魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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今回は割と息抜きな回です。アニメの展開を参照しつつ、短編集の話をベースにしていきます。


19.人気を得る方法

「半分も減らされるのは、やっぱりなぁ〜……」

 

そうボヤきながら、いつもの待ち合わせ場所に向かっているのは龍騎だった。一昨日ファヴとシローから告げられた、N市で活動する魔法少女や仮面ライダーの数の削減。それに伴ってパートナーシステムが適用され、龍騎の教育係を受け持っていたトップスピードとペアを組む事となった。個人的にはウマが合うという事もあって、パートナーになれてよかったと思っている。

ただ、一方で見ていて危なっかしい所があるので、そこは困り果てた。というのも、パートナーシステムによってトップスピードに龍騎の所持武器が支給されたのは良いが、それによって本人のテンションはMaxとなり、昨日のモンスター退治では持ち前のスピードを活かして、ドラグセイバーを持ってはしゃぎながら素早く攻撃していた。あまりにも無鉄砲な攻め方は、龍騎をハラハラドキドキさせ、共に行動しているナイトとリップルのペアを普段以上に呆れさせた。ナイトに至っては『奴らはトップスピードに危険なおもちゃをあげた』とボヤいていたほどだった。

 

「……ん? あれってトップスピードか?」

 

仕事を早めに終えた龍騎はビルの屋上を転々とするうちに、待ち合わせ場所にトップスピードがいるのを確認した。周りにナイトとリップルがいないところを見るに、どうやら彼女が一番乗りのようだ。その彼女は、誰かとマジカルフォンの電話機能で会話しているようだ。

 

「……おう、分かった! んじゃあ先ずはそっちに行くわ。どこいんの? ……あー、あそこかな。じゃあかっ飛んで行くわ。ちょい待ってろ」

 

そう言って電話を切ると、そこでようやくトップスピードは龍騎の存在に気づいた。

 

「おっ、龍騎か。悪いけどよ、たった今野暮用が出来ちまった」

「さっきの電話と関係あるの?」

「あぁ。スイムスイムからのSOSだ。ほら、ルーラチームの1人」

「あぁ。確か、アビスとペアを組んでる魔法少女だっけ?」

「そ。助けてほしいんだってさ。リアルで会った事無いのに何で俺に連絡してきたのかは知らねぇけど」

「頼れるぐらい信用できるからじゃない?」

「ハハハッ! なるほどな!」

 

トップスピードは笑いながら、ラピッドスワローに跨がろうとした。が、不意に龍騎の方を向いて言った。

 

「あそうだ。どうせなら龍騎もついてこいよ。後の2人はまだ来ないみたいだしさ。俺も久しぶりにルーラと会いたいし、お前の事もみんなに紹介しとかないとな」

「えっ、俺も? まぁ、良いけどさ」

「よっしゃ! じゃあ早く乗りなよ」

 

そして龍騎はトップスピードの後ろに座り、2人を乗せたラピッドスワローは難なく飛び上がった。

しばらく夜風に当たりながら空の旅をしていると、スイムスイムが待っているコンビニの屋上が見えてきたので降下した。近づくにつれて、普段は絶対にいるはずのない屋上に誰かが呆然と立ち尽くしている人影が見えた。あれがスイムスイムに違いない。

ようやくその全貌が見え始めた時、龍騎はギョッとして思わず仰け反って落ちそうになり、トップスピードは内心唸った。その待ち人はこの季節にはまずお目にかからないであろう、白いスクール水着に身を包んでおり、特に2人の目を惹いたのは、発育の良さだった。胸や尻の量感、迫力、ムチムチ感。何れもトップスピードを遥かに上回っており、良くてリップルと良い勝負といったところか。2人は知る由も無いが、かつてラ・ピュセルも初めてスイムスイムの姿を目撃した際、自我が崩壊しそうになったぐらい、スイムスイムの体型は男性陣を魅了し、尚且つファッションセンスに拘りがあった。

一応ファッションセンスに拘りを持つトップスピードは、臆する事なく降下し、屋上に着地した。

 

「ういっす! リアルで会うのは初めてだな。俺、トップスピード! そんでもってこいつが新人で相棒の龍騎だ。よろしくな!」

「よろしく。君がスイムスイム?」

 

スイムスイムはコクリと頷いた。それからトップスピードは単刀直入に質問した。

 

「んで、今日は何かルーラ達と用があるっつー事で呼び出してくれたんだろ?」

「……私を、明将山まで連れて行ってほしい」

「明将山? 何でそんな所に?」

「ルーラとそこで待ち合わせてる。でも、日時を間違えた。みんな凄く心配してた。ルーラの命令は絶対」

「なるほどねぇ。そいつは逆らえねぇよな」

 

トップスピードが納得して相槌をうっていると、スイムスイムは唐突にこんな事を言い出した。

 

「ルーラが言ってた。利用できるものは、何でも利用しろって」

「え、えぇ……」

 

ルーラの格言を聞いて、龍騎は困惑した。自分にとって好ましくない言葉だったからだ。が、それとは正反対にトップスピードは高笑いしながらスイムスイムと肩を組んだ。

 

「はっはっは! そいつを、利用しようとしてる俺達に言うかよ。お友達になれそうじゃねぇか、おい」

「ルーラが言ってた。手下とリーダーの関係はあっても友達なんていい加減な関係はない」

「……」

 

何となくルーラとはナイトみたいに、そりが合わないかもしれない。龍騎は直感的にそう感じた。

その一方で、トップスピードはスイムスイムの真っ正直さが気に入ったのか、快くその依頼を受けた。

 

「オッケー。その依頼受けてやる。直接明将山でいいんだな」

「うん」

「というわけだ。俺がこいつを乗せるから、龍騎は自分の箒でついてこいよ」

「あ、あぁ」

 

龍騎は1枚のカードを取り出した。そこにはトップスピードのアバター姿が描かれており、パートナーカードであるそれをドラグバイザーにベントインした。

 

『BROOM VENT』

 

すると、上空からドラグレッダーを模した、ラピッドスワローと同じ大きさの箒が降ってきて、龍騎はそれをキャッチした。箒の先端部分は龍の頭が取り付けられている。龍騎のパートナーカードは、パートナーの魔法である、魔法の箒を出せるというものだった。当然ラピッドスワローと同等の性能を持ち、これまでドラグレッダーに頼りっぱなしだったパトロールが、魔法の箒でどうにかなった。ゴツい装甲に覆われたライダーが、魔女のように箒で空を飛び回る姿は、かなりシュールではあるが、龍騎はさほど気にしていなかった。

龍騎が箒に跨ったのを確認したトップスピードは、スイムスイムと龍騎に合図を送り、一気に明将山までの道のりを最短ルートで突き抜けた。

トップスピードは常にスイムスイムに話しかけるが、当の本人は人形のように、微動だにせず、口を開く事なく、トップスピードの腰にしがみついたまま、ただジッと前だけを見つめていた。

ようやく目的地の明将山の山肌が見え始めた頃、今度は龍騎が質問をした。

 

「ねぇねぇ、スイムスイム。明将山でルーラ達と待ち合わせてるって言ってたけど、あそこで何をするつもりなんだ?」

 

その質問に、スイムスイムは空を飛んでから初めて口を開いた。

 

「紅葉狩り」

「は?」

「紅葉狩り」

「こんな時に?」

「うん」

 

それ以上は答えるつもりがないのか、スイムスイムは再び黙り込んだ。

 

「そろそろ目的地だから、誰か見えてくるはずだけど……ビンゴ!」

 

トップスピードの目線の先を見てみると、開けた場所に何人もの人影があった。あれがルーラチームの全メンバーのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、来た」

「てか送迎付き?」

 

スイムスイムの到着を待つ中、いち早く発見したのはミナエルとユナエルだった。

 

「おーい! こっちだぞー!」

 

すぐそばにいたインペラーが手を大きく振って、スイムスイム達に合図を送った。隣にいたタイガはジッと降りてくる3人を見ていた。

 

「はい、到着」

「良かったな。みんな待っててくれたみたいだし」

「……ありがとう」

「スイムちゃん、どうしたの?」

「遅れるとは思っていたが、まさか他の奴の手を借りるとはな」

「それが……」

 

スイムスイムが何かを言いかけた時、それを遮るように女性の甲高い喝が響き渡った。

 

「遅い! 遅刻するな大バカ! ……しかも何でこいつが一緒に来てる!」

 

チームのリーダーであるルーラは、額に青筋を浮かべながら、隣でいつの間にか肩を組んでいるトップスピードを指差した。

 

「まぁまぁ、俺とルーラの仲だろぉ?」

「気安く触るな」

 

ルーラはトップスピードのフレンドリーさを鬱陶しく思い、トップスピードの手を抓って無理やり引き離した。

 

「つれねぇなぁ、友達じゃんか」

「誰と誰が」

「俺とルーラが」

 

とうとう返事をするのも面倒になったのか、ルーラはそっぽを向いて無視した。

 

「おっとそうだ。紹介したい奴がいるんだ。リアルで会わせる機会もそうそう無いしな。こいつが俺の相棒だ。新人だから、手厚く頼むぜ」

「俺、龍騎! こんな状況だけど、とりあえずよろしく!」

「おう! よろしく! 俺はインペラーだ!」

 

真っ先に挨拶してきたインペラーが次に紹介したのは、隣にいたタイガだった。

 

「それから、こいつがタイガ。俺の兄貴なんだ」

「って事は、2人は兄弟って事⁉︎」

「……うん」

 

タイガは静かに頷いた。

 

「ミナエルでーす!」

「ユナエルでーす!」

「ミナエル、と、ユナエル……。……どっちがどっち?」

 

龍騎は双子の魔法少女『ピーキーエンジェルズ』を凝視していたが、どちらがミナエルで、どちらがユナエルか、見当がつかなかった。

 

「あ、あの……。たま、です。よろしく、お願いします」

「俺、ガイって言うんだ」

 

次に声をかけたのは、ペアを組んでいるたまとガイだった。後は一度チャットで会っているスイムスイムのパートナー、アビスと、木にもたれながら興味なさげに腕を組んでいるベルデと、そのパートナーであるルーラだけであり、形だけではあるが、龍騎の紹介は済んだ。

 

「けどさ」

「どうかした?」

「さっきスイムスイムから聞いて、紅葉狩りをするって言ってたけど、この時期に紅葉なんてあるの?」

「あ、それ俺も思った。ちょっと早過ぎんじゃねぇの?」

「……紅葉狩り?」

 

アビスが怪訝な声を出し、ルーラとベルデは、スイムスイムの方を見た。スイムスイムは黙り込んでいる。どこか認識の違いがあったのだろうか。龍騎とトップスピードはそれ以上追求しない事にした。

 

「あ、そうそう。これ」

 

続いて、トップスピードが持参していたバッグから取り出したのは、中身の入ったコンビニの袋だった。それを受け取ったルーラは首を傾げた。

 

「何?」

「紅葉狩りの差し入れって事で」

「差し入れ?」

「友情の証って事。さぁ、もう行こうぜ龍騎」

「あぁ、そうだな」

 

そう言って龍騎はラピッドスワローに跨った。パートナーカードの効力が切れて、しばらく魔法の箒を呼び出せなくなってしまったので、帰りはトップスピードに乗せてもらう事になった。

 

「本当は俺達も参加したいところだけど、生憎ナイトとリップルを待たせるわけにはいかないんでね。最後まで残れたら、時間見つけて楽しくやろうぜ! そんじゃあ、お互いキャンディー集め、頑張っていこうぜ!」

「ふ、ふざけるな!」

「わっ⁉︎」

 

一方的に話が進みすぎて、堪忍袋の緒が切れたルーラは怒鳴りながら袋を放り投げ、それをたまが慌ててキャッチした。

 

「ハハハッ! ルーラもリップルみたいにツンデレキャラだな」

「あ。あれツンデレなの?」

「やかましい! 全部聞こえてるぞ!」

「じゃあな! 仲良くやれよ!」

「それじゃあ、またチャットで会おうぜ!」

 

その言葉を最後に、龍騎とトップスピードは明将山から去っていった。

ようやく辺りが静かになったところで、ルーラはスイムスイムを問い詰めた。

 

「……で、どういう事、スイムスイム」

「……遅刻しそうで、あれが一番早そうだった。……理由を聞かれて、ルーラに秘密だって言われてたから」

「龍騎が一緒にいた理由は」

「トップスピードが勝手に連れてきた。ルーラやみんなに紹介したいからって」

「あいつらしい、バカの発想だな」

 

ベルデは呆れながら肩を竦めた。ルーラもため息混じりにボヤいた。

 

「もう少しマシな言い訳を考えろ、バカ……」

 

すると、近くで歓声が上がった。ルーラが何事かと思いながら振り返ると、ミナエル、ユナエル、インペラー、タイガ、ガイが、たまの持つ袋の中を見つめていた。よく見ると、中に入っていたのは二段に積まれたタッパーだった。それぞれにはおにぎりや唐揚げなど、手作り感満載の料理が詰まっていた。

 

「お弁当だ!」

「美味しそう!」

「これ全部トップスピードが作ったものなのか⁉︎ すげぇなあの人!」

「へぇ……」

「こんな時なのに、余裕あり過ぎっしょ」

「出来立てっぽそうだし、みんなで食べようぜ!」

「あ、あの……」

 

たまがおずおずと呟くと、5人は背後で恐ろしい気配を感じた。振り返ると、先ほどに増して怒りのオーラを宿しているルーラの姿が。

 

「……あなた達だけ、本当に紅葉狩りする気?」

「い、いえ……」

「……しません」

「うっ……」

「……」

「なわけないって」

「バカやってないで、さっさと行くぞ。こっちは待ちくたびれちまった」

 

ベルデがそう呟いてから歩き出し、他のメンバーも後を追うように、奥にある目的地まで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅く染まった葉など1枚も付いていない森を抜けた先に広がっていたのは、辺り一面を覆い尽くす、粗大ゴミの山だった。いわゆる不法投棄というやつである。

 

「うわっ⁉︎ これマジか⁉︎」

「……ったく。お似合いの仕事を探してやったのよ。ありがたく思いなさい」

「う、うん。ありがとう……」

「じゃあ先ずはたま。やっちゃって」

「は、はい!」

 

ガイの指示を受けて、たまが先陣を切って崖を降りたところの地面を、爪のついた犬の両手で引っ掻いた。すると、少し引っ掻いただけの地面に、巨大な穴が空いた。たまの魔法『いろんなものに素早く穴を開けられるよ』が作動し、僅かな傷が穴となったのだ。が、自分の魔法の範囲がよく分かっていなかったのか、足元に感触が無くなったと思った時には、自分で空けた穴に、吸い込まれるように落下していった。

 

「ひゃっ……⁉︎」

 

『HOLD VENT』

 

すると、たまの頭上からヨーヨー型の武器『バイオワインダー』が迫ってきて、たまの体を縛り付けるとその場で宙吊りになった。たまが見上げると、ベルデがたまを釣り上げているのが見えた。

 

「……ふん。世話の焼ける奴だ」

「あ、ありがとう、ございます……」

「本当に役立たずね。穴を掘るしか能がないなんて」

 

ルーラが酷評をしている中、他の面々は粗大ゴミの山を眺めていた。

 

「う〜ん。しかし多いな」

「このゴミ全部埋めたら、キャンディーどのくらいになるかなぁ」

「100個、いや、200個ぐらいいっちゃうかなぁ」

「こら! あんた達も早く取りかかりなさい! 夜が明けるまでに、全部落として埋めるのよ!」

「「は〜い」」

 

ミナエルとユナエルは飛び上がって軽そうなものから持ち上げた。その一方で、

 

「じゃ、俺達もやろっか」

 

ガイがカードデッキからカードを1枚取り出した。それに続いてタイガとインペラーもカードを取り出し、ガイは左肩についた召喚機『メタルバイザー』に、タイガは斧型の召喚機『デストバイザー』に、インペラーは右足の脛についた召喚機『ガゼルバイザー』にベントインした。

 

『『『ADVENT』』』

 

咆哮と共に現れたのは、各々の契約モンスターであるメタルゲラス、デストワイルダー、メガゼール、ネガゼール、マガゼール、オメガゼールだった。特にインペラーが呼び出した契約モンスターは、数十体もいた。

 

「へへ。こういう時に契約モンスターが役に立つんだもんな」

「さっさと終わらせよっか」

「……うん」

 

そして3人のライダーとその契約モンスター、さらにアビスも粗大ゴミを穴に落とす作業を始めた。その間、インペラーがモンスターばかりに仕事を任せて自分はサボっていたり、たまがオロオロしていて皆の邪魔になっている度に、ルーラの怒声が鳴り響き、全ての粗大ゴミが穴に埋まったのは、それから30分後の事だった。その間、ベルデとスイムスイムはジッとその場で皆の様子を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと終わった……」

「おっ! キャンディー結構増えてる! 山奥まで来た甲斐あったね!」

「あったね!」

「ま、こんなもんだな」

「じゃあ、後は頼んだから」

「後……?」

 

タイガが首を傾げていると、ルーラはイラついたように口を開いた。

 

「このままじゃ不自然だろバカ。木とか草とかで目立たなくしておくのよ」

 

なるほど、と思ったたまは早速近場から草や木を集め始めた。

 

「行きましょう、ベルデ」

「あぁ」

 

そしてベルデと共にその場を去ろうとした時、スイムスイムが呟いた。

 

「……ありがとう、仕事を探してくれて」

 

すると、ルーラはそっぽを向いて叫んだ。

 

「……あんた達グズ共がちゃんとキャンディーを集めてれば、こんな事しなくても済むのよ!」

 

それから再び歩き出し、小言で呟いた。

 

「誰かが脱落するなんて、リーダーとして、絶対に許せない……!」

「……」

 

その様子を、ベルデは黙って見ていた。やがて2人の姿が見えなくなったところでピーキーエンジェルズは口を開いた。

 

「ルーラには逆らえないしね」

「ルーラの魔法、最強だしね」

「しょうがないよな……。好感度上げとくにはこうするしかないし」

 

インペラーも肩を竦めて呟いた。それから、たまに続いてスイムスイム、アビス、タイガ、インペラーは草木を集め始めた。その間、ピーキーエンジェルズとガイはレジャーシートを広げて、くつろいでいた。ガイが寝転んでいる間、ピーキーエンジェルズはマジカルフォンからあるサイトを見ていた。

 

「あ、そろそろ人気投票始まる時間だ」

「マジ? でもあいつがいるし」

「あいつって?」

 

ガイが気になって尋ねると、ユナエルが不満げに答えた。

 

「スノーホワイトだよ。ほら、今キャンディー獲得数トップの」

「スノーホワイト、マジウザいし」

「うん、マジウザいよね」

「このままじゃまた一位とれないしー」

 

どうやら週末に開かれる人気投票のトップをスノーホワイトが占めている事に、不服のようだ。

 

「一位を取るための素晴らしいスキームが欲しいよー」

「コンセンサスやね」

「なんかさ、私らだけじゃアイデア思いつかなくない?」

「あー、そこに気づくか。お姉ちゃんマジクール」

「いやクールだったら何か思いついてるんじゃないかな」

「お姉ちゃんマジ謙虚」

 

2人が言いたい放題している間に、粗大ゴミを覆い隠し終えたらしく、アビスとスイムスイムはトップスピードが持ってきた弁当箱からおにぎりを1つずつラップに包んで拝借してから、皆に背を向けた。

 

「終わったから帰る」

「それじゃあまた」

「「お疲れ様〜」」

「じゃあね」

 

ピーキーエンジェルズが手を振っていると、たまは首を傾げた。

 

「……みんなは帰らないの?」

「あ、そうそう。たまにも残ってもらいたいんだ」

「……え?」

 

たまはインペラーに言われた通りに、残る事にして、レジャーシートに腰を下ろした。それから、トップスピードが持ってきた弁当を食べ始めた。残った3人のライダーも変身を解いて食事を始めた。ガイの変身者は大学生であり、名を芝浦(しばうら) 淳一郎(じゅんいちろう)と言う。タイガの変身者は、大人しそうな青年で、東野(とうの) (さとし)であり、その隣にいるのはインペラーの変身者で、智の弟である光希(みつき)が、兄とは対称的にハキハキしていた。

6人での食事会が始まると、双子の魔法少女が中心となり、喚き立てた。

 

「だから人気よ人気。人気が欲しいの」

「そうそう」

「ほら、まとめサイトあるじゃん」

「あれってスノーホワイトの記事ばっかりなんだよね」

「白い魔法少女が何々してましたって、そればっかり」

「あれ何なの? 複数いるの?」

「私達なんて2人いるのに十分の一くらいしかないんだよ」

「それって2位の九尾ってライダーもそうだし、さっき来た龍騎ってライダーよりもずっと少ないんだよ。まぁ、あいつらもあいつらでおかしいんだけどさ。やっぱスノーホワイトなのよ」

「あぁ。確かに多いね、この3人」

 

光希がマジカルフォンから、ピーキーエンジェルズが閲覧しているものと同じサイトを見ていた。

 

「せっかく魔法少女になったからには人気欲しいし」

「当然だよね」

「だから何とか人気稼ごうとして色々やったんだけど」

「お姉ちゃんマジクール」

「……で、どうだったの」

 

智が唐揚げにかじりつきながら尋ねると、2人はこう言った。

当初、ミナエルとユナエルは、サイトで自作自演をする事で人気をアップさせようとしていた。今ある2つの端末を駆使してサイト内の自分達の株価を上げようとした。ところがこの作戦は失敗に終わった。なんと、異なる端末を使用していたにもかかわらず、掲示板で表示されるIDは同一だったのだ。

 

「何で端末違うのにID同じなんだっつーの!」

「私ら2人でセットかっつーの!」

「いやまぁ、双子だし……」

「そういう問題じゃないの! ファヴに文句言ったらしれっと『え? そうなの?』とか言ってるし!」

「ふざけんなし!」

「……で、見え見えの自作自演がバレて、世間からは鼻摘まみにされたってわけね」

 

芝浦が納得したように頷いた。

 

「でさー。このままじゃマズいと思ったわけよ」

「そうそう。このままだとまたスノーホワイトがダントツでぶっちぎっちゃうよ。それよくないよね」

「というわけで、みんなから何かいいアイデア出てこないかなぁって。どう、ある?」

「ある?」

「「う〜ん……」」

 

たまと光希は唸り、真剣に考えていた。一方で智と芝浦は興味ないのか、黙々と弁当を食べていた。

そんな中、たまはこれまでに働かせた事もないぐらいに案を練った。実を言うと、同じ魔法少女から頼りにされたのはこれが初めてだった。変身前の彼女はとにかく鈍臭く、家族を含めて誰1人として頼ってこなかった。せいぜいパシられる程度だった。家族の中でも唯一頼りにしてくれたのは、今は亡き祖母ぐらいだった。魔法少女になって人助けをするようになってからは、感謝してくれる人が増えて、なれて良かったと思える自分がいた。

眉間に皺を寄せながら考えていると、やがてたまはこう言った。

 

「えーと、う〜ん……。一生懸命人助けする、とか?」

「もうしてるっつうの!」

「不法投棄されたガラクタを片付けたばかりだっつうの!」

 

お気に召す答えでないと分かり、たまは次なる案を出した。

 

「ルーラとか、ベルデとか、スイムちゃんとか、アビスに相談してみたり……」

「あんなヒスババアはやだ! ベルデに言っても聞いてくれなさそうだし、スイムスイムもアビスもルーラの腰巾着になってるし!」

「そうそう。ルーラマジウザいし」

 

2人はいつものようにルーラの悪口を言っていた。

 

「けどなぁ〜。そんな簡単に人気なんて集まる方法あるのかな? 無理なもんは無理って割り切った方が……」

「何言ってんのよ! 人気が欲しいのよ!」

「そーだそーだ!」

「うぅ〜ん……」

 

すると、たまの脳裏に人生初のひらめきが浮かんだ。

 

「ぷ、プロモーションビデオを作ろう!」

「「……え」」

「プロモーション?」

「……ビデオ?」

「……はは〜ん」

 

これには、さほど興味の湧かなかった芝浦も思わず身を乗り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その2日後、たまはピーキーエンジェルズから感謝された。翌日の晩にたまがPVと称して家庭用ビデオカメラで撮影し、画像や動画をミナエルとユナエルがパソコンで編集したものを投稿した結果、スノーホワイトのものとギリギリまでデッドヒートを繰り広げた。惜しくも2位という形で幕を閉じたが、双子からしてみれば喜ばしい結果だった。ファヴも『あれは反則ギリギリぽん』と、2人を咎めていたが、「あの球体の裏をかいてやった」と言って、クスクス笑っていた。

とはいえ、たまも初めてカメラマンをやらされた結果、撮影中に転んだり、バッテリーを切らしたり、操作を間違えたりと、失敗ばかり続いていたが、そこを補助役のタイガとインペラーが少なからずフォローした。

中でも最もたまを手助けしてくれたのは、機械系に強いガイだった。操作を間違える度に、懇切丁寧にやり方を教え、問題点を指摘したり、手振れ補正を利用して、たまに合った撮影の仕方を説明してくれたのだ。

そして現在、祝勝会と称してルーラ達も知らない、双子の隠れ家に案内してもらい、桃鉄を6人でプレイしている。最下位は明日の晩御飯を奢るという罰ゲームもつけて。隠れ家まで向かう際、たまは双子に持ち上げられて、空を旋回していたので未だに心臓がバクバクしていたが、隠れ家に入ってようやく落ち着きを取り戻した。

双子が設定している間、たまは隣にいたガイに声をかけた。

 

「あ、あの……」

「ん?」

「その……。ありがとう。手伝ってくれて……。私1人じゃ、どうにもならなかった……。ガイがパートナーで、本当に良かった……」

「ま、俺はただお前の案が面白そうだったから、乗ってあげただけだし」

「……でも、嬉しい」

 

たまは頬を紅くしながら、自然とガイに寄り添った。できる事なら、このまま2人で最後まで残り続けたい。そんな願望を胸のうちに秘めて、10年トライアル、ハンディ無しのゲームが始まった。

 

 




……あれ、今作のガイって良い人っぽくなってると思ったそこのあなた。

……気にするな!

ちなみに今作のタイガとインペラーは兄弟という設定です。これは「仮面ライダードラゴンナイト」で2人が兄弟であるという設定を参考にしています。双子の魔法少女がいるんだから、兄弟設定もアリだなと思ってそうしました。

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