ジパング×艦これ ~次元を超えし護衛艦~   作:秩父快急

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護衛艦みらいが横須賀で修繕を受けている頃…。先に帰国していた草加少佐はある人物に面会していた。この先の結末を大きく変えるその人物とは?



航跡37:退役軍人

8月13日 横須賀鎮守府ドック

 護衛艦[みらい]が入渠してから3日。修復作業も半分まで進んでいた。

 

 パシャ パシャ

 

 前甲板で片桐と麻生が話をしていた。

「まさか、SPYレーダーを直すことが出来るとは…。妖精さん達には脱帽ですよ。」麻生は艦これ世界で艦娘達の艤装を修繕する妖精さん達の仕事ぶりに脱帽していた。

「まぁ、あんなに小さいのによくまぁ…。修理できますよね。」と、足場を組み立てて修繕作業が行われている艦橋を撮影しながら話す。

「修繕箇所は、敵機の機銃掃射で破損した左舷前側のSPYレーダー1基にECM電子戦装置、衛星通信用アンテナ…。」と、麻生が説明する横で片桐は各装備を写真に撮る。

「それに、艦内の断線した箇所の配線ですね…。まさか完全復旧できるとは思いませんでしたが、元の世界の部品を使って修理している訳ではないので…護衛艦みらいの艦これ世界版ってとこですかな。」と、脱帽し頭を掻きながら話す。

 

1930みらい艦長室

 

「副長…。修復作業は順調かね?」

「はっ、作業は予定通り50%を越えました。作業ペースは順調です。」と、角松は修復作業の状況を報告した。

「柏木提督に感謝せねばな。妖精さん達の力を借りなければ…SPYレーダーの修復は不可能だった。」

「同感です。」梅津はSPYレーダーの復旧を喜んでいた。ただ、この先の戦闘について懸念していることも事実だった。

「夕方、津田大尉から柏木提督経由で連絡があったのだか…。草加少佐について情報が入った。」

「草加が…?」

驚く角松に梅津は話を続ける。

「津田大尉によると我々より先に帰国していたそうだが…どうやら何か考えているようだよ。」

 

 

 去る8月2日 東京

 

新宿の一角、神楽坂のある料亭に二人の軍関係者の姿があった。

「このご時世で泥鰌鍋が食べられるとは…。」

「徐々に加熱されていく鍋の中で熱さから逃げたい泥鰌は豆腐の中に逃げ込んで美味しく煮え上がる。なかなか考えさせられる鍋ですなぁ~。」

二人が囲んでいる鍋の中では生きた泥鰌が熱さから逃れようと必死でもがいている。

「しかし、今日はなんだか泥鰌が上手く潜ってくれませんなぁ~。」と、坊主頭の初老の男性が鍋をつつく。すると…。

「焦ってはいけませんよ。石原殿。戦と同じで焦ったら美味しくなくなる。ここはゆっくり待ちましょうや。」と、大柄の男性が話す。

「そういえば、話は変わりますが…。先日、奇妙な方に会いましてな。これがまた面白い人で私の戦争論に噛みついてきたんですよ。」

「ほぉ、そのお方とは?」

 

グツグツグツグツ

 

「元国防海軍 海軍少佐 草加拓海だと言っていたなぁ~。」

 

前日 東京 立命館大学

 

「このままでは日本は負けますな。」

 真夏の大学の講堂で石原は講義を開いていた。

「なぜ負けるかって?そりゃ、1万円しか入っていない日本の財布と。軍資金が半永久的に存在する深海棲艦との戦いだからだ。100円200円と軍備を伸ばすうちはまだわからないが…。すぐにスッカラカンになって、あとはやられる一方だ。」

「深海棲艦が現れてからと言うもの、日本は旧日本軍が占領していた朝鮮半島や中国の旧満州国地域を再び支配下においているが、やっていることはメチャクチャだ。まるで、やたらと事業を拡大しすぎて倒産する貧乏会社同然だ。」

 

「今の軍部は油の輸送ルート確保のために南へ力を集中させているが、海軍には南方防衛の作戦計画がない。これで今度は北だ西だ日本海だだと手を拡げれば…。本土はがら空きになる。このままでは日本は手薄になり日本の都市は私の頭と同じ焼け野原(笑)ってとこですかな。」

 

「…戦争の形態は歴史と共に変化しています。[方陣]から[横隊][敵兵]そして[戦闘群]これを幾何学的に観察すれば、まず[方陣]は点であり[横隊]は実線。[敵兵]は点線であります。そして[戦闘群]は面。つまり、一次元から二次元へと来たのです。そして現代の戦闘は空中戦と対潜戦を中心とした三次元の戦闘。つまり体になったのであります。航空機やミサイルによる攻撃と防御、つまり制空権の確保が勝敗の鍵となるのです。我が人類が経験する戦争の最終形態がこの形になります。」と、黒板に大きな図を書いて説明するが…。

「だが、ここにはあるものが足りない。それは四次元だ。まぁ、あるとすれば死後の世界だ空想上のせかいだとおもいますがな。まぁ、そんな世界を経験した人がいればお目にかかりたいものですが。」石原の問いに講堂に笑いが起こる。すると…。 

 

「それは時間軸です。」

 

 

 一人の青年が答えた。 

「ほぉ、なぜ時間軸だと?」石原の質問に青年は…。

「この世にはいくつもの時間が流れています。それは一人一人の時間が流れていますが、同時に何本もの平行した時間。つまり平行世界が存在します。私はその時間軸を二つ経験した。二つの異なる世界を知っていると言うことです。」

「ほぉ、なかなか面白いことを言うじゃないか?君、名前は?」

「私の名は、元国防海軍 通信小佐 草加拓海。」と、草加が名乗ったその時。

 

「この講義は中止だ!」突如怒鳴り込んでくる二人の中年男性がいた。

「なんだい、また中止かい?」と、とぼける石原に「当たり前だ!生徒の教育にならん!」と怒鳴る。

「私はここの教授だぞ理論を話して何が悪い?」と、マイペースでとぼける石原は「だったら君が、生徒のためになる理論を話して見てはどうかね?教壇に上がるのはいつでも歓迎しているよ。」と話した。すると…。

「世のためになる話をしてみろってんだ!こっちは石原先生のはなしをきいているんだ!」

「いつもいつも邪魔しやがって!」「今日こそは許さんぞ!」

と、講義を受けていた生徒達から一斉に抗議の声が上がり講堂は騒然となる。

 

 

 

「君は変わった人たが…。君もはみ出し組かね?」と、講義終了後に構内のベンチで石原と草加は語り合っていた。

「二つの世界を経験した。と、言っていたが…。あれはどういう意味かね?」

石原は、草加の言った二つの異なる世界について尋ねた。

「私はある艦に乗りました。その艦は私たちの世界と平行に走る世界からやって来ました。」

「ほぅ…。」

「彼らはこの世界がゲームとして存在する世界からやって来ており、この世界の行く末も知っています。」と、草加はみらいの事について淡々と話した。

 

「それでなぜ私のような退役軍人のところへ?力を必要とするならば竹上首相だろう…。」

「あの人は心は強いが行動力がない。時期に首相の座を追われるでしょう。」

「そうかな?私としてはしっかり国の長としての役目を果たしていると思うが…。」夕暮れの風に吹かれながら石原は話した。

「それよりあなたは、顔を知らない他人なら100万もの同胞を殺せる。真の理想のためには世話になった恩人や可愛がった部下さえも見殺しにし、愛した陸軍でさえ…潰す。」

 

 

 「ハハハ。買い被っちゃいけないよ。私はなんも力のない軍の予備役だ。」と、草加の話を笑いながら否定する。すると、

 

「遠からず私のもとへ現れるでしょう…。その、平行世界からやって来た日本人が…。」

 

 

 

 

 


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