魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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大変長らくお待たせしました。

ゆゆゆの3期のOPのカッコよさに酔いしれている作者であります。
でもこっちも年内完結を目指して、少しピッチを上げていかないと……!

今回は、仮面ライダー好きなら絶対反応したであろう、あのシーンが題材となります。


135.彼らはなぜ戦い続けたのか

その豪雨は、時間にすればほんの3分ほどだったが、唐突な別れを前に、感覚が麻痺していたようで、誰も気に留めなかった。事切れていると思われる少年の傷口から、赤い河のように流れ出た血も、雨に叩かれた影響で、少しずつ薄らいでいた。

 

『おめでとうぽん!』

 

不意に静寂は破られた。

聞き覚えのあるファンファーレと共に、何度も神経を逆撫でした、某ハムスター系アニメの主人公とよく似た声色が、8人の耳に届く。ハッと顔を上げる……事もなく、誰も顔を、地面に転がっている、皆が所持している端末よりも二回り大きい、魔法の端末に向けてはいなかった。

大地の懐から転がり落ちた魔法の端末からは、白と黒の球体が鱗粉を撒き散らしながら、笑みを浮かべたような表情をしている。立体映像だ。

 

『えぇ〜、只今をもちまして、めでたく目標の8人に到達したので、選抜試験は終了ぽん!改めて、生き残った優秀な魔法少女、仮面ライダーを発表していくぽん!先ずは魔法少女から……スノーホワイト、リップル、ラ・ピュセル、トップスピード、ハードゴア・アリス。続いて仮面ライダーからは……龍騎、ナイト、ライア。以上8名が今回の正式な勝者だぽん!』

 

最初は32人いた、魔法少女と仮面ライダーの中で、壮絶な戦いの末、生き残った8人。その中に、彼の名はない。当然と言われればそれまでかもしれないが、ファヴの発表を聞いて、重い腰を上げる者が現れた。

 

『いや〜、オーディンが脱落した時点で試験は続行不可になったわけで、どの道その時点で終わりになったわけだけど、九尾も相打ちになったわけだから、結果オーライって事で。あれだけ激しい椅子取り合戦の中で生き残れたのは、本当にスゴい事なんだから、もっともぉっと自分を褒めても良いと思う……って、みんなどうしたぽん?もっと嬉しそうに……』

「……」

 

颯太は、立ち上がった。降りかかる小雨と、流れ出る涙を拭う事なく、黙って魔法の端末に近づく。

 

「……変……、身……!」

 

声と体を震わせながら、マジカルフォンをタップし、中学生男子は、魔法少女へ。背中に背負っていた剣を取り出し、魔法によって肥大化させると、

 

「……んなぁ……、こんなものォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

次の瞬間には、大剣を魔法の端末に向けて振り下ろした。土煙で一瞬遮られたが、目線の先には、傷一つついていない端末が。叩きつけられた影響で、地面にめり込んでいる。一瞬ブレた立体映像も、すぐに元に戻る。

 

『何してるぽん?』

「ッ!こんなものぉ!このぉ……!このォォォォォォォォォォォォォォォ!うァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

その姿は、騎士というよりも、鬼神を連想させる。般若のように顔を歪ませ、大剣を振るい続ける。が、端末に何一つ変化はない。

叩きつける轟音が街中に響く。先に根を上げたのは、ラ・ピュセルが持つ大剣だった。何度も地面にぶつかるうちに、ヒビが入り、遂には根元からポッキリと折れてしまう。最早使い物にならない。

だがラ・ピュセルは気に留める事なく、次の武器を手に取る。傍らで先ほどまで炎上していた乗用車だ。それを難なく持ち上げ、端末に叩きつける。一際大きな音と共に、車は原型を留められず、部品が辺りに散らばった。

 

『あ〜らら、まぁたそんな無駄な事を』

「黙れぇ!」

 

いつにも増して陽気なファヴの声を遮るように、次は公園に設置されたベンチを剥ぎ取って叩きつける。それがダメなら、花壇に使われていたレンガを引き抜き、端末にぶつける。すぐに壊れた。

 

『だ〜から無駄なんだってば。これはクラムベリーやオーディンが使っていた、管理者用の端末で、頑丈にできてるぽん。君らの使っていた簡易型と違って、「魔法の国」で日常的に使われているスーパーなやつだから、いくらラ・ピュセルが攻撃的な魔法を使えるからって、所詮は無駄な努力だぽん。勿論仮面ライダーの力でも壊せやしないぽん。つまりは』

「黙れぇ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

肩で息をしているラ・ピュセルは、魔法の端末の前に座り込み、両拳を交互に繰り出して、殴り続けた。何がなんでも、端末を破壊するという意志が見受けられる。次第に皮が剥がれて、血で赤く染まり始める。なのに端末は傷一つつかない。それでも振るう手を止めなかった。

 

『ファヴとしてはね〜。もっとこう、ラ・ピュセル達と仲良くしたいんだけど。とりあえず、気の済むまで殴ってもらっていいぽん。それが済んだら、改めて話を聞いてもらえるって事でオッケー?』

「うるさい……!僕は、許さないと……、決めた!お前なんか……!お前なんかぁ!」

『アーッハッハッハ♪無力無力、足りない足りない。ま、しばらくはそうしててくれていいぽん。とりあえず落ち着いたら、マスターが誰になるのかだけは、決めておきたいぽん。これからはシローと共に、パートナーとして末長くお付き合いするわけだから、よろしくぽん』

 

鼻歌を歌いながら、淡々と説明するファヴ。

ラ・ピュセルは、ただ悔しさを糧に、殴り続ける。端末を中心に、血溜まりが形成されていく。誰も、止める素振りを見せない。

そんな彼らの姿勢が滑稽に思えたのか、ファヴは更に追い討ちをかける。

 

『常識外れな力を得た自分なら、何でも無理を押し倒せると思っちゃうのが、人間を介して生まれた魔法少女や仮面ライダーの悪い癖ぽん。オルタナティブだって、ファムだって、そういう所をきちーんと心得てさえいれば、あんな犬死にせずに済んだのに』

「っ!お前、よくも……!」

 

一瞬、ラ・ピュセルの手が止まったが、再び殴り始める。

ファヴの声に反応して、次にアクションを起こしたのは、龍を従えし仮面ライダーに変身する青年だった。

 

「……今やっと。こんなバカな俺でも、分かった事がある」

『はい?』

「お前らは、魔法少女として、仮面ライダーとして、その座をかけて、生き残りをかけた、戦いを仕向けた。その中で、勝者と敗者を、明確に打ち付けてきた。……もし、この戦いで、勝者と敗者を決めるとしたら。……それは!本当の敗者はファヴ、お前なんだよ!そして本当の勝者は……、俺達32人の、魔法少女と仮面ライダー!それが、この戦いの、真実なんだよ!」

 

これまでに幾度となく戦いの中で見せてきた、確信めいたような鋭い視線。その敵意が今、魔法の端末に住まう使い魔に向けられている。一方で、声をかけられた主は、首を傾げるかのように激しく左右に揺れる。

 

『……どこかで頭のネジが外れたぽん?』

「うす汚い嘘を使って、言葉巧みに俺達を戦いに誘導し、お前らは高みの見物とばかりに、笑って一人ひとり死んでいく、その経過を観察していた……!そうして俺達を殺戮マシンに仕立てようとしてたかは知らないけど、俺達は屈しなかった!俺達は、俺達のエゴを貫いて、ここまでやってきたんだ!それは、いなくなった奴らも同じ!みんな、生きる理由を胸に抱えて、戦ってきたんだ!そして今!お前の思惑を外れて、お前に敵意を剥き出している!それが、お前らが敗北したという、確かな証拠なんだよぉ!」

 

矢継ぎ早に捲し立てるように、口調を荒げる正史。その隣では、膨れた腹に手を当てながら、もう片方の手で彼の手を握るつばめもまた、鋭い眼差しをファヴに向けていた。

 

『……つーん』

 

が、ファヴの反応はそっけないものだったと言えよう。

 

『今更死んだ奴らの事なんて、気に留めてどーするつもりぽん。これでもファヴは褒めてるんだぽん。今回の試験は、予想を遥かに裏切るものだったわけだし、「弱い」ってのも一つの能力や武器になるんだって、面白……ゲフンゲフン、思い知らされたんだぽん』

 

目線だけでなく、返す刀で響いた舌打ちも、ファヴには届かない。

 

『ま、そういう意味じゃ、スイムスイムも王蛇も、所詮はその程度の存在だったわけで、モブキャラがなるべくして死んだようなものだぽん。さっきも言ったけど、何でも無理を通せると思っちゃうのが君達の悪い癖ぽん。これからはそこを直していってもらいたいぽん。そうすりゃ、九尾みたい事にならずに済むぽん。九尾は仮面ライダーとして中々にセンスあったんだけど、あれほど生き残りたいって決めたくせに、結局相打ちなんてあーんな間抜けな死に方を』

「黙ってよ」

 

ラ・ピュセルではない。正史でも、つばめでも、華乃でも、勿論ファヴの声でもない。

その少女は、横たわっていた少年から手を離し、音も立てずに立ち上がると、小さく何かを呟くと同時に、光に包まれて学生服風の魔法少女に変身。ゆっくりと端末に向かって歩み始めた。

 

『スノーホワイト?どうしたぽん?ひょっとしてマスターに』

「だいちゃんを、九尾を、笑わないで」

 

ファヴの質問に答える事なく、正史とつばめの横を通過する。長期にわたる戦いの過労で足は震えているが、真っ直ぐに向かっている。

 

「……私は、マスターにならない」

『まぁまぁそう言わずに。ファヴとしても、マスターがいないと色々不都合が』

「ファヴの声が聞こえるから……、マスターになってくれないと困るって」

『いやまぁ、そりゃ困るっちゃ困るんだけど、それは君達の事を想って』

 

不意に、ファヴの声が途切れた。スノーホワイトが、マジカルフォンを操作して、杖を手に持ったからだ。否、杖ではない。

包丁と薙刀を足して2で割ったような武器。最初にたまが手に入れ、激レアアイテムの交換によってスイムスイムの手に渡り、魔法少女と仮面ライダーの命を刈り取ってきた武器。そして拾い上げたその武器でスイムスイムを一突きし、現在は自分の所有物となった武器。

立体映像がブレたのを、手塚は遠目で見逃さなかった。ファヴの羽ばたきが勢いを増し、鱗粉が激しく飛び散る。

 

『え、いや、あの、スノーホワイト?ちょ、ちょっと待ってほしいぽん。誤解してるぽん。ファヴは九尾をバカにしたりなんてしてないぽん。魔法少女も仮面ライダーも、みんなリスペクトしてるぽん。そりゃあファヴはみんなに意地悪してたように見えたかもしれないけど、それは本心じゃないぽん。全部、クラムベリーとオーディンに命令されたり、シローに無理矢理システムを弄られたりしたからだぽん。あいつらが手伝わないと酷い目に遭わせてやるって、脅して、何から何までファヴにやらせてたんだぽん。ファヴはね、本来は魔法少女や仮面ライダーが暴走した時の為の機能を使って、ルールに反した魔法少女や仮面ライダーを』

「そいつの言葉に、耳をかさないでぇ!」

 

華乃の必死の叫び声が、背中越しに伝わってくる。無論、今のスノーホワイトはファヴの言葉に耳を傾けるほど、愚か者ではない。

 

「大丈夫。全部聞こえてるから」

『ぽん?』

「この管理者用端末が壊されると、困るって、聞こえたから」

『そ、それはそうだけど、さっきラ・ピュセルにも言った通り、この端末はスーパーなやつだから、そんじょそこらの武器じゃ壊れないって』

「……そう。だから、これで壊せばいい。同じ魔法の国で作られた、この武器で」

 

そう呟いて、ルーラの鋭い刃先をファヴに向ける。明らかに先ほどまでの余裕は消し飛んでいる。

 

『そ、そんな武器で壊せるわけ』

「ファヴ……。あなたの『困ってる声』、全部私には聞こえてるよ。魔法の国の日常品、これを使われたらマズい。どうにかして、スノーホワイトやみんなを言いくるめないと、って……」

『あ、あぁいや、それ、は』

 

立体映像のブレが、より激しくなる。最早誰の目から見ても明白だ。その間にも、スノーホワイトと端末の距離は縮まっていく。

 

『ま、待って、待ってほしいぽん!き、ききき君に何か願い事は、ないかぽん?あ、あのね、マスターになって魔法の国に行ったら、何だって叶うぽん!』

「「スノーホワイト!」」

「自分の築いた運命を信じろ、スノーホワイト!」

「そいつを、倒せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

背中越しに、仲間達からの後押しを受けて、スノーホワイトは遂に、端末の目の前に立った。

 

『いやだから、待ってほしいぽん!い、偉大なる人材発掘部の使い魔を代表するファヴをこの世から消したら、後でぜぇったい後悔するぽん!す、スノーホワイト……!』

 

一度立ち止まり、視線を下ろし、ルーラに、そして後方に目をやり、倒れ込む最愛の人を見つめた後、ファヴに視線を戻し、そして口端をつりあげる。

 

「……イッていいよ、だって」

『え、いやそれどっちの意味ぽん?逝っちゃうって意味じゃないよね?魔法の国に行きたいって事で間違いないよね?あぁいや、その……!』

 

初めて見る、スノーホワイトの狂気じみた表情に、ファヴも全身を使って危機感を露わにしている。

 

『と、とにかく!お、お願いだから、ファヴを斬らないでほしいぽん!斬るならラ・ピュセルを……!ファヴはとりわけ優秀な魔法少女スノーホワイトに、マスターになってほしいぽん!あ、新しい相棒が欲しいなら、すぐに用意するぽん!魔法の国に行けば、九尾の代わりになる仮面ライダーなんて、山ほど』

「……そんなの、必要ない」

 

その提案が引き金になったのかは定かではないが、ゆっくりとルーラを振りあげる。ラ・ピュセルは巻き込まれないように、一歩身を退く。

 

『あーダメダメ!待って!待ってぽん!お、落ち着いて!やめて!やめてぽん!スノーホワイト!ダメだぽん!ホントにダメだって!ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダ』

「魔法少女をぉ……、仮面ライダーをぉ……!……九尾をぉ!」

『す、スノーホワイトぉ!』

 

しっかりと狙いを定めて、そして……。

 

「バカに……!するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!」

『イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ』

 

マスコットキャラクターらしからぬ悲鳴は途中で途切れた。魔法の端末は真っ二つに裂かれ、憎々しい声を発し続けた球体は、内側から弾けるように霧散し、緑色の鱗粉が辺りに飛び散り、そして消えた。

 

「……サヨナラ、ファヴ。魔法少女を、仮面ライダーを不幸にする、私達の敵」

 

そう呟いたのを最後に、今度こそ、静寂が訪れた。

力が抜けたように膝をついて座り込むスノーホワイト。今度こそ、本当に終わった。全てを終わらせる事が、できたのかもしれない。

 

「……ったよ。やったよ、だいちゃん。私……、ちゃんと、自分の意思で、悪いやつを、やっつけたよ。頑張ったよ……」

 

でも……。

体の向きを変えて、皆がいる方に向かって、地面を這うように、歩みを進める。その目線は、息を荒げた者達ではなく、息をしていない少年に向けられている。

 

「……何で、かな。全然、ちっとも、喜べない……!私の事、もっと、見てほしい人が、いない世界なんて……!そんなの……!」

 

再び目尻に、温かい液体が溜まり始める。堪えきれない。

 

「だいちゃん……!だい、ちゃん……!」

 

パートナーの名前を叫び続けるスノーホワイト。他の面々も、どう声をかけてあげれば良いのか、分からない。

ようやく、彼女の手が大地に届く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ、終わりじゃないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その手前の事だった。どこからともなく聞こえてきた声。スノーホワイトでも、ラ・ピュセル達でもない。声の主を探そうと顔を動かす面々。

スノーホワイトは目線を上げ、蓮二の背中越しに、誰かが歩み寄ってくるのが見えた。彼女の視線に気づいた正史達も、そちらに顔を向けて、目を見開いた。

そこにいたのは、魔法少女だった。そう思えた根拠は、彼女の手に握られているものだった。先ほど破壊したものと柄違いの、魔法の国特製の端末。オーディンが所持していたものと同じだ。シローもその端末にいる筈だ。

スノーホワイトがキッと表情を強張らせて、ルーラを握る手に力を込めて、立ちあがろうとするが、謎多き魔法少女は片手でそれを制した。

 

「まだ私達には、やるべき事がある。そうよね、スノーホワイト。……あなたの、大切な人を呼び戻すという、大事な使命が」

 

 

 

 

 

 




……はい、というわけで『イッテイーヨ!』炸裂回改め、大逆襲回となりました。やや強引な気もしますが、個人的にこれはやっておきたかったので満足です。本当は先週、YouTubeでその回を配信してた時に投稿したかったのですが、リアルが忙しくなってしまって……。

次回もお楽しみに。

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