魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

最近は台風が近いという事もあってグズついた天気ばかりでしたね。


106.異変の兆候

「ハァッ! ダァッ!」

 

夜も更け、人通りの少なくなった噴水広場に、様々な音が響き渡る。正確にはミラーワールドで繰り広げられているものだが。

 

「フンッ! トォッ!」

 

片手に持つドラグセイバーを振り回しながら龍騎が相手にしているのは、ヤゴ型モンスター『シアゴースト』。強さの部類としては、これまで戦ってきたモンスターと比較しても、さほど特殊な能力を宿しているわけでもなく、ただ不気味な鳴き声を出しながら、歩くスピードで襲いかかってくる程度だった。だが、そんな相手でも龍騎は舌を巻いている。その訳は……。

 

「何だよこれ……! どんだけいんだよこのモンスター!」

 

龍騎がそう喚くように、辺りを見渡してもシアゴーストしか捉えられない。倒しても倒しても、湧いて出てくる相手に、さすがの龍騎も消耗戦になり、疲れが出始める。

 

「せめて他の誰かが来るまで、持ち堪えないと……!」

 

『ADVENT』

 

龍騎は契約モンスターであるドラグレッダーを召喚し、戦力の穴埋めを行った。が、それでもシアゴーストの方が依然として数の差では優勢。

 

「おわっ⁉︎」

 

シアゴースト達に押し倒されて、近くにあった水辺に転げ落ちた。全身びしょ濡れになりながら立ち上がる龍騎は、先ほどよりも多いシアゴースト達が迫ってくるのが見えた。

龍騎が身構えていると、彼にとって待ち望んでいた展開が。

 

『STRIKE VENT』

 

「ハァッ!」

「うぉりゃぁぁぁぁぁ!」

 

シアゴーストを横手から薙ぎ倒す者達が駆けつけてきた。

 

「ライア! トップスピードも!」

「遅くなっちまったな! 加勢するぜ!」

「よぉし! なら俺も!」

 

仲間の登場で俄然やる気になった龍騎が気合いを入れ直し、水辺から出て、シアゴーストに立ち向かった。

 

『SWING VENT』

 

ライアはエビルウィップで周囲の敵を討ち、トップスピードはマジカルフォンから取り出したドラグセイバーでシアゴーストと応戦。龍騎は直接拳で倒しにかかる。

ある程度数が減ってきたところで、龍騎は叫んだ。

 

「ライア、行くぞ!」

「あぁ!」

 

『STRIKE VENT』

『COPY VENT』

 

龍騎か右腕にドラグクローを装着し、その横に立ったライアが、ドラグクローをそのままコピーして右腕に装着した。

 

「「ハァァァァァァァァ!」」

 

2人は同時に腕を突き出し、ドラグレッダーと共に吐かれた炎が、一箇所に固まっていたシアゴースト達を難なく一掃した。

今の一撃で全滅したらしく、辺りにモンスターの気配はなかった。それが証拠に、3人のマジカルフォンからキャンディー獲得の知らせが届いた。だが、3人にそれを確認する余裕はなかった。

 

「助かったぜ2人とも!」

「いいってもんよ! パートナーなんだし当然っしょ!」

「しかし、あのモンスター……」

 

ライアは水辺の方を見つめながら呟く。龍騎もトップスピードも、ライアが言いたい事が分かっていた。

 

「そういや、ここ最近ああいう奴としか会わなくなったよな。っていうか、モンスター出るのがほぼ毎日になってきたし」

「それそれ! どっちかっていうと、人助けよりもそっちに関わる事が多くなったよな」

 

ミラーワールドの中であれこれ考えていても仕方ないと思ったのか、3人は現実世界に戻り、ナイト達に連絡を入れて、その場で解散する事にした。

 

「そういや龍騎。お前随分びしょ濡れだけど、平気か?」

「大丈夫だって。これくらい何とも……へックション!」

「全然じゃねぇかよ⁉︎ ほら、早いとこ家に帰ろうぜ! 風邪引いちまうかもしれないし、あったかいもん作ってやるから! ほら早く!」

「お、おぅ悪いな。じゃあライア、俺達はこの辺で!」

「あぁ、お大事にな」

 

トップスピードが急いで龍騎を後ろに乗せてラピッドスワローをアクセル全開に飛ばして立ち去るのを見送った後、ライア自身も自宅へと戻った。

シャワーを浴びてリビングに戻った手塚は、気晴らしに手元にあった、紐のついたコインをぶら下げて、ユラユラと揺らしてみた。しばらくジッと見つめていたその時、手塚の脳裏に、今まで以上に鮮明なビジョンが浮かんだ。

N市の中心部に位置する、普段から人通りの多い繁華街。だがそこに映っていたのは、手塚自身、初めて目にする光景だった。至る所から炎や煙が上がり、人々が逃げ惑い、悲鳴が交差する。その光景の一角には、泣き叫ぶ少女らしき姿が。母親とはぐれてしまったのだろうか。そんな少女の背後から吸い寄せられるように迫り来る『何か』。明らかに少女を狙っている。

 

「……!」

 

不意に我に帰った手塚は、無意識に左手を虚空に伸ばしている事に気づいた。あまりにも戦慄的な光景を前に、現実と区別がつかなくなってしまったようだ。

 

「……この街に、大きな災いが訪れる、とでもいうのか……」

 

今の光景が現実のものとなる確証はない。ここ最近は、龍騎達との出会いもあってか、占った結果はそのまま100%起こされる、と断言はできなくなった。しかし、ここ最近になって起きている、N市の異常なまでのモンスターの出現と関連してしまうと、決して無視はできない。

 

「……だとしたら、俺達はその運命を変える。変えなければならない」

 

そう呟いた手塚は、テーブルの上にある、お茶の入ったコップに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の午後。

 

「ん〜っ。久々に休みも取れたし、天気も良いし、つばめのお腹の赤ちゃんも順調だし、良い事づくめだな!」

「そんな街中でおおっぴらに言うなよ恥ずかしい……。でもま、オレもこの子もそうだけど、お前の方こそ大した事なくて良かったな。鼻水垂らしまくってんの見た時は、どうしたもんかと思ってたけど」

「つばめの淹れてくれたレモンティーが効いたのかもな」

「ま、バカは風邪を引かないって言うしな!」

「つばめに言われたくないし⁉︎」

 

口論になりながらも、自然と笑みを浮かべる正史とつばめは、商店街を抜けて、家のある方へと歩いていた。休日を利用して、つばめの健診や買い物に付き添っているのだ。そろそろ本格的に育児休暇とかも考えてみようかな、と思いつつ正史が両手にレジ袋を持ち直していると、隣でお腹に触れながら歩いていたつばめが、路地に見える喫茶店を指差した。

 

「なぁ、まだ時間はあるしさ。あそこで休憩とかしない? 正史もずっとそれ持ってんの辛いだろ?」

「そんなに重くはないけど、まぁ、なんか飲もっか」

 

正史も賛同し、2人は迷う事なく看板に『ATORI』と表記された喫茶店の扉を開けた。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

店の奥から年老いた女性の声が聞こえてきて、店員の1人が2人に寄ってきた。正史は人数を告げようとした。

 

「あ、えぇっと2名……で……」

「……!」

「あぁ⁉︎」

 

つばめが素っ頓狂な声を上げるのも無理はないだろう。驚きのあまり表情が固まっているその店員は、2人にとって見知った少女だったからだ。

 

「華乃じゃねぇか! おいっす!」

「ちょ、今はそんな事……」

 

つばめに抱きつかれそうになる、エプロン姿の華乃は迷惑半分、恥ずかしさ半分といった具合に顔をしかめて後ずさった。その反応に、店長のおばさんは不思議そうな顔を浮かべた。

 

「おや華乃ちゃん、その人達、知り合いかい?」

「そ、それは……」

「どうかしたのか?」

 

すると、店の奥から、これまたエプロン姿の男性が、現れた来客を見て眉をひそめた。

 

「あっ! 蓮二!」

「お前達……、何でここにきた」

「何でって、そりゃあお茶しに来たに決まってんだろ。喉乾いたんだし。でも、2人ともここで働いてたんだな」

「……今日は随分と、顔見知りと会うな」

 

そう言って蓮二が顔を斜め後ろのカウンター席に向ける。正史がそれになぞって視線を向けると、なんとそこには手塚がティーカップを片手に持って顔だけを振り向かせて、軽く会釈しているではないか。

 

「手塚もいたのかよ⁉︎」

「隣なら空いている。来ていいぞ」

 

手塚にそう言われ、正史とつばめは手塚の隣に座った。しばらくして、蓮二が水の入ったコップを持ってきた。つばめの所には丁寧に置いたが、正史の前には勢いよく置かれ、水が飛び散ってテーブルが濡れた。

 

「ちょ、お前何してんだよ⁉︎ 何で俺だけそんな態度⁉︎」

「文句があるなら帰れ。今日はこれ以上、顔見知りに会うのはもううんざりだ」

「そんな事言うなって。あ、じゃあコーヒー一杯」

「ごめんなさいねぇ。ウチは紅茶しか取り扱ってなくて」

「そういうわけだ。コーヒーを飲みたいなら他を当たれ」

 

店長が申し訳なさそうに謝るのに対し、蓮二はそっけなく呟く。その態度にムッとしながらも、正史は渋々答える。

 

「……じゃあ、紅茶で」

「オレもそれで!」

「……フン」

 

鼻を鳴らして注文を承った蓮二は、店の奥へとさっさと入っていった。その様子を見ながら、店長はクスクスと笑った。

 

「蓮二君、知り合いに3人も会えてよっぽど嬉しいのかもねぇ。らしくないけど、そういう彼もアリかねぇ」

「そうっすか? いっつもあんな調子ですよ。どうにかならないんですかねぇ?」

「それも愛情の裏返しさ。あたしにゃ分かるよ。……それにしても、蓮二君も華乃ちゃんも、良い友達を持ったもんだねぇ。前から人付き合いが苦手そうに見えたからちょいと不安だったけど、それも徒労だったかもね」

 

2人の事を身近で見てきた店長にとって、正史達と2人のやり取りに新鮮さを感じたようだ。店長は手塚を含めた3人に頭を下げて言った。

 

「これからも、2人の事、よろしく頼むよ。それじゃああたしはちょっと奥に残るから、華乃ちゃんと話しておいで。あと、そこの嬢ちゃんは、紅茶を飲みすぎないようにね。お腹の赤ん坊は大事にしとかないと」

「気遣いサンキュー!」

 

つばめは照れながらそう言い、店長は店の奥へ。華乃の方はテーブル拭きだったり、注文を聞きに行ったりと忙しそうだったので、しばらくは手塚と会話する事にした。なお、平日にもかかわらず華乃が働いているのは、学校がテスト期間であり、午前中しか通っていないからだったと、後に判明した。

 

「昨日はお疲れ様だな」

「……あぁ、そうだな」

「? どうかしたのか、手塚? ひょっとして風邪?」

「いや、何でもないさ」

 

手塚の反応に違和感を感じた正史は声をかけるが、本人は首を横に振って紅茶を口に含んだ。何かを言おうとしてためらっているように思えた正史は再び聞き出そうとするが、それよりも早く手塚が話題を変えた。

 

「それより、昨日のモンスターの件だが、あれから俺なりに調べてみた」

「で、どうだったんだ?」

「確かに、モンスターの出現率はここ数日で右肩上がりだ。おまけに目撃情報に挙がるモンスターは皆、同じタイプのものである事も確認できた。今後も同じ奴らが出てくる事も考えられる。……少し、活動範囲を広げようと思うんだ。門前町と城南地区、それから北の麓付近を除くエリアには、縄張りを張っている連中はいない。すでに脱落した者達の活躍範囲だったエリアを含めれば、大変ではあるが、やれるだけの事はやろう。運命を変えれるのは、俺達しかいない」

「お、おう……。てかさ、今日の手塚、随分とやる気満々だな」

 

手塚の真剣な表情を前に、つばめはたじろぐ。

 

「でもまぁ、オレも手塚と同じ気持ちさ。少しでも助けられる人達を、助けていかないと、魔法少女失格だしな。正史もそうだろ?」

「お、おう。俺も、人を守る為にライダーを続けてきたんだし、これからもそうさ!」

「……お前達らしいな」

 

2人の姿を見て、羨ましげに呟く手塚。そこへ華乃が仕事をひと段落つけて、3人のいるカウンター席に寄った。

 

「……でもつばめ。お前は、もう少し自分の体にも、気にかけた方が、良い……」

「おっ? 気ぃ遣ってくれるのか? ありがてぇな! ほ〜れヨシヨシ」

「ちょ、頭ワシャワシャしないで……」

 

華乃が顔を赤らめて、つばめに頭を撫でられている。

随分と物腰柔らかくなったな。正史と手塚が同じ事を考えていたその時、カバンやポケットから耳鳴りのような音が聞こえてきた。

 

「「「「!」」」」

 

一同は目を見開き、立ち上がる。モンスターが出現しようとしている。それも、距離はさほど遠くはない。遅れて蓮二も、急ぎ足で店の奥から出てきた。

 

「向こうにはすぐに戻ると伝えてある。行くぞ」

 

蓮二にそう言われて、正史達は立ち上がり、華乃と蓮二はエプロンを脱いでから店を出た。

その道中で、正史達は4人の人物と合流した。学校帰りの大地ら中学生組だった。

 

「正史さん! 皆さんも……!」

「大地君、小雪ちゃん! 颯太君に、亜子ちゃんも……!」

「丁度良い。このまま現場に向かおう。亜子も手伝ってくれ」

「はい……!」

 

偶然バッタリ出くわしてそのまま帰宅しようとしていた4人は、正史達の背中を追った。

しばらくしてたどり着いたのは、住宅地の一角にある公園。そこには仲睦まじく遊ぶ幼児達と、それを見守る母親達の姿が。そして、そんな彼女らに狙いを定めているかのように、鏡の中からシアゴーストが腕を動かしていた。やがて頃合いと見たシアゴーストが、鏡から飛び出して、砂場で遊んでいた幼児達に襲いかかる。

 

「「ハァッ!」」

 

だがそれは、蓮二と手塚の飛び蹴りにより妨げられた。シアゴーストは急襲に失敗した事で、近くにある電話ボックスのガラス窓へと飛び込んだ。幼児達が呆然とし、母親達が動揺で動けずにいる中、正史と小雪が幼児達を守るように寄り添い、つばめは膨れたお腹に気をつけながら駆け寄って、母親達に向かって喚いた。

 

「早く! 子供を連れてここから離れろ!」

「えっ? でもあなたは……」

「オレも後で行く! だから、今はあの子達の安全だけを考えろ!」

「さぁ、早く!」

 

正史と小雪が幼児達を母親達の元へ連れ戻し、母親達は妊婦に急かされる事に戸惑いながらも、言われた通りに公園を立ち去った。

周りに誰もいない事を確認した3人は、蓮二達と合流し、電話ボックスの前に立った。

 

「あんな小さな子を狙うなんて……! 許さねぇ……!」

「これ以上、奴らの好きにさせるもんかよ!」

 

正史とつばめが躍起になり、カードデッキやマジカルフォンを取り出す。大地達も隣に並んで変身の準備を進める。

 

「「「「「「「「「変身!」」」」」」」」」

 

[挿入歌:Revolution]

 

仮面ライダー、魔法少女に変身した一同は、ミラーワールドへと突入した。

枯れ葉の絨毯に覆われた世界に、先ほど逃げたシアゴーストが彷徨い歩いている。一同がシアゴーストの前に立ち、攻撃を仕掛けようとした時、別方向からシアゴーストが登場し、いつの間にか9体まで増えていた。

 

『『SWORD VENT』』

『SWING VENT』

 

九尾、スノーホワイトはフォクセイバーを、龍騎、トップスピード、ハードゴア・アリスはドラグセイバーを、ライアはエビルウィップを召喚し、手に構えた。他の面々は所持武器であるダークバイザー、短刀、肥大化した大剣を持ち、シアゴーストに斬りかかった。

 

「ハァッ!」

「こんのぉ!」

「そぉら!」

 

何度も特訓を重ねてきた成果もあり、ダメージは確実に通っている。が、問題は敵の数だった。時間をかけていると、再びどこからともなくシアゴーストが参戦してくる。

 

「これまでと同じ、複数タイプだな!」

「個々は大したことないが……!」

「数の差がここまでハッキリ出ると、案外キツいものだね……!」

 

九尾とラ・ピュセルが背中合わせに戦いながら愚痴を洩らす。

その一方で、シアゴーストとは連戦になる龍騎とトップスピードは、昨日の繰り返しになる事を避ける為に、決断した。

 

「あぁもうじれったいなぁ!」

「一気に片付ける! トップスピード!」

「分かってらぁ!」

 

そう言って2人は、マジカルフォンを取り出したり、カードデッキから一枚のカードを引き抜いてドラグバイザーツバイを左手に持つ。

 

『『SURVIVE』』

 

「! おい、無駄に力を使うな!」

 

早々に龍騎サバイブ、トップスピードサバイブになったのを見て、ナイトが注意するが、2人は聞く耳を持たない。

 

「良いだろ別に!」

「一体ずつ相手にするより、こっちの方が一気に倒しやすいしな!」

 

2人はそのままドラグブレードを持ってシアゴーストに斬りかかる。

 

「ハァァァァァァァ!」

 

アリスが一箇所に追い込んだシアゴーストを、ラ・ピュセルが大剣の面の部分を押し潰し、爆散させたところで、2人は辺りに注目する。途端に、彼らの耳にシアゴーストの鳴き声が聞こえてきた。それも、四方八方から。

 

「!こいつらだけじゃない……! まだ他にもいるのか!」

 

言うが早いか、増援とばかりにシアゴーストが出現。ラ・ピュセルはアリスを守るように立ちはだかる。

 

「これは確かに、力の使い所だな! アリスは後方で援護して!」

「……はい!」

 

『SURVIVE』

 

ラ・ピュセルもサバイブとなり、シアゴーストに斬りかかった。アリスもサバイブには劣るものの、懸命にシアゴーストを退けようと戦いに奮起していた。

一方、こちらも既にサバイブになった九尾、スノーホワイトペアは、迫り来るシアゴーストをすれ違いざまに斬りつけてきた。

 

「ヤァァァァァァァ!」

 

スノーホワイトサバイブは豪快にフォクセイバーツバイを振り、シアゴーストを退けさせる。

 

『STRIKE VENT』

 

シザースピンチでシアゴーストを挟み込み、向かってくる仲間の元へ投げつけてから、新たにカードをベントインする。

 

『BLAZE VENT』

 

「私も! ヤァッ!」

 

スノーホワイトサバイブも加勢し、2人分の『ブレイズ・ウィルオ・ザ・ウィスプ』を投げつけ、シアゴースト達はまとめて爆散した。

 

『SHOOT VENT』

 

「ハァッ!」

 

龍騎サバイブはカードをベントインし、ドラグランザーを隣に立たせると、迫ってくる20体ものシアゴーストに『メテオバレット』が炸裂し、押し返されたシアゴーストは爆散した。

そして、『シャドーイリュージョン』で分裂したリップルは、シアゴーストを囲むと、上空にいるトップスピードサバイブに向かって叫ぶ。

 

「トップスピード!」

「任せろ!」

 

トップスピードサバイブはラピッドスワローから飛び降りると、後方から現れたドラグレッダーの吹いた炎に押される形で、『ドラゴンライダーキック』を地上にいるシアゴーストに当てた。シアゴーストは耐え切れるはずもなく爆散する。

 

『『FINAL VENT』』

 

「「ハァァァァァァァ!」」

 

ナイトとライアはサバイブにならず、通常形態のまま、逃げようとするシアゴーストに向かって『飛翔斬』、『ハイドベノン』を命中させ、爆散させた。

 

「残りは……!」

「あいつらだけ! 龍騎!」

「ッシャア!」

 

『『FINAL VENT』』

 

九尾サバイブと龍騎サバイブは、同時に飛び上がると、上空で回転しながら、右足を前に突き出す。すると体中を眩しいオーラが包み、勢いよくキックが放たれた。

従来のフォームの必殺技を、サバイブによって更に強化した、九尾の『ブレイズキック』の強化版『ブレイズ・バーストキック』と、龍騎の『ドラゴンライダーキック』の強化版『ネオ・ドラゴンライダーキック』が、残ったシアゴーストを難なく爆散させた。ようやく敵の姿がなくなり、マジカルフォンがキャンディー獲得の合図を知らせる音を鳴らした。

 

「やっと終わったぁ〜。……にしても、また昨日と同じモンスターかよ。何でこんなに出てきたんだ突然?」

「分からない。だが、何かの前触れかもしれない……」

「かもしれない……? 絶対じゃなくて?」

 

ラ・ピュセルが聞き返すと、ライアは静かに呟く。

 

「この一件が何を意味しているのかは、今は俺にも分からない。単なる偶然が重なって起きた事で済めばそれでいいが……」

「そうなる試しはないだろうな。でなきゃ、俺達がこうして生き残りをかけて戦う事もなかったしな」

「……あぁ」

 

空気が重くなり、居心地が悪くなる九尾とスノーホワイト。

何かが、この街で起こる。そんな漠然とした予感が、彼らの頭をよぎるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンッ!」

「トォッ!」

 

一方で、異変に気付いていたのは九尾達だけではなかった。別のミラーワールドでは、ゾルダとマジカロイド44が、大量のシアゴーストを一網打尽にしていた。

両者共にギガランチャーやギガキャノンを駆使して、シアゴーストを退けている。

 

『FINAL VENT』

 

「こいつで……最後だ!」

 

トドメの一撃と言わんばかりに、前方にマグナギガを呼び出し、銃口をマグナギガと接着させてから引き金を引くと、無数の銃弾が向かってくるシアゴーストに降り注ぐ。『エンドオブワールド』を受けたシアゴースト達は爆散し、周囲は再び沈黙に包まれる。

 

「数だけ揃えてきたようデスが、相手が悪すぎマシタね」

 

マジカルキャンディーの獲得数を確かめているマジカロイドが、リラックスした声で呟く。

 

「さてと、そんじゃあ戻りま」

 

用は済んだと思ったゾルダがミラーワールドを出ようとしたその時、背後から殺気を感づき、両腕で身を守った。

 

「! 先生! それにあなたは……!」

 

マジカロイドがハッとなって振り返ると、パートナーに襲いかかろうとした、デストクローを装着しているタイガの姿が。

 

「お前……! 懲りない奴だねぇ!」

 

ゾルダは両腕を弾き、押し返すと、その胸に向かってマジカロイドが飛び蹴りを放つ。倒れこんだタイガは、起き上がりながら、こんな事を呟き始める。

 

「……ねぇ、聞きたい事があるんだけど」

「「?」」

「やっぱりさ。自分でトドメを刺さないと、倒した事になんないのかな」

「……アッ?」

「光希だったらすぐに答えてくれそうだけど、もう死んじゃってるし。優奈ちゃんはリュウガって奴が倒して、美奈ちゃんは、結局王蛇とカラミティ・メアリに倒された。全部、僕が倒さなきゃいけなかったはずだったんだ……! 僕が、英雄になる為に……!」

 

明らかに様子がおかしい。そう思ったマジカロイドが皮肉な言葉をかけて挑発しようとするが、ゾルダが片手で制して、先に口を開いた。

 

「……なんかさ。お前とか浅倉とか、山元 奈緒子とか見てるとな。この戦いに生き残った者は確かに『最強』かもしれないけど……。……『最悪』って気がするよ。これなら、まだ龍騎とかの方が数倍マシかもな」

「あんな奴らと、一緒にしないでくれないかなぁ!」

 

激昂したタイガが、唸り声をあげながら、ゾルダ・マジカロイド44ペアへと突撃を始めた。

全ては、英雄になる為に。

 

 

 

 




お気づきかもしれませんが、今作では、サバイブにおけるファイナルベントは2種類あります。1つは契約モンスターのバイクモードでの攻撃。もう1つは通常形態の必殺技の強化版です。その方が豪勢だと思ってそうしました。

そして次回、タイガが仕掛ける……!

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