魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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大変長らくお待たせしました。

『鬼滅の刃』の映画が公開されてから早1ヶ月半が経ち、今尚衰えを見せないのは、本当に凄いですよね。興行収入も『君の名は。』を越えたらしく、『千と千尋の神隠し』越えも夢ではないとの事。どこまで伸びるのか期待したい所ですね。

話は変わりますが、いよいよ最終決戦の幕開けとなります!




129.最後の戦いへ

冬休みに入り、N市には子供を含め、商店街を中心に多くの人で賑わう光景が、あちらこちらで見られるようになった。売り子の呼びかけや、家族連れ、カップル、友人同士が和気藹々と話しながら街を歩く姿は、平和そのものだ。

時計の長針と短針が共に上を向いた頃、街に12時を告げる音楽が響き渡る。

その異変は、何の前触れもなく訪れた。音楽に混じって、耳鳴りに近い音が、1人だけでなく、大勢の耳に聞こえてきた。周りの面々が訝しむ中、街中のガラス窓から湧くように現れた存在が、綺麗な青空を一瞬にして悍ましいものへと塗り潰した。

怪物だ。誰かがそう叫んだと同時に、その怪物は地上にいる人々へと向かってきた。怪物は押しのけるように逃げ惑っていた人々に襲いかかってその鋭い鉤爪で引っ掻いたり、噛み付いたり、殴り倒している。或いは車のフロントガラスにへばりつき、パニックになった運転手がハンドル操作を誤り、玉突き事故の連鎖を引き起こしている。

その大混乱は、以前繁華街で起きたテロに匹敵、或いはそれ以上の惨状となって、人々に『絶望』を撒き散らしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターの大量発生。

その一報は、N神社で掃除を手伝っていた榊原大地、自室に籠っていた姫河小雪、サッカーの小道具の手入れをしていた岸辺颯太と、彼の手伝いをしに家に来ていた鳩田亜子、自宅で占いをしていた手塚海森、出産に備えて必要なベビー用品を買い出しに出かけていた城戸正史と室田つばめ、そしてバイト先の喫茶店に向かっていた秋山蓮二と細波華乃。彼ら9人が所有するマジカルフォンを通じて知らされた。

 

「「「「「「「「「変身!」」」」」」」」」

 

9人は魔法少女、仮面ライダーに変身し、現場から少し離れた位置で合流する事に。

 

「ど、どうなってんだよこれ……⁉︎」

「白昼堂々、か。随分と派手な動きを見せてきたな」

 

トップスピードが呻き、ナイトが冷静に思考を処理するが、彼自身も、何故これほどまでの大量発生となったのか、理解できていない様子だ。

 

「……奴だ」

 

ただ1人、九尾は確信を持って呟く。

 

「オーディンが仕掛けてきたんだ。何か企んでいるとは思ったが、ここまで考えていやがったとはな……!」

「オーディンが……!」

「とにかく、先ずは街に放たれたモンスターを倒すぞ」

「あぁ!これ以上被害を拡大させる訳にはいかない!」

 

ライアとラ・ピュセルが同時に頷き、一同も街に足を向ける。

否、この男だけは別方向を向いていた。

 

「?九尾?」

「どう、しました」

 

スノーホワイトとアリスが、九尾に問いかける。問われた相手は、瞑想しているようにも見受けられる。やがて口を開いた彼の声色は、固く意を決したものであった。

 

「……俺は、オーディンの所に向かう。あいつは、俺が倒す」

「なっ……⁉︎」

「今回の一件の発端は、奴が元凶だ。あいつを倒さない限り、この戦いは終わらない。だから、俺の手で、終わらせるんだ……!これ以上、あいつの身勝手で誰かの命が奪われるのは、もう……!」

「でも……!」

「合理的だな。奴がモンスターを大量にばら撒いているのなら、どの道大元を倒さない限り、戦況は覆らない。……けど、本当にあなただけで、いいの?」

 

リップルは九尾の意見に賛同しつつ、彼1人でオーディンと戦う事に不安を感じているようだ。オーディンの強さは、この場にいる面々は十分理解しているつもりだ。1人で立ち向かって勝算はあるのだろうか。そんな目線での問いかけに、九尾は仮面の下で静かに笑った。

 

「正直、どこまでやれるか分からないけどな。全く勝ち目がないわけじゃねぇけど、勝てる見込みもない。……けど、俺は戦う。生きる為に、戦わなくちゃならない。相手がどれだけ手強い奴だとしても、戦わなければ、生き残れないから。……なんて、それらしい理由なんて一つもないけどさ。今からじゃ遅すぎるかもしれないけど、俺に、託してくれないか?このゲームを終わらせる為に、みんなの命運を」

 

九尾の懇願に対し戸惑う一同だったが、最初に口を開いたのは、彼の教育係だったライアだった。

 

「……分かった。俺の占いで判断しようと思ったが、ここは一つ、お前に賭けてみよう。お前なら、運命を変えられる筈だ」

「オレも、お前を信じるぜ!オレも、こんな理不尽な戦いなんてさっさと終わらせたいんだ。もうすぐ産まれてくる子を、みんなに会わせたいしさ!それが今の、オレの夢だしな!」

「……あぁ!俺も、絶対にトップスピードを守る!明日に、命を繋げる為に!」

 

トップスピードも照れ笑いしながら、今は膨れていない腹をさする。龍騎も確固たる意志を告げた。

 

「……本当なら、九尾に、無茶は、してほしく、ないです。……でも、これは、九尾の決めた事なら、私は、あなたを、信じます」

「僕としても、できる事なら九尾には、自分の手を汚してほしくはない。命の奪い合いなんて残酷な事は、してほしくない。けど、僕自身もクラムベリーに手をかけている。みんなを守る為に……。だから、九尾の決めた事には今更反対できない。でも、だからこそ、勝ってほしい。共に戦ってきた盟友として、そして何より親友の1人として、自分の正義を、貫いてほしいんだ」

 

ハードゴア・アリスとラ・ピュセルからのエールを受け、静かに頷く九尾。次に口を開いたナイトは、こんな事を暴露した。

 

「……今だから、正直に言わせてもらう。俺には今まで、仮面ライダーに選ばれるまで、『友』と呼べる奴は、1人もいなかった。特別欲しいとも、思わなかったしな。……ただ、お前らだったら、呼んでも良いかもしれない」

「ナイトさん……!」

「!あぁ、そうだな。友達だよ。俺達は」

 

この発言には、九尾のみならず他の面々も驚きを隠せない。その一方で龍騎は、ようやく聞けたナイトの素直な発言に、笑みをこぼしている。

 

「俺にも、生きる理由がある。戦う理由がある。どんなに可能性が少なくても、俺は、どうしても見つけたい『家族』がいる。そして今は、やっと手に入れた『仲間』を、失いたくない。……必ず勝てよ、九尾」

「……私とあなたには、それほど接点がある訳じゃない。けど、あなたがこれまで多くの人の助けになろうとしてきた事は、よく分かってる。その正義の心を、忘れないでほしい」

 

リップルは恥ずかしそうにそう呟く。そして最後に口を開いたのは、九尾のパートナー。

 

「九尾……ううん、だいちゃん。本当に、行くんだよね?」

「あぁ。スノーホワイトの方も、大変かもしれないけど、頑張れよ。お前はもう、弱くない。立派な魔法少女だ。自信を持てよ」

「……うん!私も、九尾を信じる!だから、頑張って……!」

 

スノーホワイトは九尾の手を掴み、願掛けとばかりに、祈るように額を近づける。そして彼女の手が離れた所で、九尾は皆に背を向けるように、その場から離れようとする。

いよいよ、最後の戦いが、幕を開ける。

 

「……あ、ちょっと待って!最後に一つだけ!」

 

飛びあがろうとする直前、龍騎が待ったをかけた。何事かと首だけを向ける九尾に向かって、龍騎は伝え忘れた思いを、ただ一言だけ告げる。

 

「……死ぬなよ、大地君」

 

死ぬなよ。その一言を聞いて、背を向けた九尾からの返事もただ一つ。

 

「……貴方もな、城戸さん」

 

足に力を込めて飛び上がり、電柱の上に着地してから、更に遠くへと跳ねるように去っていく後ろ姿。中学生とは思えないような、堂々とした姿勢だ。

それを見送った一同も、自分達の戦いを始めるべく、悲鳴が飛び交う戦場へ向かって飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[挿入歌:Revolution]

 

つい数分前まで栄えていた繁華街は、突如として地獄絵図と化していた。辺りには逃げ遅れた人々が、歩道の至る所に倒れており、ぶつかった衝撃で燃えている車も数台ほど確認できる。そして徘徊している怪物……レイドラグーンやハイドラグーンが、今尚逃げ惑っている獲物を捕食しようと動き回っていた。

 

「た、助けてぇ!」

 

お昼休みの外食に出ていたであろう会社員が、背後から迫り来るレイドラグーンから逃げようと、必死に駆け抜けていた。途中で転がっていた男性に足を取られてしまい、倒れ込む会社員。チャンスとばかりに、レイドラグーンが両手を広げて襲いかかる。

もうダメだ。そう自分に言い聞かせて脱力しかけたその時だった。

 

『⁉︎』

 

突然、レイドラグーンが横に吹き飛んで倒れ込んだではないか。よく見ると、頭にクナイが突き刺さっている。困惑している会社員の前に、何かが降り立った。忍者のようなコスプレをした、少女と思しき背中が見えた。

 

「早く行け……」

「えっ」

「何も考えるな!とにかく逃げのびろ!」

 

謎の少女の一喝を受けて、妙な安心感を覚えた会社員は、足に力を込めて立ち上がり、再び駆け出す。心の中で、助けてくれた少女に礼を告げながら。

少女……リップルは会社員が遠くに逃げたのを確認すると、後から湧くように現れたハイドラグーンを見据えて、短刀を構えた。

 

「ハァッ!」

「大丈夫ですか⁉︎」

「これ以上……やらせるかぁ!」

 

リップルから少し離れた場所では、他の魔法少女や仮面ライダーが、モンスターに襲われている人々を守るべく、蹴り飛ばしたり、安全な場所まで誘導したりと、奮闘していた。

 

「逃げて、早く!」

 

レイドラグーンに襲われていた学生の無事を確認し、遠くへ逃げるように指示してから、周りに逃げ遅れている人がいないか確認する。

 

「!」

 

いた。車のドアの近くに身を潜め、怯えた表情を見せる幼い少女の姿が。親はどこかではぐれたのか、モンスターに襲われたのか、近場にはいないようだ。

他の仲間は、武器を駆使してモンスター達を薙ぎ払いながら人命救助に専念しており、誰も少女に気づいていない。

 

「大丈夫⁉︎君1人なの⁉︎お母さんは⁉︎」

 

龍騎は少女に駆け寄り、周りの安全を確認する。少女は目の前に現れた、正体不明の仮面の人物に戸惑いを隠せない様子だ。

 

「ここにいたら危ない……!早く逃げなきゃ」

 

少女を担いでその場を離れようと、前を見上げたその時、前方からレイドラグーンが鋭い腕を突き付けながら迫ってくるのが見えた。

 

「!」

 

龍騎は矛先が少女に向けられていると思い、咄嗟に背を向けて少女を庇う体勢に入る。

偶然にもその光景を、エビルウィップを振り回してハイドラグーンを倒していたライアが目撃する。脳裏によぎるのは、少し前に占った光景。今の状況と同じような背景に加え、少女を庇うように立っている龍騎。

同じだった。あの時占った光景と。そしてレイドラグーンの刃が向かう先は……。

 

「よせ……!やめろぉ!龍騎ぃぃぃぃぃ!」

 

間に合わないと悟りつつも、龍騎に向かって駆け出すライア。このままでは、占い通りに、龍騎は『死』の運命を辿ってしまう。

 

「(占いが、当たってしまう……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死なせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

その声はライアの背後から聞こえてきたかと思うと、目にも止まらぬ速さで彼を追い抜き、今まさに龍騎を貫こうとしたレイドラグーンに追突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……」

 

いつまで経っても痛みを感じない事に戸惑う龍騎と、目の前にいたレイドラグーンが消えた事に驚く少女。

ふと横に目を向けると、レイドラグーンは壁に突き刺さっており、その傍らに降り立ったのは、箒に跨っている西洋の魔女……トップスピードだった。

 

「危機一髪だったな!けど危なっかしいなぁ龍騎!間に合わねぇかと思ったぞ!」

「あ、ありがとうトップスピード!」

「九尾と約束したばっかだろ?だから絶対に死なせねぇよ。あんたがオレら2人を守ってくれるように、オレもお前を守ってやるからよ!」

「……!あぁ!じゃあトップスピード、この子を!」

「おう!安全な所に一っ飛びだ!」

 

そう言って少女をトップスピードに預けると、アクセルを吹かして安全な場所まで飛び上がったのを確認して、ホッと一息つく。

確かにあの時トップスピードが助けてくれなかったら、レイドラグーンの一撃で装甲を貫いて致命傷を負っていたかもしれない。そうなったら、九尾との約束はおろか、トップスピード……もとい室田つばめのご飯が食べられなくなる。

その選択肢の中には、ちゃんと自分も含めろ。リュウガとの一件で思い悩んでいた際にかけてくれた、大久保編集長の言葉が脳裏をよぎる。改めてその言葉の意味を再認識する正史であった。

 

「……ん?ライア?」

 

一つ気合を入れて目線を上げると、ライアが近くにいた事に気づいた。

 

「ひょっとして助けに来てくれたのか?ならありがとな。見ての通り、トップスピードに助けてもらったから、平気だ」

「……なら良い。また一つ、運命を変えられたからな」

「へっ?」

「とにかく気をつけるんだな。まだ敵は相当数いるんだ。ここで倒れてもらっては困るしな」

「あぁ、俺はもう大丈夫だ!絶対死なないって約束したしな!ッシャア!」

 

気合いを入れ直した龍騎は、再び人々を襲っているレイドラグーンやハイドラグーンに立ち向かっていく。

彼は死の運命を回避した。もう大丈夫だ。

それを確認したライアは、龍騎を見送った後、近場のモンスターを退治に向かう。

 

「ハァッ!」

 

モンスターを薙ぎ払いつつ、近くに生存者がいないかを確認するライアだったが、不意に横の路地から唸り声にも似た声が。モンスターに襲われている人がいるのかと思って駆けつけ、瞬時に足を止めた。

そこにレイドラグーンがいたのだが、人を襲ってはいなかった。その逆だ。レイドラグーンは男性に首を掴まれてグッタリしていた。その男性は蛇柄の服を着ており、その顔には嫌というほど見覚えがある。

 

「浅、倉……!」

「お前か……!丁度良い。うるさくて眠れなくてイライラしてたんだよぉ……!」

 

この路地で昼寝をしていたらしい浅倉はそう吐き散らすと、レイドラグーンを地面に叩きつけて踏みつけた。生身でミラーモンスターと対等に渡り歩いているその姿を見て、やはり浅倉を人間とは見れない。ライアは身構える。

 

「ライア!」

 

と、そこへ異変を感じて駆けつけたナイトの姿が。そんな彼も、浅倉の姿を確認して、仮面の下から睨みつける。

 

「今日は一段と機嫌が悪そうだな」

「ハッ……!ライダーが2人……!お前らとなら、良い戦いが出来そうだなぁ……!」

 

狂気に満ちた表情を浮かべる浅倉は、懐からカードデッキを取り出し、前に突き出すと、横にあったガラスを介して、腰にVバックルを装着する。

 

「変身!」

 

ポーズを取ってカードデッキをはめ込むと、鏡像が重なって、仮面ライダー『王蛇』に変身。首や肩を鳴らすと、早速ベノバイザーを取り出し、カードをベントインする。

 

『『SWORD VENT』』

 

同じタイミングでナイトもカードを使い、両者の手に、ウィングランサーとベノサーベルが行き渡る。

 

「構えろ、ライア。どの道こいつは救助の邪魔だ。ここで倒す」

「……やるしか、ないようだな」

 

ライダーとの交戦を避けてきたライアだが、やむなしとエビルウィップを構える。

 

「クックック……!さぁ、俺を、楽しませろぉ!」

 

モンスターの大量発生によって大混乱となる中、モンスターと称された最恐の仮面ライダーが、路地の一角で牙を剥いた。

 

 

 

 

 

 




皆さんはアニメ『アサルトリリィbouquet』を観てますか?
個人的には今季のアニメでイチオシなのですが、opやedは勿論のこと、内容も凄いクオリティなので、百合アニメとしても、バトル系アニメとしても、色んな観点で楽しめると思いますので、これを機に観てくれる人が増えると嬉しいな、と思う今日この頃。

さて、次回はライア・ナイトvs王蛇がメインとなります!お楽しみに!

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