魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

38 / 144
間も無く最終回を迎える「魔法少女育成計画」ですが、個人的にリップルvsスイムスイムは、「龍騎」のナイトvsオーディン並みの戦いになると期待したい。(スノーホワイト死んでませんけど)


34.叶えたかった願いは儚く散る……

「みんな! 来てくれたんだ! おーい!」

 

インペラーが、現れた3人に向かって手を振り、合図を送った。どうやら無事に王結寺から脱出できたらしく、ピーキーエンジェルズも引き連れてくれたのだ。3人も手を振り返し、地面にタイガを降ろすと、インペラーは龍騎を引き連れて歩み寄った。

 

「なぁ、聞いてくれよ! 龍騎が俺達を匿ってくれるって約束してくれたんだ! そこにいればしばらくはやり過ごせるし、もう無理に争わなくても良いからさ、このまま俺と一緒に行こうよ! ベルデ達から離れてさ! なっ!」

「あ、あぁ。俺は良いよ」

 

龍騎もインペラーに続いて頷き、歓迎の意を示した。

対するピーキーエンジェルズはというと……。

 

「へぇ。インペラー、そっちについたんだ」

「マジクール」

「へへっ。まぁ俺もそれなりに苦労したからな。甲斐があったっていうか。でもこれで、俺やみんなの脱落は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バッカじゃないの」

「あんたもう終わってんのよ。まだ気づかないの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え」

 

『ADVENT』

 

不意に冷ややかな態度をとったピーキーエンジェルズに戸惑っている龍騎とインペラーの耳に、ベントインの電子音が聞こえてきた。ピーキーエンジェルズの後方にいるタイガがデストバイザーにベントインしたのだ。

すると、どこからともなくタイガの契約モンスターであるデストワイルダーが2人めがけて突進してきた。

 

「ウァァァァァァァァァッ⁉︎」

「グァァァァァァッ!」

 

そしてデストワイルダーは龍騎だけでなく、仲間であるはずのインペラーを引き摺り回して、橋の手すりにぶつけ続けた。ようやく止まってデストワイルダーが退散した時には、2人はすでにボロボロだった。

 

「イッテェ……! どうなってんだよ⁉︎ やっぱりお前、俺を罠に嵌める為に……!」

「ち、違うって……! だったら何で俺までやられなくちゃならないんだよ⁉︎」

 

両者がヨロヨロと立ち上がると、ミナエルとユナエルがケタケタ笑いながら言った。

 

「何であたしらが黙って裏切ったあんたについてかなきゃならないのよ?」

「そーそー。新リーダーのベルデのいる所の方がよっぽど楽だし」

「そ、そんなわけあるかよ……! 俺、兄貴や2人の為に……」

「そういう気遣い要らないしー」

「要らないしー。てなわけで、みんなやっちゃえー!」

 

ユナエルが右手を振り上げると、今度は大量のメガゼールやギガゼール、マガゼール、オメガゼール達が出現し、インペラーに向かって一斉に襲いかかった。その際、近くにいた龍騎も巻き添えをくらう事に。

 

「グァッ⁉︎ お、お前ら……!」

「な、何だよこれ! どうしてこんなにモンスターが……!」

「へへーんだ。魔法少女でもパートナーの契約モンスターを呼べるようになったって知ってるよね? こういう時に役に立つんだよね〜」

「! もしかして、バージョンアップした機能を……!」

 

ルーラの脱落後、バージョンアップによって魔法少女側もパートナーの契約モンスターを自由に呼べるようにはなった。本来は戦力に乏しい魔法少女達への救済システムのはずだが、この双子はそれを利用してインペラーに襲わせたのだ。制御権がユナエルに奪われているため、インペラーをもってしても止める事が出来ない。

そうしてギガゼール達に痛めつけられながら翻弄されていると、一体のメガゼールがインペラーに飛びかかり、所持していたマジカルフォンを奪い取った。

 

「あ! 俺のマジカルフォン!」

 

メガゼールは後退すると姿が歪み、ユナエルへと変化した。魔法によってメガゼールへと変身して紛れ込んでいたようだ。

 

「悪く思わないでね〜。あたし達を裏切った罰として、マジカルキャンディー没収!」

「やっちゃえユナエル!」

「ま、待ってくれ! それだけは……!」

 

インペラーが仮面の下で顔面を青ざめながらユナエルに近寄ろうとするが、ギガゼール達に阻まれ、再び地に伏せた。龍騎もインペラーを助けようとするが、数の多さによって抵抗するだけが精一杯だった。

ユナエルが自身のマジカルフォンとインペラーのマジカルフォンを操作し、しばらくした後、インペラーのマジカルフォンを持ち主に投げ返した。

 

「はい、てなわけであんたの脱落はこれで決定! 後はこれを分け合えばオッケー!」

「やったねお姉ちゃん! これでベルデもみんなも喜ぶよね!」

「うっ、グァッ……!」

 

全身に痛みを感じながらマジカルフォンを握りしめて立ち上がったその時。

 

「ねぇ」

「⁉︎」

 

兄の声が聞こえてきたので振り返ったインペラーの腹部に、いつの間にか装着されていたデストクローがめり込んだ。

 

「ガハッ⁉︎ あ、兄貴……⁉︎」

「ゴメンね。あの時リーダーが教えてくれたんだ。光希は大切な家族。だからその人達を倒せば、僕はもっと強くなれる。『英雄』にだってなれるって、そう言ってくれたんだ」

「そ、そんな、どうして……!」

「僕は強くならなきゃいけないんだ。強くなって、生き残りたいんだ。その為には、どうしても倒さなきゃ」

 

タイガはインペラーを弾き飛ばし、インペラーはなす術なく地面を転がった。仲間である以前に、パートナーや身内にまで見限られたショックで、インペラーには抵抗する力が残っていなかったのだ。

 

「! 止めろ!」

 

龍騎も必死に叫ぶが、ギガゼール達の猛攻にあって、先に進む事が出来ない。タイガが無言のままデストクローをインペラーに向かって突き立てようとした瞬間。

 

「ハァッ!」

「ウォリヤァァァァァ!」

 

タイガにタックルしてインペラーを助ける者が現れた。それは龍騎の仲間であり、パートナーでもある、九尾とラピッドスワローに跨ったトップスピードだった。どうやら騒ぎを聞きつけてやってきたようだ。

 

「!九尾! トップスピード!」

「大丈夫か⁉︎」

「また厄介ごとに巻き込まれた感じだな」

「! お前ら……!」

 

インペラーが腹を抱えながら2人の登場に驚いていると、ピーキーエンジェルズが妨害してきた2人に突進してきた。が、隙をついてギガゼール達の猛攻から潜り抜けた龍騎が2人を押さえ込み、インペラーの方に顔だけ向けて叫んだ。

 

「逃げろ! 早く!」

「……!」

「邪魔すんなっつーの!」

「待てよ!」

 

ミナエルがデストクローを装着してインペラーの所に向かおうとするが、トップスピードがドラグシールドを構えて立ちふさがった。

 

『SWORD VENT』

 

九尾もフォクセイバーを召喚してタイガと対峙した。インペラーは逃がしてくれる3人に感謝しつつ、ヨロヨロと歩きながらその場から遠ざかった。

龍騎のもとに2人の加勢が入ったが、依然としてタイガ達に加えてギガゼール達がそこらじゅうを飛び回っているため、数の差は歴然だった。

 

「なら、こいつだ」

 

『TRICK VENT』

 

九尾のベントインしたカードの効力で九尾は分身し、分身達はギガゼール達に立ち向かった。そして九尾本体はタイガと、トップスピードはミナエルと、龍騎はユナエルと対峙する形となった。

 

「何でいっつもあんたが邪魔してくるのよ!」

 

ユナエルがガゼルスタッブを右手に装備し、龍騎に殴りかかった。対する龍騎はかわしつつカードをベントインした。

 

『STRIKE VENT』

 

「ハァッ!」

 

龍騎は右手に装備されたドラグクローを盾にした後、反撃とばかりにユナエルに攻撃を仕掛けた。状況は戦闘能力の高い龍騎に軍配が上がり、ユナエルを手すりに向かって押し付けた。

 

「お前らいい加減にしろよ! 何考えてんだ! あいつの仲間じゃ、パートナーじゃないのかよ!」

「はぁ? そんなの知らないし。ベルデのそばにいた方が全然良いし」

「ルーラなんかの下っ端やってるよりずぅ〜っと楽しいもんね!」

「そーそー。ルーラって仕切りたがり屋でいっつもうるさかったもんね!」

「なっ……⁉︎ そんな理由でルーラを裏切ったのか、お前らは!」

「何て事を……!」

 

ピーキーエンジェルズの発言に怒りを覚える龍騎と絶句するトップスピードに対し、ユナエルは鼻で笑った。

 

「だから何って感じ。あんた達には関係ない事でしょ? 分かったらさっさとやられろってーの!」

「お前……!」

 

遂に堪忍袋の緒が切れた龍騎はガゼルスタッブを受け止め、ユナエルが驚いているその隙にドラグクローで殴りつけた。予想以上の一撃にユナエルの口から悲鳴が漏れるが、龍騎はお構いなしに攻撃の手を緩めなかった。

 

「お前、あいつがどんだけお前らの事真剣に考えてたのか分かってんのかよ! パートナーの気持ちも考えないで、裏切ったのはお前らの方じゃないか!」

「……!」

「もう許さねぇぞ! ダァッ!」

「グァッ……!」

 

気の緩んだユナエルの腹めがけて振るわれた右ストレートは、体重の軽いユナエルを軽々と吹き飛ばし、手すりに背中から叩きつけた。

 

「! ユナ!」

 

これを見たミナエルはトップスピードの相手を止め、ユナエルに近寄った。ダメージは大きいものの、まだ飛べるぐらいには平気なようだった。が、妹が傷つけられた事で、ミナエルは殺気立った目つきで龍騎を睨んで叫んだ。

 

「よくもユナを! デストワイルダー!」

「危ねぇ!」

 

ミナエルの指示に反応してデストワイルダーが再び龍騎に向かって襲いかかるが、ギリギリの所でラピッドスワローに飛び乗ったトップスピードが猛スピードで龍騎を回収した。

一方で九尾もタイガを圧倒しているものの、時折妨害してくるギガゼール達が鬱陶しかった。先ずはこいつらからだ。そう判断した九尾は踵落としでタイガを地面に叩きつけた後、1枚のカードをベントインした。

 

『FINAL VENT』

 

「ハッ! ハァァァァァァァ!」

 

九尾は気合いを入れ、飛び上がりながら一回転してフォクスロードと合体し、右足を、タイガの周りを囲んでいるギガゼール達に向けた。

 

「ウォォォォォォォ!」

 

『ブレイズキック』が炸裂し、ギガゼール達はまとめて一掃された。が、いつの間にかタイガの姿がない。龍騎とトップスピードもそれに気づいて周りを見渡すと、遠くの方でピーキーエンジェルズがタイガを連れて撤退しているのが見えた。ベルデの命令で戻るように告げられたのだろう。

 

「クッソォ! あいつら、今度向こうから来たら……!」

 

龍騎が握り拳を固めて忌々しげに呟いた。

 

「それよりインペラーの方だ。一体何があったんですか?」

「そうだそうだ! 何で2人でいたんだよ?」

「話は後! 今はあいつを探さないと……!」

 

龍騎は焦ったように周囲を見渡した。インペラーを逃がしてからかなり時間が経っているので、どこに向かったのか、皆目見当がつかない。ミラーワールドから脱出した一同が探しに行こうとしたその時、マジカルフォンが鳴り響いた。ファヴ達からのメッセージだ。ハッとした一同が表示されている現在時刻に目をやった。

日付が変わる、20分前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファヴ:『というわけで、今週の脱落者は、インペラーに決まったぽん!』

シロー:『遂にライダー側からの脱落者が出たか』

ファヴ:『新機能が不利だった魔法少女に対して、功を奏したかもしれないぽん』

シロー:『では、今週の連絡は以上だ』

ファヴ:『みんな、これからも気を引き締めて、パートナーと協力して頑張ってほしいぽん! それじゃあまた来週ぽん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、あぁ……!」

 

N市の一角にある大通りを、東野 光希はマジカルフォンを片手に、憔悴仕切ったように彷徨い歩いていた。

終わった。もう何もかもが終わった。

タイガ達から逃げかえり、変身を解いたところでマジカルフォンを確認してみた。表示されたマジカルキャンディーの個数は『0』。文字通り全てをパートナーに奪われたのだ。

誰でもいい。マジカルキャンディーを稼ぐ為に困っている人を見つけなければ。残り少ない時間の間に、光希は死に物狂いで街を走り回った。

死にたくない。誰か助けてくれ。命乞いをするように叫びながら走っている光希の姿を、通行人は目撃するが、誰も話しかける事はない。当然だ。側から見れば発狂しているだけの変質者と見られてもおかしくないのだ。

そうこうしている間にも時間は刻々と過ぎていき、遂にその時を迎えた。ファヴとシローからの伝達によって確立した、インペラーの脱落。こうなっては今からマジカルキャンディーを集めても、数分後には輝く未来を見ることなく、それまで苦労しながらも築いてきた人生は終わりを迎える。

 

「……何で、なんだよ。何で、こうなるんだよ……」

 

残すはあと数十秒。光希は立ち止まり、涙と鼻水で顔をクシャクシャにしながらマジカルフォンを高く掲げた。

どうしてこんな事になってしまったのか。何がいけなかったのか。光希には分からなかった。ただ1つ言える事があるとすれば、それは光希の願いが叶う事は未来永劫無いという、事実しか残らない。

大通りの街灯に照らされながら、彼は口を開く。全てを言い切った直後、彼は前のめりに倒れこんだ。周りの人達が、何も持っていない(・・・・・・・・)右手を突き出して倒れている光希の異変に気づいて、周囲がちょっとした騒ぎになったのは、それから数分後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すでに息絶えている彼が、最後に口にした言葉。

それは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜俺は、ただ、兄貴と、美奈ちゃんと、優奈ちゃんと、幸せになりたかった、だけなのに……〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪中間報告 その3≫

 

【インペラー(東野 光希)、死亡】

 

【残り、魔法少女14名、仮面ライダー15名、計29名】

 

 

 




……はい、というわけでライダー側からの最初の脱落者はインペラーという事になりました。

多くの方はどうせシザースから脱落するんでしょ、と思っていたでしょ? でもそれだとワンパターンすぎるというか、定番すぎるので、ちょっと私なりに工夫をこしらえてみました。(ちょうどYoutubeで配信されているからという理由もあるのですが)
今回の件でピーキーエンジェルズに悪評がついたわけですが、ピーキーエンジェルズファンの皆様、ここは1つ穏便に……。これぐらいしか動かしようが無いわけですから。

インペラーはあっさり退場してしまいましたが、次回から更なる動きが見られます。お楽しみに。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。