魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜 作:スターダストライダー
さぁ、生き残りをかけた、世にも残酷なゲームの始まり始まり〜。
九尾がチャットルームに入った時には、既に何人かの魔法少女や仮面ライダーがそこにいた。
エルフ型の魔法少女、『クラムベリー』に不死鳥の仮面ライダー『オーディン』、魔女風の魔法少女『トップスピード』、龍の仮面ライダー『龍騎』、忍者風の魔法少女『リップル』、コウモリの仮面ライダー『ナイト』、カニの仮面ライダー『シザース』、修道女姿の魔法少女『シスターナナ』、コオロギの仮面ライダー『オルタナティブ』、黒いコートの魔法少女『ヴェス・ウィンタープリズン』、白鳥の仮面ライダー『ファム』。
既に見知った者もいれば、中には九尾が初めてお目にかかる魔法少女や仮面ライダーもいる。
マジカロイド44:『コンバンハ、レアキャラデス』
ゾルダ:『どーも』
ロボット姿の魔法少女『マジカロイド44』とスイギュウの仮面ライダー『ゾルダ』である。
その後、遅れてスノーホワイト、ラ・ピュセル、ライアがやって来ると、スノーホワイトは真っ先に挨拶した。
スノーホワイト:『こんばんは! よろしくね!』
トップスピード:『おっす!』
ファム:『えぇ、よろしくね』
シスターナナ:『こちらこそよろしくお願いします』
スノーホワイト:『ところで、ファヴが言ってた重大発表って、何なんでしょう?』
ウィンタープリズン:『さぁ……。私も検討がつかない』
そんなやり取りをしているうちに、新たにチャットルームへ入ってくる者が。ガンマン風の魔法少女『カラミティ・メアリ』と、蛇の仮面ライダー『王蛇』である。
チャット内の空気が一変した。というのは言い過ぎかもしれないが、とにかく2人の登場により、それまで賑やかだったチャットルームでのやりとりがピタッと止んだ。特に龍騎は一度2人と対峙している為、警戒心をより強めている。
「(ライアの言ってた通り、みんなから敬遠されているのか)」
2人の良くない噂を既に耳にしている九尾はそう感じた。
その後チャットルームに入ってきたのは、何と総勢10人。中心に立って現れたのは、如何にも女王様の雰囲気を醸し出している魔法少女『ルーラ』。その傍らにはカメレオンをモチーフにした緑の仮面ライダー『ベルデ』がいた。その2人の後ろには、瓜二つの天使系魔法少女『ミナエル』と『ユナエル』。犬の姿をした魔法少女『たま』。白いスク水を着ている魔法少女『スイムスイム』。サイをモチーフにした灰色の仮面ライダー『ガイ』。ガゼルをモチーフにした茶色の仮面ライダー『インペラー』。ホワイトタイガーをモチーフにした白と水色が混ざった仮面ライダー『タイガ』。そして以前チャットで出会った事のあるサメの仮面ライダー『アビス』の8名が、子分のようにくっついていた。
「(あれがルーラチーム……)」
そして数秒後にパジャマ姿の魔法少女『ねむりん』が、眠たそうに目をこすりながらチャットルームに入ってきた事で、チャットルーム内は総勢30人の魔法少女や仮面ライダーが密集する区域となった。現実的には全く影響はないのだが、見ていて暑苦しいものがある。
龍騎:『お、多すぎだよな……』
ミナエル:『だよねー』
ユナエル:『だよねー』
トップスピード:『ファヴもシローも何でまたこんな大掛かりな事を』
ラ・ピュセル:『最近チャットの参加者が少ないからって、さっきまで僕達の中では話してたんだけど』
インペラー:『なるほどなー』
ゾルダ:『ま、俺は基本こういうのは面倒だからやろうとしないけどさ。シローがどうしてもっていうからな。……それより、肝心の呼び出し主はどうしたの?』
王蛇:『知るか』
アビス:『単に参加者の人数を増やそうとしてあのように言ってる可能性が高いな』
ラ・ピュセルやアビスの言うように、チャットへの参加は強制的ではない。いつの日か、ファヴもシローも、もっと情報交換をしたり、親睦を深めるべきだ、と主張していたが、ほとんど聞く耳を持つ者はいなかったらしい。
スノーホワイトやラ・ピュセル、そしてライアは高い頻度で参加していた。情報収集の為でもあるし、スノーホワイトとラ・ピュセルが魔法少女愛好家という事もあって、触れ合う機会を逃すまいとしていた。当然九尾も半ば強引に参加させられていた。
そんなこんなで話が進むうちに、ようやくファヴとシローがチャットルームに入ってきた。
トップスピード:『おっ、来たきた。おせーぞ』
シロー:『それはすまなかった』
ファヴ:『あれ? 1人足りない気がするぽん』
シロー:『全員に呼びかけたはずだが、仕方ない。また個別で連絡する事にしよう』
言われてみれば、今度入ってくる新人の魔法少女を除けば、現時点でN市で活動している魔法少女や仮面ライダーは総勢31人と伺っている。にもかかわらず、チャット内には30人しかいない。気にはなったが、今は2匹からの発表を聞く事にした。
ガイ:『でさ。重大発表って何?』
ファム:『今度、新しい魔法少女が来るって聞いてたけど、その事と関係あるのかしら?』
シロー:『それもある』
ファヴ:『今回集まってもらったのは他でもないぽん。実はとっても困った事になったんだぽん』
龍騎:『困った事? 何だよそれ』
ファヴ:『それを話す前に、先ずは要件を伝えるぽん』
そしてファヴが告げた事。それは……。
ファヴ:『この地域の魔法少女と仮面ライダーの人数を減らす事にしたぽん。半分の16人にするぽん』
「……は?」
思わず九尾はそう呟いた。
魔法少女や仮面ライダーの人数を減らす。いきなりそう言われても、理解出来るはずもない。そしてそれは他の魔法少女や仮面ライダー達も例外ではなかった。
ルーラ:『どういう事よ』
トップスピード:『減らすって、何でまたそんな事に』
ファヴ:『この地域には現在31人存在するぽん』
ユナエル:『つーかそんな状況なのに、また魔法少女増えるんでしょ? 今更半分に減らすとか、何かおかしくね?』
ミナエル:『おかしくね?』
インペラー:『あぁ。そうだよな。せめてその魔法少女だけでもどうにかならねぇのか? 辞めてもらうとかさ』
ファヴ:『もう契約して魔法少女になる事を承諾した後だから、今更変更は出来ないぽん』
ベルデ:『んな事よりも。何でそんな風になったのか説明してもらおうか』
ベルデの問いかけに対し、最初にコメントしたのはシローだった。
シロー:『32人という大人数は、如何に広大な敷地を有するN市をもってしても、この人数は多すぎだ。武器や魔法の源となる魔力は、その土地に依存すると同時に、限りある資源でもある。人間世界で例えるなら、石油というエネルギー源も、いつかは枯渇する可能性があるという事と同じだ』
ファヴ:『これは今後のみんなの活動に大きく影響するぽん。魔力が吸い上げられて、全部無くなったら、魔法を使う事ももちろん、人助けやモンスター退治まで出来なくなってしまうぽん。それだけ危険に晒される人達も増えてしまうぽん』
スノーホワイト:『そんな……』
スノーホワイトからしてみれば、心が痛くなるような言い方。そんな中、コメント欄を埋め尽くしたのは、疑念や質問、更には不満やブーイングの嵐だった。
龍騎:『ちょっとちょっと! そもそもこんなに魔法少女とか仮面ライダーを増やしたのはお前らだろ⁉︎』
トップスピード:『だよなー。んな事が有り得るって分かってんなら、最初からちゃんと調整しとけよって話だよ』
ファヴ:『それは、ファヴやシローの計算違いだぽん』
シスターナナ:『計算違いって、そんな……!』
インペラー:『いくら何でも無責任すぎるだろ⁉︎』
シロー:『それに関しては謝罪する。すまなかった』
ファム:『そんな風に謝られてもなぁ……』
ラ・ピュセル:『君達の言いたい事は分かったが、いくら何でもいきなり半分は無理だ!』
シザース:『同感ですね。せめて8人だけ剥奪されるという事にしてもらいたい』
ファヴ:『それを変えるのは難しいぽん。本当にごめんなさいぽん』
オルタナティブ:『他の街に拠点を移させるという措置は出来ないのですか?』
シロー:『無論、他の街を担当する者達にも掛け合ってみたが、それも不可能と分かった以上、こうするしか方法がないのだよ』
ウィンタープリズン:『そんな状況なのに、もう1人魔法少女を増やす事になるとは……』
ライア:『厄介な事になったな』
などと、様々なやりとりがチャット内で行われていたが、やがてその口論に歯止めをかけたのは、それまで黙っていたカラミティ・メアリだった。
カラミティ・メアリ:『で、どうやって半分にするんだい?』
ガイ:『そーそー。それ結構気になってたんだよね』
確かに、と誰もが共感する疑問だった。魔法少女や仮面ライダーを減らすとは言っていたが、一体どのような手段を用いて人数を減らそうというのか。まさかクジ引きで決まるとは思えない。
その方法を、ファヴとシローはこう説明した。
ファヴ:『このチャットは1週間に一度開かれているのはみんな知ってると思うぽん。週に一度、このチャットで脱落者を1人発表して、翌週また1人、というように、16週間で16人に魔法少女や仮面ライダーを引退してもらうぽん』
たま:『16週間⁉︎』
九尾:『かなりの長期間だな』
九尾がそうコメントするように、16週間という事は約4ヶ月に及んで生き残りをかける事になる。
シロー:『脱落者を選抜する方法としては、マジカルキャンディーの所有数で決定される。その週で最もマジカルキャンディーが少ない者が、脱落者となる。この方法を繰り返して、1人ずついなくなるのだ』
シローの説明を聞き、皆は黙り込んだ。
この場面で不満を口にして、自ら引退すると宣言する者は誰1人としていない。ここにいる者達は自分が魔法少女や仮面ライダーであるという事実を悦びとして享受していた者ばかりだからだ。一度、人間社会に縛られる事なく振るう事のできる力を得た者が、それを手放す事はまずない。
高みに達した者ほど、奈落へ落ちる絶望感は果てしなく大きい。
とにかく先ずは、マジカルキャンディーをより多く手にする為に、より積極的に行動しなければならない。それしか生き残れる方法がないからだ。
シロー:『改めてもう1度説明する。1週間に一度、マジカルキャンディーの少ない者から脱落していく。君達にはこれまで以上にキャンディー集めに励んでほしい』
ファヴ:『今回はみんなに迷惑かける事になって本当にごめんなさいぽん』
ゾルダ:『やるしかないって事か』
ファヴ:『あ、それともう1つ。連絡したい事があるぽん』
シスターナナ:『何でしょうか?』
ここで、ファヴの口からこんな知らせが入った。
ファヴ:『今回の件もあって、みんな一生懸命マジカルキャンディーを集める事になるぽん。そこで、ファヴとシローからお詫びも兼ねて、新しいシステムを導入する事にしたぽん! これは双方にとっての特典だと思ってくれていいぽん』
ファム:『新システム?』
トップスピード:『何だそりゃあ?』
シロー:『詳しい内容は、ここにいないメンバーの1人にメッセージを送った後に、改めて発表する。先に言っておくと、このシステムの導入によって、マジカルキャンディーを獲得する機会が増えるのは間違いないだろう』
ファヴ:『というわけで、連絡は以上ぽん。それじゃあ、後でメッセージの方をよぉく読んでおいてほしいぽん!』
その言葉を最後に、ファヴとシローはチャットルームから退出した。他の面々も、自然な流れで解散となって、1人また1人と退出した。ある程度人数が減ったところで、九尾も退出する。
「「「「……」」」」
その後、九尾は何気なく顔を上げ、そばにいたスノーホワイト、ラ・ピュセル、ライアと目を合わせた。沈黙が辺りを包む中、一同からは困惑のオーラが滲み出ていた。
1人だけ参加していないメンバーがいましたが、誰であるかは、おそらく消去法で分かるかと……。
次回は、ファヴとシローが言っていた新システムについて明らかとなります。このシステムはこの小説オリジナルの設定であり、これがやりたくて「魔法少女育成計画」に「仮面ライダー龍騎」を合わせてみたといっても過言ではありません。