魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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まどかがかなり行動的なのは、大体ルビーのせいです。
ルビーが甘やかすからいけない。

※20/5/5 誤字脱字修正



まどマギ×Fate 20

 衛宮士郎は倒れ伏したまま荒い呼吸を繰り返していた。青褪めた顔色が示す通り酷く憔悴しており、ルビーの声にも彼は反応しない。傍から見ていても、何かしらの異常があるのは明らかだ。

 暫し呆然としてしまっていたまどかだが、我に返ると、すぐに士郎に手を貸そうと彼に駆け寄った。しかし悲しいかな。女子中学生の中でもとりわけ非力な彼女では、大の大人である士郎を動かす事は叶わない。

 

「し、しっかりしてください!」

 

 声を掛けながら、まどかは士郎の腹部へと腕を伸ばした。少しでも重心を自身の側へ寄せて、運びやすくするためだ。すると伸ばした手が冷たく、そして水性を感じるものに触れた。

 濡れた?

 嫌な予感を覚え、恐る恐る手を引く。薄暗い中でも分かるほどに、まどかの手は赤いものに染まっていた。

 

「――――ひっ」

 

 血だ。べっとりと自身の手に付いたそれを見て、まどかの腰が引ける。

 まどかとて怪我をしたことくらいある。転んで擦りむいたり、料理中に指を切ったり、ぶつかって鼻血を出したり。或いは自分でなくとも、親が、友人が、或いは見知らぬ人が血を流したところを見てもいる。つい先日には、さやかが杏子との戦闘の果てに腹部から血を流していた。

 だがそれでも。

 自身の掌が人の血で真っ赤に染まるのは初めての経験で。

 

 ――――死んでしまう?

 

 脳裏に過る明確な予感。永遠の消失。初めての知人との別れ。

 恐れに身体が震える。早まる動機。混乱に頭が回らない。一つの事実だけしか認識できず、ルビーの声も、自身の呼吸音も、全てを遠くに感じ――――

 

 

 

「……ふぅ。大丈夫だ……問題ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まどかはぺたりと尻もちをついた。目前の光景に理解が追い付かない。むくりと身体を起こした士郎を呆然と眺めている。

 士郎の言葉は平静で冷静だ。怪我人の発言とは思えないほどに落ち着き払っている。だが一旦は立ち上がるも、すぐにバランスを崩した。ドサッ、と。倒れ伏していた状態から、壁に背を預ける体勢に変わった。

 

「~~~~~~っ、何が大丈夫ですか! この馬鹿ちんっ!」

「……いや、平気だ。ちょっとしくった」

「どこがちょっとですか! 強がるにも程がありますでしょう!」

 

 ルビーの言う通りだ。真っ赤に染まったシャツ。青褪めた顔。心許ない足取り。幾ら何でもちょっとで済ませられる状態じゃない。どこかマヒした頭で、まどかはそう思った。

 

「いや、本当だ。治療用の魔術をもう少し上手く扱えたら、ここまで酷くなっていない」

「あのですねぇ……もう少しマシな嘘ついてくれませんか?」

「嘘じゃない。ただ、深手を負うことは予想外だった」

「見りゃ分かりますって……ほんと、変なところで冷静ですね」

「焦っても好転はしないからな」

「いや、今の皮肉だったんですけど」

「そうか」

「……ええい! この人たらし! へっぽこ! 衛宮士郎!」

「何で俺の名前が悪口なんだよ……」

 

 ほとほと困ったような声を出しながら、士郎は移動を開始する。壁に身を預け、一歩一歩、ゆっくりと。そこで漸くまどかの思考が現実に追いつく。慌てて立ち上がると、士郎を支える様に、まどかは彼の胸元に手を添えた。

 

「あ、つ、掴まってください!」

「ああ、いや、気持ちだけで充分だ。ありがとう」

「そうですよ、まどかさん。そこの強情張りは放って置いても平気ですよ」

「ルビー!」

 

 叱責するかのようにまどかは声を荒げた。確かに士郎は人よりも頑強であろうが、それでも怪我をしている状態を茶化すことは。まどかには出来ない。許す事も出来ない。例えそこに、まどかには知らぬ、ルビーと士郎にしか分かりえないものがあったとしても、だ。

 流石にルビーも悪いと思ったのだろう。ごめんなさい。珍しくも素直に謝ると、空いている士郎の手に触れる。すると一瞬の光と共に、士郎の血に濡れたシャツが、新品同様のシャツに様変わりした。

 

「ほんっっっっっっっとうなら今の士郎さんの手助けなんてしたくないですが、まどかさんを血で汚すわけにもいきません。服は一時的に変えさせてもらいました」

「……悪い」

「はいはい。ちなみに服装は30秒で自動解除なので、それまでにリビングまでどうぞ」

 

 服だけ替えると、ルビーはヘッド部分だけになってまどかの元へと移動した。彼女なりの手助けなのだろう。士郎へ、そしてまどか自身へも、という意味で。尤もまどかは、自分自身の服が汚れることは一切考慮していなかったが。

 士郎を支えつつ、リビングに戻る。そして座らせると、ちょうど30秒が経ったらしく、血まみれのシャツに様相が変わる。

 改めて見ても酷い血の量だ。失血死していてもおかしくない。早く応急処置をして、救急車を呼ばなければならない。

 覚悟を決めてまどかは口を開いた。

 

「士郎さん、服を脱いでください」

「その心配は無いですよ」

 

 まどかの覚悟は簡単に覆される。下手人はよりにもよって味方であるはずのルビーだ。

 

「多分宝石を魔力変換して、治癒用の魔術を行使している筈です。ね?」

「ああ。傷は塞いである」

「へ、え?」

 

 宝石を魔力変換? 治癒用の魔術?

 まどかにとっては意味の分からない言葉の羅列である。

 

「ま、仮にも宝石の名の末席の末席の末席にくらいはいるんですから、ヘッポコでもこれくらいはしてもらわないと」

「宝石で治癒ってどういうこと?」

「あ、まどかさんは分からないですよね。えーと……宝石と魔力って親和性が高いんですよ。結構この界隈ではメジャーで、基本技能として習得している人も多いんです」

「……まぁ、速攻で傷が塞がる栄養剤だとでも思ってくれ」

「元も子もない言い方は止めてくれません?」

 

 ルビーには悪いが、士郎の言い方の方がまどかとしては分かりやすい。それでも原理は不明であるが。

 

「え、じゃあ、救急車とかも……」

「呼ぶ必要は無い。大丈夫だ」

 

 士郎はそう言うと、大きく息を吐き出した。一息をつけた、という事か。そう言えば新品のシャツに変わった時に、血が滲み出てはいなかった。まどかは自分でも驚くほどに冷静に状況を推察をすると、安堵の息を吐き出した。

 

「はいはい、やせ我慢やせ我慢」

「ルビーったら、もう……」

「心配をかけてすまない。けど、今は大丈夫だ」

 

 ルビーの言う通りやせ我慢が入っているのは間違いないが、本当に重傷ならそもそも我慢は出来ない。大丈夫だと言っているのは、決してウソでは無いのだろう。基準は別に置いておいて、だが。

 ぶつぶつと文句を零し続けるルビーとは反対に、まどかは士郎の状況をそう判断した。

 

「何でこんな怪我を負ったんですか?」

 

 とすれば次に抱く疑問は、大怪我を負った理由。まどかは士郎の人外染みた体力を知っている。頼りになる大人である彼が怪我を負うことは、それだけの難敵が現れたという事に他ならない。

 士郎は少し考え込む様に目を伏せると、言いづらそうに口を開いた。

 

「しくった」

「馬鹿ですか」

 

 間髪入れずに放たれるルビーのツッコミ。む、と。不服そうに士郎は眉根を寄せるが、まどかの心情はルビーと同じだ。

 

「しくったのは分かりますよ。私たちが知りたいのは、何でしくったのか、です」

「油断した」

「人の話聞いてます?」

 

 すまんすまん。両手を上げて士郎は降参のポーズを示す。が、顔は一切笑っていない辺り、今の回答で押し通せるようなら押し通すつもりだったのだろう。ズルい大人だ。

 

「厄介な魔女に遭遇した。倒したと思ったら死んだふりをされて、このザマだ」

「死んだふり、ですか」

「ああ。おかげで、貴重な宝石を一つ消費する羽目になった」

 

 ふぅ、と。一息つくように士郎は息を吐き出した。そこには隠しきれない疲労が籠っている。余裕を見せるような態度をとっているが、強がりでしか無いのは瞭然だ。きっと言葉以上の激戦があったのだろう。

 まどかはルビーに目配せをした。アイコンタクト。あまり長居はしないでおこう。ルビーも了承の意を示す様に頷いた。

 

「ところで杏子さんはどこにいます?」

 

 違うよ、ルビー。違う違う。しかしまどかの懇願はルビーに届かない。士郎に見えぬ様に、羽で制止のハンドサインをまどかにを送るくらいに、全く空気が読めていない。

 

「知らないな。適当なところほっつき歩いていると思うが」

「いるとしたらどこら辺ですかね?」

「……適当な食べ物屋か、コンビニか、ゲーセンじゃないか?」

「ここは帰ってきます?」

「帰って来る事もある。何時も居るわけじゃないし、確約は出来ないぞ?」

 

 そして何故士郎は普通に会話をしているのか。本当なら今すぐにでも寝たいだろうに。まどかとしては申し訳なさで居たたまれない。

 

「……ルビー、そろそろ」

「ん、あ……そろそろ夕ご飯の時間ですね。ルビーちゃんうっかり。テヘペロでござる」

 

 違うって、ルビー。違う違う。本気なのかふざけているのかもわからない態度に、だんだんと頭が痛みを訴え始める。いくら温厚なまどかとは言え、限度と言うものはある。

 

「む……しまった、そんな時間か。どうする? 店屋物でも頼むか」

「士郎さーん? 今どきの女の子がそんな地味なのを頼むわけないじゃないですか。もっとカラフルでスイートでキュートなものにしてください」

「ルビー!?」

 

 これは収拾がつかない。直感的にまどかはそう判断すると、ルビーを掴んで自身のポケットに捻じ込んだ。あひぃ、という情けない声が聞こえた気もするが無視する。無視して、ルビーを抑えつけたまま、まどかは上着を取って席を立つ。

 

「士郎さん、ごめんなさい! パパが食事作って待っているので、大丈夫です!」

「あ、ああ」

「今日は急にごめんない! ありがとうございました!」

 

 きちんと一礼して、早足でまどかは家を出た。

 これ以上は士郎に負担を掛けたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友人の大半は人外、或いは人外の枠に身を置いていれども、まどか自身はごく普通の中学2年生だ。

 士郎の住んでいるウィークリーマンションから、走って離れる事大凡5分。

 若い身なれども、流石に息が切れる。緩やかに速度を落としつつ、それでもどうにかバス停までは走り抜いた。

 走り抜いて、思わず一言。

 

「ルビー!」

 

 まどかは万感の想いを乗せて、相棒の名前を読んだ。そして呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。人目が無い事を良い事に、堂々とルビーはまどかのポケットから出てくる。

 

「まどかさーん。タイミングは悪くなかったですけど、ちょっと強引すぎですよー」

「そう言う問題じゃないでしょ!」

 

 相も変らぬルビーの様相に、温厚なまどかと言えども流石に語尾に力が籠る。彼女は自分よりも、人の為に感情を露わに出来る少女だ。

 流石のルビーも悪いとは思ったのか。ごめんなさい。酷く真面目な語調で謝ると、すぅっとまどかの目前へと移動した。

 

 

 

「士郎さん、ウソついていますね」

 

 

 

 ルビーにしては珍しく、平坦な声。そこに感情は含まれていない。それ故に、その言葉には有無を言わさぬ響きが伴っていた。

 まどか自身、次に告げる言葉を飲み込んで、思わず疑問を口にした。

 

「どういうこと?」

「私、杏子さんには滅茶苦茶恨まれているんですよ。会っちゃいけないくらい」

 

 言われてまどかは思い出す。ルビーの名前を聞いて、苦々し気に顔を歪めていた杏子を。なんなら先日の魔女の結界内でブチ切れていた杏子を。

 

「私は会っても構わないんですけどね。士郎さんが泣きながら会わないでくれ! って懇願するので、なるべく会わない様にしているんです」

「そうなの?」

「そうです。なんならハンマーで襲われたりしています。……でも今日の士郎さんは、私が留まろうとすることを止めはしませんでした」

 

 店屋物でも頼むか。士郎はそう言っていた。それは裏を返せば、まどかやルビーが長時間あの場所にいても、問題ないと言う事でもある。

 不都合が無い。

 キュウべぇは勿論、杏子も戻ってこない。

 そう言う事だ。

 

「本人の余裕の無さもあるんでしょうけど、今までの態度を思えば不自然です」

「でも、そう言う事もあるんじゃないの? 杏子ちゃんは士郎さんのところに入り浸っているだけで、今日は家に戻っているとか……」

「その可能性もあります。ただ、士郎さんと杏子さんはほぼ一緒に住んでいるような状態でした。想定外で戻ってくる可能性有るのに、私を招き入れたままにしているなんて、そんな不合理な選択を士郎さんはしません」

 

 別に士郎が合理性の塊と言うわけでは無い。

 ただ単純に、士郎は眼に見える爆弾を放置するような人間ではない。

 殊更ルビーに限れば、彼は真っ先に排除のために動くだろう。

 それだけだ。

 

「これは推測ですが、多分、杏子さんはあの家に戻らないでしょう。……そして、その原因を士郎さんは知っています」

 

 推測とは言うが、ルビーはこの仮説に確信に近い思いを抱いていた。

 怪しすぎる。

 とは言え、士郎は簡単に口を割るほど考えなしの人間ではない。それならあの場で訊き出せる。

 彼が黙っているという事は、確実にルビーやまどかに影響が出るから。

 そうでなければ、黙っている意味がない。

 

「どうしますか、まどかさん。夜が遅くなるのは事実です。いったん家に帰りますか?」

「ううん、帰らない。……杏子ちゃん、探せる?」

「……探せますが、まさか」

「そのまさかだよ、ルビー」

 

 まどかは不退転の意思を目に宿して、ルビーを見た。

 

「杏子ちゃんに、会いに行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あちゃー。ルビーは頭を抱えたくなった。まさかまどかが、そんな事を言うと思わなかったのだ。

 いや、まぁ、まどかはそう言う子だ。一緒に行動してきたから分かる。ここぞと言うときは、絶対に引かないし、自分の身も顧みない。ある種士郎と同じだ。彼程行き過ぎているわけでは無いが、万が一の場合には自己犠牲も選択に選ぶだろう。衛宮士郎のマイルドバージョン。

 そもそも彼女にそんな決意をさせたのは、ルビーの責任だ。ここでわざわざ推理を披露しなければ、こうはならなかっただろう。少なくとも、さっきまではまどかは帰るつもりでいたのだから。

 ルビーの余計な発言が、まどかに不退転の決意をさせてしまった。こうなるとまどかは下がらないだろう。

 ……ここまでで、0.1秒。

 

「……お父様には、何と言い訳を?」

「友達の家で食べる事にした」

「お友達は?」

「マミさん。口裏は合わせてもらう」

 

 こうと決めるとまどかは早い子だ。なけなしの逃げ道は簡単につぶされる。と言うか会話をしつつ、まどかはスマホでマミに連絡を取っていた。ピコン。流石は現代っ子である。

 杏子を探す事自体は簡単だ。魔力は記憶している。その方へ向かえば良いだけだ。

 

「……杏子さんに会って、何を話します?」

「たくさんあるけど、まずは何でさやかちゃんにあんなことをしたのかなって事かな」

 

 言ってからまどかは思った。そう言えばそういう諸々についてを探りに士郎を訪問したのに、何も彼には聞いていない。

 勿論、状況が状況だ。これについては、聞けなかったまどかが悪いわけでは無いのだが。

 

「ううん、あんまりまどかさんには危険な目に遭ってほしくないんですけどね……」

「そうは言っていられないよ。私は私が出来ることをやらなきゃ」

 

 まどかの決意は固い。日常と非日常の境目が曖昧になり、友人が傷つけられて、周りが否応なしに変化していって。まどか自身も状況を知る一人として、どうにかして解決しないとと言う、焦りを覚えているのだろう。

 だが酷な事を言ってしまえば。別にまどかが頑張る必要性は無い。皆無と言っていい。

 まどかは確かに事情を知っている。巻き込まれもした。目の前で見ている。

 だがそれは、介入をしなければならない、と言う理由にはならない。

 寧ろこの先の危険性を思えば、まどかはにはこの件と言わず、魔法少女の世界から手を引いてもらう様にするのが一番だ。

 

「……じゃあ、行きますか」

 

 尤も。そんな第三者的な立ち位置で事を矯正出来るのなら、最初からしている。物分かりの良い言葉で納得できるのなら、この場には居ない。

 とどのつまり。ルビーも、まどかと同じ気持ちなのだ。

 

「杏子さんのところへ案内します。ただ、公共交通機関を使用しては時間が掛かり過ぎます」

「うん」

「てことで、変身しちゃいましょう」

「分かった」

 

 ノータイムでまどかは了承の意を示した。そしてルビーの柄を握る。ルビーとしてはもう少し恥じらい的なのがあってもいいかなぁとは思ったが、まぁ良しとしよう。これは本チャン前のプレ変身みたいなものである。平行世界がどれだけ干渉してくるかも分からないしね。

 とは言っても、マイマスターの初めての変身である事には変わりない。手を抜くことはあり得ない。気合を入れねば。

 そぉれっ。脳内での掛け声と共に、眩い桃色の光がまどかを包んだ。包んで、私服から魔法少女へと装いを変え始める。

 

『あばばばばばばばばばばばばばば!!?』

 

 途端にほむらと同じく、平行世界の力が過大に干渉してくる。いや、ほむら以上だ。ほむら以上に、ルビーの開いた穴をガンガンに攻めてくる。許容いっぱいいっぱい、溢れちゃう。色々と。だけどこのまま出されるがままだったら、多分トンデモナイことになる。

 せめても、暴走は免れねば。

 ルビーはなけなしの気合を総動員させると、必死に力を固定化させる。流量が一定ならば、制御は出来なくもない。そこら辺はやはり、流石はゼルレッチ作成の魔術礼装である。

 

『ぜぇ……ぜぇ……か、完了……』

 

 そうして出来上がったのは、ピンクを基としたフリルやリボンをあしらった可愛らしいデザイン。何時の日かにまどかのノートに書いてあった、まどか自身が思い描いていた、魔法少女の姿。

 幾らツッコミ役が不在且つ、人目が無かったとはいえ、住宅地での変身という大暴挙。この光で誰かが気付く可能性は大いにあり得る。イギリス辺りに住んでいる某魔術師がこの大暴挙を知ったら、泡を吹いて卒倒するかもしれない。

 だが今は、そんな可能性に躊躇っている場合じゃない。

 

「行くよ、ルビー」

「へ……へ? あ、ちょ、ちょっと待って下さい、決め台詞……」

「そんな暇は無いってば!」

 

 初の魔法少女化。これって結構なイベントの筈である。メタ的な発言になるが、主人公の公での正式な魔法少女化だ。寝ている間にこそこそ契約したのとは訳が違う。もっと何か、こう……色々とあっていい筈だ。色々と。

 あれぇ、おっかしいなぁ。

 ルビーは疑問を抱いた。魔法少女の変身って、こんな雑に扱われる程度の奴だっけ?

 だがそんな疑問も、次のまどかの言葉で吹き飛んだ。

 

 

 

「さやかちゃんが来ているの!」

 

 

 




おまけ


※まどか変身中のルビー

『あ、あああああああああああ!!!  ああっ!! あああっ!! ああああああああああああああ!!! ああああああああああああああああ壊れるぅぅううううううううううううううううううう!!! これ以上干渉しないでぇぇえええええええええええええ…………あれ? もう一人のまどかさん? 何で? ……絡み合っている!? しかもそのまま変身!? そして自分にキスして変身完了!? お、おほぉ!?』

 >イクヨ、ルビー

「へ……へ? あ、ちょ、ちょっと待って下さい、決め台詞……」

 >ソンナヒマナイッテバ!

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