっ? 龍、騎?」

「どうして、あなたがここに……」

 

ベルデ達も、突如介入してきた龍騎(?)に、訝しんでいた。

否、もし彼のパートナーであるハードゴア・アリスならば、即座にこういうだろう。彼は龍騎ではなく、リュウガと呼ばれる仮面ライダーだ、と。

 

「テメェ……。どうしてここに」

「ってかあいつ、なんか様子変じゃね?」

「うんうん。なんかヤバいオーラが出てるっていうか」

 

一同が困惑する中、ガイがイラついた様子でリュウガの前に立った。

 

「ったくさぁ。折角良いところだったのに、邪魔すんなっつうの!」

 

そう言ってメタルホーンを振り下ろすガイだったが、リュウガは片手でそれを掴んで、振り払うとその腹に蹴りを数発入れた。

 

「……っあ!」

 

ガイは吹き飛び、地面を転がった。実力なら指折りのガイがこうもあっさり返り討ちに遭うとなると、只者ではない。

 

「チッ!」

 

ベルデは舌打ちしながら、アビスと共にリュウガに襲いかかる。が、リュウガは1つ1つの攻撃を避けて、カウンターとばかりに拳を振るって、2人を薙ぎ払った。2人は背中を強く打って、呻き声をあげて地面に落ちた。

 

「!」

 

スイムスイムとタイガは、リュウガを挟み込む形で斬りかかるが、素早く動き回って、2人を蹴り飛ばす。

 

「こんのぉ! 調子に乗るんじゃないよ!」

「やるよお姉ちゃん! コンビネーションなら私達の方が上だもんね!」

 

ミナエルとユナエルも、同じように挟み込んで、スイムスイムとタイガの時以上に動き回って撹乱させた後、リュウガに飛び蹴りを叩き込もうとした。

 

「……バカの一つ覚えが」

 

だがリュウガは依然として余裕があるのか、そう呟いた後、的確に双子の頭をそれぞれの手で鷲掴みにして、強く握りしめた。2人の口から悲鳴が漏れ出す中、リュウガは思いっきり双子を地面に叩きつけた。2人は何度もコンクリートの地面をバウンドして、横たわった。震えながら立ち上がろうとする2人を見て、リュウガはカードを取り出して、ドラグバイザーにベントインした。

 

『FINAL VENT』

 

一同の顔が引きつる中、リュウガは自らの体を空中に浮かせて、右足を突き出した。すると後方から、彼の契約モンスター『ドラグブラッカー』が、起き上がろうとしているミナエルとユナエルに向かって黒炎を放った。

 

「! お姉ちゃん逃げて!」

「ユナ……!」

 

慌ててユナエルがミナエルを突き飛ばすと、ユナエルに黒炎が直撃し、その黒炎はみるみるうちに硬化していった。

 

「う、うぁ……!」

 

ユナエルは必死に飛ぼうとするが、下半身が硬化した黒炎に閉じ込められており、ビクともしない。

 

「ユナ! 逃げてぇ!」

 

姉の声が聞こえてきて、ハッとしたその瞬間、リュウガがユナエルめがけて突撃してきた。が、ユナエルに出来たのは、迫り来る死の恐怖に顔を歪ませる事だけ。

 

「ハァァァァァァァ……!」

 

右足を突き出したリュウガの必殺技『ドラゴンライダーキック』が小さな天使に直撃し、ユナエルは血を吐き出す間もなく、体をくの字に曲げて遥か後方に吹き飛ばされて、轟音と共に壁にめり込んだ瞬間を、誰しもが見逃す事はなかった。

 

「ゆ、ユナァァァァァァァァァァァァ!」

 

あまりの衝撃波に、ミナエルが妹の名を叫びながら吹き飛ばされてた。ベルデ達も近くにいた影響で、地面を転がった。

煙が辺りに充満し、呻き声が響き渡る中、ファムとシスターナナは一部始終を見て、しばらく呆然としていた。

 

「あ、あぁ……!」

 

シスターナナは、仮面ライダーが魔法少女を殺した、殺人現場を目撃したショックで気を失いそうになり、ファムは突然の事で混乱している。が、すぐに気を取り直して、シスターナナに声をかけた。

 

「今がチャンスよ……! この隙に逃げるわよ! このままじゃ、私達も……!」

「! ……はい!」

 

シスターナナは震えながらもファムの手を掴んで立ち上がり、一目散に出口に向かって駆け出した。

地面に降り立ったリュウガも、ファムの後ろ姿を見て足を向けたが、不意に立ち止まり、少し考える素振りを見せた後、港のある方角へと歩き出し、その場を去った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後、ベルデ達は意識がハッキリしてきた所で、ユナエルが吹き飛ばされた地点に足を運んだ。

大きな亀裂やクレーターが出来た壁に目をやった一同は、そこで息を呑んだ。壁から崩れ落ちた瓦礫の中に、大学生ぐらいの女性の頭がめり込んでいる姿があった。ユナエルの変身者、天里 優奈だった。すでに事切れているというのは、見ただけでも判断できる。

 

「アァ……! ユナが、ユナがぁ……!」

 

ミナエルは優奈の死体に寄り添って、大粒の涙を流し始めた。苦楽を共にしてきた双子の妹の死は、姉の精神に堪えるものがある。

 

「泣いてる場合か。これは生き残りをかけた戦いだぞ。この中の誰かが死ぬ事ぐらい、分かってただろ。お前の妹も」

「分かってる! 分かってたけどさぁ……! ユナは、あの時私を庇って……!」

 

ミナエルは大声でベルデの言葉を遮り、優奈の体に顔を埋めた。

 

「やられたよ。まさかあいつ、あんなにヤバいやつだったとはね。ある意味でゲームを盛り上げてきたね」

 

ガイがため息をつきながら呟くが、誰もそれに続いて言葉を続ける者はいない。スイムスイムは俯き、アビスは目線を逸らし、タイガはジッと目の前の光景を見つめ、たまはミナエルの隣に寄り添って、しゃくり上げていた。

やがてベルデが、泣き喚くミナエルに声をかけた。

 

「龍騎……。どうでもない奴だと思っていたが……。まぁ良い。お前ら、これ以上こういった事にならないよう気を引き締めろよ。まだ脱落の枠は……」

「んなの分かってるって言ってんだろ!」

 

突如、ミナエルの叫び声が響き渡り、隣にいたたまはビックリして飛び上がった。ミナエルは、優奈から流れ出た血で染まった両手を睨みながら、妹を殺した相手の顔を思い返しながら、口調を荒げて叫んだ。

 

「龍騎ぃ……! お前は、絶対に、私が殺す……! ユナにした事と、同じ目に遭わせてやる!」

 

新たに生まれた復讐の憎悪。

この救いようのない戦いに、終止符が打たれる時は、いつになったら訪れるのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪中間報告 その7≫

 

【ユナエル(天里 優奈)、死亡】

 

【残り、魔法少女12名、仮面ライダー13名、計25名】

 

 

 

 




……はい。というわけで唐突ですが、ユナエル脱落です。そしてようやくリュウガの出番が……!

映画を見て改めて思いました。やっぱリュウガ強い。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。