魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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クリスマスに投稿出来なかったなぁ……。

そしてエグゼイドでは遂に初の死亡者が……! おまけにその後のツイートで問題発言があったらしく、ある意味で伝統のある仮面ライダーの歴史に泥を塗りましたね、エグゼイドは……。


39.シザースの正体

龍騎、トップスピードペアとシザースとの激しい戦いは依然として予断を許さない状況下にあった。

 

「ハァッ!」

「うっ……!」

「うぉっと⁉︎」

 

シザースはためらう事なく殴りかかり、龍騎とトップスピードは後手に回るしか出来ていない。だが、このままやられっぱなしではいられないというプライドがぶり返してきたのか、トップスピードは叫んだ。

 

「くっそぉ! こうなったらやるしかねぇぞ! 龍騎!」

「! で、でも……!」

「でもじゃねぇよ! 倒せだなんて言わねぇけど、追い払うぐらいはしなきゃ!」

「!」

 

トップスピードの言葉に背中を押されるように、龍騎がカードデッキから1枚のカードを取り出し、ドラグバイザーにベントインした。

 

『STRIKE VENT』

 

と同時にトップスピードもマジカルフォンをタップし、両者の右腕にドラグクローが装備された。

これに対し、シザースも対抗策を打って出た。

 

『GUARD VENT』

 

「「はぁぁぁぁぁぁっ! ダァッ!」」

 

龍騎とトップスピードが息を合わせて右腕を引いてから勢いよく突き出すと、ドラグクローファイヤーがシザースめがけて炸裂した。その時にはシザースの左腕に、シザースバイザーに覆い被さるようにカニの甲羅型の盾『シェルディフェンス』が装着され、ドラグクローファイヤーを防いだ。が、勢いだけは殺しきれず、後方の壁に激突した。2人分の火力は伊達ではなかったようだが、シザースの防御力も折り紙付きであり、未だに五体満足だった。

 

「やってくれますね……! ですが、調子に乗るのもそこまでです」

 

シザースが再び2人に向かって飛びかかろうとしたその時、シザースめがけて2人の飛び蹴りが炸裂し、シザースは後退した。

龍騎とトップスピードが目を見開いた。飛び蹴りを決めた2人は、九尾とラ・ピュセルだったのだ。遅れて2人の後方からはスノーホワイトが合流してきた。

 

「龍騎、トップスピード! 怪我はない⁉︎」

「スノーホワイト! うん、こっちは大丈夫」

「グッドタイミングかもな!」

「よもやこのタイミングで……!」

 

シザースが、援軍の登場に舌打ちしていると、九尾が先行して拳を振るった。シザースもそれに抵抗した。素早い動きと研ぎ澄まされた洞察力を駆使して、シザースの懐にパンチを決める。シザースは吹き飛ばされつつも、空中でバランスをとり、機材を踏み台にして、今現在無防備になっているスノーホワイトにシザースバイザーを突き出した。

 

「!」

「させない!」

 

だがそれよりも早くラ・ピュセルが前に出て、大剣でシザースバイザーを受け止めた。後ずさりながらも、懸命にスノーホワイトを守ろうとしている。

 

「ハァッ!」

 

拮抗している所に九尾が体当たりをし、シザースを引き離すと、ラ・ピュセルも九尾に続いてシザースに立ち向かった。九尾がパンチやキックを、ラ・ピュセルが大剣を駆使して戦う様子を、他の3人は黙って見ている他なかった。

そうこうしているうちに、シザースも挟み込まれる形での対処が厳しくなったのか、次第にダメージが蓄積され始めた。

 

「……これ以上は難しそうですね。ならば仕方ありません」

 

5人を相手に、特に戦闘能力の高い九尾と戦うのは得策ではないと判断したシザースは距離を置くと、1枚のカードをベントインした。

 

『BUBBLE VENT』

 

シザースの右手に、大きな銃口が2つ付いているハンドガン型の武器『バブルショット』が握られ、シザースの横にボルキャンサーが並び立った。

 

「ふんっ!」

 

シザースがトリガーを引くと、泡のような弾丸が降り注ぎ、ボルキャンサーの口からも同じく泡が吹き出た。『バブルシュート』が龍騎達のいた地点に当たると誘爆して、周りは煙に包まれた。

 

「うわっ⁉︎」

「このっ……!」

 

皆が煙を振り払った時には、すでにシザースやボルキャンサーの姿はなかった。どさくさに紛れて逃亡したらしい。

ようやく一同は肩の力を抜いて、楽になった。

 

「ふぃ〜。助かったぜ!」

「間に合ってよかったよ。向こうはトップスピードを狙ってたみたいだし」

「へっ? 俺をか⁉︎」

「ここに向かう途中であのモンスターが襲いかかろうとしてたのに気づいていなかったんですか?」

「う〜ん……。じゃああれは気のせいじゃなかったってわけか」

 

トップスピードが1人納得する中、いつまたシザースがちょっかいをかけてくるか分からないこの日は、これ以上外を出歩かない方が良いと思い、その場で解散する事にした。明日はいよいよ4人目の脱落者の発表に入るわけだが、幸い、各々のキャンディーの所持数はこれまでの活動を経て決して少なくない為、以前のような事に注意しておけば、脱落する事も無いだろう。

帰り際、龍騎はポツリと呟いた。

 

「何でキャンディーの奪い合いなんか考えるんだ? ねむりんだったらそんな事絶対考えないはずだけど……」

「……」

 

その言葉に、スノーホワイトも俯きながら考えた。

こんな醜い争いの果てに、何があるのだろうか、と1人心の中で呟きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた翌日。この日は朝からアンティークショップの調査に向かおうとしていた正史は、そこでマジカルフォンを通じて手塚からの連絡を受けた。話しておきたい事があるらしく、正史は言われた通りに待ち合わせ場所に向かった。

やってきたのは、アンティークショップの近くに軒並んでいるビルの1つの屋上だった。正史が到着した時には、手塚を含め、私服姿の大地、小雪、そして颯太が待っていた。蓮二、華乃は別行動らしく、トップスピードとは予定が合わなかったようだ。

 

「お待たせ。で、どうしたの?」

「その前に、あれを見て欲しい」

 

手塚が屋上の手すりに手をかけ、地上に目をやるように言った。正史が見下ろすと、異様な光景が目に入った。

地上の方にはアンティークショップが見えてくるのだが、そこは昨日とは打って変わってパトカーが止まっており、数人が店の方に目をやったり、店に注目しながら立ち話をしていた。

 

「あれって一体……」

「昨日、俺と秋山、それから華乃ちゃんはあの店に入って調べていたんだ。そして、店長の加賀 友之の遺体が壁に埋められているのを発見した」

「⁉︎ 加賀さんが……⁉︎」

「警察の話では、死後数ヶ月は経っているらしい」

 

手塚の口から出た情報に、正史は驚きを隠せない。シザースの正体だとばかり思っていた男性は、すでに故人になっていたのだ。

大地達も、昨晩シザースとの交戦後にある程度の事情を聞いており、今回の結果に戸惑っているようだ。

 

「何にせよ、加賀 友之はシザースではない。別の人物だ。そしてこれは俺の推測だが、加賀と親しい人物が、本物のシザースだと思っている」

「じゃあその人が、昨日トップスピードを襲おうとしたって事ですね」

 

小雪がそう呟くと、颯太が唸った。

 

「……けど、何で向こうはトップスピードがあそこにいるって分かったんだ? どの辺りを巡回しているかなんて、僕達以外知らないはずだし」

「……!」

 

颯太がそう言ったその時、正史はハッとした。ごく最近になってシザースが何らかの経緯でトップスピードの事を知れたとしたら、そんな機会は1つしかない。

 

「城戸さん?」

「……ゴメン。多分俺のせいだ。昨日、シザースから話し合う機会を持ちかけられた時に、みんなの事、喋っちゃったんだ」

「喋った……? 何を?」

「色々と……。みんなの正体までは明かしてないけど、ある程度は教えちゃって……」

 

正史が悔いていると、大地は納得したように頷く。

 

「そっか。だからトップスピードの行動範囲が分かって、襲撃できたのか」

「性格上、うっかり情報を明け渡してしまうだろうとは思っていたし、仕方ないかもしれないが、少々迂闊だったかもな。これからは相手をよく見て選ぶ事だ」

「……ゴメン」

 

手塚がやんわりと正史を咎めた。これが蓮二や華乃だったら確実にキレていただろう。

しかし、いつまでも俯いてばかりはいられない。結局捜査は振り出しに戻ってしまったのだ。……と思っていた矢先、手塚がある事を尋ねた。

 

「城戸。もう一度尋ねるが、君の上司が巻き込まれた時の事を話してほしい」

「えっ? 良いけど……。確か、令子さんが店に入ってからしばらくして、背後から何者かに襲われて……」

「誰がその人を見つけた?」

「偶々近所を散歩してた人が、倒れている令子さんを見つけて、慌てて近くの人に助けを求めたらしいんだ」

「じゃあその人が、君の上司を病院に運んだのか?」

「ううん。実はその時、偶然近くを巡回していた須藤さんが騒ぎを聞きつけてやってきたらしいんだ。それで令子さんを発見して、病院に連絡したって事になってる」

「その刑事はどこから来たか分かるか?」

「あっちから」

 

正史がメモ帳を見ながら、須藤がやって来たと思われる方向を指差しながら説明すると、手塚は深く考え込んだ。手塚の目線の先には、昨晩手塚達が入った扉とは別に、もう1つの扉が。どうやら店の裏口のようだ。

 

「けど、何でそんな事聞くんですか?」

「いや、ちょっとな……」

 

小雪の質問に答えた手塚は、マッチに火をつけて、アンティークショップに向けて炎をジッと見つめた。やがて火を消すと、正史に向き直った。

 

「城戸。今から君の上司がいる病院に向かって、詳しい話を聞いてくるんだ。きっと俺達が知らない情報が転がり込んでいるはずだ。何か分かったら、俺達に連絡してくれ」

「令子さんの所に? 何でだよ?」

「俺の占い通りなら、その情報によって、この事件の犯人が分かるはずだ」

「本当、ですか……⁉︎」

 

颯太が驚きの声を上げる中、手塚は今一度アンティークショップに目線を向けた。

 

「そしてそれが、シザースの正体を決定づける、重要な証拠になるはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

令子が入院している病院の近くの駐車場に、白い車が停まったのは、その日の夕暮れ時だった。中から出てきたのは、アンティークショップの事件を捜査していた須藤 充。車の鍵をかけた後、病院に歩を進めた。

周りを見渡し、誰もいない事を確かめた須藤が病院に目を向けて、歩き出そうとしたその時、彼の前に誰かが立ちはだかった。

正史だった。

 

「やっぱり来たんだな、須藤さん」

「またあなたですか。おまけに今日は同伴者も」

 

須藤がそう言うように、正史の後方には大地、小雪、颯太が立っていた。まるで須藤の行く手を阻むように。一方で須藤は平然と口を開いた。

 

「何かお話しがあるみたいですが、今はちょっと立て込んでいるので、後にしてもらえませんか」

「……どこへ行く気だよ」

「この病院に入院している患者さんに、事件の経過を報告しにね」

「れ、令子さんの所には行かせない!」

「……ほぉ、あなた方も彼女のお知り合いでしたか。ですが、仕事の邪魔をしないでいただきたい」

 

3人の目的を察した須藤は軽くあしらい、歩き出そうとしたが、正史がそれを遮る。須藤は口調を荒げながら呟いた。

 

「何のつもりですか。業務妨害で逮捕しますよ」

「……何人もの人の命を奪ったあんたがそれを言うかよ」

「何?」

 

大地の低い呟きに、須藤は顔をしかめた。

 

「刑事であるこの私が、人を殺めた? 悪い冗談はよしてください」

「とぼけたって無駄だよ、須藤さん」

 

正史は普段見せないぐらいに険しい表情で須藤を睨みつけた。そして、こう語り始めた。

 

「あんたがここに来る前に、この病院に来て令子さんに話を聞きに来たんだ。あの事件の詳細を詳しく聞くために。そうしたら、あんたと同じ部署の刑事さんが、令子さんから事情聴取してたよ。加賀さんの死体が見つかった事について、現場に立ち寄った事のある令子さんから話を聞くために」

「……あぁ。例のアンティークショップで見つかったという、壁に埋められたオーナーの遺体の事ですね。私も休憩時にそれを耳にしました。担当していたのだから、当然聞いてますよ」

「ならもう1つ聞くけど、どうして令子さんが襲われた時の事、他の刑事さんに話さなかったんだよ」

「……」

 

ここにきて。

初めて須藤の表情に僅かながら変化が表れた。

 

「令子さんの事で、被害届が出てないって刑事さん達が言ってたのを、俺はちゃんと聞いたよ。何で1人で捜査しようとしてたんだ」

「……」

「それに令子さんから、その時の事を聞いたけど。あんた、令子さんが襲われてからすぐに現場に現れたんだよな。それってタイミングが良すぎじゃないのか……?」

「……何が言いたいんですか」

 

苛立つように呟く須藤に対し、正史は告げた。

 

「……もし、あんたが最初からあの店にいて、事件の真相を暴こうとしてた令子さんの邪魔をして襲って、あたかも騒ぎを聞きつけてやって来たかのように装って、裏口から走って出てやって来たのが真実だったら、全部都合が合うんだよ、須藤さん」

「……」

「おい、何とか言ったらどうなんだ!」

 

颯太が叫ぶが、須藤は全く動じない。そればかりか、正史に向かって歩み寄ってくる。やがてその右手がズボンの後ろポケットに入り込み、抜き取ろうとした矢先、須藤の顔が苦痛に歪み、右手から何かが地面に転がり落ちた。

金色のコインと、小型のサバイバルナイフ。後者に目をやった小雪は思わず息を呑んだ。大地と颯太が小雪の前に立ち、正史は身構えた。そして、右手を抑えた須藤の後方から声が。

 

「今のでようやく確定したな」

 

現れたのは、コインを手にした手塚だった。事前に隠れ潜んでおり、須藤が何か仕掛けようとしたのを見て、コインを弾き飛ばして妨害したようだ。

 

「口封じの為に、城戸の上司に加え、彼らを消そうとしたようだが、俺の占いの方が一歩上手だったな」

「占い……ですか。何ともバカバカしいもので私を」

「俺の占いは当たる。絶対だ」

 

手塚はコインをポケットにしまい、落ちていたサバイバルナイフを遠くに蹴り飛ばすと、須藤を睨みつけながら口を開いた。

 

「加賀 友之を初め、あの店に関与して悪行を働いていた人達を行方不明と称して殺害するのが、お前の『人助け(・・・)』であり、龍騎から得た情報でパートナーを襲撃しようとした。全ては生き残る為に」

 

そうなんだろう? と、手塚は自身が独自に調べていた内容が書かれたメモ帳を目の前の男に見せ、そして核心を突く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの店の常連客でもあった、須藤 充。いや、仮面ライダー『シザース』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

沈黙が辺りを支配し、両者は睨み合う。やがて目線を先に逸らしたのは須藤であり、ため息をついた後、ポケットからあるものを取り出して、皆に見せつけた。

カニの紋章が刻まれたカードデッキ。それは違うことなく、一昨日から龍騎を初めとした、彼が行動を共にしているチームメイトが関わってきたライダーの変身者である事を証明するものだった。

若干目を見開きながらも、遂に確信を得た一同の顔を見渡した後、仮面ライダーシザースこと須藤 充は再び周りを見回してから、こう言った。

 

「ここでは人目に付きます。場所を変えましょう」

 

 

 




遂に明らかとなったシザースの正体。

次回、シザースの過去が明らかとなり、避けられない戦いへと物語は進んでいく……。

そしてラストでは、衝撃的な結末が……。

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