米国から艦娘が派遣されることになった横須賀鎮守府。過去の戦闘での歪みを日本の艦娘達は克服できるのか?そして、みらい がかつて撃沈したある正規空母が現れる。
1月20日0530 国防空軍 横田基地
キイイイイインン
米空軍のC-17輸送機が着陸する。
「ふぁわ~やっと、JAPANに着いたぁ。」と、米海軍の制服姿のアイオワが呟く。旅客機と同じ航続性能を持つとはいえ、乗ってきたのは輸送機。やはり大きめの体には狭かった。
「ナガートは元気にしているかしら?」
と、サラトガ。すると…。
「お待ちしておりました。」と、二人の男性が声をかけてきた。
金髪丸刈りの白人男性は ジャクソン・ベイツ海軍司令。一方の日系米国人の男性は マイケル・佐藤 駐日アメリカ海軍大使 だ。アイオワ達は敬礼したあと、案内された車に乗り込み横須賀へ向かった。
同時刻 横須賀鎮守府
米国から艦娘がやって来るときいて、出迎えの準備で慌ただしい横須賀鎮守府。柏木は今回やって来る4人のスペックを確認していた。ただ、あることで心配することがあった。それは、旧帝国海軍組の反発だ。海上自衛隊の艦娘達は大丈夫だろうが、帝国海軍組艦娘にとってはかつての敵だ。必ず反発や衝突があるだろう。それを柏木は危惧していた。それに…。
「正規空母 ワスプ…。」
かつて、護衛艦みらいが自己防衛の為にトマホークで撃沈した正規空母だ。果たして、艦娘の みらい と合わせて大丈夫だろうか?米国艦娘が来るまであと2時間。柏木は艦隊の上位にいる 長門 金剛 や一、二航戦のメンバー。そして初期から横須賀に居る吹雪や時雨達を緊急召集した。
0830 横須賀鎮守府 正門前
途中の交通渋滞で少し遅れて米国艦娘を乗せた車と艤装を積んだ大型トラックが到着した。柏木はネクタイを締めて出迎える。すると、車から ジャクソン司令が降りてきた。
「やぁ、Mr.柏木。元気にしてたか?」
と、流暢な日本語でジャクソンが話しかけてきた。それから、話は進み…。鎮守府着任式がしめやかに執り行われることになった。
「Hi! Iowa級戦艦Name Ship、Iowaよ。高速戦艦で、この重兵装。Battle shipの最終形ともいえる完成度。USAが生んだ最後の戦艦級として、この艦隊でも頑張るわ。よろしくね!」
と、アイオワが挨拶し米国艦娘達の自己紹介が始まった。
!!!
着任式に参加していた みらい はある気配を感じた。自身を討とうとしたあの殺気だ。
「米国の正規空母 ワスプ です。」
と、茶髪の女性が出てきた。
(空母ワスプ!!!)
みらい がまだ艦の時。自己防衛という名目でトマホークで撃沈した空母だ。あの戦闘…。自身も左舷のSPYレーダーを破壊され5人の殉職者を出したのだ。
パァン!
突如、会場に一発の発砲音が響いた。みらい が振り向くとそこには震えながら9ミリ拳銃を持った潮がいた。
「ア、アメリカの艦娘なんて…。ゆ、許せ…ない!」
やはり柏木が想定していた事態が発生した。だが、潮が撃つだなんて思っていなかった。
「撃つなら撃ちなさい!」
騒然とする会場にミズーリの流暢な日本語が響く。ガクガクと手元が震える潮。アイオワやサラトガの前に立ち潮の目の前に出る。そしてミズーリは自身の持っている護身用の拳銃を地面に置いた。
「提督、ここは私が。」と、加賀が止めに入ろうとするが
「いや、待て。」
と、柏木は呟いた。
潮とミズーリの周りに居た艦娘達は離れている。
「撃つの!?撃たないの!?ハッキリしなさい!」
震える潮。ミズーリは鬼のような目付きで見つめる。
ガチャ…。
潮の手から、拳銃が滑り落ちた。そしてその場に座り込む。そして加賀が潮の拳銃を取る。
(…拳銃を向けられて一歩も引かないなんて。流石、太平洋戦争を生き抜いた歴戦の勇者!)
みらい を始めとする自衛艦娘達は驚いていた。警務隊に連行されようとする潮。だか、それをアイオワが止めた。
「潮?過去の出来事は修正なんて出来ないわ。でも、同じ艦娘として深海棲艦を倒さなくちゃいけない。今は、喧嘩している場合じゃないのよ。」
と、優しく声をかけた。潮はその後、一週間の謹慎処分が下された。