魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

『アサルトリリィ ラストバレット』がかなり面白くて、絶賛どハマり中です。私は安藤鶴紗さん推しですが、皆さんはどなたが推しですか?

さて、関係ない話はこれくらいにして、いよいよ最後の戦いが……!


131.Destinyを覆せ 九尾vsオーディン

飛び交う悲鳴、響き渡る怒号、砕けるガラス、轟く爆音。

それらを、現場から少し離れた高台から見下ろしているオーディンの耳には、まるで1つの曲のようにも聴こえていた。

 

「……俺も、随分とクラムベリーに毒されたのかな。だが、もうどうでも良い事だ。今更仮面ライダーや魔法少女が介入した所で、運命は変えられない。人類は、この街を起点とし、滅びの道を進む」

『随分と派手な行動に出たな』

 

懐にしまってあったマジカルフォンから出てきたシローは、オーディンが見下ろしている光景に目をやる。

 

『ミラーモンスターのサンプルを採取し、自分の駒として開発していたか。おまけにお前の魔力に反応して数を増殖させる。奴らからしてみれば、これほど厄介な事はないだろう』

「余計な口出しは無用だ。これでも、お前が望んでいた、人間の価値を確かめる事や、ファヴの言っていた刺激のある展開を考慮して進めていた事なのだよ」

『……成程。なら我々は、この件を魔法の国には「偶発的な事故」として報告しておけば良い、という事だな』

「……お前は話が早い。ファヴのように嫌味を言うわけでもないからな」

『褒め言葉として受け取っておこう。……だが、全てが思うようにいかないのが、人間の醍醐味だ。今しばらく経過を観察させてもらうぞ。まもなく私の知りたい答えが見えてくるはずだ。……そろそろ私は離れるよ。あの男との決着に、私がいては不都合だ。幸運を祈るよ』

 

そう告げると、マジカルフォンから姿を消すシロー。再び爆音等が耳にこびりつく。

が、ものの数秒もしないうちに、背後から足音が。誰かがこちらに向かって来ている。オーディンには、それが誰のものなのか予測できていた。

 

「やはり来たか」

 

背中越しの相手は、まだ答えない。

 

「4ヶ月程前だったか。偶然とはいえ、お前はラ・ピュセルと共に私と戦った。力の差は歴然だった。お前をあの場で殺さなかったのは、お前を真の仮面ライダーとして育てる為だ。多少計算は狂ったが、結果として、お前はここまで生き延びた。北欧の神の名を冠する私に臆する事なく、今こうして、私の背後に立っている。……おめでとう。君はまさに、私やクラムベリーが理想としている仮面ライダーに近づきつつある。人間からの逸脱だ。……さぁ聞かせてもらおう。人ならざる者に近づきつつあるお前は、今は何を望む」

「お前を、殺しに来た」

 

間髪入れず、狐を模した仮面ライダー『九尾』が、仮面越しに鋭い視線をぶつける。オーディンは振り返り、落ち着いた様子で腕を組む。

 

「私を殺す、か。夢を見過ぎているのかもしれないが、サバイブの力を手に入れた如きで、私を倒せると?それが如何に高飛車な事であるのかは、以前にも実演してみせたはずだが?」

「……だとしても、俺は必ず成し遂げる。お前を倒し、可能な限り、人間を救う。あいつらの所には行かせない。ここで全てを、終わらせる!」

「……良いだろう。お前を殺すつもりはなかったが、お前がそれを望むのであれば、この試験の管理者として、手を差し伸べるのも一興だ。代わりの候補者を、次の試験で見つけるとしよう」

 

余裕綽々としたオーディンの態度に、思わず拳を握りしめる九尾だが、すぐに気を落ち着かせる。せっかく高めた集中力を、ここで途切らせるわけには行かない。

 

「ミラーワールドで決着をつけよう」

 

ついてくるが良い。

オーディンが足を動かし、向かった先は、電話ボックスのガラス戸。そこへ吸い込まれていくのを確認した九尾も、それに続く。

あらゆるものが反転した世界。先ほどまで聞こえていた爆音も、この世界には届かない。否、数秒後には、それに劣らぬ程の轟音が響き渡る事だろう。

九尾は、やや距離を離した状態でオーディンと対峙する。そしてカードデッキから1枚のカードを取り出し、突き出したフォクスバイザーを、フォクスバイザーツバイに変化させ、そのままベントインする。

 

『SURVIVE』

 

光が、九尾の背後から彼を包み込む。対するオーディンも、

 

『SWORD VENT』

 

ゴルトセイバーを構え、静かに剣先を九尾サバイブに向ける。無言のプレッシャーが、九尾サバイブに突き刺さる。

 

「……っ!」

 

それらを振り払うように、先んじて足を動かしたのは、九尾サバイブ。

『人間』を代表し、神に挑む『榊原大地』。

『人間ならざる者』を代表し、戯れに付き合う『オーディン』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、戦え。

 

己の持つ力を遺憾なく発揮しろ。

 

戦わなければ、生き残れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

獲物を求めて街を徘徊しているレイドラグーンに、スノーホワイトは先ほどマジカルフォンをタップして召喚したフォクセイバーは果敢に斬りかかっていた。その姿勢は、この試験が始まったばかりの、先の見えない恐怖に怯えてばかりいた頃の魔法少女の面影は、もう払拭されていたと言っても過言ではない。

 

「これ以上は……、やらせない!」

 

依然として敵の数は減らない。だが、やるべき事は変わらない。魔法を行使し、困っている人の声を辿って、人々に降りかかる脅威を退ける。

 

「スノーホワイト、後ろ!」

 

ハッとなって振り返るスノーホワイトだが、すでに背後から向かってきていたハイドラグーンは、斬り伏せられていた。代わりにリップルが背中合わせで降り立った。

 

「リップルさん!」

「まだ背後への配慮が疎かになってる。敵は広範囲にいる。前方だけに意識を向けないで」

「!はい!」

 

リップルに注意され、視線を周囲に向けるスノーホワイト。レイドラグーンの大群が、いつのまにか2人を囲んでいる。

 

「この数、切り抜けるには私1人では無理がある」

「……大丈夫です!私も、魔法少女だから!どんな困難が目の前にあっても、仲間と一緒に切り抜ける!私が理想としていた魔法少女だって、そうやって頑張ってきた!だから、負けない!」

「!言うようになったわね。なら、背中は任せた!」

「はい!」

 

この数ヶ月で頼もしい背中を見せるようになった後輩の姿を見て、自然と安心するリップル。現状は不利だが、耐え抜くしかない。彼が、仮面ライダー九尾が、元凶を止めるまでは。

 

「(だいちゃん、私も頑張るから、だいちゃんも……!負けないで!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局の所、だ。

 

勝負にならない事など、初めから心の片隅で、理解していたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⁉︎ッア⁉︎グァガァ……!」

 

斬りかかったと同時に背後を取られ、ゴルトセイバーの一閃が九尾サバイブの背中を斬り刻む。装甲を貫くような激痛が襲いかかる。

 

『SPIN VENT』

 

どうにか踏みとどまった九尾サバイブは、ガゼルスタッブを召喚し、オーディンに突き刺そうとするが、受け止められると、そのまま受け流すように引き寄せて、無防備な腹に一太刀を浴びせた。

 

「……っ!」

 

肉が裂けるような音が耳に響き、右の脇腹が熱くなる。肩膝をつき、地面に目を向けると、赤い斑点が落ちていた。自分の体から流れ出たものだと認識するよりも早く、ゴルトセイバーが襲いかかる。

 

『GUARD VENT』

 

間一髪の所で、シェルディフェンスが召喚され、一太刀を受け止める。少し下がって距離を置き、新たなカードを発動する。

 

『CLEAR VENT』

『STRIKE VENT』

 

メタルホーンを装備すると同時に、九尾サバイブは透明化。相手の見えない死角から、不意をついてダメージを与えにいくようだ。

 

「そんなものは無意味だ」

 

ただ一言、そう呟いたオーディンは両腕を広げ、周囲に黄金の羽根を撒き散らす。直後、爆発と共に何もない空間から九尾サバイブが転がり出てきた。身体中から煙が噴き出て、メタルホーンもボロボロに砕け散る。

 

『STRIKE VENT』

 

だが奇襲に失敗した九尾サバイブも、すぐに気持ちを切り替え、アビスクローを装着し、アビスプラッシュをオーディンに浴びせる。が、オーディンは難なく回避。しかしそれも織り込み済みだったのだろう。

 

『BLAST VENT』

 

空いた片手で地面に刺していたフォクスバイザーツバイにカードをベントインし、現れたブランウィングが翼をはためかせ、突風を巻き起こす。回避した先に真正面から突風を受けるオーディン。吹き飛ばされてはいないが、踏ん張っているのが確認できる。

 

『SHOOT VENT』

 

好機と見た九尾サバイブは、ギガランチャーを構えて、狙いを定める。照準を合わせると、迷う事なく引き金を引く。

 

『GUARD VENT』

 

対するオーディンは新たなカードを使って、ゴルトシールドを手に持ち、ギガランチャーの攻撃を受け止めた。突風が消えた所で、再びオーディンは接近し、ゴルトセイバーの太刀を連続で打ち込む。

 

『SWORD VENT』

 

九尾サバイブはベノサーベルを構えて応戦。が、二刀流のオーディンを前に、全てを捌き切れない。ベノサーベルが弾き飛ばされ、無防備な九尾サバイブに、オーディンは容赦なく斬りつける。

 

「ッグ……!」

 

装甲の傷口から、血が飛散する。が、そんな事を気にする間も無く、叩きつけられた九尾サバイブの胸を踏みつけるオーディン。空気が吐き出される。その喉元に向けて、ゴルトセイバーの刃先が光る。左腕で足を退かそうとするが、間に合わない。咄嗟に残った右腕でカードデッキに手を触れ、新たなカードをベントインする。

 

『TRANS VENT』

 

直後、九尾サバイブの姿は小さな鳩に変貌し、ゴルトセイバーは標的を外して地面にささる。鳩はそのままオーディンから距離をとった所で地面に降り、元の姿に戻る。危機一髪だった九尾サバイブはすぐに息を整え、次の体勢へ。

 

『ACCEL VENT』

 

「ハァッ!」

 

地面を蹴ると同時に、目にも止まらぬ速さでオーディンに接近戦を挑む。が、オーディンからしてみれば、相手は歩いているようにしか見えていないのか、子供相撲を取るかのように簡単にいなしている。

 

『HOLE VENT』

 

しかしそうなる事も読んでいたのか、新たなカードを使い、オーディンの背後に穴が形成され、そちらにオーディンが気を取られた隙に、タックルでその穴に突き落とした。

 

『BLAZE VENT』

 

そして右手に巨大な火球『フォクス・ウィルオ・ザ・ウィスプ』を宿し、逃げ場のなくなった穴の中に投げつけ

 

「だから言っただろう。そのような小細工は無意味だ」

 

る直前、背後から声が聞こえ、ハッとなった時には、既に移動していたオーディンの強烈な蹴りが炸裂し、九尾サバイブは吹き飛ばされる。火球が手元を離れて地面に触れて爆散。九尾サバイブの姿が一瞬見えなくなる。

 

『STRIKE VENT』

『STRENGTH VENT』

 

やがて炎の中から出てきた九尾サバイブの両手にデストクローが装着される。更にそれと同時に聞こえてきたストレングスベントの能力で、更に殺傷力を上げてきたようだ。こうなると、オーディンとて無防備に攻撃を受ければ無傷では済まない。

 

「それを受けるわけにはいかないか」

 

『ADVENT』

 

直後、上空からゴルトフェニックスが襲来し、九尾サバイブの両肩を掴むと、そのまま空に持ち上げる。両腕を必死に振り回す九尾サバイブだったが、届く事なく、急降下して地面に叩きつけられる。肺の中の空気が口から溢れ出た。咳き込む九尾サバイブに向かって、ゴルトフェニックスが襲いかかる。危険を察した九尾サバイブが、デストクローをクロスして防御の体勢に入る。が、それを見越したのか、オーディンが新たなカードをベントインする。

 

『STEAL VENT』

 

「⁉︎」

 

両腕に装着されたデストクローが、オーディンの両腕に移行。ガードする術を失った九尾サバイブに、ゴルトフェニックスの突進攻撃が直撃。体をくの字に曲げ、背後の木に背中にぶつけた。たまらず、口から赤い液体が飛散する。お腹から上の部分で何かが潰れたような感覚に陥る。体がフラフラする。どこかの器官が損傷したようだ。早く病院で治療しなければ、命に関わるかもしれない。

 

「……けど!」

 

ここで撤退するわけにはいかない。逃げた所で、外の世界は大混乱に陥っている。病院にたどり着ける保証などない。

ならば、ここで取るべき選択は、ただ一つ。

 

「……戦う、しかねぇだろ……!」

「まだ抗うか。そろそろ力の差というものが理解できたかと思ったが。まだ足りぬか」

「知るかよ、んなもん……!」

 

『HOLD VENT』

 

そう叫んだ九尾サバイブはバイオワインダーを装着し、オーディンを拘束する。

 

『LIQUID VENT』

 

続けてカードをベントインした九尾サバイブは、自らを液状化し、オーディンに詰め寄る。このカードの能力の元となった魔法少女の力は、よく分かっていた。物理攻撃をすり抜け、相手の懐に入れば、向こうが素早く動いてもすぐに追いつく。ここで攻めの姿勢を崩すわけにはいかなかった。

 

『SONG VENT』

 

……が、九尾サバイブは知らなかった。無敵と思われていたスイムスイムの魔法にも弱点がある事を。彼は仲間達がスイムスイムと戦った現場を見ていた訳ではない。そしてその弱点を突く力が、辛うじて手を動かし、元パートナーだった魔法少女のアバター姿が描かれたカードを引き抜いているオーディンにはある事も。

 

「……⁉︎ウグァ……⁉︎」

 

胸の辺りで何かが爆ぜたと思った時には、爆音がかなり遅れて、耳よりも骨を伝って全身に叩き込まれる。理解が追いついた頃には、彼の体は打ち上げられたボールのように、宙を舞っていた。数秒間の浮遊の後、体は背中から地面に叩きつけられた。

耳鳴りと同時に、肋骨辺りが砕けるような音が響き、内臓から迫り上がるように、口元から先ほど以上の赤黒い液体が吐き出される。呼吸が詰まり、息を吸い込もうとしても、何かがつっかえたように上手く体が動かない。反射的に四つん這いになって喉元を叩く。とにかく今は気道を確保するのが先決だ。喉を詰まらせている粘ついた鮮血を吐き出し、何とか息を吸って吐く。

 

「スイムスイムの魔法を使って攻撃をすり抜け、こちらの動きに干渉するつもりだったようだが、無意味だったな。弱点である音の力を前にしては、お前とてどうしようもない」

「!そう、か……!パートナー、カード……!」

「相手が悪かった、というべきか。使い勝手の悪いあいつの魔法も、こういう時には役立つ」

 

そう呟いたオーディンが、右手を突き出し、音波による破壊攻撃を繰り出そうとする。

 

「!!」

 

『WALL VENT』

 

咄嗟に右腕を地面に叩きつけ、そこから2人の間に巨大な壁を形成。音波が大きな音を立てて壁を削り取っていく。その間に、呼吸を整えて反撃の準備に取り掛かる。

 

「!」

 

不意に音が鳴り止んだと思った時には、半壊した壁を飛び越えて、オーディンがゴルトセイバーを振り下ろしているのが見えた。慌てて回避する九尾サバイブは、ゴルトセイバーが地面に突き刺さった衝撃波で地面を転がった。そこから体の激痛に耐えながら起き上がり、上空を旋回していたゴルトフェニックスが向かってくるのを見て、新たなカードをベントインする。

 

『FREEZE VENT』

 

刹那、ゴルトフェニックスが凍結。これで契約モンスターの方を気にする事なく、オーディンと戦える。そんなオーディンはというと……。

 

『FINAL VENT』

 

ゴルトバイザーを手元に呼び出し、オーディンを象徴する紋章が刻まれたカードをベントインする。あれを使わせるわけにはいかない。九尾サバイブの判断は早かった。

 

『CONFINE VENT』

 

フリーズベントの効力が切れて、オーディンの背後に回ろうとしたゴルトフェニックスがガラスが砕けるような音と共に消滅。どうにかして必殺技の発動を回避できたようだ。

……が、局面が変わる事はなかった。

 

『OBEY VENT』

 

錫杖を構えて相手の動きを封じようとしても……。

 

『FUTURE VENT』

 

未来の道具を召喚し、殺傷性の高い武器で攻撃を仕掛けても……。

 

『TRANS VENT』

 

飛び上がって巨大な岩となって覆い被さろうとしても……。

 

「ふんっ!」

 

全ての攻撃がかわされ、強烈な回し蹴りで、巨大な岩を弾き飛ばす。

 

「グハッ……」

 

地面を転がり、元の姿に戻った九尾サバイブは、立ち上がった瞬間、右足に激痛を感じた。先程の蹴りがアキレス腱に響いたようだ。これでは大きく動き回る事さえ難しい。

 

「サバイブの力をここまで引き出せたのは賞賛に値するが、それでもやっと、私の動きについてこれる程度だ。これが、人間の限界というものだと、いい加減知るが良い!」

 

そう言って瞬時に九尾サバイブの前に立ち、ゴルトセイバーが振り下ろされる。鮮血が地面に、そしてオーディンに降り注ぐ。悲鳴をあげる事さえままならない。

 

「最期に一つ教えてやろう。サバイブとは、私のDNAデータを基に、シローの手によってカードにその力を宿し、書き換えたものだ。故にお前達が持つサバイブのカードは、私の一部と言っても、過言ではない」

 

斬り刻まれながらも懸命にフォクスバイザーツバイで弾き返していた九尾サバイブも、それを聞いた途端、ハッとなる。

 

「!じゃあ、お前の、その姿は……!」

「察しが良いな。そうとも。私の今のこの姿こそが、サバイブそのものなのだよ。お前達は進化した事で誰よりも最強の力を手に入れたと自惚れていたようだが、所詮は私と同じ領域に触れただけの、ただの模造品なのだよ」

 

そう言ってオーディンが、手元に呼び出したゴルトバイザーの、羽の部分が観音開きのように展開され、その中にあったカードを見て、九尾サバイブは目を見開く。間違いなく、『SURVIVE〜無限〜』と表記されており、思わず立ち止まってしまう。

 

「つまり!私を倒す事など、最初から不可能に近かった。故に参加者の1人であった私を倒そうと試みた所で、所詮は御伽噺。……九尾よ、お前はこの戦いの果てに散った骸の力を束ねて私に挑んだようだが、全ては無駄に終わったようだな。最初からお前達の戦いなど、無駄だったのだよ」

「無駄、だと……!」

 

頭に血が昇るような感覚に陥る。

それじゃあ。

自分達を夢の中から密かに応援してくれた魔法少女の死も。

あの日、自分を庇って攻撃を受け、満足げに生き絶えた恩師の犠牲も。

激化していく争いを止めようと努力し続けてきた魔法少女や仮面ライダーの死も。

仲間を庇い、母子の命をつなげてくれた魔法少女の犠牲も。

 

「全部、無駄、だった、だとぉ……!」

 

ふざけるな。そんな事、認めてたまるか。

あらん限りの咆哮を喉元から振り絞り、フォクスバイザーツバイを振り回す。対するオーディンは、背後を取るように移動し、ゴルトセイバーによる連撃を叩き込む。

満身創痍な九尾サバイブと、無傷で武器を振り回すオーディン。力の差は側から見ても歴然だった。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァ……!」

 

斬り刻まれる度に流血し、意識が遠のき始める。左腕の感覚がなくなり、脇腹の傷が開き始める。

 

「ふんっ!」

 

両手に持ったゴルトセイバーが突き出され、不快な音と共に、赤く染まった九尾サバイブの上半身を貫通する。吹き飛ばされ、血が噴き出る。肺に傷がついたのか、呼吸する事さえ苦しくなっている。

起き上がる事さえ困難な状態を見て、オーディンは足を止め、1枚のカードを取り出す。

 

『STRANGE VENT』

 

そうして一度装填したカードを引き抜き、書き換えられたカードを新たにベントインする。

 

『RETURN VENT』

 

リターンベント。一度使用したカードを、インターバルタイムを無視して再度使用する事の出来る効力を持つカード。そうして手に入れたカードを、ゆっくりと装填する。

 

「……!」

 

首だけを動かし、そのカードが何なのかを確認する。逆光でよく見えなかったが、発動する直前で、それが何なのかを目視した。

 

『FINAL VENT』

 

それは、先程コンファインベントで無力化したカード。防御札を使い切ってしまった九尾サバイブに、ましてや体がまともに動かない状態では、彼の必殺技を止める術はない。

 

「せめてもの情けだ。ここまで戦い抜いた戦士に敬意を評し、苦しむ事なく果てるが良い」

 

背後にゴルトフェニックスを出現させ、腕を組みながら、上空に浮かび上がる。

 

「……っ!」

 

もはや絶望的な状況。詰んだと言っても過言ではない。

……が、九尾サバイブは立ち上がる。途切れかけている気力を振り絞り、尚も運命に抗う。彼は、誓ったのだ。失われた命の分まで、その思いを背負い、戦う、と。

 

「ッ!ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

灼熱の閃光に狙いを定め、声を張り上げて大地を蹴り、そして……。

 

 

 




かなり一方的な展開となってしまいましたが、九尾は運命を覆せるのか⁉︎
次回に乞うご期待!

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