新満州国での草加少佐の動きを把握した津田大尉。角松と行動を共にした如月と一緒に梅津元艦長の元へ訪れる。草加少佐達が計画している原爆製造計画を聞いた梅津は…。
1月25日 横須賀防衛医療センター
この日、梅津の元に珍しい客人がやって来ていた。
「やぁ、津田大尉。お会いしたいのは君だったか。」
「お久しぶりです。梅津艦長。キスカで負傷したと聞き、お見舞いに参りました。」
と、果物が入った籠を渡す。
「これはこれは、ありがとう。」
梅津はベットの隣にある棚の上に果物籠を置いた。
「ところで津田大尉、忙しい中わざわざお見舞いに来てくれるとはありがとう。」
「いえ、今日は梅津艦長に報告しないといけないことがあるのです。」
すると、病室のドアを開けて一人の男が入ってきた。
「はじめまして。国防海軍上海陸戦隊連絡将校 如月克己 と申します。」
津田と一緒に来たのは如月だった。
「君か、副長が満州でお世話になったのは。」
「ええ、角松二佐と一緒に行動し草加を追跡しました。」
「その、如月君がなぜここに?」
梅津の言葉に津田が話始めた。
「如月さんには今、草加少佐の事を追跡してもらっています。」
「なぜ追跡を?」
と、津田の言葉を疑問視する梅津。如月は今の草加の行動とその目的について話始めた。
「なるほど…。満州国で陸軍と共に原爆開発を…。」
「ええ、私の部下から入った情報によると…。つい先日、旧北朝鮮が使用していた核実験場に入りました。車両の動きも多数あり、原爆開発を進めていると思われます。」
「なるほど。」
「その根拠に、我が国防海軍の警務隊が要注意人物としてマークしていた 石原莞爾氏や物理学の権威の倉田博士等を召集しています。」
「なんと…!」
草加の思惑は原子爆弾製造による。日本の核兵器保持が目的。と感じた梅津はさらに尋ねた。
「彼…。いや、草加少佐はいつ原子爆弾を完成させると思われるかね?」
「我々の予想だと一ヶ月後。遅くとも3月には原子爆弾が完成すると思われます。」
と、如月が話した。だが、意外な事を津田が話始めた。
「ですが、現時点で原子爆弾製造に必要な物が不足していると情報があります。」
「それは?」
「濃縮ウラン235。これだけは満州国では作れません。近く、ドイツからコレを運搬するという情報があります。」
梅津は少し考えた。現時点で護衛艦みらいの人間として、コレを止められるのは私だけだと…。
「分かった。詳細が分かり次第、連絡してくれないか?その濃縮ウランは絶対、草加に渡してはいけない。唯一の被爆国である日本が核兵器を使うというのはしてはいけない事なのだ。」と、梅津は話した。
病室での話し合いが終わり、梅津はベットで考えていた。
(これは、私の最期の戦いになるだろう…。さて、副長に伝えるべきだろうか。)