絶望依存症の彼女は希望を求める   作:二次元ラブ100%

8 / 16
君は誰かに救って欲しいんじゃないか?

絶望というのは希望の対極的存在である。

絶望があるからこそ希望があるのであり、そのまた逆もしかりだ。その絶望を乗り越えたところに希望はあるのかもしれない。

そんな前向きな思考なんて私には似合わないけど。

 

「や、やっはろー……」

 

私は今少し戸惑っていた。

来ないと思っていた由比ヶ浜さんが、登校してきていた。しかも、私に明らかに敵意を向けて。

ははっ。やっぱりそうだよね。多分比企谷くんが、由比ヶ浜さんを学校に来させたのかな?

 

「お、おはようヒッキー……」

「おう」

 

…………まあ、いいか。由比ヶ浜さんは由比ヶ浜さんの希望を見出したのかもな。私には関係ないけど。

あーあ。私に絶望を与えてくれる人いないかなー。それか、私と同じになる人いないかな。

 

絶望に落とす人……。戸部くん……はどうでもいいや。

その時に、声をかけられた。

 

「神谷。ちょっといいか」

「…………なんですか、偽善王子」

「話がある」

 

 

 

 

屋上に呼び出された。

風が、私の髪をたなびかせ、鬱陶しいほど邪魔。そして、目の前の男も相当鬱陶しいったらありゃしない。

 

「それで、こんなとこに連れてきて何の用ですか?一緒に自殺?」

「そうじゃない。君は、もう絶望を広めるのはやめるべきだ」

「…………そんなことだけですか」

 

なんだ。そんなことか。

私はやめる気はないし、そもそも、私は必要悪だ。

 

「それだけなら、帰ります」

「君は!……君は誰かに救って欲しいから、そう絶望を求めてるんじゃないのか」

「…………」

 

ドアを手をかけていた手が自然と落ちる。

誰かに救って欲しい?私が?

…………そんなこと。私は救われるに値しない人間だから。救って欲しいなんて思わない。ただただ周囲に迷惑をかけていく存在でありたい。

 

「そうじゃない」

「違う。君は自分の気持ちに気付くべきだ。本当は救って欲しいんだと俺は思う」

「…………」

 

私が救って欲しいと、本当に望んでいる?そんなわけあるか。

 

「そんなわけない。話が済んだんなら、私は帰る」

 

ドアを開けて、でていく。

階段を降りながら、さっきの言葉が頭をよぎる。

『誰かに救って欲しいから、そう絶望を求めてるんじゃないのか』

いいや、違う。救って欲しくなんかない。私の家のことについては諦めはついてるし、私はそれを望んでいない。

誰にも踏み込ませない、救って欲しくない。貶めてほしい。

 

「…………調子狂うな。やっぱ偽善王子だ」

 

偽善王子は偽善のためにこんな私を救おうとしているんだろう。

誰にも救われなかった私に、手を差し伸べてくれた。でも、私はそれを望まない。

 

…………そろそろ、ラスボスに手を出そうかな。

 

でも、それはやめておく。もしかしたら彼は私を倒してしまうかもしれないから。

比企谷八幡。

彼はとてつもない化け物だ。

比企谷八幡と葉山隼人。2人は対極的だがどこか似ている。

人を放ってはおけないのが、彼らの共通点かもしれない。こんな私にですら、希望を与えようとしてくれている。

 

比企谷くんは、どうも敵かどうか微妙だったのはそのせいだ。

 

「…………いや、とっくに絶望している私には希望なんて無意味」

 

そう自分を誤魔化しながら––––––

 

 

 

 




戸部はナチュラルに外される

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。