ジパング×艦これ ~次元を超えし護衛艦~   作:秩父快急

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航跡63:作戦終了

 

 12月8日 1600 護衛艦だいせん 浴室

 

 「ふぅ~。」

 頭にタオルを乗せて加賀がくつろいでいた。鎮守府の入梁ドックと違い5人入ると一杯の狭い浴室だが、だいせん型には艦娘達専用の浴室が設けられている。船のお風呂特有の海水をろ過したお湯。湯上がりは少しベタつくが、保湿・保温性が高いので冬場は特に温まる。今、浴室にいるのは加賀一人。一緒に入っていた赤城は先に出ていた。

 

 ガラッ…。

 

 「あっ…。」

 「何。五航戦。」

 

 ふと、風呂に瑞鶴が入ってきた。瑞鶴は今回の作戦では小破していた。一瞬無言の間が流れたが、とりあえず体を洗う。 

 

 チャプ…。

 

 仲の悪い二人が揃って風呂に入っている。とてもくつろいでいるようには見えないのだが。ふと、瑞鶴が話始めた。

 

 「きょ、今日は援護ありがとね…。」

 「…。」

 「援護があったから、MIが攻略できて作戦は成功した…。」

 独り言のように話す瑞鶴。すると、加賀は深いため息をついた後話始めた。

 「そうね。でもあなた方、五航戦が掃討しなければ…。MIの本格空襲は出来なかったわ。今回の作戦のことを忘れないで頑張ってね。今日はありがと。」

 と、言い。加賀は風呂から上がった。加賀に誉められるとは思ってなかった瑞鶴は顔を真っ赤にしながら黙ってしまった。

 

 加賀の予想外の言葉に驚き軽くのぼせた瑞鶴。風呂を出て脱衣場の自分着替えが入った棚を見ると…。

 

 「あれ?」

 

 そこにはタオルで作った小さなウサギが置いてあった。どうやら加賀が作って置いておったらしい。

 

 「ったく、こ、こんなのしなくたっていいのに(照)」

 

 1830 みらい食堂

 

 ガヤガヤ…。

 

 夕食時を迎えた食堂は手の空いた隊員達から順次、食事を取っていた。今日の献立はMI攻略成功を祝って、なんとビーフステーキだ。

 

 「おお。給養科えらい大盤振る舞いだな。」

 「よっしゃ!食うぞ!」

 「冷蔵庫にこんなのあったのかよ…。」

 等々、予想外のメニューに驚く隊員達。その頃…。片桐は自室でカメラのデータ整理をしていた。

 

 カチッカチッ…。

 

 (出港から半年…。皆、顔つきが変わったな。)

 と、自分のノートパソコンの写真を見つめる。出港時の写真と今の写真。二つを見比べると若さやあどけなさが残っていた隊員達の顔が、いつしか軍人の顔になっていた。それは幾つもの死線を潜り抜け、自らが生きているということを意味していた。

 

 「おっと。」

 

 ふと、書類の一部が崩れた。その中に報道関係者のことを示す身分証明書兼乗艦許可証が出てきた。

 「おや、こんなところにあったか。」

 と、証明書を拾う。そこには満面の笑みと海上自衛隊の航海演習に参加できる楽しさで写る自分が写っていた。

 「この仕事でまとまった金が入ったら、新しいカメラを買おうと思ってたんだけどなぁ~。」

 と、鏡に映った自分と身分証明書の写真を見比べる。そこに写っていたのは、隊員達と同じ戦火を潜り抜け…。報道関係者としての熱意に燃えている自分だった。

 

 2130 だいせん 艦娘待機室

 

 ここは護衛艦だいせん艦内の艦娘達が待機したり会議をする部屋だ。いぶき型護衛艦より設置された戦闘機パイロットの待機室の艦娘専用バージョンと言ったところ。部屋のすぐ隣は出撃ドックだ。その割りには、艦娘という女の子の部屋。殺風景な戦闘機パイロットの待機室と違い、気配りのできた整理整頓されつつも可愛らしさのある部屋だ。その部屋のリクライニングシートでゴロゴロしている艦娘が居た。駆逐艦 雷 だ。本来、彼女は第六駆逐隊所属。姉妹の暁 響 電 とはとても仲が良く、いつも一緒に行動しているのだが、今回の作戦では離ればなれになってしまったのだ。雷は今回の作戦では負傷しなかったものの、全弾使い果たすという派手な戦い方をしたのだ。

 

 「ふわぁ~(眠)」

 

 最新鋭の護衛艦とは言え、陸地との通信は業務用が優先。唯一衛星電話が各艦1ヶ所に搭載されているが…。通信科に申請しないと使えない。

 

 「皆、何してるのかなぁー。」

 

 と、自分のスマホを弄くりながら呟く。今居るのは太平洋のど真ん中。携帯の電波が入らない。ちらっと第六駆逐隊グループLINEの通知を見たが、[ネットワークに接続してません]とエラーが出るだけ。暇でしょうがない。この待機室にある本は全部読んでしまったし、どうしようかと思っていると…。

 

 「あれ…?雷ちゃん?」

 

 入ってきたのは弥生だった。弥生は風呂上がりの部屋着姿。首からタオルを下げていた。

 「…弥生ちゃん?」

 

 弥生は物静かで口数も少なく、雷は話しかけたことがなかった。

 

 「…きょ、今日の戦闘は大丈夫だった?」

 「うん。大丈夫。」

 と、話しかけてみるがなんか話が続かない。弥生は無表情。笑ったところを見たことがある艦娘は横須賀でもそんなに居ないという噂だ。

 

 「ところでさ、今日の夕飯のビーフシチュー美味しかったよね?」

 と、雷が話したところ弥生が意外な反応を見せた。

 「うん。ビーフシチュー…。弥生も作ってみたいかも。」

 「えっ?」

 弥生が話したのは料理作りをしてみたいという言葉だった。実は弥生は、鎮守府の中で隠れた料理好きで…。自分で料理作りをしてみたいと日頃から思っていたのだ。

 「ねぇ!横須賀に戻ったら鳳翔さんのところで料理を一緒に作らない?」

 「え、弥生…。いいの?」

 と、雷の言葉に驚く弥生。雷も実は提督に好かれたいということで、料理作りを鳳翔さんから習っていたのだ。後日、横須賀に帰投した雷達。弥生は料理作りを鳳翔さんのところで習うことになった。勿論、第六駆逐隊のメンバーも一緒だ。MI作戦も終わり、一段落ついた横須賀鎮守府。暫しの平和が訪れたのだった。 

 

 

 




 今回はMI作戦が終わり、各登場人物のホッとした様子を書いてみました。瑞加賀コンビですが、少しは溝が埋まったかな?と思っています。そして、ここまで出番の少なかった第六駆逐隊の雷ちゃん。昔の装備を持つ艦娘がスマホを弄くる…。ちょっと可笑しいかもしれませんが、現代っ子って感じにしてみました。なんか、弥生ちゃんと横須賀に帰投したら何かしそうですね。楽しみです。

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