魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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『シンフォギアXD』が配信されましたね。なかなかに面白そうなので、『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』共々、オススメしたいですね。

さて、今回は因縁深いペア同士の対決となりますが、あのライダーも久々に登場……⁉︎


98.ツーマンセルバトル(後編)

静まり返っているミラーワールド内に、銃声やら雄叫びやらが鳴り響く。大量の瓦礫や放置されたままの機材が散らばっている廃墟では、起こるべくして起きた対決が繰り広げられていた。

 

「ハァッ!」

 

マグナバイザーで素早く逃げ回る王蛇を狙い撃っているゾルダは、距離を取られないように追いかけながら、引き金を引いている。

 

「オラオラァ! 逃げ回ってるだけじゃ勝負になんないよ!」

 

一方でカラミティ・メアリは四次元袋に収納されている銃火器を次々と取り出しながら、マジカロイド44に乱射していた。体格の小ささが幸いしたのか、細かい動作でかわしきっている。時折ロケットブースターを使って高い所へ逃げ回っており、制空権を確保していた。廃墟という閉鎖的空間であるとはいえ、小ジャンプ程度ならブースターで飛んでも問題ない。当然回避ばかりでなく、パートナーと同じ武器であるマグナバイザーを構えて、反撃を仕掛けていた。

 

「ハハハッ!」

 

そして王蛇は、機材に隠れながら徐々にゾルダに近づき、不意のタイミングでベノサーベルを振りかざしながら飛びかかってきた。が、ゾルダもその動作を読んでいたらしく、一歩引いて間合いを取ってからマグナバイザーで王蛇の腹めがけて銃弾を撃ち込む。

王蛇はとっさの判断でベノサーベルを盾にし、勢いに押されて2階部分に吹き飛ばされるが、どうにかしてバランスを整えて着地する。

現状、王蛇の劣勢だと思われるが、その声色には余裕がある。

 

「……オォ、良い感じだなぁ!」

 

『ADVENT』

 

王蛇がベノバイザーにカードをベントインすると、ゾルダの後方で戦っていたマジカロイドとメアリの間を通り抜けるように、王蛇の契約モンスターであるベノスネーカーが急接近。

後方からの敵襲に、どちらを狙うかで判断に迷ったゾルダに向かって、ベノスネーカーが毒液を吐き出す。間一髪の所で回避したゾルダだったが、ペースが乱れてしまい、チャンスと見た王蛇がゾルダに近づいて、ある意味で得意な肉弾戦に持ち込んだ。

 

「先生!」

「よそ見してたら、そっちが先にお陀仏するよ! エビルタイバー!」

 

ゾルダが襲われている所を目撃し、メアリから視線を外してしまったマジカロイド。メアリは笑いながら黒いエビルタイバーを呼び出し、マジカロイドに向かって体当たりの指示を出した。

ギリギリではあるが、直撃は避けられた。が、乱気流に呑まれたかのようにバランスを崩してしまい、思うように直立ができない。それを見てメアリはマジカルフォンをタップし、メタルホーンを右手に構えた後、魔法を行使して、マジカロイドに突き出す。

所持している武器なら何でもパワーを底上げする魔法を持つメアリの攻撃をまともに受ければ、魔法少女の身であっても致命傷になりかねない。紙一重ではあるが、回避したマジカロイドはそのまま地面を転がった。砂埃が身体中について不快になるマジカロイドだったが、王蛇の連打を受けて倒れ込むゾルダを見て、とっさに叫んだ。

 

「マグナギガ!」

 

直後、ゾルダと王蛇の間に割って入る形で、ゾルダの契約モンスターであるマグナギガが、ゾルダを守るように出現した。距離が近い事もあり、王蛇は一旦後方に飛び退がる。

 

「大丈夫デスか先生?」

「あぁ、何とかね。しっかし、さすがにあいつら相手は骨が折れるね」

「ここは連携して、あの方々を出し抜いてやりまショウ」

「だな」

 

『SHOOT VENT』

 

ゾルダがカードをベントインし、マジカロイドもマジカルフォンをタップして新たな武器を召喚する。2人の両肩に、ギガキャノンが取り付けられ、王蛇とメアリに向かって砲撃を始めた。

マグナギガが盾になっている為、うかつに接近できない上に、威力の高い砲撃が来ると分かった2人は廃墟内を駆け回った。

 

「王蛇ぁ……!」

 

対する2人は高笑いしながら砲撃を避け続けていた。しばらくした所で王蛇が叫んだ。

 

「お前は俺を最高にイラつかせるなぁ……! もっと戦うなら、そいつはいらない……!」

 

『STEAL VENT』

 

王蛇が新たにベントインしたカードによって、ゾルダのギガキャノンは王蛇に奪われた。また王蛇自身も使う気は無いらしく、すぐさま脱ぎ捨てて身軽になった。

 

「まだ私がいる事をお忘れでなくテ?」

 

マジカロイドがそう呟くように、彼女が所持しているギガキャノンはまだ生きている。マジカロイドは徹底的に王蛇を狙い撃ちした。

その間、カラミティ・メアリは物陰に隠れて、武器を持ち替えた。瓦礫の間から銃身を覗かせて、撃ち続けているマジカロイドに狙いを定める。それは以前、龍騎とリップルを呼び戻す為に車や一般市民を撃ち抜く際に使用したドラグノフ。

メアリの狙いに気づいたゾルダがいち早くマジカロイドが狙撃されるよりも早く、マグナバイザーでドラグノフではなく、狙撃手本人を狙った。武器を狙っても魔法で強化された以上、容易に破壊はできない。だが狙撃手そのものは強化されていない。

メアリは舌打ちしながら、ドラグノフを放置してトレカフに持ち替える。再び接近してナイフの部分を振り下ろすメアリに対し、ゾルダはマグナバイザーで押さえつける。

 

「カラミティ・メアリ。あんたも随分と厄介な獣に首輪をつけたな。あんなやつさっさとその辺に捨てて、自分の身を心配した方が身の為だって忠告しとくよ!」

「ハッ! 心配される筋合いはないね。あいつはあたしのお気に入りなんだ。あれだけ重宝する力をみすみす手放すなんてどうかしてると思うけどね!」

「……これでも一応、女性として優しく教えてるつもりだったんだけどね!」

 

とはいえどの道魔法少女や仮面ライダーは、同じ者同士で戦う宿命でもある。相手が女性だからといって、手加減する時代はもう終わっている。

武器と武器がぶつかり合う、激しい戦いが続いた。やがて自然な流れでペア同士が固まって対峙する構造になった。ミラーワールドでの活動時間にも制限がある為、何時までも均衡状態であるわけにはいかない。

 

「……そろそろケリをつけるか」

 

王蛇が腹の底から低い声を出し、1枚のカードを取り出す。

 

『UNITE VENT』

 

ゾルダとマジカロイドの後方にベノスネーカー、黒いメタルゲラス、黒いエビルタイバーが集結し、3体が重なると、ジェノサイダーへと姿を変えた。初めて見る王蛇の切り札に、マジカロイドは動揺した。

 

「! まさかあれほどのものまで隠し持っているとは……。やはり侮れないデスね」

「向こうもその気なら、こっちも決着をつけるか」

 

『FINAL VENT』

 

ゾルダはマグナギガを再度呼び出し、その両腕を2人に向ける。

 

『FINAL VENT』

 

対する王蛇もカードをベントインし、メアリもショットガンを構える。するとジェノサイダーの腹が胎動し、黒い穴が出現した。そしてその穴から全てを吸い込もうと言わんばかりに風が引き寄せる。それは例えるなら、小型のブラックホール。

2組のペアは、一気に勝負を仕掛けるつもりのようだ。

 

「ハァァァァァァァ!」

 

先に動いたのは王蛇だった。飛び上がり、回転しながら蹴りをマグナギガもろともゾルダに叩き込もうとする。だがこの時ゾルダもマグナバイザーをマグナギガに接着しており、後は引き金を引くだけの体勢になっていた。

なっていた、はずだった。

 

「グッ……⁉︎ アッ……!」

 

不意にゾルダの視界が歪み、体の中の芯が抜け落ちたかのように、力が足に力が入らなくなった。

 

「(こ、こんな時に……!)」

 

ゾルダの身に異変が起きた理由は単純だ。戦闘中に病状が悪化し、エンドオブワールドを撃てるチャンスを手放してしまったのだ。ゾルダがマグナバイザーから手を離してしまった間にも、王蛇のもう一つの必殺技『ドゥームズデイ』が迫り来る。

距離が取れていない事。そして何よりパートナーの危機的状態を見たマジカロイドは、考えるよりも早く行動に移していた。

 

「先生!」

「!」

 

足のロケットブースターが素早く火を噴き、王蛇に向かって飛び出した。マジカロイドを狙っていたカラミティ・メアリのショットガンの銃撃は外れ、空を割いた。

ドゥームズデイがマグナギガとゾルダに届く前に、マジカロイドの渾身の両足蹴りが、王蛇に直撃して吹き飛ばした。王蛇は地面を転がり、風圧に押されたマグナギガは後方に倒れこもうとする。

 

「!」

 

ゾルダもそのタイミングで正気を取り戻し、横に飛んで下敷きになる事は避けられた。

 

「先生! 大丈夫デスか⁉︎」

「あ、あぁ。悪いな……」

「(あいつ……。何で今のタイミングで撃とうとしなかったんだ……?)」

 

メアリはゾルダが引き金を引かなかった事に疑問を感じていた。殺れるチャンスはあったはずなのに、そうしなかった。否、そうする事が出来なかったとしたら……?

 

「(……そうかい。マジカロイドのあの様子からして、あいつが攻撃を止めた理由は、一つしかないよなぁ!)」

 

メアリはニヤリと笑い、王蛇もまた起き上がって歓喜の雄叫びをあげた。

 

「ハッハッハ! 戦いはこうでなきゃなぁ! さぁもっと戦えよ! お楽しみはこれか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『FREEZE VENT』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に4人の耳に鳴り響いた電子音。

その直後、ジェノサイダーの身動きが止まった。まるで全身が凍りついたかのように。

 

「なっ……」

「こ、コレは……」

「……何だ」

「誰だ……?」

 

王蛇のみならず、4人全員が一斉に周囲を見渡す。

 

『FINAL VENT』

 

続いて聞こえてきた電子音で、4人は更に警戒心を強めた。

 

「誰だ! 隠れてないで出てきたらどうだい!」

 

メアリが挑発するかのように叫ぶ。そしてその時はいきなり訪れた。咆哮と共に、王蛇に飛びかかってきたのは、ホワイトタイガーをモチーフにしたデストワイルダーだった。

 

「あのモンスター……! まさか!」

 

マジカロイドが、王蛇を引きずるデストワイルダーの向かう先に目を向け、急襲を仕掛けた敵の姿を確認した。

 

「ハァァァァァァァ……!」

 

そこにいたのは、デストワイルダーを従える仮面ライダー『タイガ』。両手にはデストクローが付いており、腰を低くして、かつてその手でルーラを葬った『クリスタルブレイク』の体勢に入った。

 

「グァッ、アァァァァァァァァァァァ!」

 

王蛇は必死に抜け出そうと抵抗するが、彼の馬鹿力をもってしても、容易に抜け出せそうにない。

 

「んなろぉ!」

 

メアリが毒づいて、ショットガンをデストワイルダーめがけて撃った。2発(・・)の弾丸が、デストワイルダーに命中した。よろめいたデストワイルダーに、王蛇が渾身の一撃とばかりに蹴りを入れて、デストワイルダーを倒した。勢いが止まらず、王蛇は地面を転がり続け、ようやく停止したところで、王蛇は力尽きたかのようにぐったりとなった。あの程度で死ぬとは思えないが、相当なダメージを受けて気絶したようだ。

めがけては倒れ込むデストワイルダーを見て僅かに目を見開いた。2発の弾丸が見えたという事は、自分以外にデストワイルダーを撃った人物がいるという事だ。メアリには思い当たる節があるのか、ゾルダに目を向けた。ゾルダはマグナバイザーをデストワイルダーに向けたまま、肩で息をしていた。あれだけ王蛇と敵対していたにもかかわらず、結果的に王蛇を助ける事に一躍した事になる。

 

「……っ。俺もヤキが回ったかな。あいつを助けるなんてさ。あのバカが移ったのかな……」

「先生……!」

 

ゾルダを支えるマジカロイドが必死に呼びかける。メアリは2人から視線を外し、パートナーに襲いかかったライダーを睨みつけた。タイガはクリスタルブレイクが失敗した事を悟り、肩の力を抜いた。

 

「お前、不意打ちとは随分味な真似をするじゃないか」

「あぁ、ゴメンね。そのライダーは、英雄とは程遠いと思ったから」

 

タイガは倒れている王蛇を見下ろしながら呟いた。

 

「英雄……?」

「そう。戦うためだけに戦うライダー。自分より弱い奴を痛めつけて楽しむ魔法少女。聞いて呆れるよね。あの時龍騎が言ってた事、今なら僕にも分かるよ。君達はやっぱり、最低最悪のライダーと魔法少女だ。だから僕が倒す事に意味がある。君達のような害悪を倒して、僕は英雄になる」

「英雄ねぇ……。目的は違えど、いつぞやのスイムスイムと同じような事言ってるな」

 

ゾルダが小声でそう呟く。

 

「まぁ、今日はもうやめとくよ。3人も相手にするのは不利だから。じゃあね。今度こそ僕は英雄になるよ」

 

タイガは言うだけ言うと、背を向けてその場を立ち去った。メアリも逃がすかと小さく呟いて銃を構えようとしたが、マジカルフォンから警告音が鳴り響いた。時間が来てしまったようだ。

メアリは舌打ちし、王蛇に目を向けた。王蛇が戦えない以上、この状況下で2人を相手にするのは厳しいところもある。無理に決着を急がずとも、まだ時間はある。それに今回はゾルダが抱えているであろう爆弾の正体が見え始めただけでも収穫だ。

メアリは王蛇の肩を担いでから、2人に顔を向けた。

 

「そういうわけだ。今回はここで退くことにするよ。まぁ、お互い命拾いしたって事でおあいこにしようか、ゾルダ」

「……」

 

そしてメアリと王蛇は先にミラーワールドを後にした。

ゾルダとマジカロイドも少ししてからミラーワールドを出て、路上に停めてあった車に背中を預けた。

 

「ふぅ……。さすがにあいつら相手は疲れるな」

「先生大丈夫なんですか? もしかして病気が悪化したんじゃ……」

 

変身を解いた真琴が、同じように元の姿に戻った北岡を心配そうに見つめる。対する北岡はフッと笑みを浮かべてこう返した。

 

「平気だって。いつも通りだよ。ただ、タイミングが悪かったのは事実かな。……少し休んでから、会社に向かうか」

「……はい」

 

そう言って車の中で一息つく2人。北岡は少し仮眠を取るために目を瞑った。だが真琴は瞑れなかった。もしこのまま北岡の目が覚めなかったとしたら……。彼が現在起きているライダーと魔法少女の戦いに決着がつく前にいなくなってしまったら……。

そんな不安が真琴の中を駆け巡り、両手でニット帽を深く被り直した。

 

 

 




というわけで今回はドロー、という形で。まぁまだ決着をつけるには早すぎますからね(100話近くまでやっておいて……)

来週は諸事情で本編を進めるのは難しいと思われます。が、登場人物設定ぐらいは、時間に余裕があれば載せたいと思うので、そのつもりで。

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