魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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前回の投稿でコメント数が一気に16件出てきて、心の中でほくそ笑んでいる作者です。

今朝のスポーツ紙で、仮面ライダーナイト役の松田悟志さんが、新妻のスカートの中を盗撮していた犯人を現場で直接取り押さえたと知って、心底鳥肌が立ちました! カッコいいですよね! 何気に1番ライダーらしい事を現役引退後もやってますよね、彼って。


31.新たな同盟

ファヴ:『あ、それからみんなに、2つほどお知らせがあるぽん』

シロー:『1つ目は、16人目の魔法少女の件だ。今週から参加する事が決定した。教育係についてはパートナーシステムを介して、パートナーとなる仮面ライダーに担当してもらう事になる』

ファヴ:『チャットにはいないみたいだけど、出来れば来週からはチャットに顔を出してほしいぽん』

 

ルーラの脱落が決定し、ルーラのアバターが強制退出され、他のチームメイトもいなくなったチャットルームにファヴとシローのコメントが表示される。唯一その場にいる魔法少女や仮面ライダーはクラムベリーとオーディンだけだ。皆、自分やパートナー以外の魔法少女や仮面ライダーを敵と認識しているのだろうか。

 

シロー:『2つ目は、機能の追加だ。といっても、魔法少女側にのみ適用されるがな』

ファヴ:『今週は先週に引き続き、魔法少女の脱落となったぽん。このままじゃ仮面ライダーの方に偏りが出過ぎてしまって、ファヴもシローもかわいそうになってきたぽん』

シロー:『そこで今回追加したのは、パートナーの契約モンスターを呼び出す権限の自由化だ。魔法少女も仮面ライダーの仲介無しに自らの意思で契約モンスターを召喚し、サポートしてくれる機能だ。この手順に関しては、マジカルフォンを使う事なく、頭の中で呼び出せばいつでも召喚可能だ』

ファヴ:『今週の諸連絡はここまでぽん。みんな、また来週のチャットでお会いしましょうぽん。それじゃあ、グッバイぽん!』

 

その言葉を最後に、ファヴとシローは退出し、クラムベリーとオーディンもそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャットが終わり、ベッドに腰掛けていたクラムベリーは、息を深く吐き、天井を見上げた。彼女がいるのはN市の山奥に佇む、建設途中で打ち捨てられたリゾートホテルの廃屋であり、普段から誰も立ち寄らない事から、ビルの屋上と同様、休憩所には最適な場所だった。否、それ以上の価値がある所なのかもしれない。

誰にも悟られる事なく半年以上過ごしているが、中々に居心地が良い。クラムベリーがそう考えながら肩にかかった髪の毛を払っていると、彼女のマジカルフォンからファヴを立体映像として現れた。

 

『2週目を迎えて、残る脱落の枠は14人。いよいよ面白くなってきたぽん』

「それはまだ早すぎやしませんか? まだ先は長いですよ」

 

ファヴとクラムベリーの間でここまでの経過を振り返る中、ファヴが唯一疑問に思っていた事を話した。

 

『だけど、ベルデ達はどうやってルーラを陥れたぽん? 気になるぽん』

「それはすぐにお分かりになるでしょう」

『ぽん?』

 

ファヴが首を傾げる動作の代わりに体を左右に揺らしていると、すぐ近くの扉が開き、パートナーのオーディンが入ってきた。その手に握られているマジカルフォンからはシローの立体映像が出ている。

 

「お帰りなさい。どうでしたか、向こうの様子は?」

『お前達の予想は正しかった。奴らは最初からルーラを脱落させる為に動いていたのだ』

「……ではやはり」

 

クラムベリーがマジカルフォンを手に持って、オーディンとシローに見せつけるようにして呟いた。

 

「私達のもとに送られてきた、この『1858』個のマジカルキャンディーはその事と深く関係していたようですね」

『1858個? それどういう事ぽん?』

『ファヴは知る由も無いだろう。私もアビスから『39018』個のキャンディーを分配してくれと言われた時は疑ったものだ』

 

シローがそう呟いた後、事情をある程度把握できたオーディンが、ルーラが脱落した理由を分かりやすく解説した。

そもそも、スノーホワイトが所有していたキャンディーの総数は、ルーラが確認した『2088』よりもはるかに上回る数値だったのだ。ルーラが魔法でスノーホワイトの身動きを封じている間、スイムスイムが確認できた、スノーホワイトの所持数は『50000』個以上。さすがのスイムスイムも、無表情ながら内心ではわずかにビックリしていた。しかし、スイムスイムはその全てを奪う事はなかった。前もってベルデから受けた指示通り、半分程だけ奪う事にして、『27088』個を自身のマジカルフォンに転送した。

その後、スイムスイムは港に向かい、思わぬ収穫として龍騎からもマジカルキャンディーを奪取出来たのだが、そこでも全て奪うような事はしなかった。ガイが提示した、龍騎から奪った数は『1584』だが、実際は『30004』個の半分、『15002』であり、2人分合わせて、『42090』が本来の取り分だった。そこからルーラを欺く為にスノーホワイト、龍騎から奪ったと見せかけた『3672』をスイムスイムとガイに戻し、残った『39018』は全てアビスのマジカルフォンに転送された。その後アビスはシローを呼び出し、九尾、スノーホワイト、龍騎、トップスピード、ナイト、リップル、ライア、ラ・ピュセル、ルーラ、そしてまだ参加していない魔法少女の分を除いた、計21人に対して均等に分配するように頼み込んだ。

当初はシローもアビスの提案に訝しんだものの、断る理由もなかった為、シローは『39018』個のマジカルキャンディーを他の魔法少女や仮面ライダーに行き渡るようにして、その結果、1人『1858』個のキャンディーが21人に配られた。この事は発表直前に行き渡っており、故にファヴもルーラが脱落した理由が分からなかったのだ。もっとも、ファヴもシローも誰が脱落しようが構わなかったのだが……。

当然21人の魔法少女や仮面ライダー達も、いきなり多くのマジカルキャンディーがプレゼントされる事に警戒してはいたが、最終的には拒否する事なく『1858』個を受け取った。それもそのはず。マジカルキャンディーの所持数の多さは、それだけ生存の可能性を高めてくれる。

スイムスイムとガイに対するルーラの信用は厚く、奪った一部しか見せずとも、疑われずに事が進んだ。行き渡った『1858』個とルーラ自身の判断で分配した『1224』個では、どちらが持っていて得するかは明白だった。それにより、『1224』個のキャンディーを得て脱落する事はないとタカをくくっていたルーラが最も低いキャンディー所持者となった。つまり、ベルデ達は裏切られたという確信を与える前に、そして脱落者が発表されるまでに魔法を使う機会を与える事なく、ルーラの排除に成功したのだ。

唯一の懸念は、ルーラが奪った『3672』個を1人で独占する場合だったが、その辺りは心配なかっただろうと、オーディンは語った。仮にそのような事態になりかねたとしても、彼女が勤める会社の社長にあたるベルデが最も得意とする、巧みな話術を駆使してルーラを説得すれば、彼女は否が応でもそれに従う。それがベルデの凄みなのだ。

 

「チーム全体の利益を優先する為に、他のメンバーの賛同を得て、部下である彼女を切り捨てる、ですか。如何にもリーダーらしいやり方ですね。今の社会を風刺しているかのような振る舞い。他の連中はまだこれといった兆候は見られませんが、確かに彼なら有力候補としては申し分ありません」

「いや、ベルデだけではない」

「……ほぉ」

 

クラムベリーの感想に対し、オーディンが待ったをかけた。

 

『一体誰ぽん?』

「スイムスイムだ」

 

オーディンの口から出たのは、ルーラが最も信頼を寄せていた魔法少女の名だった。

 

「先ほど奴らの所へ様子を見に行った時、奴は崇めていた。自ら計画に加担して葬り去ったルーラをな」

 

そして彼女はルーラになる事を決意していた、とオーディンは腕を組みながら語った。その目線はクラムベリーとファヴ、そしてシローから外れて、窓の外から見える夜空に向けられた。穏やかな風とともに雲は静かに流れている。

 

「高貴な姫君を目指し、なろうとするには誰よりもその姫君が邪魔だった。消さなければならない。それに気づけば胸の内にある憧れの塊は、脆く崩れやすいものへと成り替わる。それがスイムスイムと呼ばれる者だ。……ある意味で興味深さを感じさせる魔法少女だよ、彼女は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありえねぇ……! ルーラが最下位なんて!」

「あ、あぁ。そう、だよな……」

 

トップスピードが今週の結果に対して頭を抱えながら喚き、龍騎がしどろもどろに賛同している様子を、他の6人は黙って聞いていた。

チャット終了後、港にいた一同は場所を変えて、砂浜が広がる海沿いで腰を下ろしていた。休憩も兼ねて、九尾の肩に出来た傷の手当てをする為に、九尾はその場で変身を解いた。唯一正体を知らなかったトップスピードは、大地が自分よりも年下だと気づいて驚いていた。考えてみれば、仮面ライダーの中では14歳の大地が最年少だった事に今更ながら気付く一同だが、今は怪我の治療が最優先という事で、トップスピードが持参していた救急箱から消毒液や包帯などを取り出して、スノーホワイトが大地の肩に消毒液をかけて、包帯を巻いていた。袖を拭って見えた傷はそこそこ大きく、見るに耐えがたいものがあった。それでも、原因を作ってしまった事に責任を感じているスノーホワイトは、なるべく痛くさせないように注意しながら治療をした。大地はスノーホワイトの顔を見る事なく水平線を眺めていた。

そんな中、ラ・ピュセルは疑問を口にした。

 

「なぜ奴らは全部持っていかなかったんだ……? おかげで2人とも助かりはしたけど……」

「ホントそれだよな! 訳わかんねぇし……」

「……そう?」

「俺からしたら、難しい話ではないと思うがな」

「えっ?」

 

ナイトとリップルが確信めいた言い方をした事に、皆は一斉に顔を2人に向けた。

 

「普通に考えれば、クーデター……」

「クーデター?」

「もっと言えば、造反だな。ルーラ以外の9人が結託して裏切り、ルーラを陥れた」

「ハァッ⁉︎」

「裏切りって、そんな……!」

 

2人の推測に、驚きを隠せないのがトップスピード、龍騎、スノーホワイト、ラ・ピュセル。大地は深く考え込み、ライアは2人の話を聞きながらマジカルフォンを操作していた。

 

「ルーラが最下位になるように、他の連中が仕組んだんだろ」

「……何でだよ。何でそんな簡単に仲間を裏切れるような真似が……!」

「知るか」

「まぁ、うるさいリーダーがいなくなれば、束縛される事なくキャンディーを集められるし、自由に行動出来る。俺の推測では、ベルデあたりが募らせたんだろう。奴からは前々から胡散臭さしか感じられなかったしな。そう考えると、今回の件も納得がいく」

「でも……!」

「いや、あながちその推測も正しいかもしれない」

「えっ……」

 

ナイトとリップルが冷たい態度を見せる中、ライアが声をかけた。どうやらマジカルフォンでヴェス・ウィンタープリズンと連絡を取っていたようだ。

 

「先ほどウィンタープリズンにおかしな事がなかったか確認してみた。そうしたら、発表が始まる少し前にアビスからシローを通じて『1858』個のキャンディーが送られてきたそうだ。同じメンバーのシスターナナ、オルタナティブ、ファムにも同数のキャンディーが来たらしい」

「! それってまさか!」

「あぁ、スノーホワイトと龍騎から奪ったものだろう。他のメンバーからの信頼を勝ち取っておくためなのかは定かではないが、とにかくルーラを脱落させようとして、今回の強奪作戦が実行された、とみて間違いないだろう」

「マジかよ……」

 

ベルデ達の恐ろしい考えに龍騎がたじろいでいる中、スノーホワイトが不意に包帯を握っていた手の力を緩めて、嗚咽混じりに呟いた。

 

「……もうたくさんだよ。命がかかってるからって他人から奪ったり、奪い返したり。そんなの魔法少女や仮面ライダーじゃないよ……!」

「スノーホワイト……」

「……」

 

大地が神妙な顔つきで話を聞く中、ナイトだけは違う反応を見せた。

 

「そういう事が出来る奴らが、本当は仮面ライダーや魔法少女に相応しいと俺は思うがな」

「!」

「おい、ナイト!」

 

龍騎が咎めようとするが、ナイトは話を止めない。

 

「誰だって生き残ろうとする理由はあるし、様々だ。生き残る為なら、汚い事でも平気でやる。……俺もその1人だ。今はキャンディー集めの為に手を組んでるだけだが、今後はそうも言ってられない事態だって起こるはずだ。……いや、実際に起きた。今回の件がその例だ。その気になれば、お前達とも縁を切る覚悟がある」

「……本気でそれ言ってるのかよ」

 

龍騎がそう呟くと、ナイトは鼻を鳴らして返答した。

 

「あぁ、そうだ。それの何が悪い」

「嘘だな」

「……何?」

「俺、知ってるから。確かにお前の言ってる事はいちいち尖ってるけどさ。それでも、これまで俺達に協力してくれた。今回の事だってそうだ。俺、すげえ感謝してるんだ。みんなが助けに来てくれなかったら、俺も、大地君達も無事じゃ済まなかったかもしれないだろ?」

「それはトップスピードが無理やり連れてきたから……」

「でも断らなかったんだろ? お前がその気なら、ついてこなくても良いはずだし。心配してくれたんだろ?」

「……チッ」

 

ナイトの舌打ちを聞いて、図星だと判明したのだろう。トップスピードも上機嫌になって口を開いた。

 

「おーおー。随分ツンデレさんになりやがって。ますますリップルに似てきたな、お前」

 

リップルの舌打ちは、波の音にかき消された。

 

「まぁ、俺だってまだ死ねないんだ。でも他の奴らから奪ったって、失うものの方が絶対多いに決まってらぁ。出来るなら、踏みとどまってほしいぜ。もしお前が過ちを犯しそうになったら、俺が絶対に止めてやる。ダチだからな」

「……なぁ。前にお前言ってたよな。生き残りたい理由はあるかって。それなら見つけたよ。それは、4人で……ううん、ここにいる8人で生き残るって決めたから。だから俺、死なないよ」

「……本当にバカだな」

 

ナイトとリップルは呆れるも、これまでほどに嫌悪感はなかった。

4人の様子を見つめながら、ラ・ピュセルはスノーホワイトに話しかけた。

 

「スノーホワイト。君が言ってたみたいに、あいつらみたいな意識の低い魔法少女や仮面ライダーは許せない。だからこそ君は、こんな争いに加わってほしくない。君だけは、本当の魔法少女として生きてほしいんだ。もちろん、ここにいる全員も本当の魔法少女や仮面ライダーでいてほしい」

 

その為に、皆を守ろうと剣に誓った。そう言ってラ・ピュセルは剣を抜いて肥大化させ、皆に向けた。その頼もしそうな一面を見て、何人かは頷いた。

と、そこでライアが口を開いた。

 

「どうやら皆、覚悟を決めたようだな。そこでみんなに提案したい事がある」

「? 何だ?」

「今回、君達の介入のおかげでキャンディーは奪われこそしたが、被害を最小限に踏みとどめれた。だが、今後もこういった事態が引き起こされかねない。そこで、だ。ここにいる8人で協定を結びたい」

「協定……?」

「人数の多い方が、1人が狙われた時でも守りやすいし、能力の違う者同士が組めば、キャンディー集めは有利に働く。悪い提案ではないと思うが」

「あぁ、それ良いね! お前らなら寝首搔かれるって事はなさそうだし。俺は乗ったぜ、その提案!」

「私も、仲間が増えるなら嬉しいです!」

「僕も賛成だ。まだまだ未熟である以上、みんなの手を借りる必要があるかもしれない。仲間がいれば心強いよ」

「俺も賛成!」

 

ライアの提案に真っ先に賛同したのはトップスピード、スノーホワイト、ラ・ピュセル、龍騎だった。ここにいる8人は以前N神社でのモンスター退治で協力しあった仲でもある為、異論する者はいなかった。

 

「俺は……まぁ、悪くないかな」

 

大地こと九尾も遅れて賛同の意を示した。

 

「で、お前らはどうする?」

「私は……」

「お願いします。みんなで助け合いましょう! 私達が正しい魔法少女や仮面ライダーのお手本だって証明出来るように、私も頑張りたいんです! それに、ここにいる誰も死なせたくないから……」

 

スノーホワイトの必死の懇願が届いたのか、ナイトとリップルはしばらく考え込んだ後、結論を出した。

 

「……まぁ、別に良いけど」

「そんなに言うなら、それでも良い。だが、少しでも裏切ろうとするなら、俺は容赦しない」

「大丈夫だって。みんなお前と違って優しさ全開だから。あ、お前もそうか」

「……喧嘩でも売ってるのか?」

 

素直とは言い難いが、とにかく2人の了承も得て、事実上、同盟が成立した。これで誰1人深い傷を負うことなく生き延びれる確率は格段に上がったはずだ。スノーホワイトはそう確信した。

そうこうしている間にも、包帯を巻き終え、大地は礼を言った。

 

「ありがとな。もう大丈夫だ」

「う、うん。怪我、早く治ると良いね、だいちゃん(・・・・・)

「……え?」

「だいちゃんって?」

「……あっ!」

 

何故か急に、大地の事を別の言い方で呼んだ事に訝しむ一同に対し、スノーホワイトはしまったと言わんばかりに恥ずかしさを全開にし、頬を紅く染めた。異性でちゃん付けは幼馴染みである颯太以外いなかったはずだが、一体どういう事なのだろうか。

 

「えっと、その、今のは……」

「だいちゃんって、随分またフレンドリーな言い方だよな」

「この数日でよほど信頼されたようだな」

 

トップスピードとライアがそう言うと、スノーホワイトは体をモジモジさせながら呟いた。

 

「だ、だって……。せっかくパートナーになれたし、本当に頼れるから、もっと親しめるようにしたいって思ったら、やっぱり大地君って堅苦しいって思って……」

「だいちゃん……ねぇ」

 

普段からそうちゃんと呼ばれているラ・ピュセルは、口元を押さえて笑いを堪えていた。

 

「あ、で、でも、ダメだよね。本人が嫌がるかもしれないし、その……」

 

スノーホワイトは慌てふためいている様子を見つめながら、当の本人は少し恥ずかしそうに、顔を横にそらして呟いた。

 

「べ、別に良いけど……」

「えっ?」

「その……。変身してる時はさすがに九尾って呼んでほしいけど、普段は気にしないでおくから……」

「い、良いの?」

「もうお互い知らない仲じゃないしな。ま、節度を持ってくれれば良いし」

「じ、じゃあ!」

 

よほど嬉しかったのか、スノーホワイトは大地の左手を握った。微笑みながら、彼女はパートナーの名前を呼んだ。

 

「これからもよろしくね、だいちゃん!」

「お、おう……」

 

大地は顔を紅くして、無愛想に答えた。それを見ていた他のメンバーの反応は様々だった。ある者はそっぽを向き、ある者はニヤニヤし、ある者はうんうんと頷いていた。

脱線はあったものの、新たに結ばれた8人による同盟。それがこの先の展開にどう影響するのか。その答えを知る者はまだいない。

 

 

 

 




というわけで、ここから先は8人での行動が目立つようになります。それに伴って物語の展開も原作とは多少違う動きが見られると思っておいてください。

それから、お分かりになったと思いますが、小雪の大地に対する呼び方が変わる事になります。余談ではありますが、この「だいちゃん」という呼び名は、私が幼少期に母方の祖母から親しみを込めて呼んでいたあだ名でもあります。信頼出来るパートナー同士、こんな感じもアリかなと思ってやってみました。この2人の関係性にも今後は注目しておいてください。

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