航跡65:クリスマス
12月24日 横須賀鎮守府 駆逐艦寮
クリスマスを控えた横須賀鎮守府。駆逐艦寮ではクリスマスに備えてイルミネーションの準備が行われていた。
「さてと!クリスマスパーティーに備えて料理の仕込みをしなくちゃ!」駆逐艦寮の自炊用の台所には第六駆逐隊を始めとする、何人かの駆逐艦娘達が集まっていた。毎年恒例の艦娘達によるクリスマスパーティー。料理自慢の艦娘達が腕を振るうのだが…。今回は珍しく第六駆逐隊が参戦していた。
「よーし!この前だいせんで食べたビーフシチューを作ろう!」
今回のメニュー決めは雷だった。ビーフシチューといっても、ルーは市販のを使用するから大きな問題はないと思われるが…。果たして上手く出来るのだろうか? と、たまたま用があって駆逐艦寮に来ていた柏木は心配していた。
「野菜切ったのです。」
「お、お肉はこうでいいかしら?」
「大丈夫。問題ない。」
と、慣れない手つきで料理を進める第六駆逐隊。そこへ弥生がやって来た。
「みんな。なに作ってる…って、あっ…。」
「せっかくだから弥生ちゃんも一緒に作ろ!」
と、弥生の手を引っ張る雷。と言うわけで弥生もビーフシチュー作りに参加することになった。
コトコトコト…。
鍋で具材が煮えている。ふと、暁がじゃが芋を入れようとする。それを弥生が
「暁ちゃん。ちょっと待って、今入れたら煮崩れちゃう。」と、制止した。
「えっ?でも、どうするのよ。」
どうやら第六駆逐隊のメンバーはビーフカレーの具材で作っていたようだ。弥生は少し考えた後、あることを思い付いた。ふかしたじゃが芋を潰してコンソメスープと生クリームを入れて滑らかなペースト状にする弥生。どうやらマッシュポテトを作っているようだ。
「…これ。食べてみて。」
と、弥生に言われて味見する。
「あっ!」
「すごーい。」
「美味しいのです。」
「ハラショー」
と、弥生の意外なところに驚く雷達。第六駆逐隊が作ったビーフシチューに付け合わせの弥生が作ったマッシュポテト。お皿に盛り付けると本格的な洋食料理だ。すると…。
「いい匂いがするけど…。第六駆逐隊は何を作ったのかい?」と、同じ自炊室で料理を作っていた時雨が声をかけてきた。時雨はラザニアを大和から教えてもらったレシピで作っていた。
「凄いね。皆で作ったのかい?」
と、出来の良さに驚く時雨。時雨も料理好きで良く作っているけど、第六駆逐隊のカレー以外の料理は初めて見た。
「ど、どうかな?時雨さん。」
と、暁が味見してと頼んできた。
「うん。味も大丈夫だし。お肉も柔らかく煮えてるよ。これなら皆に出しても大丈夫だね。」
と、時雨からOKが出てホッとする5人。時計を見るともう、5時半だ。クリスマスパーティーは18時から…。料理完成はちょうどいいタイミングだ。
1800 駆逐艦寮 食堂
パパパーン
「メリークリスマス!!!」
クラッカーが割れて白露の掛け声でクリスマスパーティーが始まった。料理自慢の艦娘達が腕を振るった料理がテーブルに並ぶ。第六駆逐隊と弥生が合同で作ったビーフシチュー&マッシュポテトに時雨のラザニア。吹雪達第十一駆逐隊が作ったスモークサーモンのサラダ等が並ぶなか、空母寮から赤城達がやって来た。加賀と瑞鶴の両手には大きな白い箱がある。
「皆さん。先日のMI作戦はお疲れ様でした。これは私達からのクリスマスプレゼントです。」
と、赤城が話し…。加賀は箱の一つを瑞鶴に手渡す。妙に顔がひきつってる瑞鶴だが、テーブルに箱を置いて。蓋を開けると…。
「うわぁー!」
と、歓声が上がる。2種類ある箱の1つはなんと、七面鳥のローストチキンだ。
「これは加賀さんと瑞鶴さんが作ったのよ。」と、赤城が説明すると加賀が「ね。七面鳥。」
と、瑞鶴に声をかける。勿論…。
「七面鳥ですって!冗談じゃないわ!」と、瑞鶴は反論するが…。珍しく加賀相手なのにお怒りモードではない。横では二航戦がクスクス笑っている。もうひとつの箱は瑞鳳と二航戦の三人で作った大きな苺のクリスマスケーキだった。
「でさー。蒼龍ったらコソコソ苺をつまみ食いしてたのよー。」
「飛龍だって、生クリームをいつのまにか鼻にくっつけてたじゃない?」
と、ノンアルコールのシャンパン片手に話す二航戦の二人。
「ほんま、このサラダおいしいわぁ~」
スモークサーモンのサラダを食べる黒潮に
「時雨、ほんとに料理上手っぽい。」と夕立。
「第六のビーフシチューもおいしい!」と、白雪。「このマッシュポテトおいしいね。えっ?弥生ちゃんが作ったの!?」と、弥生の意外な所に驚く吹雪。
「五航戦、食べなさい。」と、七面鳥を瑞鶴に押し付ける加賀。と、久しぶりの平和な時間が流れる横須賀鎮守府。すると、賑やかなのを聞き付けた柏木がやって来た。
「あっ!司令官!よかったらご一緒しませんか?」
と、吹雪に誘われて柏木もクリスマスパーティーに参加する。窓の外にはクリスマスの特別イルミネーションを施した護衛艦みらい等が輝いていた。
その頃…。みらい艦橋のデッキでは。
「あぁ、今日は一段と冷えるな。」
と、防寒着姿で角松と尾栗が話をしていた。みらいの艦橋からは丁度、クリスマスパーティーを行う駆逐艦寮の様子が見えていた。
「あの子達楽しそうだなぁ~。」
「やっぱり、何人か会ってきたけど…。やっぱり女の子なんだな。」
と、尾栗の言葉に返答する角松。今夜は曇りの割にはとても寒い。吐く息も真っ白だ。
「ん?」
ふと、角松の鼻に冷たいものが付く。
「おっ。なんだ?雪か?」
尾栗が空を見上げると…。白い雪がパラパラとちらついていた。
「…ホワイトクリスマスだな。」
「ああ…。」
その夜は例年にない記録的な寒波が関東地方を通った。夜の初めから降り始めた雪は次第に強くなり一晩で抜けたものの、翌朝…。横須賀の町は真っ白な銀世界に包まれていた。
季節がちょっと早いですが、今回はクリスマスの話です。今年もあと2か月…。季節が過ぎるのは早いものですねぇ~(^^; 前回まで、MI作戦の影響でちょっと過激な描写や難しい表現が多かったので今回は箸休め的な感じで書きました。最近、なんだか他のゲームに押され気味の艦これですが…。私は艦これ一筋ですね。(ここまでハマったゲームは艦これが初めてでした。)背水の陣状態の艦これですが、ガンバレ!!!