魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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最近のスマホゲームって、ストーリーが結構凝ってますよね。シンフォギアの最新イベント(未来のやつ)をやっててそう思いました。運営も頑張ってますね。

さて、今回はヤバい奴らが刃を交える……⁉︎


103.最恐vs最凶

王蛇・メアリペアとの死闘から2日が経とうとしていた頃。

 

「ッ! ゴフォ、ゴホッ……!」

「! 先生……!」

 

北岡法律事務所にて、食事中の北岡が不意に口元を手で抑えて咳き込む姿を見て、真琴は手に持っていた掃除機を放り捨てて、彼に駆け寄る。それに対して北岡は空いた左手で待ったをかける。

 

「大丈夫だって。ちょっと口に入れすぎちゃって噎せただけ。それより、中々に腕があがってきたじゃん」

「は、はぁ……」

「これくらいの腕なら、将来この道もやってけるかもよ」

「……」

 

作り笑いを浮かべている北岡はそう言って真琴を追い返すが、彼の右手は震えている。だが、真琴もかける言葉が思いつかず、黙って再び掃除機に手をかけようとした、まさにその時。

玄関のドアの向こうから、大きな音が響いてきた。その音の発信源は扉からのようだ。つまり、何者かがドアを強引に叩いているという事だ。

インターホンを鳴らさないで、直接ドアを叩きに来る訪問者に警戒を強めながら、真琴はロックを外して、ドアを開ける。

 

「よう」

「!」

 

刹那、真琴は用心していたとはいえ、扉を素直に開けてしまった事を後悔する。訪問者は、浅倉 陸。北岡に強い恨みを抱く、要注意人物。慌てて扉を閉めようとしたが、時すでに遅し。浅倉は強引に扉を押しのけて事務所に土足で入り込んでいた。

真琴がとっさにポケットにしまってあるマジカルフォンに手を伸ばそうとしたその時、北岡の声が真琴の耳に入った。

 

「いいよ真琴。そのまま通して」

「!」

 

狙われている張本人が、入室の許可を出してしまい、真琴は困惑してしまった。その僅かな隙を突いて、浅倉は真琴に目もくれずにズカズカと北岡に接近する。一方で北岡は最初からこの事態を予測していたかのように、余裕綽々と言わんばかりに真琴が作った海鮮パスタを口にしていた。

 

「きっと来ると思ってたよ。お前は随分と、俺を恨んでるわけだし」

 

そう言って、エビに向かってフォークを刺そうとする。

 

「お前は後回しだ。先ずは、タイガって奴を潰す」

 

それを聞いて真琴だけでなく、さすがの北岡も浅倉の口から出た予想外の言葉に思わず手を止める。

 

「はっ?」

「何だって?」

 

面食らっている2人に対し、浅倉は声を震わせながら、タイガに敵意を向ける訳を語った。

 

「あんなにイライラさせる奴は久しぶりダァ……! お前らにあんな獲物をやる訳にはいかねぇ……!」

「そういうこった。あいつがあたしらを恐れないってんなら、その身に分からせてやりたいってわけさ。分かったら、さっさと教えた方が身のためだと思うけど?」

「! あなたは……」

 

浅倉に続いて玄関から入ってきたのは彼のパートナー、山元 奈緒子。彼女も浅倉同様、タイガに次の狙いを定めたようだ。

 

「(なるほど……、よほどこないだの一件で頭に血がのぼっていらっしゃるようで……)」

 

真琴は以前、戦いに乱入して不意打ちで王蛇を殺そうとしたタイガの姿を思い出し、お気の毒に、と心の中で呟く。今この場でそれを口にしたら、下手を打って浅倉のイライラの矛先がこちらに向けられるかもしれない。そんな面倒事に巻き込まれたくはないし、今の北岡の様子を見るに、無理に戦わせるのは得策ではない。

真琴の考えは北岡も同様だったらしく、あっさりと判明している分だけの情報を提供した。

 

「多分、西門前町だろ。あそこら辺で牛耳ってたって聞いてるし、今もそうじゃないか?」

「門前町……。そういや、以前ルーラとかいう奴がチームを作るとか何とか言って、拠点を構えてたな。どうせあたしらを数の差で圧倒して跪かせようとしたんだろうが、どうせ烏合の衆だ」

「……そうか。なら……!」

「お、おい」

 

情報を手にした浅倉は、北岡の手からパスタが盛られている皿をフォークごと取り上げ、力ずくであらゆる食材に突き刺して、口に頬張っていった。一方で北岡が懸念したのは、せっかくの真琴の手料理を横取りされたからではない。食材の一つである、ムール貝を殻ごと食べようとしている事だ。が、そんな事もお構いなしに浅倉はバリボリと音を鳴らしながら、ムール貝を殻ごと咀嚼している。

 

「あの……。せめて、殻はお取りになった方がよろしいかと」

「言ったところで無駄さ。こいつはそういう奴なんだよ」

 

真琴のツッコミもスルーし、野獣の如くがっつく姿に、北岡と真琴は畏怖を覚え、奈緒子は肩をすくめながらおかしそうに笑った。

腹ごしらえを終えて、2人が事務所を後にしたのはそれからすぐだった。腹一杯美味い料理にありつけたからか、帰り際の浅倉の表情はどことなく満足げだった。もっとも、勝手に食べかけの料理を敵に食べられてしまった側からしたら、迷惑この上ないが……。

 

「……やれやれ。とんだ来客でしたね」

「……ま、昼メシはこの辺でいいか。真琴、後で片付けておいて」

 

真琴に皿の片付けを指示してからコーヒーを淹れようとする北岡。そんな彼が不意に窓の外を見上げながら、不敵な笑みを浮かべる。

 

「しかし、あいつらもこういう時ぐらいは役に立つかもしれないな。小物共を奴らに倒してもらって、俺達は楽して生き残る。……うん、やっぱ戦いはなるべく少数精鋭でやりたいしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、私達の元へ訪れた、と?」

「そうさ。分かったらさっさと連れてきな。言う通りにしてやれば、今回は見逃してやるよ」

 

場所は変わって、門前町の一角にひっそりと佇む王結寺。かつてのリーダーだったルーラが拠点とし、今現在はスイムスイムを中心にアビス、たまが居座っている、彼女らのアジトと化している廃寺に、乱雑に入り込んできたのは、言わずと知れた王蛇、カラミティ・メアリペア。

連絡も無しにやってきた2人からの要求は、チームメイト『だった』タイガに会わせろ、というものだった。そんな要求に対して、アビスの答えは一つしかない。

 

「生憎、今となっては私達も知らないのだよ。奴はお前達も知っての通り、尖りすぎている。それもあって、奴は英雄を目指すだのとほざいて、すでにこの地を後にしている。奴の行方など、もう私達には興味のない事だ」

「……ほぉ、つまり一番親しかったあんたらでも、奴の居場所は分からないという事か?」

「……うん」

「アァ?」

 

スイムスイムが深く頷いたその時、話を聞いていた王蛇が、殺気立った舌打ちを響かせ、先ほどまで腰掛けていた木製の手すりを蹴りつけた。脆くなっていた手すりはあっさりと音を立てて砕けた。

 

「いい加減こっちは戦えなくてイライラしてんだよ……! 俺は、戦いたいんだよ……! 戦いだけが、俺の中でイラつく『何か』を忘れさせてくれる……!」

 

一般人がこの光景を目にすれば、たちまち震え上がるような凄み。だが、そんな王蛇のプレッシャーも、ある意味で常人を超えている2人には通用しない。

 

「こうなったら、お前らでも構わん……! 俺と戦えぇ!」

「……チッ。勝手にやってきて勝手に戦いを挑まれるとは。獣の域を超えてるな、貴様のパートナーは」

「そういう奴なのさ。だからこそ、あたしのお気に入りなんだよ!」

 

そう叫ぶが早いか、メアリは懐からマグナムを取り出し、唐突に引き金を引いた。2人は横に飛び退いて、スイムスイムは薙刀であるルーラを取り出し、

 

『SWORD VENT』

 

アビスは2刀のアビスセイバーを持って、メアリに斬りかかった。スイムスイムは王蛇に向かってルーラを振り下ろすが、王蛇はしなやかな動きでかわしていく。

 

『SWORD VENT』

 

「ラァッ!」

 

ベノサーベルを片手に、反撃とばかりにスイムスイムへ斬りかかる王蛇。スイムスイムもルーラで押し流しているが、王蛇の勢いの方が勝っている。

 

「フンッ!」

 

王蛇はスイムスイムの背後を取り、その背中に向かってベノサーベルを突き出す。が、スイムスイムの背中から血が流れる事はなかった。そればかりか、ベノサーベルはスイムスイムを貫通している。

 

「……アァ? 何だ、お前……!」

 

それがスイムスイムの魔法だとも知らず、王蛇は思考する事さえなく、ただいたずらにベノサーベルを振り回した。スイムスイムは一瞬の隙をついてルーラを振り上げて、ベノサーベルを吹き飛ばした。紙一重で追撃をかわした王蛇は、すぐさま別のカードを取り出し、ベントインした。

 

『STRIKE VENT』

『STRENGTH VENT』

 

メタルホーンを装着し、さらにパートナーカードで強化して、再びスイムスイムめがけて飛び出すが、結果は変わらない。掠め取っても、血は流れない。スイムスイムは無表情のまま、メタルホーンに向かって突きを入れた。モロに命中したメタルホーンは砕けて、刃先が王蛇の右腕にくいこんだ。王蛇は咆哮と共にルーラを引き剥がし、別のカードとベノバイザーを構える。

 

『STEAL VENT』

 

その瞬間、スイムスイムの手元からルーラが離されて、王蛇の手元に渡ろうとする。これを見たスイムスイムの表情は一変。

 

「アビスマッシャー……!」

 

パートナーの契約モンスターを呼び寄せて、背後から王蛇を羽交い締めにした。背後からの急襲を受けて、王蛇はルーラを手にする事はなかった。

 

「ルーラに、触れていいのは、私だけ……!」

 

そして地面に落ちたルーラを掴んだスイムスイムは、そのまま王蛇に向かって斬りつける。王蛇は後退し、右の太ももを掠めた。右腕や右太ももから血が滴り落ちるが、王蛇は気にする事なく、直接スイムスイムに向かっていった。

そして、アビスとカラミティ・メアリの方も、銃撃と剣舞の激しさが一段と増していた。次々と銃を取り替えて戦うメアリに対し、アビスは必要最低限な動きでアビスセイバーを駆使して銃弾を弾いている。

 

「ッ! イラつかせる奴だな……!」

 

メアリは舌打ち混じりに四次元ポケットから手榴弾を取り出し、栓を抜いてアビスに投げつける。 こんな狭い空間内で爆発させては、投げた本人まで巻き込まれるはずだが、最早お構いなしといったところか。

 

『STRIKE VENT』

 

とっさに召喚したアビスクローから放たれた『アビススマッシュ』が、手榴弾を呑み込み、そのまま襖を突き破り、庭へと放り出される。直後に耳をつんざくような爆音が響き渡り、地面を抉った。距離が近い事もあり、王結寺内の地面が僅かに揺れた。

 

「チッ……! なら、こいつで……」

 

メアリはマジカルフォンをタップして、メタルホーンを装着する。そしてアビスに向かって突撃しようとした瞬間、背後からのタックルでメアリは押し倒された。ハッとなって顔を見上げると、涙目のたまの姿が。

 

「お前……!」

「ガイの武器で、誰かを傷つけるなんて、そんなの、ダメ……!」

 

恐怖で口調が震え上がっているが、かつてのパートナーの武器を悪用される事に、陰でひっそりと様子を伺っていたたまに、我慢の限界がきたようだ。たまはメアリの手からメタルホーンを力一杯引き離し、手に付いた犬の手から鋭く尖った爪を伸ばす。そして油断していたメアリに向かって突き立てようとした瞬間、たまの思考が止まった。

今のままなら、メアリに傷を負わせる事が出来る。そして、その傷穴に対して、魔法を行使する。たまの魔法は、『いろんなものに素早く穴を開けられるよ』である。ほんの少しでも穴を掘れば、魔法によって瞬時に直径1メートルほどの穴を開けられる。地面はもちろん、コンクリートであろうと、鉄であろうと。

……人体であろうと。

 

「ッ!」

 

刹那、たまは躊躇ってしまった。あのガイを殺した凶悪な相手が、無防備な状態で転がっている。これはチャンスだ。魔法少女の中でも最も過激な者が脱落すれば、自分達が生き残れる可能性は少しでも上がる。たまが爪で傷をつければ最後、メアリは全身が弾け飛び、死ぬ。ガイの仇を討った事になる。

なのに、たまには出来なかった。否、そうするだけの勇気が、覚悟が足りなかったというべきか。

 

「ッラァ!」

「ひゃっ……⁉︎」

 

わずか数秒停止した、たまを睨みつけながら、メアリは体を捻り、馬乗りになっていたたまを引き離す。

 

「メタルゲラス!」

 

メアリはそう叫び、黒いメタルゲラスを呼び出すと、黒いメタルゲラスはたまに向かって突進した。うずくまっていたたまは、真正面から攻撃を受けて、壁に叩きつけられる。

 

「このクソガキが……! あたしに逆らうとどうなるか、教えてやる……!」

 

目を血走らせながら、屈辱を味あわせられた、ぐったりしている元凶に向かってマグナムの銃口を照準に合わせる。すると、咆哮と共に、月明かりに照らされて銀色に輝く巨体が、メアリに向かって突進してきた。不意の一撃をもらったメアリは吹き飛ばされ、襲撃者を睨みつける。

たまの前に立ちはだかるように現れたのは、現在はたまが使役している本物のメタルゲラスだった。パートナーの危機に際して現れた、といったところか。

メアリは威力のある別の銃火器を取り出そうと、四次元ポケットに手を伸ばすが、魔法少女になって向上した聴力で、近辺のいたるところからサイレンや人の声がこの地に向かって集まり始めている事に気付いた。先ほどの手榴弾の爆発で、周りの住民が騒ぎに気付いてしまったのかもしれない。メアリとしては、このまま戦闘を続行して、住民に被害が及ぼうが関係ないのだが、下手に騒ぎが大きくなって、今後の資金稼ぎの仕事に影響が出ては本末転倒だ。そこでメアリは仕方なしにと、撤退を選んだ。

 

「……興が冷めたな。このケリはまた別の機会でつけるよ。そら、行くぞ」

「……フンッ。どいつもこいつも、俺をイラつかせる奴らばかりだ」

 

王蛇はそう吐き捨てて、メアリと共に、人目につかないようにその場を後にした。残されたアビスとスイムスイムは、外壁の向こうに目をやり、人が近づいてくるのを確認した。

 

「……ここも捨て時か」

 

そう呟くアビスは、振り返って半壊している王結寺に目をやった。今回の一件で王結寺は人目についてしまうだろう。そうなっては、拠点としては意味をなさなくなる。

 

『私1人なら問題ないが、お前達のような愚図共は何らかの拍子に、一般人に正体がバレる危険性もあるからな。下手に騒ぎが大きくなれば、この拠点を利用する事は不可能と言っていい。もしそうなったら、人気のない場所に拠点を移すだけだ。そうならないように、常に気を抜かない事だな』

 

かつてルーラが語った言葉を思い出したスイムスイムは、たまを担いで、アビスに言った。

 

「ここはもう使えない。場所を移すべき。ルーラならそう言う」

「その方が良いな。こんな時のために、候補は絞っておいた。ついてこい」

 

そうしてアビスを先頭に、スイムスイムは未だに唸っているたまと共に、王結寺を手放し、新たな拠点へと移動を始めた。

しばらくして警察等が駆けつけた時には、半壊した王結寺がひっそりと佇んでいる事以外、特におかしな点はなく、文字通りもぬけの殻と化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

人集りが出来始めた王結寺をカーブミラーの中から見つめていた、青白いライダーは踵を返して、誰にも気付かれる事なくその場を離れた。

 

 

 




スイムスイムと王蛇、最凶と最恐の対決はいかがでしたか?

そして次回から、タイガの孤独な戦いが始まる……!

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