魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

46 / 144
新年初投稿となります。今年度もよろしくお願いいたします。

さて、皆さんが特に気にしていたあの展開がいよいよ……。


42.騎士道の誇りにかけて

「そうか。やっと努力が実を結んだってわけか」

「へへ……。これも応援してくれた大地や小雪のおかげだよ」

 

夕日に照らされながら、川辺の広場でサッカーボールを蹴っているのは、小学校からの親友でもある大地と颯太だった。

互いに仮面ライダーや魔法少女である事が判明して以降、2人はそれまでのすれ違う時間が嘘のように、会う機会を設けるようになり、再び活気付いてきていた。この日も短い部活時間の後に2人並んで帰ろうとしていたのだが、颯太に、川辺の広場で練習に付き合ってほしいと頼まれ、大地はそれを承諾。パスの練習をする最中、颯太が数週間後に行われるサッカーの大会に代表者として出場する事が決まった事を告げられた。規模の大きい大会なので、颯太は俄然張り切っている。

 

「今後の進路にも関わってくるかもしれないし、ここは絶対に活躍しておきたいんだ」

「プロサッカー選手になって海外で活躍するのがお前の夢だったよな。頑張れよ」

「ありがとう」

「次の大会も、時間があったら観に行くからさ。小雪も誘っておくぜ」

「は、恥ずかしいなぁ……」

 

小学生の頃以来となるパス回しをしながら互いに言葉を交わし合う2人。

一通り練習を終えて、草むらに腰を下ろして休憩する最中、大地はふと気になった事を尋ねた。

 

「あ、そういやさ」

「? 何だ?」

「小雪の事なんだけど……」

「小雪がどうかしたのか?」

「……あいつ、ルーラとやりあってから全然元気ないよな」

「……うん」

 

颯太は顔を俯かせて頷いた。

龍騎達と手を組むまで拠点にしていた鉄塔でルーラチームに襲撃を受けて以来、スノーホワイトこと小雪は沈んでいた。キャンディーを奪うという発想や、パートナーや家族を裏切る思考、さらには自己主張の為なら平気で一般人にも手をかけるという正義を掲げたりと、到底スノーホワイトとは真逆の考えを持った魔法少女や仮面ライダーがいる事に、彼女は悲しんでいる。事実、話しかけても生返事が多く、何も話してない時はどこか遠くに目をやっている。

それから颯太は静かに顔を上げた。

 

「……あれは、僕のせいだ。マジカルフォンのバージョンアップ機能を譲渡目的としか考えていなかったから、僕や大地、それに手塚さんも油断してしまった」

「そ、それは……」

「あの鉄塔だって、チャットで話した事もあったし、いわば迂闊な公開情報だった。襲撃には絶好のポイントだったに違いない。小雪と同じ考えを共有していると決めつけてしまったから、彼女は戦えなかった。分かっていたはずなのに……」

「お、おい颯太」

「力を振るう事に没頭し過ぎて、小雪だけじゃなくて、城戸さんにも被害が及んでしまった……!」

 

全部、僕が悪いんだ。

そう言い切った颯太を見て、すぐさま大地は颯太の額を小突いた。

 

「……っ」

「ちょっと責めすぎじゃねぇのか。何もお前が全部悪いわけじゃねぇだろ」

「でも、絶対に守るって誓っておきながら、この有様だぞ⁉︎ 情けないだろ……」

「なら俺も同じだ。パートナーなのに守れず、キャンディーを奪われて、そのくせ心配までかけさせちまって……」

 

不意に大地は、以前怪我をした右腕の部分に目をやった。

 

「だから、その……。無理に1人で全部抱え込まなくたってさ。いいんじゃねぇの? どんどん頼ってけよ。このままじゃ、お前が先に壊れる」

「頼る……」

「こんな言い方、俺らしくないかもしれないけど、俺だってパートナーとしてあいつを守りたい。でもやっぱ俺だけじゃ無理だ。お前みたいに頼れる奴がいないと、結局ダメだ。だからさ、俺達で守ろうぜ。小雪を、あいつの言う正義ってやつを」

「……あぁ、そうだな」

 

颯太は深く頷き、何かを決意したように、夕日の反射で美しく輝いている水面を眺めた。その様子を見つめながら、大地は口を開いた。

 

「小雪の事はお前の方が一番知ってると思うけど、やっぱりあいつは昔からこういう事は苦手なのか?」

「それで間違いない。子供の頃から争い事は大嫌いだった。自分には関係ない事でも誰かと喧嘩を始めていたら泣き出してたし」

「そっか……」

 

本当に何かを奪い合ったり傷つけ合うのは不向きな魔法少女なんだな、と大地は思った。

 

「……だからこそ、守りたいって思った」

 

そう呟く颯太の目は真剣そのものだった。本当に小雪の隣にいるべきなのは、彼ではないのかと、大地は思った。自分では、彼女を支える立場にはなり得ない気がしてきたのだ。

 

「必ず守ろう。小雪や、チームのみんなを」

「あぁ」

 

2人は同時に立ち上がり、互いに見合った。大地はまだ、小雪の全てを知っているわけではない。少しでもパートナーとして守る立場にあるなら、知る必要がある。その為には、彼女を勇気付けなければ。大地の決意は固かった。

すると、颯太はこんな事を言い出した。

 

「……それから。僕、やっぱりトップスピードにもちゃんと自分の事を話しておきたいと思うんだ。これから先、同じ仲間として、隠し事は極力避けていきたい」

「それって、自分から明かすって事なのか」

「う、うん。結構緊張するけど、これ以上自分の中で彼女にだけ秘めておくのは難しくて……。だから、もし困ったら」

「俺が助ける。当然だろ?」

「……ははっ。やっぱり大地は頼れるよ」

 

大地は肩を竦め、颯太は頭を掻き、しかし両者は笑みを浮かべながら、話を進めた。

やがて門限が近づいている事を知った大地は、颯太に手を振りながらN神社に向かって歩いて行った。

歩きながらふと思い出したのは、小学生の時に、偶々鉄棒の順番で同学年の生徒と喧嘩になった際、全く関与していないにもかかわらず、大粒の涙を流しながら自分の事をジッと見つめてくる少女がいた事だった。喧嘩の内容ではなく、その時の表情が何故か印象強く残っていて、記憶の底から掘り起こされるぐらいのものだった。あの時はどこの誰かも分からなかったが、今にして思えば、あれが現在のパートナーだったのだろう、と大地は呆然としながら推測した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、いつものようにパトロールを終えて、人気のない港のコンビナートの一角に隠れるように腰を下ろして休憩していた。皆が地図を広げて今後の事を話し合う中、依然としてスノーホワイトの表情は優れなかった。魔法少女は精神力に応じて魔法の精度も変わるらしく、現にスノーホワイトの能力が活かせず、今日のキャンディーの獲得数は今までと比べて低い方だった。

さすがに気になった一同はスノーホワイトに声をかけた。

 

「んじゃあ明日はこの辺りを調べてみるか。あたしの知ってる限りじゃ、この辺の修復がまだ……って聞いてんのかスノーホワイト?」

「……え、あ、はい」

「だ、大丈夫? スノーホワイト」

「……はい」

 

スノーホワイトはそう呟くものの、明らかに雰囲気が暗い。これを見た九尾とラ・ピュセルは頷いて、スノーホワイトに寄り添った。

 

「落ち着いてスノーホワイト。大丈夫だ。思い出すんだよ、僕達が憧れていた魔法少女達の事を。どんなピンチに陥っても絶対抜け出してきただろ?」

「それはアニメの話……」

 

リップルが口を開いて何かを呟こうとするが、九尾とライアが右手を突き出して待ったをかけた。それによりリップルも仕方なく黙り込む。

 

「大丈夫。正義は死なない。絶対に……!」

 

魔法少女を、自分を信じるんだ。その一言を聞くと、スノーホワイトも僅かながら表情を変えた。さらにラ・ピュセルはこう論じる。

 

「僕は、この競い合いは世の為になる本物の魔法少女や仮面ライダーを選ぶ試験なんだと思ってる。シザースの事を知ってそう思った」

「世の為に、か。だがそれは……」

「もちろん根拠としては弱いって分かってます」

 

ナイトが反論する前に、ラ・ピュセルは口を開いた。

 

「でも、これがある種の選抜試験だと思うと、ますます生き残らなくちゃ、って気合いが入る。正しい事をしている魔法少女や仮面ライダーは絶対に死なないはずだ。……僕はそう思いたい」

「そう、ちゃん……」

「俺は絶対にここにいる誰も死なせない。ましてや、スノーホワイトは俺のパートナーだ。お前の持つ正義を消させないし、絶対に見殺しになんかさせない」

「だい、ちゃん……」

 

ラ・ピュセルと九尾の言葉を聞き、スノーホワイトに僅かだが光が戻ったような気がした。するとラ・ピュセルは追い打ちとばかりに懐からある物を取り出した。

 

「これ、覚えてるかい?」

 

そう言ってラ・ピュセルが見せたのは1枚の紙のようだが、広げてみるとそこには、見た事のある衣装に身を包んだ少女の可愛らしげな絵と、『しょうらいのゆめ ひめかわ 小ゆき』と書かれた文字がプリントされている。その絵とそっくりな少女は、途端に顔を赤くして取り上げた。

 

「ちょ、ちょっと⁉︎ それ私が小さい頃に描いたやつだよね⁉︎」

「(子供の頃から思い描いてたのか、この衣装)」

「机の中に入れてあったのを持ってきたんだ」

「へぇ〜。上手だね」

「まさに理想が現実になった、というわけだな」

 

龍騎とライアがその絵を見つめる中、ナイトとリップルは肩を竦め、トップスピードは高笑いしていた。

すると、恥ずかしさのあまり震えていたスノーホワイトを見て、九尾は呟いた。

 

「やっと、らしくなってきたな」

「……えっ?」

「今朝のバスの時もそうだったけど、ここんところ暗い顔ばっかだったし」

「……あ」

 

そこでスノーホワイトは理解した。九尾とラ・ピュセルは、本気で自分を心配してくれていたのだ、と。普段は会う機会が少なくても、いつでも見守ってくれている。その事がスノーホワイトを安心させていた。2人の素顔を思い浮かべながら、スノーホワイトは感謝した。

 

「……ありがとう」

 

スノーホワイトは恥ずかしがりながらも、その言葉を口にすると、ラ・ピュセルもニッコリと笑った。九尾の方は分からなかったが、安心しきった表情になっているに違いない。

そう思っていると、不意にトップスピードが笑いながら尋ねてきた。

 

「いや〜、しっかしラ・ピュセル。お前アレだな。魔法少女の事喋りだしたら本当に熱いよな! それにスノーホワイトとは昔から親しいんだっけ?」

「まぁ、家も近かったし、お互い魔法少女が大好きだったから、小さい頃はそれはもう毎日一緒に遊んでたんだ。でも小学校に上がってからは、大地と遊ぶ方が多かったよ。その過程で、城戸さんとも知り合えた」

「うんうん。2人とも本当に仲が良かったからね」

 

龍騎の変身者、城戸 正史も深く頷く。

すると、ラ・ピュセルはおもむろに立ち上がり、マジカルフォンを手に持った。

 

「? どうしたの?」

「この中じゃ、トップスピードにはまだ見せていなかったよね。僕の秘密を」

「? お前の秘密?」

「⁉︎ ちょ、ラ・ピュセル⁉︎ もしかして……!」

「自分から話す決心がついたのか」

 

ライアが落ち着いて理解する中、トップスピードだけは頭に? を浮かべていた。

 

「……いいの? そうちゃん」

「構わないよ。もうトップスピード以外には明かしてるし」

「俺だけ知らない事なんてあったか?」

「僕の正体だよ」

 

そう呟いてラ・ピュセルはタップすると、光に包まれて、中から変身者でもあるジャージ姿の岸辺 颯太が7人の目の前に披露された。ほとんどがノーリアクションではあったが、ただ1人、彼女だけはポカーンとしていた。

 

「……え? はっ? えっ?」

「気が動転するのは分かるよ。でも、これは事実だ。僕が、ラ・ピュセルだ。小雪の幼馴染みで大地の友達の、岸辺 颯太」

 

苦笑混じりにそう呟く颯太をしばらくジックリ眺めた後、

 

「イェァァァァァァァァァァァァァァァ⁉︎」

 

驚きのあまり、奇声をあげながら両手のひらを地面につけた。

 

「えっ、ちょ、おま、えぇっ⁉︎ おと、男⁉︎ な、何でまたお前がぁ⁉︎」

「落ち着けトップスピード」

「これが落ち着いていられっかよ⁉︎」

 

リップルの冷ややかなツッコミに対し、トップスピードは喚き立てる。パートナーの龍騎やライア、九尾がどうにかして落ち着かせた後、颯太は一旦ラ・ピュセルの姿に戻って、事の経緯を話し始めた。恥ずかしさはあったものの、九尾やスノーホワイトのフォローもありながら、全てを話し終えた。

 

「魔法少女が好きなら、男でもなれない事はないらしい。ファムみたいに、女でも仮面ライダーになれるように」

「いやまぁ、それはまだ分かるけどよ……。男が魔法少女になったらそりゃあ驚くだろ普通。みんなもそうだろ?」

「確かにいつもサッカーばかりやってる姿しか見てなかったし、そんな様子は全然だったから、俺だって驚いたよ」

「私も……かな」

 

九尾とスノーホワイトはトップスピードの意見に同調しつつもそう話した。他の4人も、最初にラ・ピュセルの正体を知った時の事を思い返して、少しばかり頷く。

すると、全てを明かして何かが吹っ切れたのか、ラ・ピュセルはヒートアップしながら喋り始めた。

 

「女の子なら『魔法少女が好きでも夢見がちねオホホ……』でも済むけどね! 『中学生にもなって男が……』なんてなると、それは最早異常者レベル……変態扱いだよ! それはもう隠れキリシタン並みの迫害を覚悟しながら毎日せっせと魔法少女に隠れながらかじりついていた……!」

「ら、ラ・ピュセル……?」

「(こいつ、変なスイッチが入ったみたいだな)」

「だから本当に魔法少女に選ばれた時の喜びは、君達女子の比じゃなかった思うよ! 色々とね!」

「おぉ、わ、分かった! 分かったから落ち着けよ!」

「「「「「「(お前[あなた]〈トップスピード〉が言うな[言わないでよ]〈よ〉……)」」」」」」

 

それから両者を落ち着かせた後、ラ・ピュセルは深呼吸してからこう語り出す。

 

「……あの時は、これ以上の奇跡はもうないって、そう思ってた。けど……、また奇跡は起きたんだ。僕が魔法少女になって、大地や小雪とまた会えるようになって、チームを組めて、それから、こんなにも多くの仲間が出来て……」

 

凄く、嬉しかった。率直な感想を述べたラ・ピュセルの表情は清々しさに溢れていた。

 

「トップスピード。そういう事だから、この事は内密にお願いしてくれ。俺達もそれを認めてるし、何よりあんたを仲間だと認めたから、こうして話せたんだ」

「おうよ! こう見えても口は堅い方だからな! そりゃあ最初はビビっちまったけど、もう平気だ! てなわけで、これからもよろしくって事で!」

「あぁ。ありがとう」

 

ラ・ピュセルとトップスピードは切れる事のない友情の証として、互いに握手した。

 

「ま、よかったな、ラ・ピュセル」

「うん。ありがとう」

「私、そうちゃんやだいちゃんがいなかったら、こんなにも出会いがなかったし、とっくに脱落してたと思う。2人がここにいてくれて、本当に良かったよ……。ありがとう!」

 

スノーホワイトは嬉し涙を流しながら、2人に抱きついた。2人が焦りながらもやれやれといった表情でスノーホワイトを慰める中、ライアはずっと黙り込みながら3人を、特にラ・ピュセルを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひと騒動あったものの、無事に今日の活動を終えた一同は解散した。九尾、ラ・ピュセル、ライアはスノーホワイトを家の近くまで送るためについていった。

やがて住宅街の一角の屋根に立ち止まってから、ラ・ピュセルは口を開いた。

 

「それじゃあ、僕達はこの辺で」

「うん。いつも送ってくれてありがとう」

「じゃ、またな」

「おやすみ」

「うん! またね!」

 

そう言ってスノーホワイトは立ち去ろうとしたが、不意に後方を振り返って、口を開いた。

 

「ねぇ、そうちゃん、だいちゃん、ライア」

「?」

「私、みんなと一緒に生き残りたい。こんな争いが早く終わるように、頑張ろうね」

「……あぁ、もちろんさ」

 

ラ・ピュセルの言葉を聞いて、スノーホワイトも満足げな表情になり、今度こそ帰宅した。

 

「じゃあ俺達も」

「……」

「何かついてるのかい?」

 

ライアの視線が気になったのか、ラ・ピュセルはそう尋ねた。

 

「いや、何でもない。ただ……。帰り道には気をつけるんだぞ。こんな状況だから、いつ何が起こるか分からない」

「うん。大丈夫」

「じゃあな」

 

3人はそれぞれ家のある方向に顔を向けて、屋根の上を飛び回りながら去っていった。

……のだが、何故かラ・ピュセルだけはその場にとどまっている。その理由は、すぐに明らかとなる。

 

「出てきなよ。港にいた時から、僕達をつけていたのだろう?」

「……ほぉ、よくぞお気づきに」

 

ラ・ピュセルが背後にいる何者かに声をかけながら振り返ると、煌々と輝く月をバックに佇む者が。

体に飾られている花々が特徴的なその人物は、ラ・ピュセルと同じ魔法少女だった。

 

「さすがです。では何故他の者達を帰したのですか? 港にいた時点で気付いているなら、8人で相手にすればいいものを」

「私1人の方が、やりやすいから」

「話が早くて分かりやすい」

 

目の前の魔法少女は不敵な笑みを浮かべる。

ラ・ピュセルが皆に伝えなかった理由は単純だった。ただでさえ仲間同士の争いで肉体的にも精神的にもダメージを負っている者がチーム内にいる以上、これ以上の負担をかけさせるわけにはいかない。要するに、『これ以上他人を巻き込みたくない。迷惑をかけられない』と思い、あえて自分1人で相手にする事にしたのだ。

 

「ラ・ピュセル。あなたはガイら6人を相手に戦って勝利したと聞きました」

「……あれは、勝利などと言えないものだ。結果的に2人もキャンディーを奪われ、怪我を負う者もいた。それに、パートナーがいなければ勝てなかったのも事実だ」

「まぁまぁ、謙遜や卑下する事はありませんよ。私にはその事実があれば良いのです。あなたが強い魔法少女であるからこそ、私があなたに挑戦する意味がある」

 

それを聞いた途端、ラ・ピュセルは訝しんだ。

 

「キャンディーが目的ではないのか?」

 

てっきりキャンディーの強奪が目的かと思っていたラ・ピュセルだったが、目の前の魔法少女は、顔色1つ変えることなく、目的を語った。

 

「私は、森の音楽家クラムベリー。キャンディーはいりません。欲しいのは……『強敵』です」

 

魔法少女……クラムベリーの言葉を聞き、ラ・ピュセルの緊張感は一気に高まった。彼女から発せられるオーラは只者ではない事を証明している。強敵と戦うという目的の真意は定かでは無かったが、騎士としてのプライドがある以上、背を向ける事はない。

全ては小雪を、大地を、チームの仲間を守るために。彼女は決断する。

 

「我が名はラ・ピュセル。森の音楽家クラムベリーよ。相手になろう!」

「ありがとうございます。では……」

 

相手の承諾を得たクラムベリーは、拳を固め、一直線に駆け抜けた。対するラ・ピュセルは剣を抜き、向かってくる魔法少女を撃退する為に身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、自宅付近までやってきたライアだったが、唐突に立ち止まり、後ろを振り返った。先ほどまで九尾やラ・ピュセルといた方向に目をやっても、そこには誰もいない。そのはずだったが、不意に昨日占った内容が脳裏によぎった。

 

「(この胸騒ぎ……。俺の中で何かが警笛を鳴らしている……!)」

 

ライアが今一度3人でいた場所に戻ろうとしたその時、マジカルフォンから音が鳴り響いた。モンスターの出現を知らせるものだが、雰囲気がいつもと違う。それは以前、シザースの契約モンスター『ボルキャンサー』が現れた時と似たようなものだった。

ライアが辺りを警戒していると、どこからか黒い影が体当たりしてきた。ライアは地面を転がりながら襲撃した敵を把握した。

 

「あれは……」

 

ライアだったが前に立ちはだかったのは、金色の不死鳥をイメージさせるモンスター『ゴルトフェニックス』だった。まるでライアの行く手を阻むように、ライアを睨んでいる。

 

「契約モンスターか……! しかもこのタイミング……。まさか……!」

 

嫌な予感がしたライアは先へ進もうとするが、ゴルトフェニックスは通さない。

 

「(もう少しだけ持ち堪えてくれよ、ラ・ピュセル……!)」

 

ライアはパートナーの名を呟きながら、先ずはゴルトフェニックスを撃退する為に立ち向かった。

 

 

 

 

 




この前の質問に対し、たくさんの方がコメントを寄せてくれました。ありがとうございます。見たところ、現時点で皆に共通して、生存して欲しかったという人物は、ハードゴア・アリスでした。(てっきりラ・ピュセルあたり来るかな……と思ってましたが)

さて、クラムベリーと対峙するラ・ピュセルの運命や如何に……!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。