魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜 作:スターダストライダー
「優奈? 外に何かあるの?」
「う、ううん。何でもないよお姉ちゃん」
隣に座っていた
「ひょっとしてこないだのお腹の怪我、まだ痛むの?」
「そ、それはもう大丈夫」
「そっかー。ちょっとでもヤバそうだったらすぐに言ってよ。今度はあたしがあいつに同じ目に遭わせてやるからね!」
美奈が奮起しながら叫ぶのに対し、優奈はいつにも増して大人しかった。
思い起こされるのは、昨日の一件。自身のパートナーであるインペラーの裏切りを知り、ベルデの命令で始末する為に行動を起こした。龍騎のチームに寝返ろうとしているのを発見した3人は協力して龍騎を退けつつ、インペラーからの奪取に成功した。その後九尾とトップスピードの介入でインペラーは逃走し、3対3の戦いが始まったのだが、状況は龍騎達の圧倒的リードだった。特に龍騎の実力を甘く見ていたが故に、ユナエルは大ダメージを受けた。そして何よりユナエルの心に突き刺さったのは、敗北感よりも龍騎の怒りのこもった一言だった。
『裏切ったのはお前らの方じゃないかよ!』
「……」
そうかもしれない。思えば光希は優奈に対して積極的に話しかけていた。それだけ自分を気に入ってくれたのだ。にもかかわらず、ユナエルは裏切り者としてパートナーを切り捨てた。それは変えようのない、紛れもない事実だ。
もう少し様子を見てやっても良かったかな……と思い始める優奈とは対称的に、美奈はマジカルフォンを片手に人気投票の事を話し始めた。
「ところでさー。今度の人気投票のやつ、あたしいい事思いついたんだよねー」
「えー、何々?」
「成功してる奴の足を引っ張ってみるとかどうよ?」
「あぁ、ネガティブキャンペーンってやつだね。お姉ちゃんマジクール」
ようやく本調子を取り戻したのか、優奈も気分を改めてマジカルフォンをぽちぽちといじりながら、まとめサイトの掲示板に美奈と共に、他の魔法少女や仮面ライダーの悪い噂をでっち上げて投稿した。果たしてそれが世間に通用するかは定かではないが、暇を持て余し、何より姉と楽しいひと時を過ごすには十分な遊びだった。
「(……そうだよね。あたしだって、お姉ちゃんとずっと一緒にいたいもん。お姉ちゃんと一緒なら、何言われたって平気だし。だから悪く思わないでね、光希)」
その日の晩、龍騎達はトップスピードを先頭に、とある場所へと向かっていた。目的はすでに伝えられているため、スノーホワイト、九尾、ラ・ピュセルは待ち遠しい気持ちでいっぱいだった。が、龍騎だけはどこか暗く沈んだ気持ちで魔法の箒に跨ってトップスピードの後をついていった。
「お、見えてきたぞ」
やがてたどり着いた先は、廃れたボウリング場だった。一同が地面に着地し、正面玄関から中に入ると、待ち合わせていた人物達が歓迎ムードで九尾達を迎え入れた。
「うぃっす! 来たぜ!」
「お待ちしておりました、皆さん。遠いところご苦労様です」
「直に会うのは初めてですよね、シスターナナ」
「えぇ、そうですわね」
「お久しぶりです、先生」
「ラ・ピュセル。まさかあなたが魔法少女になっていたとは。私も驚きましたよ」
「はい、これ差し入れ」
「まぁ、ありがとうございます! 後でみんなと召し上がりましょう」
それは、オルタナティブを筆頭としたシスターナナ、ヴェス・ウィンタープリズン、ファムの計4人で構成されたチームだった。なぜ彼らと話をする事になったのかというと、次の経緯がある。
先週から、今は亡きインペラーの行動を参考に、トップスピードは寝首を掻かれない程度には信頼できる仲間を増やそうと、普段のキャンディー集めの傍ら、様々な魔法少女や仮面ライダーに話を持ちかけてきた。そして今日、シスターナナの方から話がしたいという連絡を受けて、トップスピードは同じチームメイトを引き連れて、彼らの拠点にやってきたのだ。
それを聞いた面々の反応は様々だった。恩師がいるチームならまず間違いなく信用出来るため、抵抗なく受け入れようとしたのはスノーホワイト、九尾、ラ・ピュセルの3人。同胞達と多くのコネを持っているライアもすんなりとその提案を受け入れた。龍騎は彼らとの面識こそ少ないが、インペラーの件を受けて、これ以上無駄な犠牲を増やさせまいと、トップスピードに賛同した。一方でナイトとリップルのペアは不信感丸出しだった。ほぼ無理やりチームメイトに引きずられるようにこの場所にやってきたのだ。
シスターナナは多くの同胞達と会えるのを楽しみにしていたし、ウィンタープリズンもシスターナナの提案に異論を唱える事は決してなかった。オルタナティブは教え子が集まっているチームなら信用出来ると考え、会合に参加した。さすがにスノーホワイトと九尾経由でラ・ピュセルの正体が教え子の颯太だと知った時は香川も驚いたが、広い心でそれをすんなりと受け入れた。無論颯太のプライバシーを守るために、他の3人に話すような事はしなかった。
挨拶もそこそこに、開口一番シスターナナがこう切り出した。
「間違っていると思うんです」
いきなり決めつけるような言い方に、ナイトは冷めた気持ちで呟いた。
「間違ってる? 一体何がだ」
「もちろん現状です。人の世を平和にするために力を与えられた我々が、憎み合い、いがみ合い、蹴落としあい、それで一体何が得られるというのでしょう」
「……そう、ですよね。私もそう思います」
スノーホワイトも沈痛な面持ちでシスターナナに賛同するように頷く。争い事を好まないという点では、この2人はよく似ている。
そしてシスターナナは、偶々近くにいたリップルの手をとって彼女に詰め寄った。リップルは眉根を寄せ、嫌悪感を際立たせたが、シスターナナは気にしていないのか、構わず話を続けた。
「こういう時だからこそ、一致団結しなければならないと思うんです」
「失礼だがシスターナナ。一致団結とはいうが、具体案はあるのか?」
皆が抱いた疑問を代表してライアが手を挙げて質問した。対するシスターナナはリップルの手を握ったままライアに顔を向け、おっとりと微笑んで口を開いた。
「先ずはそこから一緒に考えましょう。私達魔法少女や仮面ライダーの英知を合わせて考えれば、きっととびきりの良い案が思いついて解決できるはずです」
「まさかのノープラン⁉︎」
シスターナナからの一言に、龍騎は思わずズッコケてよろめきながらツッコミを入れた。スノーホワイト、ラ・ピュセル、トップスピード、ライア、オルタナティブは苦笑いし、九尾、ファムは小さくため息をついた。ナイトはさっさと帰りたい気持ちに駆り出され、リップルは躊躇せずに舌打ちした。その際、ウィンタープリズンが軽く咳払いをしたが、リップルの舌打ちに対する窘めが含まれていたのかもしれない。
そこへオルタナティブがこんな事を話し始めた。
「皆さん、何もシスターナナは考えなしにそう言ったわけじゃありません。実は先日……ルーラが脱落した後にファヴ経由で運営に対して抗議文を提出したのですよ。他ならぬ彼女の希望でね」
「おぉ。なるほど運営か」
「言われてみりゃあ、ファヴとかシローばっかに目が行きがちだけど、その手もあったな」
ラ・ピュセルとトップスピードがシスターナナの対応に感心するように頷いた。
「それで、どうだったんだ?」
ライアがそう尋ねると、尋ねた本人の予想通りの言葉が、表情を暗くしたシスターナナから返ってきた。
「……黙殺されました」
「マジか⁉︎」
「どうして……」
「ファヴもシローも、そういうものだから諦めてくれ、と……。ですがこれは諦めて良い問題ではありません。すでに尊い犠牲が3人も出ているのです。ねむりんさんに、ルーラさん……。それに昨日はインペラーさんまで……! あの時強引にでも彼を迎え入れていれば、救えたはずなのに……!」
「……その気持ち、よく分かります」
シスターナナの言葉に、龍騎も深く頷いた。
「俺も、もっとちゃんとあいつの話を聞いてやれれば、あいつだけでも助けれたんです……。でも、出来なかった」
当事者でもある龍騎の言葉に反応を示したのはナイトだった。
「あれは奴らの自業自得だろ。それにお前、あいつの事嫌ってたんじゃないのか? だから仲間に引き入れなかったはずだ」
「死んでも良いなんて一言も言ってないだろ。……それに、あいつはただ、家族やパートナーを幸せにしてやれる環境が欲しかっただけなんだよ。だからベルデ達から離反しようとしてたんだ……」
「って事だよな、多分……」
「……」
途中から関わったトップスピードと九尾も下を向いて同意した。
「けどやっぱり納得出来ないのはあいつらの態度だよ。仲間をあんな簡単に裏切る奴なんて初めて見たよ。あいつらだけは嫌いになるかもな……!」
龍騎の言う『あいつら』とは、間違いなくタイガ、ミナエル、ユナエルの事に違いない。拳を強く固めながら呟く龍騎を見て、ファムが質問した。
「あいつと何かあったの?」
「……あぁ、実は」
それから龍騎が事の次第を話し終えた時には、シスターナナの瞳から大粒の涙が零れ落ちていた。
「そんな……! インペラーさん、どれほど無念でどれほど悲しく、どれほど苦しかったでしょう……! 可哀想に……!」
その光景を見た時、リップル改め華乃の脳裏に浮かんだのは、疎遠になりつつある母親だった。綺麗事さえ言えば皆が味方すると思い、誰かを哀れんでいれば自分は優しいと思われ、その上人前で泣くことを全く恥と思わないシスターナナのその姿は、母親と酷似している。リップルは久方ぶりの苛立ちを覚えた。
が、リップルがアクションを起こすよりも先に動いたのはパートナーだった。
「おい」
「……はい、何でしょうか」
シスターナナが顔を振り向かせると、ナイトは無言の圧をかけたまま、リップルの手を掴んでいたシスターナナの右腕を強く握りしめた。思わずリップルを手放してしまうほどに痛みが走り、シスターナナは短い悲鳴を上げた。
その直後、伸ばしていたナイトの腕に向かって地面からコンクリートの壁が突き出た。ナイトはとっさの判断で手を離し、後退した。一瞬の事で周りの一同は呆然としていたが、よく見るとよろけたシスターナナをウィンタープリズンが素早く動いて受け止めていた。先ほど壁を作り出したのはウィンタープリズンに違いなかった。
「……なるほど、それがお前の魔法か」
「ナナに気安く触れるな」
「……くだらん」
「何?」
「キャンディー集めの為に協力しようという魂胆かと思っていたが、どうやら違うらしい。とんだ無駄足だな」
「ちょ、ちょっと……!」
緊迫した雰囲気になりつつある中、龍騎が止めようとしたが、ナイトは構わず話を続けた。
「お前の主張なんて、この世界じゃ役に立つわけがない。綺麗事ばかり口にして、どうにかなるはずがないだろ? ファヴとシローが黙殺するのも、お前を見ていると納得がいく」
「……これ以上ナナを侮辱するなら、容赦はしないぞ」
「そっちがその気なら、俺は構わない。インペラーの後を追わせてやる」
ナイトとウィンタープリズン。両者が睨み合い、殺気立ったムードが流れつつある中、龍騎が割って入った。
「や、止めろよ! こんな時に仲間割れしてどうすんだよ! 今は協力して……」
「余計な口出しをするな!」
「イテッ⁉︎」
振り殴られた衝撃で龍騎は地面に倒れ、頬に手を当てた。スノーホワイト達が龍騎に駆け寄る中、オルタナティブが仲裁に入った。
「よしなさい。龍騎の言うように、我々の間で争っても無意味です。むしろ向こうの思う壺かもしれません。私達は無駄な犠牲は1つでも減らしたいのですよ」
それを聞いて、ウィンタープリズンは落ち着きを取り戻し、後退してシスターナナを支えた。ナイトもうんざりしているのか、一歩下がって戦う気が無いことを示した。どうやら最悪の事態は回避できたらしく、周りの何人かはホッとした。
「……ほら、リップルも。気持ちは分かるけど、ここはとりあえず、な」
「リップルさん。お願いします。今はみんなで協力しあうのが1番だと思うんです。それが唯一、生き残れる方法なら……」
「……チッ」
トップスピードとスノーホワイトの言葉を聞いて、リップルも舌打ちしながら賛同の意を示した。主にスノーホワイトの説得が効いたのかもしれない。
しかし、さすがは先生だ、と何人かがオルタナティブに感心していたその時、ファムが龍騎の方を向いて口を開いた。
「にしてもあんた、よく2人の間に割って入ろうとしたものね。まるであのバカによく似てるわ」
「……えっ?」
「何でも首突っ込んで、その度に怪我したりして、おまけに騙されやすくて、毎度の事ながら弄り楽しんでたわ」
「……あれ? なんかその言い方」
どこかで聞いた事あるような……、と呟く龍騎だが、不意に何かを思い出したかのように飛び起きて叫んだ。
「! なぁ、ひょっとしたらひょっとしてだけど、お前、前にその人からキーホルダーみたいなの貰わなかったか⁉︎ 確か、えぇっと……鳥みたいなやつの!」
「! ちょっと、何であんたがそれ知ってんのよ! まさかあんた……」
ファムが懐から取り出したのは、飛び立とうとしている白鳥が模型として付けられているキーホルダーだった。それを見て、龍騎はある確信を得た。
「やっぱり……! お前、
「じゃあ、あんた、正史だね!」
何故か互いの正体を知っている事になっていたのを見て、九尾が尋ねた。
「どういう事ですか? 見たところ知り合いっぽい感じなのは分かりましたけど……」
それに対し、龍騎とファムは渋々と答えた。
「……同じ大学の時に会った奴だよ」
「分かりやすく言えば、私の元カレよ」
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ⁉︎」」」」」
「君達が……?」
「なるほど、そうでしたか」
まさかの告白に、九尾、スノーホワイト、ラ・ピュセル、トップスピード、シスターナナは驚きを見せた。ライアとオルタナティブも5人ほどでは無いが意外そうに相槌を打っていた。
そして龍騎は口早にこう言った。
「やっぱ俺、ナイトに賛成するわ! こんな奴と一緒のチームなんて信用出来ねぇ!」
「ちょっと龍騎さん⁉︎ 急にどうしちゃったんですか⁉︎」
「そうだぜ!」
「みんな、騙されちゃダメだ! こいついっつも俺の財布からガメてばかりいやがって、あの時は本当に苦労したんだからな!」
「ちょっと! その言い方は変じゃない⁉︎ 大体あの時はさ……!」
それからしばらくの間、元恋人同士による口喧嘩が続き、それまで火花を散らしていたナイトとウィンタープリズンは互いに見合って肩を竦めた。
その後、スノーホワイトとトップスピードが2人の怒りを収め、話し合いは一旦終結した。ライアが代表してオルタナティブと話し合った結果、今しばらく結論を固めた上で改めてシスターナナの意見に合意する事にして、今回に関してはマジカルキャンディーの所有数に問題が発生した際に可能な限り分け与えたりと協力しあうという、いわゆる『部分的同盟』という形を結び、それで会合はお開きとなった。
「余計な時間を労したな。おかげでマジカルキャンディーを獲得できる機会が失われたようなものだぞ。元凶は間違いなくお前にあるな、トップスピード」
「いやマジごめんって。話があるからって言われてさ。じゃあ聞いてあげようってなるじゃん」
「だからって相手を選べ」
本日の拠点である、とあるビルの屋上に戻ったスノーホワイト達だったが、早速トップスピードはナイトとリップルから愚痴をもらっていた。
「リップルもナイトもあそこまで不機嫌になるとか思ってなかったし。それに、龍騎まであんなに反抗的になるなんて、誰が想像できんだよ」
「まぁ、それも一理あるな。俺としてはお前が彼女を持っていたとは驚きだ」
「俺も」
「あのキーホルダーは、龍騎がプレゼントしたものなんだよね?」
「まぁ、ね」
ライアと九尾、ラ・ピュセルがそう呟くと、龍騎は言いにくげに呟いた。
「だってさ〜……。最初は同じ大学の先輩だった編集長が主催した合コンで知り合った時は、そりゃあしょっちゅう話してたし、終わってからも何かと縁はあったよ。けど、あれはもう相性の問題だよ。すぐに人を騙す奴だからさぁ、正直寝首をかかれそうで怖いんだよ」
「でも、そんな理由だけで反対しようとするのはちょっと……。今はシスターナナが言ってたみたいに、一致団結ですよ。それに、先生が付いていれば大丈夫ですよ、きっと」
「う〜ん、そっかなぁ……」
スノーホワイトに言われて、龍騎もはたと悩み込んだ。それから再び口を開いたのはトップスピードだった。
「まぁ、ぶっちゃけ何か良い案あるならそれに従ってみよっかって思ってたし。そこはちと期待外れだったかもな」
「よほど可能性にかけてたみたいだな」
「俺だって絶対死んだりしたくねーもんよ。最悪でもあと半年はな」
「半年……?」
「半年経ったら、何かあるんですか?」
「半年は半年だよ」
単なる死の恐怖とは違う何かを抱えている様子を見た九尾とスノーホワイトの疑問に対し、トップスピードはまたしてもはぐらかした。本日何度目か分からないほどに舌打ちしたリップルは嫌味を含みながら呟いた。
「……鬱陶しい」
「まぁ、向こうも悪気があるわけではなさそうだ」
「そうそう。2人とはちょっと相性が悪かっただけだよ。でもあそこでチャンバラするのは巻き込まれそうだから勘弁してほしいね」
「背中」
「ん?」
「『御意見無用』なんて背負ってるくせに……」
「あー……」
リップルを指差す先には、トップスピードの羽織っているマントに刺繍された文字が。トップスピードは照れくさそうにしているのを見て、リップルまた舌打ちをした。
「イモ引きやがって……」
「やな事言うね、あんたも偶には」
リップルの言葉を軽く受け流した後、トップスピードは少し真剣そうに言った。
「でもさ、ウィンタープリズンとの喧嘩はマジでお勧めできねぇぞ。ほら、前に話した事あったろ? カラミティ・メアリと王蛇の……」
「それってもしかして、撃ち殺されかけたっていう、あの……?」
九尾がそう問いかけると、トップスピードの代わりにラ・ピュセルが口を開いた。
「目的は分からないけど、以前シスターナナがウィンタープリズンを連れてカラミティ・メアリと王蛇に会いに行ったらしいんだ。その時は真正面からのぶつかり合いになったらしく、ウィンタープリズンの手助けがあったから、上手く逃げ帰れたらしい」
その時の事を、ほっぺたを赤くしながら教えてくれたんだ、シスターナナからね。ラ・ピュセルの話を聞いて、ナイトは顔をしかめた。ウィンタープリズンの胸の中で涙を流すシスターナナを思い出し、不快感が戻ってきたらしい。
「あんな奴に、この状況を打破出来るとは到底思えないがな」
「ま、悪い子じゃないんだけどね……」
「それ以前の問題だろ。宗教かぶれのお花畑は虫唾が走る」
と、呟いたのはリップル。
「お花畑っていうのとはちょっと違うと思うけどねぇ。こんな事言っちゃ悪いけど、それよりかだいぶタチが悪いっつうかな」
「いずれにせよ、部分的ではあるが、協力をしてもらえるように取り付けたのは良い事だ。後は地道にではあるが、キャンディーを8人で集め続けよう」
ライアが締めの言葉を口にして、話し合いはそこで終わった。
「おっし! んじゃあ話はこれぐらいにしておいて、腹ごしらえ済ませるぞ!」
言うが早いか、トップスピードは風呂敷を広げて料理を並べ始め、一同は軽い食事を始めた。おにぎりを頬張りながら、ふとある事を思い出した。
「(そういや、あいつ元気にしてるかな……。美華と別れた時から全然連絡つかないし……)」
月明かりの下で、漆黒に包まれたライダーは夜空を見上げていた。何かに思い耽っているようだが……。
「……」
「どうか、しましたか?」
「……いや、何でも。次は少し離れた所に向かうぞ」
「……はい」
パートナーの魔法少女はそれ以上追求する事なく、2人並んで次の目的地へと足を運んだ……。
というわけで、今作では龍騎とファムは元カップルという設定でいかしてもらいます。
次回は、あの魔法少女が……。