魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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今回はタイトルからも分かる通り、あの仮面ライダーと魔法少女が登場します。


13.メカニックな奴ら

「次は城西地区3丁目付近のアパートに住んでいた会社員の所に向かうわよ……って、城戸君、聞いてるの?」

「え? あ、はい! 大丈夫です!」

 

本当かと言わんばかりに顔をしかめる令子だが、運転に集中する為に前を向いた。

正史は現在、先輩の令子が運転する車に乗車している。この日正史は、令子が担当している行方不明事件の調査の手伝いをする事になっており、本日4件目となる行方不明者の自宅を捜索しに向かう途中である。

後部座席に座りながら、正史は考え事をしていた。思い起こされるのは、先日城南地区で遭遇した、カラミティ・メアリと王蛇の2人の事である。

 

「(誰かを助ける事が間違ってるはずなんて無い。トップスピードにも言われちゃってるし、これ以上関わろうとは思わないけど、今度会った時は絶対……)」

 

するとその時、車が急ブレーキと共に停車し、正史は勢い余って前の座席に顔面を打った。

 

「痛ってぇ……⁉︎ ど、どうしたんですか令子さん! 急にブレーキかけて……」

「あれ見て!」

 

令子が指差した先を見てみると、反対車線に2台の車が停まっており、そのすぐ近くで数人の屈強そうな男性陣に囲まれて、1人のスーツ姿の男性が狼狽えていた。

やがて1人の男性がスーツ姿の男性の胸倉を掴んで殴ったのを見て、令子はいてもたってもいられずに車から降りて駆け寄った。正史も慌ててその後ろ姿を追いかけた。

 

「ちょっ、令子さん!」

「ちょっとあなた達、そこで何してるの!」

 

令子の一喝を聞いて男性陣もようやく2人の存在に気づいた。

 

「何だお前ら。そっちに用は無いんだよ」

「こっちはありありです。集団で寄ってたかって、恥ずかしく無いんですか?」

「い、いいんだ……。君は関係ないからさ」

 

スーツ姿の男性が令子にそう言うと、令子は目を見開いた。

 

「あなた、まさか……!」

「えっ? 令子さん知り合い?」

 

正史がそう尋ねていると、男性陣の1人が再びスーツ姿の男性を捕まえた。

 

「話が早いじゃねぇか。ならやった事のケジメぐらいつけてもらおうか!」

「! 止めろよ! 死んじゃうだろ!」

 

危険を感じた正史は拳を振り下ろそうとした男性に飛びかかって、男性を引き離した。と、今度は正史の方が殴られてしまった。

 

「! 城戸君!」

「おい!」

 

スーツ姿の男性も慌てて正史を引っ張って男性陣から引き離すと、近くに停めてあった車に無理やり乗せた。

 

「君も早く!」

「えっ⁉︎ ちょっと⁉︎」

 

男性は令子の背中に手をやって、後部座席に乗せた後、掴みかかってきた男性を退けて、運転席に乗り込み、急発進させた。男性陣も残っていた車に乗り込んで正史達を追いかけ始めた。

カーチェイスが繰り広げられる中、正史が喚いた。

 

「ちょ、ちょっとどうなってんだよ! あんたあいつらに何かしたのか……」

「おい、シートベルト」

「あ、はい」

 

男性に注意されてシートベルトをする正史は、後部座席にいる令子に声をかけた。

 

「そ、そういえば令子さん。さっきこの人の事見て驚いてましたけど、知り合いなんですか⁉︎」

「はっ? 城戸君知らないの? この人、北岡(きたおか) 賢治(けんじ)よ。『黒を白に変える弁護士』って呼ばれてるわ。大体今朝のニュースでこの人が映ってたの見てなかったの?」

「……あ! そういえば……」

 

正史はOREジャーナルで大久保がつけていたテレビで報道されていたニュースの事を思い出した。その時の大まかな内容としては、大物弁護士が強引な手段を使い、とある裁判で無罪を勝ち取ったというものであった。大勢の記者団に囲まれながらコメントしていた弁護士と、すぐ側で運転している男性の顔は確かに一致していた。

 

「あ、あんた本物の……?」

「まぁね」

「それより、何であんたが追われてんだよ? あいつら一体……? っておわっ⁉︎」

「きゃあ!」

 

正史と令子が悲鳴をあげるのも無理はない。追いかけてきた男性陣の車が体当たりしてきて、車が大きく揺れたからだ。北岡がどうにかして距離を離した後、ポケットの財布の中から新聞紙の一片を取り出して、正史に渡した。令子も後ろから覗き込んだ。

そこには北岡の顔写真が載っており、その下に書かれていた記事の内容を見て、正史は興奮したように叫んだ。

 

「あ! このT商事って、聞いた事ある! あちこちの不動産屋から金を巻き上げてるって悪い噂が流れてる会社だよな!」

「! まさか、あの人達は……」

 

令子が何かを察したようにハッとした。

 

「そ。あいつらこそが、そのT商事の回し者。裁判で注ぎ込んでた金を無断で使ってたのがバレちゃってね。それで金を返して貰おうってバカみたいに騒いで俺を追いかけてたってわけ」

「それって、あんたが無理やり悪い事してるあいつらを無罪にしたって事なのか⁉︎」

「そう。俺結構凄いでしょ?」

「けどあなた、無断で依頼相手の会社の金を使うなんて、ある意味犯罪よ⁉︎ 分かってるの?」

 

令子が咎めるが、本人は清々しい表情で否定した。

 

「そうか? どうせ罪もない人々から騙し取られた金だろ? あのままほったらかしにしておくより、俺が効率よく使って裁判に勝てる方がよっぽど得すると思うけど?」

「そういう問題じゃ……!」

 

正史が反論しようとする前に、再び体当たりを受けて車が大きく揺れた。慌ててハンドルをきる北岡だが、スリップしてしまい、近くのゴミ置場に突っ込んでしまった。車は停車してしまい、衝撃でエンジンがイカれてしまったのか、キーを回してもかからなかった。

 

「早く出るぞ!」

「わっ⁉︎」

「ちょ、ちょっと……!」

 

北岡が後部座席のドアを開けて、令子をエスコートするかのように降ろして、手を引っ張って逃げ出した。その後を正史は鼻を押さえながら追いかけた。

しばらく走った所で、T商事の回し者達に囲まれてしまった。

 

「さぁ、もう逃げられないぞ!」

「お、おい。どうすんだよ……」

 

正史が小声でそう尋ねると、北岡はため息混じりに令子から手を離し、前に出た。どうするつもりなのかという目線を向ける正史と令子の前で、北岡は唐突に土下座を始めた。

 

「ご、ごめん! 俺が悪かった! 金はちゃんと返す! だからこの通りだ! 許してくれ!」

「えぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」

「ちょっと! あなたそれでも男なの⁉︎」

「いやでも、こうでもしておかないと……」

 

まさかの行動に驚く正史と呆れる令子。当然回し者達も納得するはずが無く、罵声と共に北岡に詰め寄った。

 

「(クッソォ……! こんな時ライダーになれてたら、人助けって事でどうにか出来るのに……!)」

 

先輩の令子や弁護士の北岡、更にT商事の回し者に囲まれている今、下手に龍騎に変身する事は叶わない。

 

「先生から離れろ!」

 

だがそこに、新たな人影が姿を現した。声のした方を振り返ると、ぱっと見はチンピラ風の男性が、こちらに歩み寄ってくるのが見えた。

 

「ゴロちゃん!」

「先生、間に合って良かったっす」

 

ゴロちゃんと呼ばれた男性は笑みを浮かべながら、ファイティングポーズを取り、北岡に襲いかかろうとしている回し者達に鋭い視線を向けた。回し者達がたじろいで少しずつ下がる中、男性は北岡に小声で話しかけた。

 

「先生。真琴から連絡です。次の仕事の合計費用の計算と部屋の掃除といった仕事は完了。現在待機中との事です」

「そっか。ならここは任せるよ」

「了解!」

 

回し者達も我慢の限界がきたのか、男性に殴りかかった。が、男性は軽く足払いしたり、逆に殴り返したりと、徹底的に回し者達に制裁を与えていた。

 

「つ、強ぇ……」

「じゃあ後はよろしくねゴロちゃん! さぁ、行きましょう」

「え、ちょっと⁉︎」

「あ、待てよ!」

 

その場を男性に任せた北岡は令子の手を掴み、再び駆け出した。正史もその後を追いかけた。回し者達が追いかけようとするが、男性による妨害によって、行く手を遮られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと離しなさいよ!」

 

ようやく追ってから逃れたのを確認した令子は北岡の手を振りほどいた。

 

「っていうか、あの人放っておいて良かったのかよ?」

「大丈夫だって。ゴロちゃんはあんな奴らに負けるはず無いって」

「さっきの人、あなたの秘書なの?」

「そ。由良 吾郎って言ってね。俺が一番信頼出来る男」

 

それよりもさ……、とここで北岡が話題を変えてきた。

 

「なんか迷惑かけちゃったみたいだし、良かったら詫びも兼ねて食事でもどう? もちろん俺の奢りで」

 

北岡がそう呟く目線の先には正史はおらず、令子だけに向けられていた。何で自分は無視されているのかツッコもうとした正史だが、令子は冷たくあしらうように答えた。

 

「生憎まだ仕事がありますし、そういうのに興味無いんで。それじゃあ……」

「待て〜!」

 

不意に聞こえてきた怒声のした方を振り返ると、2人の男性が駆け寄ってくるのが見えた。回し者達の別働隊のようだ。

 

「やばっ!」

 

慌てて正史は北岡の腕を掴み、令子に言った。

 

「こいつは俺が何とかします! 令子さんは先に車の方に戻ってて!」

「え、でも城戸君は……」

「後で連絡入れます!」

 

そう叫んで2人は路地裏に消えた。男性達は令子に目もくれずに2人を追いかけていった。

 

「城戸君、大丈夫なの……?」

 

彼の事をよく知る令子は不安に思ったが、自分1人であの屈強そうな男性達をどうにか出来るとは思えなかったので、正史を信じて車のあった所に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正史は北岡と共に、入り組んだ路地を走り回っていた。何度も角を曲がったりして撹乱させようとしているのだ。

ある程度男性達から距離を離して、人気の無い店のショーウィンドウを通り越した辺りで、正史はポケットの中に入れてあるマジカルフォンから音が鳴っている事に気づいた。

 

「(! これってモンスターが近くに……!)」

「おい! 立ち止まるなよ!」

 

正史は立ち止まろうとしたが、回し者達に追いかけられている事を思い出して、北岡と共に角を曲がった先にある物陰に隠れた。しばらくこの場で身を潜めようと考えていたその時だった。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」」

 

先ほどから追いかけていた男性達の悲鳴が聞こえたかと思うと、急に静けさが辺りを包んだ。

正史は目を見開き、慌てて来た道を覗いた。北岡もそれに続いて正史の目線を追った。見ると、ショーウィンドウの前には先ほど男性の1人が履いていた靴が片方だけ転がっているではないか。

 

「! まさか、モンスターに……!」

 

正史はショーウィンドウの前に立ち、中を覗き込むような動作を見せた。どうやら近くにいたモンスターが回し者達を捕食したようだ。

 

「なぁ、お前何やって……」

 

北岡が、正史の奇行に目を細めていた時、不意にハッとした表情を見せた。

 

「ひょっとしてお前、ミラーワールドの事知ってるのか?」

「えっ⁉︎ 何で北岡さんがその事……! ……ひょっとしてあんたも⁉︎」

「そのまさかって感じだな」

 

北岡は観念したように胸ポケットからあるモノを取り出した。それはスイギュウの紋章が刻まれた、緑色のカードデッキだった。それは正真正銘、北岡が正史と同じ仮面ライダーの1人である事を決定づける証拠であった。

 

「あんた、ライダーだったのか……! だったら協力しようぜ!」

「協力……?」

「この中にいるモンスターを倒すんだよ!」

 

正史がカードデッキを取り出して指差すが、北岡は呆れたように肩を竦めた。

 

「何で俺がそんな事しなきゃならないのさ。追いかけてきた奴らをやっつけてくれたんだし、こっちとしては大助かりだよ」

「んな事言ってる場合かよ! 人が襲われたんだぞ⁉︎ あんたもライダーなら、モンスターと戦えよ!」

 

正史に咎められた北岡は、反論するのが面倒になったのか、ため息をついてから呟いた。

 

「しょうがないなぁ……。今回だけだぞ」

 

それから正史の横に立って、カードデッキをショーウィンドウにかざした。正史もそれに続き、2人の腰にVバックルが装着された。

 

「「変身!」」

 

正史は右腕を左斜め上に突き出し、北岡は握り拳を立ててから、両者共にカードデッキをはめ込んだ。各々に鏡像が重なり、正史は龍騎に、北岡は全体的にメカニックな仮面ライダー『ゾルダ』に変身した。

2人がミラーワールドに入ると、前方に2体のモンスターがおり、どちらも同じ造りをしていた。一体はシマウマ型のモンスター『ゼブラスカル・アイアン』であり、もう一体は色違いで同型のモンスター『ゼブラスカル・ブロンズ』だった。

 

『SWORD VENT』

 

「ッシャア!」

 

龍騎がドラグセイバーを片手に、ゼブラスカル・アイアンに立ち向かい、ゾルダは腰に提げてある銃型の召喚機『マグナバイザー』を持って構えると、ゼブラスカル・ブロンズに連射した。

ゼブラスカル・ブロンズは連射を浴びて後ずさった。一方、ゼブラスカル・アイアンは龍騎の攻撃を器用にかわし、角状の武器を持つ両腕で龍騎に殴りかかった。

 

「このぉ!」

 

龍騎は負けじとドラグセイバーを振るうが、ゼブラスカル・アイアンは体をバネのようにして高く飛び上がり、龍騎の背後をとった。

 

「何⁉︎」

 

ゼブラスカル・ブロンズも同様の手口でゾルダの背後に回り、強襲した。

 

「くっ……!」

 

接近戦が苦手なゾルダは回避できずにダメージを受けて、味を占めたゼブラスカル・ブロンズが優位に立った。

ゼブラスカル・アイアンの猛ラッシュを受けて、龍騎も次第に焦りが見え始めた。

 

「おわっ⁉︎ こいつ、すばしっこい……!」

 

遂にドラグセイバーが弾かれて、無防備になった龍騎に、ゼブラスカル・アイアンが飛びつこうとした。

 

「トォッ!」

 

その時、横手から小さな人影がゼブラスカル・アイアンに両足飛び蹴りを入れて、ゼブラスカル・アイアンは倒れこんだ。

龍騎が助けてくれたその人物の方を見ると、思わず仮面の下で目を見開いた。

 

「大丈夫デスか?」

 

そう呟いたその人物は、確かに人型はしていたが、どこをどう見てもロボットにしか見えなかった。おまけに背中には何故か赤いランドセル型のブースターを背負っており、左右の腰には大きめの袋が取り付けられている。パッと見た感じは、小学校低学年にしか思えない。とにかくそんな容姿だった。

とりあえず龍騎は質問してみる事にした。

 

「えっと……。君も、魔法少女、だったりする……?」

「左様。こうして会うのも初めてデスね。マジカロイド44デス」

「ど、どうも……。俺、龍騎! 最近仮面ライダーになったばかりなんだ」

「知ってマスよ。チャットも拝見させてもらいマシタ」

 

突然現れた魔法少女『マジカロイド44』は、律儀に挨拶をした。すると、ゼブラスカル・ブロンズを退けたゾルダがマジカロイドに駆け寄ってきた。

 

「お前、どうしてここに?」

「先生の帰りが遅かったので、ちょっと気になってこの辺りを探してただけデス。無事で何よりデス」

「先生……? って事は、あんたら知り合いなの?」

「まぁ、そういう感じデスね」

「へぇ」

 

ゾルダとマジカロイドの関係性を知って納得したように頷く龍騎だが、そこに、無視されている事に怒っている2体のゼブラスカルが飛びかかってきた。

 

「どうやら相当怒ってるみたいデスね」

「やれやれ。面倒だから速攻で片付けるか」

「おう!」

「では、ワタシもお力添えを」

 

そう言ってマジカロイドは袋に手をやってゴソゴソと動かした。何かを取り出そうとしているようだ。龍騎が気になって見ていると、やがてマジカロイドの右手に握られていたのは、どうやったらそんな大きさのものが入るのか分からないぐらいに、マジカロイドの身長よりやや大きめの筒型の大砲が握られており、唐突にマジカロイドの口から、BGMらしき音が流れた。

 

「じゃじゃじゃじゃーん! 『無限トリモチバズーカ』デス」

「無限トリモチバズーカァ?」

 

聞いた事の無い武器の名前に、龍騎は思わず聞き返した。

 

「その名の通り、トリモチをその日限りだけですが、尽きる事なく発射出来る、万能な攻撃アイテムなのデ〜ス。いや〜。今日は中々にお誂え向きのアイテムが出マシタ。これもワタシの日頃の行いが良いからデスね」

「なんだそれ……」

 

龍騎は思わず力が抜けた。

後に聞いて判明したのだが、マジカロイド44の魔法は『未来の便利な道具を毎日ひとつ使う事ができるよ』であり、未来の便利アイテムを1日一回限り、使い捨てではあるが、ランダムで取り出し、使用する事が出来るのだそうだ。

ただ、未来の便利アイテムに何故トリモチが採用されているのか謎であるが、状況が状況なので、あまりツッコまない事にした。

 

[挿入歌:果てなき希望]

 

「デハ早速……。ファイヤー!」

 

バズーカ砲を担いだマジカロイドは筒口からトリモチを発射し、ゼブラスカル達の足元に命中。それにより、ゼブラスカル達はその場から一歩も動く事が出来なくなった。

 

「デハ、後はお任せシマス」

「任せて! いくぞぉ!」

 

龍騎はサムズアップをマジカロイドに向けた後、カードデッキから1枚のカードを取り出し、ドラグバイザーにベントインした。ゾルダもスライド部のスロットルレバーを引き、1枚のカードをトリガー部分に差し込んでベントインした。

 

『STRIKE VENT』

『SHOOT VENT』

 

龍騎の右腕にドラグクローが装着され、ドラグレッダーが上空から姿を現した。そしてゾルダのもとに現れたのは、自身の身長よりもはるかに長い大砲『ギガランチャー』。それを両手で持つと、ゼブラスカル・ブロンズに銃口を向けた。

 

「ハァァァァァァァ! ダァァァァァァ!」

「ふん!」

 

龍騎がゼブラスカル・アイアンに向かって右腕を突き出し、ドラグクローファイヤーを放ち、ゾルダはギガランチャーから威力の高いエネルギー弾を発射した。すると、ゼブラスカル達は体をバネのように伸ばして、腹で受け止めた。が、ギガランチャーの威力は想像以上に強かったのか、ゼブラスカル・ブロンズの体を貫通し、爆散した。一方、ゼブラスカル・アイアンの方は威力を殺せたのか、倒される事なくトリモチのついていた足が地面から離れて吹き飛び、地面を転がった。

 

「どうやら効いてないようデスね」

「し、しぶてぇな……。だったらこれで!」

 

龍騎も意地を見せるかのように新たにカードを取り出してベントインした。

 

『FINAL VENT』

 

「ハッ! ハァァァァァァァッ!」

「オォ。諦めが悪いようデスね」

「よくやるよ」

 

2人が龍騎の前向きな姿勢を見守っていると、龍騎はドラグレッダーと共に上空に飛び上がった。そして1回転した後、右足を突き出し、ドラグレッダーの放った炎に押し出されて、龍騎の必殺技『ドラゴンライダーキック』がゼブラスカル・アイアンに向かった。ゼブラスカル・アイアンは先ほどのドラグクローファイヤーの衝撃、更には未だに足にこびりついているトリモチによって自由が利かず、真正面から攻撃を受けて、爆散した。

 

「ッシャア!」

 

龍騎がガッツポーズをとっていると、マジカルフォンが鳴り響き、マジカルキャンディーの獲得数が明らかになった。

 

「まぁまぁの稼ぎデシタね。これで社会奉仕に貢献シタという事になったのデスね」

「社会奉仕ねぇ……。ま、そこそこ稼げたし、もう帰るか。小腹も空いたし、早いとこゴロちゃんの手料理が食べたいよ」

 

そう呟いて、ゾルダはミラーワールドから出ようとした。その後ろをマジカロイドがついていった。

その後ろ姿を龍騎は呆然と見つめていたが、不意に思い出したかのようにゾルダが龍騎の方を向いた。

 

「あ、そうだ。令子さんに伝えといて。食事のお誘いは何時でも受け付けるから、気が向いたら事務所に連絡してってな」

「言うかよ!」

「そう言わずに、頼むよ。同じライダーだろ」

「それとこれとは関係ないだろ⁉︎」

 

龍騎のツッコミが聞こえているのか定かではないが、ゾルダとマジカロイドはそれ以上何も言わずに去っていった。

 

「ったく。何なんだよあのライダー……」

 

龍騎はそうぼやきながら、2人に背を向ける形で歩き始めた。

 

「(……けどまぁ、マジカロイドもそうだけどそんなに悪い人じゃないみたいだし、まいっか)」

 

龍騎は自分にそう言い聞かせながら、令子が待っているであろう場所になるべく近づく為、別の場所から脱出する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショーウィンドウから出てきたゾルダとマジカロイド44は、その場で変身を解除した。北岡の隣には、ニット帽にアニメのキャラクターが刺繍されている長袖、ミニスカートといったラフな格好の少女が立っており、彼女こそが、マジカロイドの変身前の姿なのである。

少女……安藤(あんどう) 真琴(まこと)は側に置いてあったリュックサックを背負って、北岡と共に歩き出した。その道中、真琴は北岡に質問した。

 

「そういえば、さっき言ってた令子さんって……?」

「さっき知り合った女性だよ。新聞記者やってるらしいね。結構イケてる感じだし、是非ともおとしてみたいよ」

「……私というものがありながら」

「ん? 何か言った?」

「イエ、ナンデモゴザイマセン……」

 

目線を逸らして片言でそう呟く真琴を見て首を傾げる北岡だが、それ以上気にする事はなかった。やがて広い大通りに出て、吾郎と出くわした。どうやら回し者達は全員追っ払ったらしい。

吾郎は真琴がいる事に驚いていた。

 

「何でこんな所に? 事務所の番はどうした?」

「え、えぇ。ちょっと先生の帰りが遅かったから探しに出かけてて……」

「それは俺の役目だって言ったでしょ。バイトの子がこなす事じゃないっすよ」

「でも……」

「まぁまぁ。こうして無事揃ったんだし、早いとこ事務所に戻って仕事済ませたらご飯にしようよ」

 

北岡がそう言うと、言い争っていた2人も会話を中断し、北岡の言う通りにする事にした。

 

「……で、先生。今日は何にします? リクエストがあれば何でもOKです」

「そうだな〜。久々にビーフシチューが食べたいな。真琴もどうだい?」

「良いですよ。口に運べるものなら何でもアリですし」

「それじゃあ、スーパーに寄ってきましょうか。タイムセールの時間に間に合いそうですし、ちょうど近いですから」

 

3人は吾郎の運転する車で食材を買い揃える為、商店街へと足を運んだ。

肌寒くなってきた今の季節には、もってこいの料理に違いなかった。

 

 

 




ラ・ピュセルもそうだけど、マジカロイド44の死に方が過去アニメを思い返しても最高クラスにグロすぎると思っているのは私だけでしょうか……? しかもまだあれで序の口だと思うと……。
そりゃあ私の住んでる地域では地上波で放送されない訳ですな。

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