魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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大変長らくお待たせしました。
ここ最近は忙しく、また『結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録』シリーズが予想に反して好評だったので、そちらを優先してしまいました。
今後もこういった事情が込み合って更新が遅れてしまいますが、温かい目でお願いいたします。

さて、今回はというと……。とにかく、ラストの残酷描写にご注意を。


114.勇気の選択

〜珠ちゃん、中学生になって随分経つけど、お友達は出来たかい?〜

 

「そ、そんなの、出来ないよ……。私なんて鈍臭いし、だって、家でも、全然ダメダメだし……。私に友達なんて……」

 

〜そうかいそうかい。人生は限りもあるし、短いからねぇ。友達を作っておくと、きっといい事があるよ〜

 

「で、でも! 私には、お婆ちゃんがいるし、ずっといるだけで、全然寂しくもないよ! 私には、お婆ちゃんがいれば、それでいいの……」

 

〜……珠ちゃん。これが最後の言葉になるかもしれないから、よくお聞き。これから先、いろんな人に出会う事になるけど、誰しもがあたしや珠ちゃんみたいに優しいわけじゃないの。仕方ないのさ。そうやって世の中はバランスが保たれているんだからね。その中で本当に珠ちゃんの事を分かってくれる人はもっと少ない。もし、そんな人に出会えたら、最後まで大切になさい。どんな宝石よりも、ずっと高いもんなんだから〜

 

「友達……。私にも、出来るのかな?」

 

〜珠ちゃんは優しいからね。もしかしたら、向こうから友達になってくれる人がいても、おかしくないだろうねぇ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イムちゃん、スイムちゃん!」

 

ボンヤリとしていた意識が、近場から聞こえてくる声によって揺さぶられ、段々とハッキリしてくる。綾名はゆっくりと目を開けて、誰かが立っているのを確認する。犬耳の魔法少女だった。

 

「スイムちゃん、大丈夫……⁉︎」

「た……ま……?」

「うん、そうだよ! 良かった……! スイムちゃん……だよね?」

「? う、ん……」

 

たまの言い方に引っかかりを覚えた綾名。その疑問は半べそのたまの言葉で判明した。

 

「び、びっくりしたよぉ……。スイムちゃん、年上かと思っていたから、まだ子供だったんだね」

「……」

 

そこで綾名は自分の体を凝視し、変身が解けている事に気づく。先ほどまで王蛇とカラミティ・メアリと交戦していて、思った以上にダメージが大きかったのだろう。もっと言えば、今の彼女はたまの腕に抱かれていた。廃ビルからここまで抱き抱えながら逃げてきたのだろう。

自分の手のひらを見つめている綾名には目もくれず、たまは謝り続けていた。

 

「ご、ゴメンね! 助けるのが遅くなっちゃって……! 私、逃げてばっかりで……。ホントは少し前から見てて……。もっと早く掘れていれば、こんなにならなくても済んだかもなのに……」

「……」

「あ、あの、スイムちゃん……で、いいかな? 立てる? 無理しなくても、このまま運んであげるけど」

「……いい。降ろして」

 

ようやく綾名は口を開き、自ら降りようとする。最初に地面に足をつけた時はフラついたが、たまが寄りかかってくれて、脇腹を抑えながらバランスをとり、ようやく完全に立ち上がれた。

そしてその小さな手にマジカルフォンを握る。

 

「……変身」

 

小声でそう呟き、タップすると魔法少女『スイムスイム』に変身。振り返り、たまに体を向ける。

 

「あ、あのねスイムちゃん……! お、お話があるんだけど、ちょっといいかな……?」

 

一方でたまはこれから面と向き合ってリーダーと話をする事に、極度の緊張感を持ちながら、勇気を振り絞って口を開く。その間、スイムスイムは片手でマジカルフォンを操作する。

 

「あ、あのねスイムちゃん……! 私、これから」

『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

「「!」」

 

スイムスイムが手元に呼び出したルーラを横に振るおうとするのと、横手からメタルゲラスが突進し介入してきたのはほぼ同時だった。メタルゲラスの突進攻撃によって、ルーラの軌道は逸れ、たまの首元から外れて左腕を掠めとる。突然自分の腕から流れ出た血とそれに伴う痛みのあまり、悲鳴をあげるたま。メタルゲラスに助けてもらわなかったら、絶命していたはずだった。

 

「な、なんで……⁉︎ どうしたのスイムちゃん⁉︎」

 

突然襲いかかられた事に困惑するたま。メタルゲラスがその前に立ち、スイムスイムはルーラを構え直す。たまの返事に答える気は無いのか、再び距離を詰めようとする。パニック状態になったたまは悲鳴をあげながら背を向けて、一目散に駆け出す。メタルゲラスもそれに反応して、スイムスイムから遠ざかる。

全速力のたまの前では、スイムスイムとて魔法を行使して地面を泳いでも追いつく自信はない。一旦肩の力を抜いた。それから、ルーラを見つめながら呟く。

 

「『魔法少女同士であっても、絶対に正体を明かしてはならない』、それが、ルーラの掟」

 

正体が露見されては、それが必ず弱みになる。敵味方問わず、身バレしたら最後、その情報を利用されるだけの愚図に成り下がる。ましてや敵の手にその情報が渡れば、即ち死を意味する。これら全ては、ルーラが生前教えてくれた事。

たまは仲間だ。どんな事情があったのか知らないが、例え遠く離れたとしても、彼女を受け入れるつもりだった。だが、ルーラの教えは守り通さなければならない。それが『スイムスイム』が『ルーラ』として生きる為の必須条件だったから。

 

「……だから、仕方ないの。さっきは失敗しちゃったけど、ちゃんと私は、ルーラになるから」

 

頬に流れた涙を手首で拭き取り、たまが立ち去った方角を見つめる。ちょうどその時、彼女の後方にパートナーであるアビスが降り立った。一部始終を見ていたわけではないようだ。さらに、上空には黒いエビルダイバーが旋回しているのが見える。自分達を追って、位置を知らせようとしているのだろう。

スイムスイムは考えた。このままアビスにも、そしてこれから来るであろうペアにも手伝ってもらおう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒィッ、ヒィッ……!」

 

脇目も振らず、たまは魔法で向上した脚力をフル活用し、人目のつかない路地をひたすら駆けていた。いつのまにか、門前町を越えていた。

何がどうなっているのかも分からず、ただ前だけを向いて走っていた。何か琴線に触れるような事でもしてしまったのか。だとしたら謝らなければ。でも今のままでは殺されてしまうかもしれない。

 

「た、助けて……!」

 

とにかく今は、安全な場所を見つけ出し、身を潜める必要がある。もちろん他の魔法少女や仮面ライダーの所に。

そうして全力疾走していた矢先、目の前の地面にクナイが突き刺さった。

 

「⁉︎」

 

急ブレーキをかけて立ち止まるたま。ハッと上を見上げると、電柱から地面に降り立つ2つの影が。

 

「お前、何でここにいる」

 

最初に話しかけてきたのは、忍者姿の魔法少女『リップル』。手には手裏剣がいつでも飛ばせるようにと握られている。その隣にいるパートナーの仮面ライダー『ナイト』はダークバイザーを突きつける。

 

「単身で戦いを挑んでくるつもりなら、それでもいい。俺は龍騎と違って優しくもないし、そうする必要もない」

「あ、アワ、アワワワワ……⁉︎」

 

パニック状態のあまり、思うように口が動かない。会話する気がないと察した2人は臨戦態勢に入ろうとするが……。

 

「ちょっと待ったぁ!」

「お〜い!」

 

突然上空から、聞き慣れた声が。龍騎とトップスピードだ。その後方からは九尾とスノーホワイトの姿も。

 

「何だ。戦いの邪魔をするな」

「ちょっと待てってナイト! この子怖がってんだろ⁉︎ 戦う気もない奴にそんな事すんなって!」

「そうやって油断させるのが奴の作戦だったらどうするつもりだ」

「そ、それは……」

 

龍騎とナイトのやり取りを他所に、トップスピードが話しかけた。

 

「や、ごめんな。リップル達も悪気があったわけじゃないんだ。ただまぁ今がこんな状態だし、ちっとばっか張り詰めてるからな。ほら、2人とも謝んなよ」

「……チッ。紛らわしい」

「素直じゃないね〜」

 

先ほどまでの緊張感はどこにいったのか、リップルは謝る事なく舌打ちで返す。たまが困惑する中、九尾はスノーホワイトに話しかけた。

 

「……で、どうなんだ。こいつが嘘を言ってるって事はなさそうか」

「うん。心の中では少なくともそんな気配はないよ。……でも、何かから逃げてきたって感情は強そう」

「逃げてきた……? 待てよ、って事は……」

 

九尾がいち早く何かに気づき、たまに話しかけた。

 

「おい」

「! ひゃい⁉︎」

「お前、どうしてここまで来た? 誰かに狙われてんのか?」

「そ、それは……! そ、そうだ! た、大変なの……! スイムちゃんが、スイムちゃんが……!」

 

たまが必死に何かを伝えようとするも、呂律が回らず、上手く伝えられない。そうこうしている間に、脅威は迫ってきていた。

 

「!」

 

咄嗟に九尾がたまを地面に押し倒す。と同時に、たまが立っていた地点を銃弾が掠めた。九尾が手を出してくれなければ、餌食になっていただろう。たまの口から悲鳴が上がる中、一同は警戒を強める。こんな場所で銃を撃ってくる者など、容易く想像できた。

 

「こんなところにいたのかい。あの女を先に殺っておこうかと思ったけど、あんたが先ならそれでもいいさ。さっきの借りはここで返させてもらうからねぇ!」

「祭りにはちょうどいいなァ……! 北岡を潰す前に、お前らで我慢してやるよ」

 

ミニガンを構えながら前進してくるカラミティ・メアリ。その隣を王蛇が悠然と歩いてくる。その場にいた全員が身構える。さらに横手からはアビスの姿が。

 

「……アァ? お前も、俺と戦うか?」

「貴様など眼中にない。が、これだけの人数がいるなら好都合だ。ここで数を減らしておくのも無難だ」

「……!」

 

直後、アビスから殺気が溢れ出たのを察した九尾。王蛇とはまた違った何かを彷彿とさせ、警戒心を強めた。

そして何の前触れもなく、開戦の合図が送られ、先んじて王蛇が駆け出した。リップルが牽制とばかりに手裏剣を投げるも、全てベノバイザーによって弾かれている。

 

『SWORD VENT』

 

「ハァァァァァァァ!」

 

そのままベノサーベルを召喚し、めちゃくちゃに振り回し始めた。一同は散会し、難を逃れる。

 

「逃すかってんだ!」

 

だがメアリが当然それを許すはずもなく、銃弾が撒き散らされる。他の面々が武器を片手に攻めようとする中、たまは悲鳴をあげながら、銃弾を避ける形で逃げていた。

 

『『ADVENT』』

 

アビスも2体の契約モンスターを呼び出した後で、2刀のアビスセイバーを構えて交戦を始める。先ほどまで静かだった、住宅も少なく開けた場所はいつしか戦場と成り代わっていた。

 

「ヤァッ!」

「フンッ!」

 

九尾とスノーホワイトは、メアリが召喚した黒いエビルダイバーに対し、回避を繰り返しながらフォクセイバーで対抗し、リップルはメアリとの一騎打ちへ。ナイトはアビスラッシャーと、龍騎とトップスピードはアビスハンマーと戦いを始める。一方で王蛇はたまをなぶり殺しにしようと執拗に追いかけていたが、メタルゲラスが彼女を守るように妨害を繰り返した事で、イライラがピークに達し始めた。

 

「イライラするぜ……!」

 

『ADVENT』

 

ベノバイザーにカードをベントインし、召喚させたのは黒いメタルゲラス。不意の突進には、本物のメタルゲラスも対処できず、横に転がった。

 

「同じやつは2人もいらない。消えろ」

 

『FINAL VENT』

 

続けざまにカードをベントインし、王蛇の背後からベノスネーカーが接近してきた。王蛇は飛び上がり、両足を起き上がろうとするメタルゲラスに定める。

 

「ハァァァァァァァァァァァァァ!」

 

ベノスネーカーの口から吐かれた毒液に乗っかり、王蛇は渾身のキックをメタルゲラスに連続で撃ち込む。重量級であるはずのメタルゲラスはいとも簡単に吹き飛ばされ、『ベノクラッシュ』を正面から受けた事で、たまの横をすり抜ける形で爆散した。

 

「! そん、な……」

 

たまは絶句する。これまたまた幾度となく自分を守り、そして事あるごとにすり寄ってくれた、パートナーの契約モンスターがやられてしまい、たまにとっての戦う術を失った事に、ショックを受ける。そんな彼女を見て呆れが生じたのか、首を鳴らしながら吐き捨てる。

 

「……つまらん。お前ぐらいなら後回しでもいいなァ。他のやつの方と戦ってる方が面白い」

 

鼻を鳴らして、王蛇は龍騎とトップスピードがいる地点へ。たまは何も言い返せず、その場で座り込む。体の震えは止まらない。

そして王蛇の乱入で、龍騎とトップスピードの間が空いてしまった。

 

「! ヤバっ……!」

「俺と、戦えぇ龍騎ぃ!」

「お前の相手なんかしてる場合じゃ……グハッ!」

「知った事かぁ! お前は前から俺をイラつかせた! 戦う理由なんて、そんなもんでいいだろぉ!」

「こいつ……! どんだけ狂ってんだよ⁉︎」

 

『GUARD VENT』

 

ドラグシールドを構えて応戦するも、王蛇の狂気ぶりに押されて、追い詰められているのが分かる。

 

「龍騎! おわっ⁉︎」

 

助けに行こうとするトップスピードだが、アビスハンマーの砲撃によって吹き飛び、地面を転がった。

 

「!」

「おぉっと! そっちには行かせないよ!」

 

リップルが慌ててトップスピードを助けに行こうとするが、ベノサーベルを召喚したメアリによって阻まれる。

 

「く、そぉ……! さすがにこいつは、ヤバそうだけど、とにかく、たまだけでも逃した方が良いか……?」

 

『STRIKE VENT』

 

「⁉︎」

 

トップスピードがとんがり帽子を押さえながら、怯えているたまをどう逃すか考えていたその時、背中越しに激流が襲いかかり、またしても地面を転がる。よろけながら顔を見上げると、アビスクローを構えるアビスの姿が。『アビススマッシュ』を直に受けてしまい、息が荒くなりつつある。

 

「真っ先に消す理由はないが、お前には、ここで消えてもらう」

「……ッ! 死んで、たまるかよ……!」

 

よろけながらも立ち上がるトップスピードに対し、アビスは追撃とばかりにアビススマッシュを発射し、トップスピードの体力を奪っていく。サバイブの力を使おうにも、敵はその隙さえ与えてくれない。

完全に万事休すとなりつつあるトップスピード。その姿を、遠くからたまがジッと見つめている。

 

「(ど、どうしよう……! このままじゃ、トップスピードが……! で、でも、あの人が脱落したら、それはそれで得するかもしれない……! だって、どう考えても、ここにいる何人かは脱落しちゃうかもだし、無理して助けに行く必要なんて……! それに、私なんかが助けようとしたって……! でも、本当に、これで、いいの……! 私、どうしたらいいの、お婆ちゃん……!)」

 

『そんな人に出会えたら、最後まで大切になさい』

『いつでも来ていいからな!』

 

今は亡き祖母と、トップスピードの言葉が、たまの小さな脳の中を駆け巡る。

たまにとって、トップスピードとは……。感情で押し潰されそうだった。

 

「(私……私……! どうしたら、いいの……⁉︎ 私にも、戦える力って、あるの……⁉︎)」

 

誰も、答えてはくれないと分かっていた。分かっていたから、思わず目の前を見る。水浸しになりながらも、懸命に戦い、生き抜こうとするトップスピード。彼女が抱えている秘密を、生き残りたい理由を、たまは知っている。その背中に、憧れさえ抱いた事もあった。そんな彼女の命を刈り取ろうと、アビスは着実に追い詰めていた。

 

「いい加減諦めたらどうだ? さっさと自分の運命を受け入れろ。どうあがいてもお前は」

「いいや諦めないね! オレは、絶対に、死なない……! オレには、まだ、やりたい事が、あるんだからなぁ!」

「どこまでも妄想を描くつもりか。なら、その幻想を断ち切ってやろう」

 

そう言ってアビスは、何故か頭をカクンと一瞬下げた。意図が分からないトップスピードとたま。が、たまだけが気づいてしまった。

トップスピードの後方、少し離れた位置の地面に波紋が生じ、ピンク色の髪の少女が頭だけを突き出して様子を伺っていた事に。その少女は小さく頷き、また地面に潜り込む。

再びトップスピードに注目してみる。彼女は目の前のアビスに集中していて、背後から迫り来るものには気づいていない様子だ。このままではどんな結末が待っているかなど、頭の悪いたまでも容易に想像がつく。他の面々はその事に気づいている様子はない。体の震えは最高潮に達した。

 

「(スイムちゃん……!)」

「ん……?」

 

トップスピードが迫り来る死に気づいたのは、近くから人らしき気配を察知した時。その時には、既に魔法で地面に潜り込んでいたスイムスイムの体が、膝から上まで出ている状態で、その手に光の反射で輝くルーラを振り上げる体勢に入っている。回避は、間に合わない。

これがいわゆるデジャヴというやつか。中宿での一件が、走馬灯のように駆け巡るトップスピード。

 

「ダメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」

「やめろォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

 

リップルと、龍騎の声が耳に聞こえて来たが、それでどうにかなる状況ではない。トップスピードが限界まで目を見開くのをその目で確かめながら、スイムスイムが無表情のまま、冷徹にその刃を振り下ろす。

命を刈り取る刃は、そのまま1人の魔法少女の元へと向か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肉が断ち切られる音が、その場にいた全員にハッキリと行き渡る。音のした地点から溢れ出た赤い液体は、その周囲に降り注いだ。

とんがりハットに、思わず手から離したラピッドスワローに、そして常に首から提げていたお守り袋に、赤く点々としたものがついた。

全員の、特に龍騎とリップルの動揺は激しかった。死を目前に控え、力が抜けて倒れこむトップスピードには、全くといって外傷がない。付着した血も、彼女のものではない。

トップスピードは、ゆっくりと、目の前の光景に意識を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに広がっていたのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ウッ、グフッ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トップスピードを、敵対していたはずの魔法少女を庇うように立ち、仲間であるはずの魔法少女による一撃を、その背中に受けて、背中から、そしてきつく縛った口から血を吐き出す、犬耳の魔法少女の姿が、そこにあった……。

 

 

 

 

 




もうここから先の展開が見えてしまうわけですが、キリがいいのでこの辺で。

次回は……、まぁそういう事です。

P.S 投稿日の4月4日って、不吉な日でもあり、怪談話だとよく使われるネタになってますよね。特に意図したわけではないのですが、自分で投稿してみても、ちょっと不気味ですね……。まるで運命に操られているかのようだ……(震)

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