魔法少女&仮面ライダー育成計画 〜Episode of Mirror Rider〜   作:スターダストライダー

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皆さまからたくさんのコメントが寄せられて、大変嬉しく思っています。今後とも応援をよろしくお願いいたします。


6.戦う意志

「……えっ⁉︎ あれってまさか……!」

 

龍騎に変身した正史の窮地を救ったのは、西洋騎士風の仮面ライダー『ナイト』と、忍者風の魔法少女『リップル』だった。2人は静かに歩み寄り、龍騎の前に背を向けて立つと、龍騎は慌てて2人に問いかけた。

 

「ね、ねぇ! ひょっとしてあんた達も仮面ライダーに魔法少女なのか⁉︎ なぁ、ここって何処なんだ⁉︎ 俺は何したら……」

 

だが龍騎の叫び声を鬱陶しく思ったナイトは振り返って咎めた。

 

「はしゃぐな! 気が散る!」

「はしゃぐなって……! 俺はただ……」

「あなたはそこで黙って大人しくしていればいい。あれは私とナイトでやる」

「そういう事だ。邪魔だけはするなよ」

 

そう言ってナイトはダークバイザーを、リップルは懐から刀を手に取り、同時にディスパイダーに立ち向かった。

迫り来るディスパイダーの鋭い脚をもろともせず、ダークバイザーや刀で的確に弾き返し、隙あらば突きを入れてダメージを与えている。

 

「す、スゲェ……」

 

龍騎はしばらく呆然と立ち尽くしたまま、戦闘を眺めていたが、ふと我に返って、どうにかしなければという焦りが生じた。2人とも強者であるのは見たところ間違いないようだが、敵も一筋縄ではいかない。それに、仮面ライダーの方はともかく、魔法少女は見た目からして、龍騎より年下の女の子だ。そんな子を最前線で戦わせるのは正史としても良心が傷む。ましてや今の正史は、戦える身だ。ならば彼のとる選択肢は1つしかない。

 

「俺も、やらなきゃ……!」

 

足元には、鉄パイプが転がっている。先ほどディスパイダーに吹き飛ばされた際にぶつかって破損した部品のようだ。

 

「よぉし、行くぞぉぉぉぉぉ!」

 

龍騎は雄叫びと共に鉄パイプを握りしめながらディスパイダーに突撃した。

ナイトとリップルは一旦距離を置くために一歩下がったが、その2人を追い抜くように龍騎は駆け抜けた。

 

「「!」」

「ダァァァァァァ!」

 

龍騎が鉄パイプを振り下ろし、ディスパイダーの脚に直撃……したのは良いが、実際にダメージを受けたのは鉄パイプの方で、直撃と同時に鉄パイプはポッキリと折れた。

 

「お、折れたぁ⁉︎」

 

戸惑う龍騎をあざ笑うかのようにディスパイダーは脚で思いっきり弾き飛ばした。

大きく吹き飛ばされた龍騎の向かう先にはナイトが。ナイトはウイングバイザーを構えて、別方向に弾き返し、龍騎は壁にぶつかってようやく勢いが止まった。

 

「邪魔をするなと言ったはずだ!」

「イテテ……。で、でも放っておける訳……」

 

すると、そんな龍騎の姿を見て、リップルは鼻を鳴らして折れた鉄パイプを握る龍騎に言った。

 

「あいつらにそんな武器で敵う訳も無いのに。あんた、バカなの?」

「なっ⁉︎ ば、バカって……! そんなストレートに言わなくても……」

 

年下のリップルにバカにされて若干ヘコむ龍騎を見て、ますます呆れたようにナイトは呟いた。

 

「もういい。仮面ライダーの戦い方ぐらいは見せてやる」

 

そう言ってナイトはカードデッキから1枚のカードを取り出して、ダークバイザーの翼の部分を開いてベントインした。

 

『SWORD VENT』

 

ナイトがダークバイザーを腰に差し戻すと、上空からダークバイザーより一回り大きな剣『ウイングランサー』を手に持つと、ディスパイダーと再び交戦を始めた。武器がパワーアップしている事もあって、、勢いはナイトの方が上手だった。加えて彼の後方からはリップルが手裏剣を投擲し、様々な角度からディスパイダーに命中させていた。

ディスパイダーがグラつき、ダメージが蓄積されていると判断したナイトは、新たなカードを取り出し、ベントインした。

 

『FINAL VENT』

 

「はぁっ!」

 

ナイトが飛び上がると、上空から飛来してきたコウモリ型の契約モンスター『ダークウイング』が彼の背中に張り付いて、マントのような姿になった。そしてナイトがウイングランサーを下方のディスパイダーに向けると、マントがナイトの体を包み、ドリル状になって、一気に急降下した。ナイトの必殺技『飛翔斬』はディスパイダーを貫き、ディスパイダーは爆散。

 

「おぉ……!」

 

龍騎は炎の中に佇むナイトに目が惹かれていた。

そしてナイトは歩き出し、鏡のある方へ向かった。リップルも龍騎の近くから離れてナイトの後を追うように歩き出す。当然龍騎も黙って見送るはずが無く、2人の進路を塞ぐように立った。

 

「な、なぁ。ちょっと待ってくれよ! 色々と聞きたい事があるんだよ!あんた達もひょっとしてあのゲームで……」

「俺達に構うな。後はシローやマジカルフォンで確認しろ」

「で、でも……!」

「私達はあんたに用はない」

 

そう言ってリップルが龍騎を退けようとした時、龍騎の持つマジカルフォンからシローが飛び出し、焦ったように叫んだ。

 

『モンスターの反応がまだ消えていないぞ! 近くにいるはずだ!』

「「「!」」」

「キシャァァァァァァッ!」

「な、何だ⁉︎」

 

龍騎が音のした方を振り向くと、ビルの屋上から、先ほど戦っていたディスパイダーのような容姿に加えて人型の上半身が突き出て、底知れぬ邪気を漂わせているモンスター『ディスパイダー・リボーン』が壁を伝って降りてきているのが見えた。

 

「あいつ、昨日倒したはず……」

「また復活したのか。しかも手札が悪いな」

 

2人は冷静そうに呟くが、内心では驚きを隠せないはずだ。特にナイトの方は切り札を使用してしまっているので、この状況は不都合だ。しかしナイトも足掻きを見せようとして、1枚のカードを取り出す。

 

『ADVENT』

 

現れたのはダークウイング。鳴き声と共にナイトのそばに寄り、再び背中に張り付いた。翼を広げたような姿になったナイトは飛び上がり、上空を旋回した。どうやら注意を惹きつけて反撃の糸口を見つけるのが狙いらしい。が、ディスパイダー・リボーンもそれを待っていたかのように、口から針を飛ばした。

 

「くっ……!」

 

ナイトも、必死でそれら全てをかわしている。だが、ディスパイダー・リボーンの目的は別にあった。ダークバイザーを構えて攻撃しようとしたナイトに向かって糸を吐き、ナイトの全身に巻きついた。

 

「うぉぉっ……!」

 

降り注ぐ針の雨によって逃げ道を失っていたナイトは抵抗出来ぬまま翼と共に拘束され、そのまま地面に落下。全身をコンクリートの地面に打ち付けた。幸いにも身体能力が向上されている事もあって、命に別状は無さそうだが、未だに糸が解けず、満足に動けない状態にあった。

動けないナイトを後回しにしたのか、ディスパイダー・リボーンは標的を龍騎とリップルに向けた。

 

「……!」

「うわっ!」

 

針が発射されて、リップルは咄嗟に龍騎を突き飛ばした。そのおかげで2人に直撃する事はなかった。龍騎が地面を転がっている間に、リップルは動き回り、ディスパイダー・リボーンを撹乱する作戦に出た。タイミングを見計らって手裏剣を投げようとしたが、それよりも早くディスパイダー・リボーンが針を連射し、リップルを寄せ付けないようにした。

 

「危ない!」

「大丈夫……!」

 

龍騎の心配をよそに、リップルは集中して回避に専念していた。

リップルは器用に攻撃をかわしていたが、体力の限界がきたのか、動きの衰えたリップルの右足を針が掠めた。

 

「……ッ!」

 

刹那、リップルは地面を転がり、血が垂れている右足に手をやった。よく見ると震えているようにも見える。どうやらディスパイダー・リボーンの放つ針には神経を麻痺させる毒が仕込まれていたようだ。ディスパイダー・リボーンは歓喜の雄叫びをあげると、動けないリップルに向かって針を発射した。

 

「! リップル……!」

 

ナイトはもう少しで糸を解けるところまで来ていたが、このままでは先に針がリップルを貫いてしまう為、間に合わない。

 

「……!」

 

リップルは抵抗する事も出来ず、思わず目を閉じて身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そんな無防備な彼女とディスパイダー・リボーンの間に割って入り込んできた者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ! ダァッ!」

 

それは先ほどまで離れたところの地面に転がっていた龍騎だった。リップルの危機に対し、龍騎は自分でも信じられないほどに駆け出して、パンチやキックで針を全て弾いた。

 

「! あなた……!」

「大丈夫? 間に合ってよかったよ」

 

龍騎はリップルの無事を確認し、ホッとした。それから拳を握ってディスパイダー・リボーンを見据える龍騎を見て、戦おうとしているのだと察したナイトは叫んだ。

 

「よせ! お前が敵う相手じゃない! ここは俺が……」

 

が、ナイトの言葉を遮るように、龍騎は首を横に振った。

 

「俺、正直まだよく分かんないよ。さっき仮面ライダーになったばかりだから、自分に何が出来るか、全部分かった訳じゃない」

 

でも、これだけは言える。そう呟くと、龍騎はナイトに顔を向けた。その複眼からは強い意志が感じられた。

 

「今の俺は、仮面ライダーだ。戦える力があるのに逃げ出したら、それこそ本当のバカだよ。俺は、人を守るライダーになる。もちろん、仮面ライダーも、魔法少女もな!」

 

[挿入歌:果てなき希望]

 

そう叫んだ龍騎は、左腕についていた召喚機『ドラグバイザー』の上部カバーをスライドしてから、カードデッキに手を当てた。脳裏にはナイトが戦っていた時の情景が。

 

「(さっきはここからカードを出して読み込んでたから、俺も……!)」

 

カードを引き抜いて、ドラグバイザーにカードを装填すると、音声が響き渡った。

 

『SWORD VENT』

 

直後、上空から龍の尾を模した剣『ドラグセイバー』が降ってきて、龍騎はそれをキャッチした後、勢いよく飛び出していった。

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

 

ディスパイダー・リボーンは向かってくる龍騎に対して針を発射したが、龍騎はそれを全てキックやドラグセイバーで弾き、そのまま飛びかかり、脚の上に乗っかると、何度も斬りつけてダメージを与えた。ディスパイダー・リボーンが後退すると、龍騎は地面に降り立ち、ドラグセイバーを持ち替えた後、新たにカードを取り出してベントインした。

 

『FINAL VENT』

 

「ハァァァァァァァ……!」

 

両方の拳を突き出して、横に移動させて力を込めたポーズをとっている間に、龍騎の契約モンスター『ドラグレッダー』が龍騎の周りを旋回しだした。そして地面を蹴り、空高く飛び上がると、ドラグレッダーもそれに続いて上昇。空中で一回転してから右足を突き出すと、後方からドラグレッダーが口から炎を噴き出して、龍騎は押し出される形で炎に包まれながら蹴りを放った。

 

「ダァァァァァァッ!」

 

放たれた龍騎の必殺技『ドラゴンライダーキック』がディスパイダー・リボーンに直撃し、ディスパイダー・リボーンは耐えきれずに大きく吹き飛ばされて爆散した。

 

「ッシャア!」

「「……」」

 

ガッツポーズを取っている龍騎を、ナイトとリップルはしばらく見つめていた。すると、マジカルフォンから音が鳴り、3人が確認してみると、マジカルキャンディーをゲットしたという情報が入った。と同時にシローがマジカルフォンから姿を見せた。

 

『少々危ういところはあったが、初陣としては中々のものだったぞ、龍騎』

「なぁ、シロー? これって何だ? マジカルキャンディーって、よくゲームで使われてたやつだよな?」

『そう。モンスターを倒せば、報酬としてマジカルキャンディーが手に入る。手に入れれる数はモンスターの強さによって変わるから、よく覚えておくと良い。無論、何かしらの人助けを行うと、同様の事が起きる』

「人助け、か……。よっしゃ! それなら俺でも何とかなりそうだな! いや〜、やっぱ仮面ライダーってスゲェんだなぁ」

 

龍騎が自分の体を見回している様子を見て、ナイトは呆れたように呟く。

 

「この程度の事でガキみたいにはしゃいでどうする。龍騎……だったな。お前、本当のバカだな」

「ちょっと! 何度もバカバカ言って……!」

 

龍騎が抗議しようとした時、マジカルフォンから先ほどとは別の音が鳴り響いた。

 

「⁉︎ 今度は何だ?」

「時間切れか……。ここを出るぞ」

「時間切れって……?」

「ミラーワールドでの活動時間には制限がある」

 

リップルは端的にそう呟き、ナイトと共に近くの鏡に向かった。龍騎も慌てて2人の後を追いかけ、3人は無事にミラーワールドから脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界に戻った龍騎は、カードデッキをVバックルから外して、変身を解除した。

 

「これが、仮面ライダーの……」

 

正史はしばらくカードデッキを見つめていたが、不意に顔を上げて、目線の先にいたナイトとリップルに声をかけた。

 

「あ、あの……。ありがとな! さっきは助けてくれて。俺、城戸 正史! 『OREジャーナル』で新聞記者やってんだ。そういうわけだからさ……」

 

そう言って正史は右手を差し出すが、2人は無反応だった。

 

「……何のつもりだ?」

「何って、握手に決まってんだろ? これからも協力して、人助けやモンスターをやっつけたりする事になるんだぞ?」

「勝手に決めるな。それから、俺達はお前と今後一切つるむ気は無い」

「えっ?」

 

ナイトからの拒絶に、正史は困惑した。

 

「今回はたまたま居合わせたから、手を貸してやっただけに過ぎない。そんなに仲間が欲しかったら、自分から他に当たれ」

 

それから……、と、ナイトは正史に詰め寄り、睨みつけるように正史の顔を見た。

 

「今は周りに人がいないから良いが、不用意に人前で変身は解くな。正体がバレたら、その時点で仮面ライダーの資格は剥奪だ。仮面ライダーを辞めたくなければ、肝に銘じておく事だ」

「あ、あぁ……」

 

正史は慄きながら頷き、ナイトはリップルと共に正史から離れようとした。が、正史には確認したい事があった。

 

「あ、ちょっと待って!」

「今度は何だ」

「名前だけでも教えてくれよ。その姿の名前」

 

正史にそう言われて、少し悩む素振りを見せたナイトとリップルだが、やがてナイトの方から口が開いた。

 

「仮面ライダー『ナイト』だ。それからこいつが」

「……リップル」

 

それだけ告げた後、2人は跳躍して、遠くへ去っていった。

 

「ナイトに、リップルか……」

 

正史はそう呟いた後、2人の後ろ姿から、夕日に目を向けた。間もなく1日が終わりを迎える。今までは何とも思っていなかった日々だが、これからは違う。城戸 正史としてだけでなく、仮面ライダー龍騎として、人々の日常を守る事に尽力を尽くす使命を全うするのだ。

男心をくすぐられるようなシチュエーションに、正史は俄然とやる気が出ていた。

 

「……ッシャア! 明日から張り切ってやるぞ!」

 

正史は夕日に向かってそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに、『OREジャーナル』に戻った正史は、調査に何ら進展がなかった罰として、大久保から特製の青汁をたっぷりと飲まされて、三途の川を渡り掛けるような目に遭ったのだが、それは別の話。

 

 




本編より、若干強い龍騎になってる気がしますが、そこは大目に見ておいてください。

それから、やっぱり名言「折れたぁ!」は外せませんよね。どうにか試行錯誤して取り入れてみた結果がこれです。

次回もお楽しみに。

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