魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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前回の投稿後、皆様から温かいメッセージがたくさん送られてきて、とても胸が熱くなりました! 本当にありがとうございます! これからも頑張ります!

さて、今回はあの魔法少女に危機が……?


38.深まる謎

それは、早朝の事だった。

正史がいつものようにOREジャーナルへ出勤する為に、アパートを出て原付バイクに乗り込もうとした矢先、マジカルフォンが鳴り響いた。モンスターの出現ではなく、魔法少女か仮面ライダーからの電話のようだ。

気になった正史が手に取ってみて、思わず目を見開いた。電話の相手はシザース。昨日、理由も分からず交戦した相手からの電話と分かり、不安な気持ちに駆り出されたが、とりあえず出てみる事にした。

 

「もしもし? シザース?」

『昨日はどうも』

「どうもって……。あんた何で……」

『お伺いしたい事がありましてね。あなたは私のみならず、他のライダーや魔法少女と戦うのを拒んでいるようですね』

「そ、そうですけど……」

 

正史がしどろもどろに答えると、シザースはこう尋ねた。

 

『それは本当なのですか?』

「えっ?」

『風の噂で耳にしたのですが、以前ルーラチームと事を交えたそうじゃないですか。それを受けてもなお戦うのは嫌だと?』

「そ、そうですけど。だって、同じ力を持った者同士なんですよ? 戦うだけが全てじゃないでしょ。だから話し合いましょうよ。無闇に戦う必要なんてないんですよ」

 

正史が力説して語る一方で、シザースは落ち着いた様子で話を進めた。

 

『分かりました。ではこうしましょう。あなたのパートナーや、現時点でチームを組んでいる者達の事をできる限り教えてください。そうすれば、私はあなた方に協力してさしあげましょう』

「本当ですか⁉︎ 分かりました!」

 

シザースからの提案に驚きつつも、仲間が増えるかもしれないと踏んだ正史は、早速情報を教えた。

トップスピードの事を始め、九尾、スノーホワイト、ナイト、リップル、ライア、ラ・ピュセルに関する事を。さすがに全て話すのは危険だと思いとどまり、素性を知らないと誤魔化して、正体までは明かす事はなかった。

聞き終えたシザースはしばらく沈黙した後、正史に言った。

 

『分かりました。しかし、口頭だけの情報では信用出来ません。現時点でライダーや魔法少女とは敵対関係にあるものだと、用心しているのが私ですから』

「そ、そんな事ありませんって……!」

『ですので、今日の18:30頃、○○○の工場に来てください。そこで待ってますので、面と向き合って話し合いましょう』

「18:30、ですね。分かりました!」

『それからもう1つ、なるべく1人で来るように。仲間には伝えずに来てくれれば、ちゃんと応じますよ』

 

そう言って電話は切れた。一息ついた正史はヘルメットを被り、エンジンを吹かせた。

 

「(やっぱり話せば分かるんだよ。同じライダーなんだし。これで蓮二にもギャフンと言わせてやれるぞ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪〜」

 

日も暮れかけた頃、トップスピードはラピッドスワローに跨りながら、いつものように上空を旋回していた。真下に見える、煌めく街中を微笑ましげに見つめながら、集合場所となっているビルに着地したのだが、どういう訳か、トップスピード以外誰もいない。

事前に九尾、スノーホワイト、ラ・ピュセルは学校の行事が重なって遅れると告げられており、ナイト、ライア、リップルも急用で遅れてくるとは分かっていたが、龍騎がいない事に疑問を持ったトップスピードは、早速マジカルフォンを通じて龍騎に連絡を取った。

程なくして、龍騎の声が聞こえてきた。

 

『もしもし?』

「よう、龍騎。お前どこにいんだ? 俺はもう着いたぞ」

『あ、ゴメン。ちょっとこれから行く所があってさ。待ち合わせしてるんだ』

「誰と?」

『シザースだよ。これから街はずれにある工場で話し合うんだ。もしかしたら協力してくれるかもしれないんだ』

「へぇ〜。街はずれの工場となると、あそこだな……」

 

意外な人物から呼び出しを受けた事を知ったトップスピードはしばし考えた。このままここで待っていても退屈で仕方ない。そこでトップスピードはこう言った。

 

「んじゃあさ。俺もそっちに行くわ。俺、暇だしさ。話し合うんならもう1人いても問題ないだろ?」

『そっか……。分かった。じゃあ外で待ってるから』

「おう! 今から飛ばすぜ!」

 

トップスピードはマジカルフォンを耳に当てながら、ラピッドスワローに乗って、颯爽と龍騎のいる場所へ向かった。

道中でも会話は途切れる事なく、2人は話し合っていた。内容は言わずもがな、昨日の一件である。

 

「へぇ、んな事があったのか」

『俺ってメンバーの中じゃわりと最近入ったばっかりだからよく分かんないんだけどさ。シザースってどんな人なの?』

「シザースねぇ……。まぁ、チャットには比較的参加率が高いぐらいで、そんなに会う事ってないんだよね。あ、でもパートナーのねむりんとよく話してたのは過去ログで見た事あるかも」

 

トップスピードがそう呟いていたその時、一瞬ではあるが、マジカルフォンから耳鳴りのような音が鳴り響き、どこからか鈍い音がした。

 

「んっ?」

 

早い速度でラピッドスワローを運転していた為、どこから音がしたのか分からないトップスピードだったが、何らかの気配がしたと思い、念のため振り返ってみたが、そこには何もない。地上の方を見下ろしてみても、暗くてよく見えなかった。

 

『どうかした?』

「いや、何でも……。とりあえず、もう直ぐそっちに着くと思うから、また後でな!」

 

そう言って電話を切ったトップスピードは今一度振り返った。

 

「……気のせい、か」

 

そう呟き、トップスピードは運転に集中する為に前を向いて速度を上げた。目指すは、龍騎とシザースの待つ工場である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、トップスピードの感じた気配は、決して気のせいではなかった。

 

「ハァッ、ハァッ……!」

『グルルルル……!』

 

地上で息を荒げる九尾、スノーホワイト、ラ・ピュセルの目の前には、ボルキャンサーがハサミを光らせながら対峙していた。

なぜこのような状況になっているのだろうか。それは、先ほどボルキャンサーがしかけた行為を偶然3人が目撃した事にあった。いつものように集合場所へ遅れて向かっていた3人だったが、不意にスノーホワイトがビルの窓に映るボルキャンサーを発見したのだ。よく見ると、ボルキャンサーの視線の先には、電話に集中しているトップスピードの姿が。明らかにボルキャンサーはトップスピードを狙っている。そう思っていた矢先にボルキャンサーが窓から飛び出てトップスピードを背後から狙ったのだが、とっさの判断で九尾とラ・ピュセルが同時に飛び蹴りを入れて、落下した場所へと急行し、現在に至る。

ボルキャンサーは邪魔された腹いせとばかりに3人に襲いかかった。スノーホワイトはマジカルフォンをタップしてパートナーの武器であるフォクセイバーを構え、同じくフォクセイバーを構えた九尾、大剣を肥大化させたラ・ピュセルと共にボルキャンサーに斬りかかった。3方向からの攻撃には対処できず、ボルキャンサーはダメージを負いつつも、隙を見て近くの窓ガラスへ飛び込んだ。

3人も武器を下ろして窓ガラスに駆け寄ったが、すでに気配はなかった。

 

「逃げたか」

「……でも、どうしてあのモンスター、トップスピードを狙ってたのかな……?」

 

もっともな疑問を口にするスノーホワイト。一般人を襲うならまだしも、相手はモンスターにとって天敵とも言える魔法少女。わざわざリスクを冒してまで魔法少女を倒そうとするとは思えなかった。その時、九尾がある仮説を立てた。

 

「ひょっとしたらあいつは、誰かの契約モンスターの可能性が高いな。だからマジカルフォンの反応も、いつもと変わってたのかもしれないぞ」

「それって、誰かがトップスピードを狙ってたって事⁉︎」

「かもしれないね」

 

慌ててスノーホワイトがマジカルフォンからトップスピードに連絡を入れようとしたが、どういう訳か、電話に出る事はなかった。まだ誰かと電話しているのだろう。

 

「しかしそうなると、誰の契約モンスターなのか……」

「さっきのモンスター、カニにも見えたよね……」

 

スノーホワイトがそう呟いたその時、3人の脳裏に、1人のライダーの存在が浮かび上がった。

 

「「「シザース⁉︎」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、襲われかけたともつゆ知らず快調に飛ばしていたトップスピードは、街はずれの工場を視界に捉えた。その工場の手前付近で、龍騎が手を振っていた。トップスピードは着地し、2人は並んで工場に入り込んだ。

中は多少広いものの、様々な機材や道具が置かれているため、満足に動く事は難しそうだ。

 

「ここでシザースが待ってるって事か?」

「うん。そのはずだけど……。おーい! 出てきてくださ〜い!」

 

工場の中央辺りまで差し掛かった時、どこからか足音が聞こえ、2人の前に姿を現した。黄色いカニがモチーフのシザースだった。が、シザースはトップスピードの姿を確認した途端、驚きを隠せなかった。

 

「……トップスピード⁉︎ なぜあなたが……!」

「何でって……。龍騎から聞いたぜ。仲間になりたいそうじゃんかよ」

「ゴメン。どうしてもって言うから、つい……。でも、良いですよね? これから同じ仲間になるわけだし……」

「……そうですか。なら……」

 

シザースはそう言うと、1枚のカードを取り出した。

 

「……えっ?」

 

『STRIKE VENT』

 

そしてそれを左腕につけられたシザースバイザーにベントインすると、右腕にボルキャンサーのハサミを模した『シザースピンチ』が装着され、龍騎とトップスピードに飛びかかった。

 

「ハァッ!」

「うわっぶねぇ⁉︎」

「わぁっ⁉︎」

 

慌てて2人は別々に避けてかわし、体勢を整えてからシザースに言った。

 

「ちょっ、いきなりどうなってんだよ⁉︎」

「や、止めろよ! 話が違うだろ!」

「つくづく平和なお方達ですね。1人で来いという約束を守らないとは……。まぁ、あなた1人で本当に来たところで、結果は変わりませんでしたが」

「えっ⁉︎」

 

シザースの言葉に呆然とする龍騎。

 

「もうお判りでしょう? 私はね。あなた方と最初から組む気なんてなかったという事ですよ!」

「そんな……!」

「ここであなた方を倒させてもらいます。ハァッ!」

 

そう宣言してシザースピンチを振り回すシザースに、龍騎は悪戦苦闘していた。トップスピードもラピッドスワローに乗って龍騎の援護をしようと考えたが、周りは閉鎖空間でもあり、物が散乱している以上、動きが制限されてしまうため、飛び回る事が出来ない。止むを得ずトップスピードはマジカルフォンをタップしてドラグシールドを展開した。

 

『GUARD VENT』

 

龍騎もシザースを遠ざけた後、カードをベントインしてドラグシールドを手に持った。シザースの攻撃をしのぎながら、龍騎は叫んだ。

 

「俺はあんたと戦う気はないんだって!」

「なら、早めに倒されてもらいたいものですね」

「んな事させっかよ!」

「邪魔ですね」

 

トップスピードが前に出てシザースを抑え付けようとするが、逆にシザースの一撃が、体重の軽いトップスピードを難なく吹き飛ばした。

 

「うわぁっ⁉︎」

「トップスピード!」

 

慌てて龍騎はトップスピードを受け止め、地面に降ろした。そこへシザースが飛びかかり、龍騎はトップスピードを突き飛ばすと、その攻撃を正面から受けてしまった。

 

「グハッ……!」

「龍騎!」

「だ、大丈夫だから……。下がってて、トップスピード……!」

 

龍騎は落下地点にあった木材に埋もれながら、弱々しく手を振ってトップスピードに無事を伝えて立ち上がった。

シザースは、話が通じる相手ではない。

奇しくも昨日蓮二が言っていた通りの展開になってしまったのだ。

 

「……何で、こうなるんだよ……!」

 

龍騎の悔しげな呟きをよそに、シザースの攻撃が再び猛威を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、駅前のアンティークショップでも大きな動きが見られた。

 

「ここが……」

「あぁ。城戸が調べてるアンティークショップだ。おそらくここをシザースが隠れ蓑にしているだろうな。自ら行方不明にして、素性を隠しているはずだ」

「念のためこちらの方で、この店のオーナーでもある『加賀 友之』について調べてみたが、決して善人とは言い難いな。裏で違法売買に手を染めて、多額の報酬を得ているといった、良くない噂が絶えないそうだ」

 

人通りも少なくなったアンティークショップの店の前には、昨日訪れたメンバーでもある蓮二と手塚が立っていた。加えて2人の間には、華乃がいた。バイト終わりの蓮二を手塚が迎えに行った為、もののついでという事で華乃も同行する事になったのだ。

 

「しかし悪いな。君にまで付き合わせる事になって」

「……敵の正体を知っていれば、それだけこっちが有利になる。弱みに付け込める情報は得ておいて損はないから」

 

蓮二と同じような事を言うなぁ、と心の中で手塚は呟いた。ぶっきらぼうに呟く華乃の場合、仲間とはいえ、蓮二以外の男と一緒にいる事が嫌なように見えた。が、逆に言えば蓮二だけは例外らしい。理由は定かではないが、性格の相性なのだろう。そんな事を思いつつ、3人はアンティークショップへの潜入を始めた。

今度は須藤に邪魔されないうちに手がかりを集めようと、3人は分かれて行動に移った。

 

「裏口もあるのか……」

 

店の奥へと歩を進める手塚。蓮二はさらにその奥にある居間の方を調べている。その時だった。

 

「……ねぇ、これ」

 

華乃が何かを見つけたようだ。2人が華乃のもとへやってくると、2人は目を細めた。

華乃は手塚が手渡した懐中電灯である場所を照らしていた。そこは令子が無我夢中で抵抗していた際に割れたであろう鏡だったが、注目すべき点は他にあった。その鏡の後ろにある壁が照らされているわけだが、どういうわけか、壁の色が異なっている。周りを見渡しても、一ヶ所だけが違っている事が分かる。さらに注意してみると、配色の違う壁はセメントで出来ていた。そこにはわずかながらヒビも入っている。他の壁がコンクリートで出来ている以上、単なる塗装による手違いだけでは説明がつかない。

つまり、そのセメントで出来た壁には『何か』が埋められているという事になる。

気になった蓮二と手塚は協力して鏡をどかして、近くにあった置物を使ってセメントの壁を剥がし始めた。思っていた以上に脆く、華乃がそのまま懐中電灯で照らす中、壁の中から3人の足元へ何かが転がり落ちた。華乃が照らしてみると、それは黒縁のメガネだった。

 

「! まさか……!」

 

不意に鳥肌の立った手塚はポケットから写真を取り出し、メガネを持って写真と照らし合わせた。とあるルートから入手出来た写真には加賀が写っており、彼がかけているものと、今現在手塚が手に持っているものはほぼ一致していた。

手塚が固まる中、蓮二は引き続いて壁を剥がした。しばらく掘り進めた後、蓮二が動かしていた手が止まった。手塚と華乃も思わず目を見開いている。

 

「シザースは、こいつ(加賀)じゃ無かったのか……!」

 

そう呟いた蓮二の視線の先には、固まったセメントから覗かせている、男性のものらしき腕があった……。

 

 

 

 

 

 

 

 




今日発売の、遊戯王のストラクチャーデッキは再録が神ってたなぁ〜。(主に相克の魔術師やチキンレース、成金ゴブリンが)

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