魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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今回から3話ぐらいはあのライダーにスポットを当てていきます。


32.信頼関係は大事

「はい、兄貴。出来たよ」

「……ありがとう」

 

古いアパートの一室にて、エプロン姿の光希が、椅子に座って愛読書に読みふけっていた智に、出来上がったトーストを差し出した。トーストとコーヒーというシンプルな朝食が始まっても、向かい合って座っている2人の間には会話はない。今までこんな日が続いた事なんてないはずなのに……、と光希はテーブルに置かれているコーヒーを見つめながら思った。

事の始まりは3日前に起こったルーラの脱落からだった。ルーラの統制に不満を感じていた頃、ベルデの提案によって彼女を脱落させるようにインペラーは陰ながら協力する事にした。パートナーであるユナエルや姉のミナエルはその気だったし、兄のタイガも反対する事なくキャンディー奪取に加担した。結果的にルーラは脱落。これで小うるさいだけの日常は終わる。そう思っていると、ベルデは驚くべき事に、すでに脱落が決定し、後は死を待つだけだったルーラを殺したのだ。インペラーはもちろん、タイガもそこまでの作戦は聞いていなかった為、大変慌てた。ついでにたまも自分同様、計画の奥底までは何も気付かなかったらしい。そしてルーラは自らが得意とする魔法によって殺された。冷酷にも、兄を操って自ら手を汚す事なく。

あれ以降、智の雰囲気は変わっていた。普段から大人しめという事もあって寡黙な方ではあったものの、不可抗力とはいえ人を殺めてしまった影響か、ほとんど口を開く機会がなくなった。父親のもとから離れて2人だけで暮らしている光希にとって、耐え難いものが感じられた。

 

「……なぁ」

 

やがて光希が口を開いたのは、コーヒーの飲みほした後だった。智が顔を上げると、光希がこんな提案をしてきた。

 

「俺、考えたんだ。このままベルデ達のグループから逃げ出そうよ」

「……どうして?」

「なんていうかさ。怖いんだよ。このままあの人についていったら、おかしくなりそうなんだよ。俺も、兄貴も、優奈ちゃんも美奈ちゃんも、他の奴だって。どっかでそう思ってるかもしれないし」

 

光希が企てたのは、ベルデチームからの逃亡だった。確かにルーラにこき使われるのも嫌だったが、ベルデの傘下になってまた別の恐怖心に駆られる日々が続いていたのだ。今ならまだ間に合うかもしれない。そう思った光希は兄や、変身前から交流のある天里姉妹と共に脱退して別のチームに入れてもらって、そこで生き永らえようと計画した。

 

「だからさ。これから時間のある時に他の所にいって交渉しようと思ってるんだ。で、兄貴にも出来る限りで良いから手伝ってほしいんだ。そばにいてくれるだけでもいいんだ。一応まだ優奈ちゃん達には内緒にしておこうって思ってるけど。……良いかな?」

 

光希が智の顔色を伺いながら頼み込んだ。しばらくの沈黙の後、智は口を開いた。

 

「……良いよ」

「! 本当⁉︎」

「別に止める理由ないから。ついてくよ」

「ありがとう! 兄貴と一緒なら怖いもんなんてないしな!」

 

兄からの了承を得た光希は上機嫌になって、椅子から立ち上がって智と肩を組んだ。これまで幾多の困難があったものの、兄弟と共に立ち向かい、解決してきた事は何度もあった為、光希は確信していた。

2人で力を合わせれば、幸せは掴み取れる、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

計画はその日の夜から実行され、インペラーが最初に向かったのは、九尾達のいるとある空き家だった。

 

「突然すいません!」

「な、何だよお前ら……」

 

先日の一件で、九尾達のグループと龍騎達のグループが結託して8人グループとなった新生チームの前に、事の発端を起こしたベルデチームのメンバーである人物が、連絡もなしに現れた事で、一同は訝しんでいた。特に直接戦った事のある龍騎は警戒心MAXで身構えている。インペラーが最初に彼らと交渉を結びに来たのは至極単純で、拠点としている所がある程度判明しているチームだったからだ。が、さすがに彼らがいつも拠点としていた鉄塔やビルの屋上にい続けるのは危険だと判断した彼らは、適度に集合場所を変えていたのだ。おかげで探すのに一苦労したインペラーがようやく見つけた時には、8人全員が揃っていた。

 

「あのぉ……。先日は、その。誠に申し訳ありませんでした……。これ、お詫びといっては何ですが……」

 

インペラーはその場に正座してから謝罪し、前もって買っておいた、包装紙に包まれた箱を前に差し出した。その後ろではタイガが様子を見守っていた。一方で腰の低い態度を見せているインペラーを見てナイトは言った。

 

「そんなものはどうでもいい。何のつもりでここに来た」

「あの、ですね……。俺達、今みたいにベルデが統制してるチームから脱退しようと考えておりまして……。それで、行く宛もないから、困ってて。ですから、俺やタイガ、それからピーキーエンジェルズを皆さんのチームに入れてもらいたいんです! もちろんこれまでの事は反省して、下っ端として働きます! どうか、助けてください……!」

 

インペラーが頭を深々と下げて許しを請いた。が、九尾達の反応はインペラーの予想に反して冷たいものだった。

 

「悪いがお断りだ。君達は信用できない」

「えっ……」

「俺もだ。こっちはお前らのせいで迷惑を被ってるんだ。今さら虫が良すぎだろ」

 

『SWORD VENT』

 

最初に悪態をついたのはラ・ピュセルと九尾だった。2人は肥大化させた剣とフォクセイバーを構えて、インペラーに刃先を向けた。本気の敵意を向けているようだ。インペラーは立ち上がって慌てふためいた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺は本気で悪かったって思ってるんだ! これでもちゃんと反省してるんだ! ベルデやルーラに言われた通りに動かないと、ねむりんの後を追わせてやるって脅されてて……!」

「だったら何でルーラは死んだんだよ! お前らがルーラを裏切ったんだろ⁉︎ そんな奴と一緒にいて安心出来るかっつうの!」

「そ、それは……!」

 

龍騎も腹が立ったのか、先日の結果を題材にして、インペラーとタイガを指差して怒鳴った。仲間を平気で裏切れる人物と組んでもメリットがない。実際はベルデの判断でルーラを殺害した訳で、インペラーやタイガは直接関係してないのだが、今の状況でそれを告げても信用してもらえるとは限らない。

龍騎が珍しく反抗的な態度を見せた事に、ナイトは意外性を感じていた。

 

「バカでも一応善悪の判断は出来るみたいだな。少しは見直した」

「だから一言余計なんだよいつも! 俺だってなぁ……」

「何で喧嘩してんだよそこで⁉︎」

 

トップスピードがツッコミを入れると、インペラーがトップスピードに話しかけた。

 

「トップスピード! 頼みますよ! 俺達を仲間に入れてください!」

「う、う〜ん……。そう言われてもなぁ……」

 

トップスピードは帽子の上から頭を掻いて、考え込むように唸った。正直なところ、トップスピードは迷っていた。もちろん仲間が増える事は決して悪い事ではない。ないのだが、相手が相手だ。先日命を繋げるキーアイテムとも言えるキャンディーの奪い合いをしていた者達から、仲間にしてほしいと言われても、果たして背中を預けるに相応しい人物なのだろうか。如何にフレンドリー気質の強い彼女でも、今回の提案には、はたと悩んだ。

ちゃんとした返答が返ってこない事をもどかしく思い、今度はスノーホワイトに声をかけた。

 

「スノーホワイト! こないだの事は謝るから! だからお願いだ! 俺達を助けてくれ……!」

「そ、それは……」

 

スノーホワイトが何か言いかけたところで、九尾が割って入った。

 

「これ以上スノーホワイトを巻き込むな。こいつを唆そうって言うなら、あんたを斬ってやるよ」

 

フォクセイバーをインペラーに近づけて、インペラーを後方に下がらせた。口応えすれば本当に斬られかねない。そう思って今度は壁にもたれかかって、未だに黙り込んでいる人物に頼み込んだ。

 

「お、お願いだリップル! 俺達を……」

 

刹那、インペラーの頬を掠め取るように何かが横切り、タイガの後方にあった壁に突き刺さった。恐る恐る振り返ると、手裏剣がそこにあった。そしてリップルの手には同じサイズの手裏剣がもう1つ握られている。

 

「今のはわざと外した。その気になれば、私の魔法でお前の眉間に当てる事も出来る」

「ヒィ……! (お、おっかねぇよこの女⁉︎)」

 

それは、明確な拒絶。睨まれながら、インペラーは背筋に冷たい汗が流れた。次はナイト……と言いたいところだったが、話しかける前から嫌な雰囲気しか出していない。もはや手詰まりだ。

タイガもそれを察したのか、背後からインペラーの肩を叩いた。

 

「……行こうよ。もう話しても無駄みたいだし」

「うぅ……」

 

インペラーは心底残念そうに項垂れた。ナイトは皮肉たっぷりに告げた。

 

「ま、そういう事だ。要するにお前達は信用できない。それだけだ。そんなに他のチームに行きたいなら、他を当たれ」

「……はい。すいませんでした」

 

最後にそう謝ってから背を向けて立ち去ろうとした。

 

「待て」

 

が、その間際にそれまで黙って事の成り行きを見ていたライアが呼び止めた。2人が振り返ると、ライアは持参している振り子のようなものを取り出し、夜風に吹かれながら動く玉をジッと見つめていた。インペラーがゴクリと唾を飲み込むと、ライアが玉からインペラーに目線を向けた。

 

「今はまだ動く時ではない。『急いては事を仕損ずる』という諺は知ってるな? 無理に成し遂げようとすれば、その先に待っているのは、破滅だ」

「破滅って……! 何だよそれ⁉︎」

「破滅の運命を避けたければ、もう少し慎重になる事だ。言っておくが、俺の占いは当たる。絶対だ」

「あ、あぁ。分かった……」

 

インペラーは頷きながら、タイガと共にその場を後にした。静まり返ったのを確認したリップルは壁から離れて、突き刺さった手裏剣を回収した。やがて、スノーホワイトが口を開いた。

 

「……ちょっと、言い過ぎたんじゃないかな? 九尾もラ・ピュセルもそこまで酷く言わなくても……」

「何言ってんだ! 君は被害者なんだぞ⁉︎ 本来なら君はもっと強く反対すべきだ!」

「だな。もっと疑ってもいいはずだし」

「そうちゃん……、だいちゃん……。でも、あの人、心の中でずっと呟いてた。『ベルデが怖い』って」

 

魔法でインペラーの心情を知ったスノーホワイトの沈痛な呟きに続いて、龍騎も口を開いた。

 

「そりゃあ、俺もあいつは気にくわないけど、やっぱ色々考えると、ちゃんとあいつの話も聞いとけば良かったな……」

「聞くだけ無駄だと思うがな」

 

龍騎が少しばかり反省する様子に対し、ナイトは冷ややかな一言を呟く。

 

「けどまぁ、あいつがやってるみたいに、他の奴らに声をかけるのはアリかもしれないな。出来るならもっと仲間は増やしたいし。これからは仕事の合間にちょっくら会えるか確認してみるわ」

 

トップスピードは早速今後の方針を決め、手を叩いた。彼女の手元には、いつの間にかインペラーが持ってきた箱が抱えられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局アテは無しかぁ……」

 

立体駐車場にて、蛍光棒を片手に、警備服を着た光希は暇さをアピールするように大きなあくびをした。

九尾達との交渉が決裂して以降、事態は難航していた。その後も王結寺での活動が終わってから、決まってタイガと共に片っ端から街中を探し回り、交渉に励んでいたが、全く成果無しだった。シローの仲介もあって、ここまで出会えたチームは2つ。

1つはオルタナティブが率いるチーム。シスターナナは温厚な性格故に、チームへの勧誘を薦めていた。が、他の3人は真逆の対応だった。というのも、彼らはライアを通じてベルデ達が働いた悪事を耳にしていたので、ウィンタープリズンの強い反対もあって、失敗に終わった。もう1つが、ゾルダ&マジカロイド44ペアだった。こちらはほぼ偶然出くわしたという事もあって、少し世間話で機嫌をとった後、交渉に移った。当初は上手くいくかもしれないと期待してたのだが、そのうちマジカロイドの方から、信頼の証明代わりとして金を要求してきたのだ。これにはインペラーも呆れて、これ以上関わらないようにしようと、その場を後にした。お金が関わるようでは、今度は自分達の日常生活が危ぶまれる。

さすがにカラミティ・メアリと王蛇のペアが縄張りとしている城南地区に足を運ぶという選択肢はなかった。シザースとは予定が噛み合わず、クラムベリー&オーディンのペアはどこにいるのかさえ見当がつかない。新しい魔法少女やそのパートナーとも会う事なく、時間だけが過ぎていた。こんな事ならもっと信頼関係を結んでおくべきだったと後悔するが、それももう後の祭り。

今週の脱落者の発表まであと2日。さすがの光希も仲間探しとキャンディー集め、そしてバイト三昧の日々に疲労が溜まりつつあった。

 

「(ライアの占いも気になるけど、そうも言ってられないんだよな、これ)」

 

切羽詰まった状況の中、光希はバイト先の立体駐車場で誘導の仕事はもちろん、高級車の持ち主を煽てて機嫌をとり、多少のチップを貰いながら、地道に働いていた。が、この日は人も少なく、パイプ椅子に座り続けるだけの時間が過ぎていた。

光希はため息をついた後、ポケットから茶色のカードデッキを取り出して見つめた。

 

「これさえあれば、楽な暮らしも出来るんじゃないかと思ってたけど、世の中そう上手くいかないよなぁ〜」

 

光希は仮面ライダーの力を手に入れた当時の事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光希が兄を引き連れて、親元を離れたのには訳があった。父親に嫌気がさしたからだ。証券会社の社長であるにもかかわらず、裏で賄賂を受け取ったり、家庭では母子と接しようともせずに酒に明け暮れて、時には家に戻らず繁華街で遊んでいる事も多々あった。兄の智を大学院に行かせれるぐらいに金銭面では困る事もなく、決して貧困とは言えない暮らしをしていたが、歳をとるにつれて父親の事を知るうちに、彼は誓った。父親のような人間にはならない。これ以上あの男の顔を見るぐらいなら、縁を切った方がマシだ。

もちろん直接言うことはなかったが、母親に誤魔化しながら、内気な兄を引き連れて2人きりの生活が始まった。時折母親からの仕送りに感謝しつつも、なるべく自分達の稼ぎだけで生活を続けていた。智は大学院で勉強をし、光希はお金ほしさに大学へは行かず、フリーターとしてバイトに勤しんだ。苦労の連続はあったものの、その度に兄弟で支え合った。気の弱い智とお調子者の光希の絆は深いものだと、光希自身は感じていた。

そんな彼らが天里姉妹と出会ったのはほんの偶然だった。バイトからの帰宅途中でひったくりに遭った天里姉妹を目撃し、その場で取り押さえて警察に突き出した事で、2人と会話するようになり、光希は姉妹を、特に妹の優奈を大変よく気に入った。その後、智を交えてオフで会う事もあった。双子とは話が合い、光希はどことなく幸せを感じていた。こんな風に他人と会話が弾んだのは初めてで、やはり自分の選択は間違っていなかった、と確信した。

彼が『仮面ライダー育成計画』をやるようになったのは興味本位だった。内容も面白く、非課金という事が光希を唆らせ、智にも推した。

そうやって何日かプレイしているうちに、それは突然起こった。

 

『東野 光希。君は仮面ライダーに相応しいと判断した。今日から君は仮面ライダー「インペラー」となるのだ!』

 

マスコットキャラクターのシローから、都市伝説として唄われていた仮面ライダーに、光希はなれたのだった。光希は超人的な力を手にして、その日は喜び勇んで街中を飛び回った。驚くべき事に、その数日後には兄の智が仮面ライダー「タイガ」となり、2人はより一層協力しあう事を誓い合った。

そんなある日、2人の前に先輩魔法少女及び仮面ライダーである『ルーラ』と『ベルデ』が現れ、2人の教育係を申し出た。その意図をよく分からないまま承諾し、2人はそれ以降、王結寺での雑務に追われる日々が続いた。当初は嫌気をさしていたが、ルーラの魔法の強力さ故に逆らう事はなかった。が、ある時からこれは出世のチャンスだと思ったインペラーは、態度を改めて、2人とリーダーに気に入ってもらえるように奮闘した。この時はルーラチームにはたま、アビス、スイムスイムはおらず、代わりに『ピーキーエンジェルズ』と呼ばれる双子の天使系魔法少女と共に過ごす時が多かった。何度か交流するうちに、ピーキーエンジェルズの正体が天里姉妹だと気付いた時は驚きを隠せなかった。以来、4人で行動を共にする事も多くなった。ピーキーエンジェルズによる、ルーラに対する愚痴を聞き入れながら、彼は今の生活を充実していた。そして同時に願う事もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうだよな。ちゃんと大金持ちになって、人生もっと満喫出来るようになりたいもんな」

 

大金持ちになった時の自分を想像してニヤついていると、前方から車が入ってきた。滅多にお目にかかれない車種だ。きっと良い商売相手になるはずだ。光希はカードデッキをポケットにしまって、立ち上がると仕事を始めた。

 

「オーライ! オーライ! こっちですよ!」

 

今夜も探し回って、自分達を助けてくれる人達を見つけよう。改めてそう決意した光希は、満面の笑みを浮かべながら蛍光棒を振った。そして呟く。

俺は生き残る。生き残って、必ず俺や兄貴、優奈ちゃんや美奈ちゃんの人生を守れるようになってやる、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない夜道を、1人の少女が猫背気味に背中を若干湾曲させ、ユラユラと左右に揺れながら、彷徨い歩いていた。髪も服も雰囲気も、黒一色に染まったその少女のダラリと垂らした右手には、白兎のぬいぐるみが握られており、より一層不気味さを醸し出していた。

その装いを一言で例えるなら、それはまさに『不思議の国のアリス』。

 

「……白い、魔法少女。……白い、仮面ライダー。……どこに、いるの」

 

青白い顔にある、暗く淀んでいる両目の下の濃い隈からは、一切の覇気が感じられない。そんな彼女は、誰かを探しているようだった。

しばらく歩いていると、前方から人影が足音を立てて近づいてくるのが見えた。白い魔法少女、もしくは白い仮面ライダーか。少女は期待を胸に、立ち止まった。が、残念ながら目の前に現れた人物はそのどちらでもなかった。

その人物は、少女と同様、黒一色の装甲に覆われており、黒い仮面の複眼は赤く不気味に光っていた。黒い人物は少女の前で立ち止まり、低い声で呟く。

 

「お前が、16人目の魔法少女、『ハードゴア・アリス』だな」

 

尋ねられた魔法少女……ハードゴア・アリスはコクリと頷いた。白兎のぬいぐるみを抱き抱えたハードゴア・アリスは聞き返した。

 

「あなたが、私のパートナー、ですか?」

「……あぁ、そうだ。俺の名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……『リュウガ』。仮面ライダー、リュウガだ」

 

 




というわけで、最後の方で遂に登場させる事が出来ました、『リュウガ&ハードゴア・アリス』ペアでございます。このペアが如何なる波乱を巻き起こすか、注目しておいてください。

私が言いたいのはただ1つ。信頼関係はちゃんと作っておいた方が良いですよ。でないと、大変な事になっちゃいますから……。

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